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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第一章 幼少期・ガラム
23/113

18 少年の修業

 完全に前回の続き的展開w


 二十二話始まりますw

 親方の家の前、三人がそれぞれ木の棒を持ち、それぞれが風を切り裂き唸りを上げる。

 一本は力強く豪快に、一本は早く正確に、一本は繊細で軽やかに。


 「俺、堅実性をとるならタクの正確な、一撃必殺型なんだと思うんですけど………、目指したいのは師匠の豪快な剣ですね。………ってか、シノも様になってるね」

 「そうか」

 「いっぱいれんしゅうした」


 アルテが剣を始めたのは、タクと友人になった次の日。

 そこから二ヵ月程自己流で剣を振り続けていたが、筋力と持久力は今まで以上に向上したものの、それ以上を知らない為、どうやったらいいか分からず、ただ「剣を振り下ろす動作」といったものしかできなかったのだ。

 それを聞いた親方が、それぞれの素振りを見せてどんな形にしたいかを決めようと言ったところで冒頭に戻る。

 方向性を決定させるために、兄弟子に当たるシノとタクも巻き込んで、素振りをしていたのだ。

 親方は止めたのだが、アルテは親方を師匠と呼ぶことにしたらしい。


 「シノはお前の兄弟子………姉弟子にあたるのか? 一年半でここまで出来るようになっちゃって、兄弟子(息子)の俺はちょっと複雑だけどね」

 「ごめんなさい」


 シノが剣を始めたのは、この町に来てからだ。

 小さい頃からずっと親方に教わってきたタクを軽々と飛び越えて、今では一番弟子とでもいうような実力を身に着けていうシノに嫉妬しないかと言えば嘘になるだろう。


 「いや、弟弟子に抜かれたぐらいで俺は諦めないさ。むしろどんどん前を走ってくれ。きっと努力で追い越してみせるさ」

 「ん。がんばる」


 タク本人が真面目で素直、というのもあるのだが、嫉妬するのもおこがましいほどの才能の塊なのがシノだと理解しているからこそ、そういう言葉が出る。


 「………打ち込め」

 「えっと、最初の修業は親父に一撃入れること。どんなに無茶をしてもいいから、その棒で親父に打ち込んでみ」

 「え………」

 「気にしなくても大丈夫。今の段階で親父に打ち込めることは絶対にないから」

 「お、おう。胸を借ります」

 「来い」


 元冒険者である親方が教えるのは、実践剣術だ。

 毎日それなりに体を鍛えるべき、と言うのは実戦も道場も変わりないが、一番違うのが、道場剣術のように型から始めるわけではない、ということだろう。

 その手で剣を振って、相手に降り続けて、振りやすいやり方を自ら模索させるのがいい、と言うのが親方の持論である。

 シノもタクも、親方と打ち合い一撃を入れた時には、今に至る鱗片が見える基礎が出来上がっていた。しかもシノに至っては、格段にも程がある差がある親方と打ち合うよりも、ある程度同じくらいの力量を持つタクと打ち合う経験があった為、その上達ぶりはすさまじかった。


 「ぜ、全然っ、届かないっ………」


 アルテは、攻撃が拗全て防がせ、この二ヵ月間の努力とはなんだったのかと虚しくなり、精神的にいっぱいいっぱいになった所で、木の棒を持つ腕に力が入らなくなった。


 「………休め」


 そんなアルテを見て、親方は木の棒を壁に立てかけ、家の中に入ってしまった。


 「そんなに気を落すなよ」

 「いや、俺、二ヵ月も一体何してたのかと思うと………」

 「はぁ。二ヵ月の独学で親父に一撃当てたら、シノ以上の才能の持ち主だぞ?」

 「そうなのか?」

 「ああ。シノが親父に一撃いれるまで半年かかった」

 「………頑張るわ」


 シノが親方に一撃を食らわせられたのは二度目の邂逅の時であり、一度目から半年経過した時であったから、嘘は言っていない。

 その当人であるシノは、仮想敵を打ちのめすのに飽きたのか、手ごろなサイズの木の棒に装飾を施している。


 「ってかさ、俺、上達する見込みあんのかな………?」


 最終目標の高さがよくつかめず、実感がわかないアルテ。

 実はタクも同じようなことを父親のすぐそばで見続けていることで思っているのだが、それは口にせず、今はアルテが欲しいと思うだろう言葉を投げかける。


 「親父が諦めろって言わない限りは大丈夫」

 「頑張るしかないってわけね」

 「その通り」


 まだ疲れて動けないアルテに、親方の教え方を説明するタク。

 卒業という概念は無く、大まかに、第一段階から第五段階までがあるということ。

 第一段階。不動の親方に一撃を入れること。この時親方は、同じ得物で防御し弾く。回避も攻撃もしない。

 第二段階。回避する親方に一撃を入れること。この時親方は、同じ得物を持ってはいるもののひたすら目の前で裂ける。防御も攻撃もしてこない。

 第三段階。防御と回避を行う親方に一撃を入れること。この時親方は、同じ得物を持っていて、攻撃はしてこないが、親方の判断で、喰らっても平気そうな軌道は受け止め、喰らいたくないと思える一撃には受け流すが回避する。

