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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第一章 幼少期・ガラム
15/113

10 森での食事事情

 注意!

  今回ちょっとグロイかも。

  お食事しながら見るのは止めてください。


 十四話はじまるよー

 シノとタクは仲がいい。

 シノは通常屋敷に軟禁されている為、町の子供たちと会うことさえなければ、誰かと話をすることさえない。シーブの家に泊まった日でも、行くのは南の森か、タクがいるであろう場所か、クロを森に散歩にでも連れ出すことだけである。

 タクは南の森の狩人の息子。父親のおかげで少しは町民かの態度が軟化したとは言え、なくなったわけではないのが現状。町を歩いて石をぶつけられることは無いが、視線は突き刺さるし、残酷なほど素直な子供たちからは軽蔑される。

 そんな二人が仲良くなるまで、出逢ってからさほど時間は必要なかったのだ。


 「親父、シノと森入ってくる」

 「タクにいちゃんかりる」

 「おう」


 狩人の仕事は、町で賄う分の肉の確保。

 毎日狩る必要はないが、肉の解体から成熟までやることは様々あるし、他にも南の森で木を切ったり薪を作ったりと忙しい。

 近場で狩りを行うことは殆どなく、大抵は遠くまで行きその場で解体して持って帰る。当然数日遠出することになるし、その後は森を出ず木と共に過ごす。

 そんな父親と生活を共にするタクがやることのほとんどは家事やお使いで、今日は斧の修理が終わって朝一番で鍛冶屋に行き大斧を受け取るというお使いを済ませた為、一日中空いているのだ。


 「シノ、どこに行くつもりなんだ?」


 クロに跨り、タクは腕の中にすっぽりと入っているシノに話しかける。


 「クロのいきたいところ」


 まだ仔馬であるはずのクロだが、子供二人を乗せて走るくらいには強靭な体を持っている。二人はそんなクロの上に厚めの布を引き、振動を殺して乗っている。

 シノは関係なしにのれるのだが、慣れないタクはこういう布を引かないと上手く乗れないのだ。


 「うわっと」

 「つかまって? おちちゃうよ」


 かなりの速さでクロは駆ける。

 タクはバランスを取り損ねて落ちかけるが、シノが上手く支えたことで落ちるのを防いだ。シノはクロの鬣を掴み、タクはシノをしっかりと掴み、二人と一頭は森の奥へと進んでいく。

 普段全力で駆けることができないクロは、この機会をかなり楽しみにしていたのだろう。上にのっている二人もなんとなく分かる。


 「にしても、良く馬具なしで乗れるな、シノは」 

 「ひつようない」

 「俺はこの状態でもきついけどな」

 「つかまって? もっとはやくはしるみたい」

 「うそっ!?」


 クロは嘶き、更に速度を増していく。

 遠目に見たら黒い物体がものすごい勢いで通り過ぎたように見えるかも知れない。

 タクは腕の中にいるシノにしがみついて酔いを懸命にこらえる。反対にシノは平然とクロの鬣を掴んで乗っている、

 クロが目的地に着いたとき、耐えられなかったタクが急いで降り、目の前の川に吐いたのは仕方のないことだろう。

 シノもクロから降りると、冷静にクロの首から下げていた荷物を外し、地面に置く。身軽になったクロは川で水を飲み、そのあたりに自生している草を食む。


 「クロ、ありがとう」


 クロはシノの側で横たわり、シノに気持ちよさそうに撫でられている。

 タクもこの場所に来た当初より顔色がよくなり、腰に付けていた短剣を振りまわして感覚の確認をしている。


 「なぁ、シノ。ここって、山麓の近く?」

 「ん」

 「ってことは、俺がこの間二日かけてきたとこまで来ちまったのかよ………」


 クロの普通ではない進行速度に頭を抱えて唸るタク。

 徒歩で二日かかるところを、クロは荷物を載せて数時間で踏破したのだ。二日の中には休憩時間や野営時間など含まれているが、最低一日は歩いているというのに、だ。なんだか損をした気分になっているタクである。


 「そうだ、飯」

 「コンロとなべと、パンがある」


 一日二食が通常なのだが、こういう遠征をした時は、お昼ごろに軽食を挟むことが多い。遊びに来ているはずなのだが、毎回タクが吐くので持ってくるようになったと言うのが本音である。


