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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第一章 幼少期・ガラム
19/113

14 呼ばれて飛び出て

 そういや、ルビの振り方がよくわからない。

 |《》で良いはずなのに、( )表記になる。

 なぜだ………。


 十八話を始めよう!

 三十日。

 それが治療院から知らされた「シノが回復するまで治療術をかけ続ける」とされた時間だった。治療院に必ず数台ある快癒結界が施された、ベッドにシノが横たえられ、目を覚ましたのは十日後。起き上がれるほどに回復したのはさらに三日後。

 普通の人には考えられない程の回復の速さだと言われたが、毎日のように暴力を振るわれていたのにも関わらず、それでも翌日には普通の生活を送っていたシノにしては、今回の傷がどれほど深い物だったかが分かる。


 「シノちゃん、本当に良かったわー! あの人が帰ってきた時は本当にびっくりしたんだから!!」


 面会謝絶の二十日を過ごし、お見舞いに現れたのはシーブとエイファ夫妻。

 二十日でシノはベッドから起き、歩き回れるほどには回復し、固形物も戻さず消化できるようになった。


 「嬢ちゃん、このままでいけばこの町に来る前ぐらい動けるようになるってさ」


 シーブが神父と共にシノのベッドまで寄ってくる。


 「ありがとう、ございます」

 「本当に礼儀正しい娘だね。そんなに畏まらなくていいんだよ?」

 「それが嬢ちゃんのいい所なんだけどな」

 「違いないわね」


 実はシーブ、シノが目覚めてからずっとシノの料理を担当し続けていた為、必然的に神父と酒飲み友達になってしまい、十日たった今では親方を加えて酒を酌み交わす仲にまで発展している。

 さらにシーブが、シノの病人食を作るだけというのも味気ないという事で、教会と孤児院で、材料は教会持ちだが、料理を振る舞うことになり、孤児院の子供たちは期間限定の初めて食べる美味しい料理に顔を輝かせていた。反面やりくりしていた修道女たちは悔しさでいっぱいだったが、町でも評判の料理人の料理が毎日食べられることに舌鼓を打っていたりする。

 逆に屋敷では、シーブの賄いが食べられず、若手の創作料理が賄いに充てられるようになり、阿鼻叫喚の嵐が巻き起こっているのだが、メティオノーラからシノの調子が戻るまで来なくていいと言われているシーブは知る由もない。


 「それで、どうなったの?」

 「それがなぁ………本当に貴族様って感じでよ」


 神父の判断で、精神的な負荷がかかっても、体に大きな影響は出ないだろうという診断が下されたから、森での一件の顛末を話を肴に夫妻は訪れたのだ。


 「結論から言っちまうと、迷子だったって話が消えて、嬢ちゃんに傷を負わせた男爵の息子は正当防衛っていうことになった」


 ほぼ予想通りの結果だったことにシノは頷く。


 「親方とタク君は、森の異変に駆け込んだことにされて、俺は親方の食客として招かれていたことになった。んで、嬢ちゃんなんだが………」

 「ナイフできりかかったことになってる?」


 シーブは苦虫を噛み潰したように顔を歪めて頷く。

 エイファと神父も前もって話を聞いていたのだろう、その理不尽さに怒っていることをまったく隠そうとしていない。

 シノは、皆優しいんだな、と思いながら、先を続けるようにシーブを促す。


 「俺たちは警備隊のお偉いさんに呼ばれて、翌日詰所にいくことになったんだ」


 □■□■□


 警備隊の駐屯所が、警備隊の休憩所であるように、詰所は、簡易の牢屋があったりする警備隊の書類仕事用の建物である。


 「我が家の息子たちが大変迷惑をかけた。申し訳ない」

 「ごめんなさい」

 「すまなかった」


 翌日警備隊の詰所に集まった、タク、親方、シーブの三人に、息子と友人の息子を連れた文長である子爵がやってきて、あいさつもそこそこに頭を下げたのだ。

 前日の奇行さえただの気まぐれだろうと思っていた三人は唖然とし、貴族に頭を下げさせたという事実は警備隊の面々を慌てさせた。


 「今回の件は、全て私たち子爵家の保身のせいで起ったと言われても仕方ない。息子たちは我らの地位を落すまいと、男爵の息子と行動していたのだ。恨むなら息子たちではなく、われらを恨んで欲しい」