 第四段階。攻撃を行う親方に一撃を入れること。この時親方は回避をせず、全てを攻撃で防いでくる。

 第五段階。攻撃、防御、回避全てを行う親方との実践。


 「って感じかなー。ちなみに、シノは第五段階、俺は第三段階」


 同じ得物、と言うのがミソで、親方は相手の武器に合わせてくれるのだ。シノは、木の棒とナイフで五段階まで。タクは、片手剣と木の棒が第三段階で、ナイフが第五段階までクリアしている。

 実戦形式をとって、何から何まで教えられる技量を親方は持っているのだ。


 「俺は第一段階なわけか………聞くだけで心が俺そうだよ」

 「ま、要は少しずつ親父の動きに慣れて行って、目て終えるようになったら盗んでいくっていう形式だから、第三段階に入ることにはスラム街のチンピラが止まって見えることくらい確約できるぜ」

 「まじか………」


 そんなこんな話していて、呼吸が落ち着いてきたころ、親方が三つのコップを持って家から出て来る。


 「………飲め」

 「あ、ありがとうございます」

 「ありがとう、親父」


 どうやら家の中で飲み物を作っていたらしい。

 飲み物の中に入っている果物の種の様な物を見て、タクは苦笑する。きっと調理場は悲惨な事になっているんだろうな、と思いながら、不器用な優しさがくすぐったいタクである。

 それからアルテは何度か親方に挑戦するものの一度も親方を動かすことができず、タクと模擬選をしたりすることで時間を過ごした。

 そろそろ日が沈む時間だから帰ろうと言おうとしたアルテ。その時、それが来た。


 「だれか、来た」


 それまで静かに壁に寄りかかって寝ていたシノがムクリと置き、周囲を警戒する。

 その様子にアルテは首を傾げ、タクは遅れて警戒する。そして親方が家から出て来る。


 「やっぱり! おまえはおれのどれいなんだろ? こんなとこじゃなくて、おれのとこにこなきゃダメなんだぞ!!」


 相変わらず森に来るのに似合わない奇抜な格好で、使用人と思われる男と上質なローブを着た女をはべらせたアキが訪れたのだ。


 「シノ、お前は帰れ」

 「だめだよ! それはおれのおもちゃだってとうさまがいってたんだ!!」

 「シノ、よくわかんないけど、タクと俺で止めるから。帰りな」


 後ろの二人が何も言い出さないからか、親方は閉めた玄関の扉の前で腕を組んで立っている。

 タクとアルテはシノの前に立ち、シノを逃がそうとするが、シノは動こうとしない。


 「………シノ?」

 「りょうしゅめいれい。さからえば、さんぱつやはつぶされる」


 シノはシーブが言わなくても、領主命令に逆らえばどうなるか、ちゃんと予想ができていた。

 詳しい内容を聞いていなかったタクは、そのシノの呟きで顔を怒りに染める。アルテも、貴族の理不尽さに眉をひそめる。


 ―――そうですね、シノにかかわった全員が処刑されてもおかしくないですよ一番簡単で軽度なのはエイファの散髪屋の取り潰しでしょうね


 それでも数ある罰則で一番軽度な物。もしシーブの契約主である旦那様が有数な商家の一員で、かなり乱暴で損得勘定を優先するという性格を知られていたら、もっと別の方法で仕返しされていたとしてもおかしくない。やむなく追放という手段ではなく、その身内の社会的抹殺という方法をとるのだ。

 今回は下れるな主人の徹底した外面に救われたという面もあって、悔しくて言えなかったという面がシーブにあったりするのだが、同然シノはそういうことを知らない。

 そして、そういうことを伝えられなかったシノが中途半端に情報を組み合わせて出した結論と言うのが、散髪屋を潰してシーブとエイファ夫妻を別れさせ、更にエイファを奴隷に落すという、シノにとっては考えたくもない、意趣返しには最上だと思われる考えだった。


 「なにかよう?」

 「おれとあそべ!」

 「わかっ」

 「ダメだシノ! こいつは人殺しを何とも思わないヤバい奴なんだぞ!? 何されるか分かったもんじゃない! 早くここを離れるんだ」

 「狩人見習い風情が。男爵様の御子息に何たる不遜」


 黙ってアキの後ろについていた使用人らきし男は、タクの「アキは人殺し」発言を聞いて、黙っていることができなかったようだ。タクと親方、人伝とは言えシノは知っている(・・・・・)が、この男は知らないのかも知れないとタクは考える。

 腰に付けていた両刃の剣を抜き構える男。躾のなっていない犬、という印象を与えるその男の行動。頭が弱いのは確定的だろう。


 「アキ様、こやつらには一度痛い目を見させた方がよろしいかと」

 「はっ。飼い犬にちゃんと首輪つけておけよ?」

 「ほざけ、ガキが」


 牽制のつもりで抜いたのだろう剣だが、それを歯牙にもかけず、逆に挑発して見せるタクの発言に傍から見ても良くわかるくらい真っ赤に怒る男。

 男の中では、タクが持っているのは木の棒で、鉄で作られた剣の相手にはならないただのおもちゃでしかない。狩人の子供(見習い)であり、大した防御力も抵抗力も、男の目には映らなかった。

