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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
五章 少女期・国越え
101/113

06 Dランク昇格試験 前編

ゲームが題材となったアニメが始まると友人に話して持っていたら貸してもらったりするんですが、ほんとシュミレーションゲームには弱いです。

育てゲーなんかは大体飽きるまで三ヶ月間ぐらいは持つのでメインストーリークリアや図鑑完成、武器完備までやってお蔵入りするんですが、シュミレーションゲームは、台詞に共感できなさすぎてやばい。

とにかく飽き性をどうにかしなくては周回なんぞできやしない。


では、本編、始まります。

 Dランク昇格試験を担当する彼女が「私は今回昇格試験を担当させていただくギルド職員のデリアードです。一切戦闘に関わるつもりはありませんが、全て見て私の一存で昇格するかどうかを決めさせてもらうのでご了承ください」との発言の後、シノの反対側の少年に目が向けられた。


 「あ、俺?」

 「どうぞ」

 「俺はカイラ! 武器は片手剣。特に決まった戦い方はないけど、だいたい攻めてる!」


 錆色の少年カイラは、そう言って腰元にあるまだ使い古されてない武器に手を添える。


 「兄ちゃんと姉ちゃんがやってるパーティーで扱かれてるだけだから、誰かの補助に入ったりって言う連携を取るのは苦手かも。えっと、よろしくお願いします」


 元気よくガバッと頭を下げて終わるが、勢いよく頭を上げた反動でふらつき膝をぶつけて悶絶している。

 随分と明るい者なのだと言うことが良くも悪くも全員に伝わった。


 「俺か」

 「はい」

 「名前はミズ。基本的に武器は近接ものならなんでも使えるが、罠を仕掛けたりするのが得意だ。試験の時は両手剣を持ちこもうと思う」


 紫紺の髪が揺れる。

 罠を仕掛けるのが得意であれば、相手と場所が分かっている今回の状況下でかなりの戦力になることが望める。


 「まぁ、宜しく」


 言葉少なに席に座る青年。

 手元にある本を視れば、ここらの山の植生について書いてある本。

 予習はしている、ということなのだろう。


 「私はミーシャ。武器は扱わないわ。攻撃魔法が得意よ」


 ドレスを着た女性が立ち上がり全員を見下ろしながらそう言う。


 「後ろで支えるなら任せなさい。その程度ならしてあげなくもないわ」


 執事らしき者が引いた椅子に座りなおすと、次の者に目をやる。


 「俺か! 俺はウーラ。お師匠様の命令でD今回受けることに」

 「関係ないことは喋るなバカ弟子」


 いい音で叩かれて前に転びそうになるが、よく鍛えてるのか転ばずに師匠に言葉で噛みつく。


 「っ痛(はた)くなよ、アホ師匠! えっと、武器はこの手甲で近接格闘で、攻撃は受け流すのが基本で受けたことはないかな。それと剣を使って戦う人とパーティーを組んだこととかない」


 とにかくよろしく! と元気にあいさつをして次に移る。

 次の少年は目の前で起きた寸劇に呆然としていたが、視線が自分に集まっていることを感じて急いで立ち上がり自己紹介をする。


 「ぼ、ぼくですね。えっと、武器はこの大杖で、魔法が得意です。い、一応、棒術が使えます………よろしく、おねがいしゃます」


 顔を真っ赤にして席に沈む少年。

 緊張で噛んでいる、と言うよりも田舎から出てきてそのなまりが出ないようにしているだけ、という印象を受けた。少し抑揚の付け方が違ったのだ。


「で、名前は?」


ミーシャの呆れたようなツッコミにガタッと席を立ち上がり、消え入りそうだが一応全員に聞こえる声で「メイ、です……」と言ってまた真っ赤になった。

座り込んだメイからは蒸気が出そうだが、訛りに関しても感じ取っていたも者は多く、何にも考えていなかった者も居るが特に何も言われることなく次へ視線は移る。


 「あん? 俺ね。名前はサズ。武器は片手剣と盾。あんたらみたいに裕福で何不自由ない生活してきてないから、戦闘に関しては出来る方だと思うよ。仲良しこよしとか、よろしくするつもりはないから」