 「ち、父上?」

 「おじさま?」

 「お前の父親とも話し合って決めたことだ。今回の件は流石に擁護しきれぬと、侯爵の元まで話を届けてある」


 子爵の子供たちにも、話していなかったのだろう。

 貴族にしておくにはもったいない程潔い人材である子爵に感服する親方とシーブ。彼が誠心誠意仕えている侯爵は、一体どのような人物なのだろう、と考えるタク。


 「俺らは別に恨んじゃいませんよ、その子たちはバカなことをしでかそうとした子供を口先だけとは言え、止めようとして見せたんだ。子供なんだし、それで十分だと考えてる。彼らが問題を起したわけでもないしな。だろう? タク君」


 敬った言葉使いなんて出来ませんよ、と一言言ってから発言するシーブ。それになかなか来ることのない場所に連れて来られて年相応に緊張しながらタクが頷く。

 「恨まない」という内容だが、「止めるなら最後まで止めて見せるべきだったが、子供だもんな、そこまでは期待していないよ」と言われたようで、子供たちは若干へこむ。

 貴族としてのプライドを刺激されたのだろう。このまままっすぐ育ってくれることをこの場の大人たちは期待する。


 「にしても、男爵のとこのガキは遅くねーが? もう太陽が真上に来てるぜ」

 「だ、男爵の御子息であられる、あ、アキ様はいらっしゃいません」


 残りは男爵の息子だけとぼやいたシーブの言葉に、室内で監視の役目をしていたものの一人、年若い警備員の青年がそう答える。

 わざわざ時間を空けてきた面子に睨まれ、顔を青くさせながらも若い警備員は告げる。


 「こ、今回の件に巻き込まれたアキ様は、ゆ、勇敢に戦われ、負った怪我の、よ、養生の為にこの場には訪れず、アキ様に怪我を負わせた、げ、下賤なる小娘に罰を与えよ、との領主命令で、す………」


 最後の方など、聞き取れるか否かというぐらい声が擦れている。

 貴族だからそういってくるだろうと思っていた町民側三人は何とも言えない顔をするだけだったが、貴族側三人はまさか! とでも言わんばかりに驚いて見せた。

 親方やシーブに至っては、これこそ貴族だと頷いて見せる。


 「それは男爵がお前に行ったのか?」


 子爵は胡乱げにその青年をを睨みつけ、返答を求めるが、顔を青くするだけで、さらに緊張して先を続ける。


 「り、領主様の使いの者とおっしゃる方が、ぼ、私に伝えてきました。それと、こ、今回の件は、子供を森へと放った、け、警備隊の森への危険意識の低下も問題視されていまして、い、今回の件の一部始終箝口令を敷くそうです………」

 「なんだと!?」


 今度驚いたのは、その青年の同僚たちだ。

 実は貴族街の東門で警備目的で立っていた男たちには、男爵の息子たちが森へと出かけるのを黙認しろ、と賄賂を受け取っていたのだ。

 だと言うのに、問題が表ざたになるから、警備隊の方が悪いといってくるその言い分には、流石に納得しかねると、青年に詰め寄る同僚たちだが、そう言えと言われただけと青年は捻りもなく繰り返す。


 「もみ消すつもりか………」


 子爵の額には青筋が浮かび、その細い体躯からはなんとも恐ろしい黒々としたオーラが立ち上って見えるのは気のせいではあるまい。

 子供たちは怒られているわけでもないのに、顔を青くして身を縮めている。


 「んー情報屋、呼ぶかー」

 「はい、呼ばれて飛び出て。情報屋です」

 「おいおい、まーた変なところから出てきて………んじゃ、今回の件、話してくれる?」


 喧噪一歩手前、と言った殺伐とした雰囲気の中、料理長が呟いた場の空気を無視した軽い言葉に、部屋の隅に置いてあった水瓶の中から奇抜な色の服を着た、この町では有名な情報屋が顔を出す。