 「狩れってか」

 「ゆみつくる?」

 「いや、自分で作れるから大丈夫」

 「クロつかう?」

 「んー馬上で撃つのは得意じゃないからな………一応練習はしてみたいな」


 タクがクロを見ると、クロはあからさまに顔を背ける。

 絶対にこいつ言葉が分かってる、とタクは確信しているが、どうやらそれがシノにばれたくないようで、タクの意見には行動しなくても、シノが言えばどんなことでもしてみせるクロ。それじゃあばれるんじゃないか? と思いつつ、温かくタクは温かく見守っている。


 「クロ、タクにいちゃんといっておいで」

 「うぉっ、ったく、行動早いな。宜しく、相棒」


 持ってきた荷物の中身を全て地面に投げ出し、その革製のカバンを鞍に見立てて、カバンをクロの首に括り付けていた紐を手綱代わりにクロに結びつけ、タクに渡す。

 慣れたタクも手綱を握り、弓矢を作れる木を探しにクロと駆けて行った。


 「おやさい、あつめないと」


 二人を見送り、足元に転がった様々な道具を一か所にまとめ、周囲を見渡す。

 ここまでくるうちにいくつが拾っておいた魔物が嫌う臭いを発する果物を周囲にばらまき、何度が足で踏みつけ周囲を歩き回る。魔物避けや猛獣避けにも使われる臭いがそこらじゅうに散らばる。

 シノはその臭いに満足すると、腰元の袋を確認し、その場から離れる。

 森には一般的に葉野菜と呼ばれるような葉っぱが食べれる野菜はなかなか自生していないが、腐りかけの木の近くには傘のようなものが生えているし、水中や水辺には茎と一緒に食べられる草が自生している。


 「なににしようかな」


 狩人として森を知っているタクは、どこにどういう動物が生息しているか、森にある食べられる物と食べられない物の区別とかはできる。それらは動物を捕獲する為に父親から教わった知識の一種。狩人の知識である為、大雑把としていて、野営、家事にはあまり向いていない知識だ。しかも父親もは多くを話すような人では無い為、どれがどう美味しいのか、どの草が食用に適しているか、という事にはほとんど無知と言ってもいいだろう。


 「みずべはミールがたくさん」


 逆にシノは、薬師であった母から、実際の森で実地訓練を受けたわけではないが、食べられるもの、傷に効くもの、食べたら危ない物など、どういう場所に生えているか、と言う観点からそれはもう丁寧に沢山の知識を詰め込まれている。

 最低限の環境が整えば、簡単な薬が調合できる程度には知識を持っているのだ。


 「あ、ファマンあった」


 ファマンとは高山地帯に生えていて、種が香辛料になる、木にまきついて育つ植物だ。普通に店で販売しているものだが、高い山の、それもきれいな水辺の近くでしか育たない為、少々高価である。

 シノはファマンが巻き付いている木の下で、落ちているファマンの種を探す。

 このファマン、調理の香辛料としても、薬師の薬剤としても有用な優秀な実である。この実は、最初のうちは黄色く、熟すと透き通るような青に変色する。黄色い状態で収穫して完全に乾燥させたもの、黄色い状態で収穫して少し乾燥させたもの、青の状態で収穫して乾燥させたもの、青の状態で収穫して乾燥させ、表面の皮を剥いで黒くしたものの四種類の味が存在する。