 何せ、剣を抜き放っても構えひとつとろうとしないのだ。明らかに舐められている。そう感じた男が剣を走らせたのは必然だっただろう。


 「やれるもんならやってみろよ? 俺に届いてないけど、な」


 タクは確かに男を舐めていた。

 明らかに弱いと侮って、剣をためらいなく振り下ろすその姿を滑稽だと思っていた。何せ、この町で一番強いであろうと言われている男がタクの父親なのだ。

 親方との剣術稽古、むしろ戦闘訓練、をしているタクにとって、この男の剣は、まだ始めたばかりの初心者(アルテ)以下だと感じられた。

 事実、男が振り下ろした剣は空を切り、タクは男が認識する前にいっぽ後ろに下がって避けていた。


 「ちっ」


 確かに切れる軌道だったのに、タクの一歩でそれが叶わなかったと理解した男は、誘われているのにも気が付かずにもう一度切りかかり、タクの持つ木の棒で弾かれる。男は刃が当たって、体重がかかっているのにも関わらず折れない木の棒に目を見開く。

 武器は自身の一部である。

 それは親方から武器の扱い方を習うに当たって、一番初めに言い聞かされることである。武器はただ壊すモノでしかないが、その武器のあり方は持ち主の心によって変わる、それが親方の持論だ。

 だが、タクが相対する男の剣は、どう見ても新品で、手に馴染んだ箇所もないのに、剣の所々に細かい傷が付いていて、ちゃんとしたメンテナンスをしていないばかりか、剣の使い方がどうも荒いことが分かる。

 打ち合うタクの意識があからさまに変わった。


 「アルテ、みるといい」

 「うん?」

 「だいにだんかいクリアには、あれができたほうがいい」


 後ろにいたはずのシノが、いつの間にかアルテの隣に立っていて、アルテは驚く。


 「むしろ止めた方が………」

 「へいき」


 タクを見るシノの目に迷いがないことを見て取って、アルテはタクに目をもどす。

 切りかかる男。

 横殴りな剣は避け、振りかぶる剣はその腹に木の棒をあてて弾く。

 そして、超近距離での剣戟に持ち込んだ男の剣を、タクは受け止めて見せた。


 「え? 木の棒で両刃を受け止めた?」


 タクの木の棒は、傷つきもせず、男の体重がかかっているはずの剣を受け止め、鍔迫り合いに持ち込めていた。


 「きのぼうのまわりに、まりょくをはわせるの」


 シノはアルテにタクが行っていることの解説をする。

 タクは本来ならば真っ向から打ち合うのではなく、最初にやっていたように剣の腹に当てて軌道を逸らすやり方を好む。しかし、男が気に入らない、という理由で、真っ向から迎えうつスタイルに変えたのだが、男からしてみれば高硬度な木の棒で頑張って善戦しようとしているようにしか思えない。

 タクは一度シノとアルテを見て、また剣戟に戻る。

 これをアルテの糧にしようとしたのだ。タクの意志を理解したシノは、アルテに即興でタクがやった事を教える。


 「それってさ、かなり難しいんじゃ………」

 「そう? からだのいちぶだとおもえばいい………たとえば」


 既にシノとアルテは、タクと男の剣戟を見ていない。

 男はそれに激高し、タクは残念そうな目を向ける。自分の糧になるような(つわもの)ではないと理解してしまったのだ。


 「こうすると」


 シノはしゃがんで地面から木の葉を一枚拾い上げ、それを空中へと投げる。

 ひらりひらりと舞い落ちる木の葉に、シノは素早く木の棒を叩きつける。

 しかし、叩きつけたはずの木の葉は折れるわけでもなく、まるで鋭い刃に切られたかのように、真っ直ぐな切り口で二つに分かれ、ひらひらと地面に落ちた。


 「え………」

 「ん」

 「普通の木の棒だ」


 その光景を目の当たりにしたアルテは、突き出された木の棒をシノからおっかなびっくりとしながら受け取り、それがただの木の棒であることを確認し、地面の木の葉もいたって、なんの変哲もない普通の木の葉であることを確認する。

 シノはそれを証明るようにアルテから受け取った木の棒を真っ二つに折って見せ、木の葉を足で踏みつぶす。


 「れんしゅうすればできる」

 「出来るのか………」


 気合一喝、タクの声が聞こえたアルテは行われている剣戟に目をもどす。

 そこでアルテは、男にとっては悪夢のような、子供にとっては夢のような光景を見ることになる。

 男の剣が真っ二つに折れた、いや、切られたのだ。タクの木の棒による、渾身の一撃で。


 この物語は作者のが高まると、方向性が変わる危険があります。

 明日は更新する。

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