 「前金です」

 「あーじゃあ、これで」


 呆然とするシーブ以外のギャラリーの前で、ポケットから貨幣を出し、指ではじいて情報屋に渡すシーブ。


 「おっと………金貨一枚ですか」


 今度はシーブの出した金額に驚く周囲。すでにさっきまでの殺伐とした雰囲気はこの部屋には無い。

 シーブはとてもいい笑顔で情報屋に微笑みかけ、情報屋はその笑みに顔を引きつらせる。


 「おう。きりきり吐けよ?」


 シノが大怪我を負ったという情報を掴んでいる情報屋。ここで情報を渡せば金になるだろうと踏んでやって来た彼だったが、まさかほぼひと月前に迷惑料として貰った金額の、二十五倍をポンと渡されることは考えていなかったのだ。


 「えーまず、東門の警備隊に賄賂を渡した者ですが、明朝、今朝スラム街で死体となって発見されました」


 警備隊の面々が呻く、

 賄賂をもらった男も、もらった事を昨日の事件を人伝えに聞いてから上司に報告したため、全て後手に回っているのだ。

 さらに言えば、賄賂を渡した者の現状など、繋がりを見つけられていなかったのだから、呻くしかない。


 「既に住民手続きも抹消されています。名もない男がスラム街で野垂れ死に、という報告が上がってくるでしょう」


 スラム街での死体回収は月に一度。

 警備隊の仕事の一つである身元不明の死体回収は、明確な事件性が見つからない場合は全て「野垂れ死に」として処理される。暴行の痕があろうと、バッサリと切り裂かれていたとしても、陥没していても、全て「野垂れ死に」なのである。


 「次にその青年ですが」


 青い顔の青年に全ての視線が集まり、本人はびくっと肩を震わせ俯く。


 「母親が、領主の館で女中の仕事をしています。今朝彼に話を伝えに来た男爵の使用人ですが、彼も「野垂れ死に」しているでしょう」


 母親が人質にとられている事を簡単に勘ぐることができる。


 ―――二階の窓の掃除中に「事故」が起きたら大変ですね?


 そう告げた男の微笑む顔が青年の脳裏に浮かび、その彼も殺されたのだと聞くと、堪えられなくなったのか、更に顔を青くし、同僚に支えられながら口に手を当て部屋から出て行く。


 「最期に勇敢に戦い名誉の傷を負われたとされている男爵の息子ですが、なにか納得が行かなかったのか、今朝使用人の一人を撲殺。取り押さえようとした執事の足を折り、自身も切り傷を折った為、自宅で安静に過ごされています」


 その報告に唖然とし、まだ幼い子供が、人を一人殺しかけた翌日に人殺しをしたという事実に、大人たちは頭を抱え、子供たちは青ざめる。

 一体、男爵家の教育はどうなっているんだと心の中で大人たちは叫んだだろう。


 「あ」


 その沈黙の中で、なにかを思い出したかのように言葉を発した子爵の息子に視線が集まる。

 本人は居心地悪そうに身じろぎ、父親に促されて口を開く。


 「アキ君が言ってたんだ。俺は『勇者』に選ばれたからなにをしても正しいんだって………」

 「あぁ、それ事実です。撲殺した時の言葉なんですが」


 子爵の子供たちが頷くと共に、情報屋が付け足す。


 「正しい『勇者』に逆らうやつは皆悪だ! らしいですよ」


 呻く一同。

 どうやって甘やかされたら、そんな子供になるのかが分からない父親たち。


 ―――さんにんがしんだのはおれのせいじゃないッ!