 今回シノが探すのは、木の下に落ちているそれなりに乾燥しているもの。


 「うん、これだけあればいいかな?」


 地面に落ちていた黄色い実が沢山ついた房を拾い上げ、それがすこし乾燥して固くなっているのを確認すると、持ってきた袋の中に詰め込む。

 そこがファマンの群生地だったようで、シノは黄と青の実をそれなりに蔦を残した状態で懐のナイフで切り取り、数本で円を作って腰に下げている袋に結び付ける。


 「ほかには………ここいっぱい」


 ファマンが十分すぎるほど集まった所で、シノは食料さがしを続行させる。

 途中で香草の群体を見つけてしまい、袋に結び付けたファマンの蔦の周りには香草やら薬草やら、様々な葉っぱが結び付けられている。

 少しでも保存がきく様に歩いている間も乾燥させようと言う魂胆だ。


 「ん。ヴィーラ………テテ?」


 腐った木に生える傘のような植物を探しているがなかなか見つからず、まっすぐ生え、中に水を溜めこむ性質があるヴィーラの群生地帯に入ってしまう。

 ヴィーラの根本にはふわふわした食感のヴィーラの幼生体であるヴィーがあるはずだが、かなり長い間水にさらしておかないと食べられたものではなくなるので今回はスルー。

 その代り、ヴィーラの群生地を抜けたところに、テテが何本が見つかった。

 テテは葉っぱも食べられるし、根っこも食べられる。ただし葉っぱは煮物には向かない。白い根っこは切ると緑色の線が入っていて、切り方によって模様が現れることから見た目が良いとして身分関係なく気に入られている野菜である。


 「いいもようのテテだといいな」


 模様は千差万別で、あたりとはずれを決めて、引っこ抜いて切ってみて勝ち負けを決めるなどと言う遊びも流行った。今でも農民の子供はやっている。


 「ほか………あ、ダルタル」


 周囲に目を凝らすと、動く物体を目にとらえる。

 それは一般的に植物魔物や、自走植物、植物と対比して食物などと呼ばれるもの。体内に魔核がないものの、魔力だまりで非常に強い魔力をため込んでしまって生まれた植物であり、それなりに美味しいが同様に攻撃も仕掛けてくる厄介な植物である。

 旅の非常食とも呼ばれる植物で、町の中で暮らすような人が見ることはめったにない。


 「んーあぶないからやめよ」


 基本的に自己防衛本能が強く、薬にも毒にもなると言うか、物理的な抵抗手段を持っている植物が多い。

 ダルダルは敵を認識すると、走ってきてその動物の頭を握りつぶす。握りつぶすというより、押しつぶすと言った方が合っているかもしれない。

 その形は円形で、真ん中に空洞があり、内側を中心に伸びている触手は半透明で

ヌルヌルとしており、攻撃するときは跳ね上がり空洞に相手の体の一部を入れ、その触手で(くび)り殺したりする。緑色の体表をしたものは温厚的で攻撃を仕掛けなければ寄ってこないが、赤い体表をしたものだと好戦的で食おうとやってくる。

 あぶないと言われるこの自走植物たちだが、魔物の討伐もやってくれるので、町にいる者にとっては益しかもたらさない、感謝されているものだったりする。

 飛竜(ワイバーン)を狩りに行った冒険者が、飛竜を食い物にしていた自走植物に食われたという話もあって、旅をする者には少々笑えない存在であるが。


 「そろそろもどらないと、もどってくるかな?」


 帰ってきたときに元居た場所に居ないと、絶対に心配して駆け回る一人と一頭。

 シノは来た道を戻りながら、熱を通せば柔らかくなる食用の葉の若芽を摘んだり、そこらへんに生えている根菜を引っこ抜きながら、鍋をそのまま置いている川辺へと帰って行く。

 川辺は出発した時からなんの変化もなく、とりあえず鍋に水を汲んで火の術式が描いてある魔石をコンロにセットして火をつけ、その上に鍋をのせ沸騰させる。川で採ってきた野菜を洗い泥を落す。綺麗になった根菜をナイフで切って沸騰させたお湯へと突っ込む。


 「た、ただいま………」


 丁度いい時にクロの背に跨ってぐったりとした様子のタクが帰ってきた。

 手には血抜きを済ませた毛長種の兎(ロブ)が、三羽程握られている。


 「ロブがさんわ」

 「ああ、練習になったよ………」


 それぞれ眉間に一発しか傷跡がないため、本当に馬上で弓を射る練習をしてきたのが窺える。地上だと百発百中のタクの弓の腕だが、馬上だと当たるか当たらないかで五分になり、当たると眉間を打ち抜くという素晴らしい結果を出す。

 最初クロにのって弓を射った時は、反動で馬上から転がり落ちていたことを考えると、ずいぶんと上達したものである。


 「おつかれ、あとはやる」

 「ありがと………ちょっとあっちで休んでるね」

 「ん」


 タクはロブをシノに渡し、青い顔のまま木陰で休む。クロはわれ関せずと器用に馬具もどきを外し木にかけると、周囲を自由に走り回っている。

 シノは渡されたロブの解体に移る。

 後ろ脚を切落とし、数か所切込みを入れ、引っ張って皮を剥がし、前足先と頭が残った状態で三羽とも蔦で縛り、川で晒す。内臓を使うのはいろいろと面倒なので、骨と肉に分け、蔦で作った網の様な物に少し肉のこびりついた骨をさっと川で洗い、煮立っているお湯にぶち込む。その間に肉を一口サイズにカットして、ファマンを潰したものや、他の細切れにした香草で和えてしばらく放置。


 「何か手伝う?」

 「ないぞう、あなほり」

 「ああ、内臓を捨てる穴ね。掘ってくるよ」


 タクが川辺で適当な石を見つけて木の下を掘り始める。

 シノはコンロの火を止め、川から三羽のロブを取り出す。今度は頭の先まで皮を剥がし、脳を取り出す。コップに入れた脳を木の棒でつぶし、水と混ぜて放置。


 「シノ、掘った」

 「はい、これ」

 「内臓と頭と足………骨は?」

 「もうすぐわたす」

 「分かった」


 調合をそつなくこなすシノの手先はかなり器用だ。少なくとも本業のタクがうらやましがるくらいはなめすのが上手い。

 岩で皮を乾かしながら付いている肉を薄皮と共に剥がし、毛がある程度乾燥するのを待つ間に、骨を鍋から取り出しタクに渡し、肉を鍋の中にぶち込んだ。

 コンロの火をつけ、煮立ったら水と葉っぱを入れて蓋をして放置。

 なんとなく乾いてきたロブの内側の皮に良く撹拌した脳水を何回かに分けて三枚に塗り、脳水が無くなったところで皮を二つ折にして岩陰に放置した。


 「もう食える?」

 「ん、あとすこし」


 やることあんまり無かったな、と苦笑しながらタクはシノからナイフを受け取る。


 「研いでおくよ。なめした後はちゃんとメンテしとかないと錆びるし」

 「あとすこしだよ?」

 「そんな時間かかんねーし。本業なめんな」

 「ん、まかせる」


 タクはポケットに入れてある砥石でナイフを研いでいく。研いでいる時間よりも刃先を確認している時間の方が長いが、そこは慣れで解決するしかない問題だ。

 むしろ子供で、親の仕事を完全に手伝える状態にある方がこの国じゃおかしいのだ。

 終わるころになると、シノは洗い終えたコップに作ったスープを入れる。


 「タクにいちゃん、できた」

 「ほぉ」


 具がたっぷり入ったスープとパン。とてもおいしそうな匂いがその場に漂う。


 「ほんと、シノと一緒に森で食事すると、森で食ってる気がしねーや」

 「ありがと」


 軽くコンロでパンを炙り、スープに浸して食べる。食器などは持ってきていないから使うのは綺麗に削った木の棒だ。

 いつも言葉では示さないが、シノの料理を楽しみにしている父親の為に、二杯分をヴィーラで作った水筒に移し、水の入った水筒と共に縛ると肩にかけるタク。

 談笑というほど会話があるわけではないが、鍋に入っている分をきっちり食べ終えた二人は鍋とコップを洗い、きっちりと水気を切って他のものと一緒にカバンの中に収納する。皮になったロブも中に入っている。


 「さて、そろそろ帰らなきゃな」

 「クロ」


 タクの提案にシノは頷き、クロの名前を呼ぶ。

 明らかに近くにいなかったと思われるクロだが、シノの一言だけで姿を現すクロ。その忠誠心に呆れながらも、タクはまたクロの超特急にのらなくてはならないのだとため息を吐く。

 黒が頭を下げてカバンを首にかけ、厚めの布を背に乗せ、シノとタクがそこに乗る。


 「しゅっぱつ」


 タクは吐きませんように、と心の中で祈りながら、シノを抱えるようにして体を固定する。

 数時間この超特急に揺られるのだ。心構えはしておいたところで無駄なことではない。

 行きよりもゆっくりとした、それでも普通の馬の行軍より遅いが、クロの足並みは町が近づくごとに遅くなっていくのが常なのだが、今回はそれがあまりにも早かった。

 いやー書くならやんなきゃってことで剥ぎ取りやってみたけど、大変だね!

 毛皮はもふもふになりませんでした……


 また挑戦してやる!


 明日も更新更新!

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