 そうひと月ほど前に行っていたと、妻から聞いていたシーブは、どこか達観していた。ああ、有り得るかもしれない、と。


 「他に聞きたいこととかあります? 金貨一枚分のサービスはちゃんとしますよ」

 「じゃあ………」


 ある程度情報の概要を聞いたところで、更に詳しく掘り下げられていく質問に淀みなく情報屋は答えていく。

 最後には貴族の子供と同じくらいの給料を出すから、専属の情報屋として働かないかと持ちかける子爵に辟易しながら情報屋は去って行った。


 ■□■□■


 「こんな感じだったな」


 それらを聞いたシノは、言われたことを反芻し、自分の物にした後、シーブの目を見て、聞く。


 「わたしへの、ばつ、は?」

 「その後も精一杯抵抗はしたんだがな。とりあえず処刑と奴隷落ちは免れた」

 「ん」


 住民登録がなされていないから、処刑も奴隷落ちも正式にはできないのだが、子爵の協力もあって、シノの存在そのものを調べられるのを回避したのだ。


 「じゃあ、ふくじゅう?」

 「いや、簡単に言えば「貴族に逆らわない」だな」

 「あそびあいて?」

 「ああ、暴力付の、な」


 エイファの額には青筋が浮かび、シーブの拳は怒りで白くなっている。


 「なんとか治療院には来させないようにしたから。何があろうと三十日はここを出ないでくれ」


 三十日を越えたら治療院にとどまることはできない。

 何とも頼りない言葉だが、シノにとって暴力を振るわれるのはほぼ日常と化している為、シーブが思うように悔しいとか悲しいとか思ったりすることはない。ただ、治療院から出たら幸せな時間が終わり、奴隷よりも酷い日常に戻るだけのこと。


 「ありがとう」


 シノのお礼の言葉に、なんと返していいか分からなかったシーブは、悔し涙を飲み込んだ。


 「そうだ! シノちゃんはもうご飯食べれるのよね? いまからこの人と作ってくるから待ってて! どびっきり美味しい料理を食べましょう!!」


 エイファはそう言ってシーブをその場から連れ出す。


 「ちょっと! シノちゃんは簡単に勘づくわよ1?」

 「分かってるよ………」


 教会の厨房で、そんな会話がなされる。


 「大丈夫よ。あの旦那が帰ってくるまでまだひと月半あるじゃない。その間、なるべく外に出ないようにメティさんに協力してもらえば」

 「そうなんだが………もし出てしまったら? 今度こそ嬢ちゃんは………」


 シーブの腕には、どんどん冷たくなるシノの体の感触が残っている。


 「不吉なこと考えないで頂戴!」

 「………」

 「そうなったときの為に日々努力してるんでしょ? 私の治癒術で完治したからいいものの、あの日のあなたの左足、ぐちゅぐちゅだったじゃない」

 「………」

 「最悪を予想するのは良いけど、最悪に囚われたら最悪にしかならないのよ!」


 悪い方向ばかり向いていたら、悪いことしか思い浮かばない。

 もともと考え込んでしまう性質のシーブは、エイファと出会うまで、最悪を回避する為だけに生きてきた。

 生まれてから数十年培った考え方はそう簡単には変わらない。


 「………そうだな。今は先のことを考えるべきだな」

 「そうよ! まずは目先のこと! シノちゃんに美味しいって言われる料理を作るのよ!!」 

 「んな無茶な」

 「最悪を予想し終わったら最善を予想しなきゃ。もちろん最高でもいいけど?」

 「ははは………ガンバリマス」

 「じゃ、私はシノちゃんとお話ししてくるわね! シーノーちゃーん!!」


 駆けて行った妻の背を見つめながら、いい(ひと)に巡り合えた、とシーブは思い、調理を開始する。

 最近思った。

 評価と感想が切実に欲しい。

 処女作がコレな分、次回につなげる要素が欲しい。


 って友人に行ったら

 友「面白くないと評価しないよ?」

 自「え?」

 友「趣味は趣味のままでいいじゃん」

 自「ん?読んではくれてんの?」

 友「ああ、読んでるよ」

 自「評価してよ!」

 友「いつも口で言ってるからいいじゃん」

 自「記録って大切!」

 友「面倒」


 って断られた(;一ェ一)

 明日更新したいです


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