 「なぁ、あとで俺と勝負しないか? っ痛」

 「まだ紹介が最後まで済んでない。黙っとれ」

 「勝負に関しては別にいいよ。明日に響かないってお前が約束できんなら」

 「うし! 終ったらギルド演習場でやろう!」


 半数の苦笑を誘発したその微笑ましいような会話はウーラの師匠の拳で途切れる。


 「黙ったから次に行ってくれ」

 「あははは………」


 机に罅が入っているが、デリアードに師匠さんは先を促しデリアードは引きつった笑みを浮かべる。

 机に突っ伏したウーラはピクリとも動かない。


 「シノ。ナイフを使う。だいたい何でも、できる」


 シノは少し立ってそれだけ言って座る。

 スペーラは苦笑気味だが、あまりのそっけなさに他の面々が呆然とする。顕著なのが隣のサズと反対側のカイラである。


 「女の子だったのか………」

 「妖精族のハーフとかか? 子供なわけないよな………」

 「君、何歳?」


 メイが、シノの灰色のケープの下を覗き込むようにして問う。


 「もうすぐ十歳」

 「なら昇格試験受けられないだろうが。規定だと確か十歳からだったはず」

 「そこは私から説明します。シノさん、いいですね」

 「ん」


 問う、と言うより断定だったが、一応振られた為頷くシノ。

 どうせひと月しかいないのだし、この場で話されるだけならば対して問題ではないだろうと判断してのことだ。


 「規定ではDランクは十歳からとなっています。今度いつDランク昇格試験が行われるか分からない為、推定Dランクの称号を与える為に今回の昇格試験に彼女をねじ込みました。思う所はあると思いますが、彼女の実力に関してはギルドの職員が保障しています」


 ミーシャの目が獲物を狙うようにわずかに光る。

 ミズもデリアードから目を逸らしてシノを見つめ、僅かに目を細める。


 「聞いてもいいか?」

 「はい」

 「いや、その嬢ちゃんに、だ」

 「何?」


 ウーラの師匠は目を細めてシノを見つめる。

 深く被ったケープのフードを下ろさない為、周りから見えるのは金茶の髪と口元だけだ。


 「何が出来る? もちろん戦力として、だ」

 「魔植物単独撃破、あとは調合」


 すぐに答えたシノ。

 本当かとデリアードに目線を向ければ苦笑しながらも頷く。


 「そうか。戦力としては問題ないって訳だ。年齢が邪魔した口だな」


 ウーラの師匠は頷き、カイラの兄姉は驚きで目を見開く。

 前者はそう言う例を何度か聞き、実際に見たことがあるからの反応であろう。

 後者はただ単に魔植物の単独撃破に信じられないと思ってのこと。

 ミーシャとその執事、更にミズとまだ潰れているウーラ以外は、言われている意味がいまいちよく分からないと首を傾げたり顔を顰めたりしている。


 「それだけの能力があるなら、我が家に仕えなさいな」


 ミーシャが言う。


 「空虚な後ろ盾、要らない」


 シノが返す。

 ミーシャは一瞬驚いたように目を開き、ただミーシャの後ろで立っていた執事がシノを見る。直にその視線は前に戻ってしまったが、スペーラは背筋にちょっとした悪寒が走りケープの中で腕を抱きしめた。


 「はい。自己紹介も終わったので、作戦会議を始めてください。なくても問題ないですが、決めておいた方が便利ですよ。終わったら随時解散、集合は明日の早朝正門前です」


 Dランク昇格試験に置いて、パーティーとしての連携は求められていない。

 一番求められているのは、討伐対象となっている盗賊に対して、感情的にならずに処理できるかと言うこと。例え親兄弟姉妹縁者が囚われていてそれ相応の対応を受けていても、冷静に対処できるか、感情を前面に出して対処することすら困難な状況を作り出してしまわないか。甘さだけではなく、苦汁を飲むことができるかどうか。

 そして、盗賊を、同族の者としてみることができるかどうか。


 「さて、どうする?」


 精神的にも肉体的にも年齢が一番上のミズが率先して問いかける。


 「私は後方支援しかするつもりありませんから」


 ミーシャはふいっと顔をそむける。


 「俺、なれ合うつもりないから。じゃー明日ー」

 「待てよ! 俺との勝負があるだろ!」

 「ちっ」


 ひらひらと手を振りながら去ろうとするサズ。

 復活したウーラによって止められるが、それよりも、とメイが口を出す。


 「あの移動手段とか、盗賊さんがどこにいるかとか、聞いてないんですけど………誰か知ってます?」


 知っていると頷いたのはミズとミーシャ、それにシノ。


 「そ、それと、移動手段とか………ご、ごめんなしゃぃ」


 サズの視線が怖くなったのか俯いてプルプルと震えるメイ。


 「移動手段の確保、討伐対象の情報、パーティーで動くからには、最低限の統一を計らないとやっていけない………何て、講習会で言われたが、頷かなかった三人は覚えてなかったのか?」


 後ろに居る兄姉を振り返るカイラだが、首を横に振られて少し泣きそうになっている。

 メイも今思い出しただけで詳しいことは何も聞いていないといい、情報を出してくれないかと頭を下げる。それに応じるのはミズだった。

 喋ろうとしないシノと、明らかに見下しているミーシャと、であれば、ミズが出てくるのは当然だろう。


 「盗賊の集団は二つ山の向こうの洞窟を塒にしているらしい。移動手段は馬を考えているが、もし盗賊が売り払わずに物資を貯めこんでいた場合俺らの頭数で割ることになる。移動手段に馬車を加えるかどうかは全員で考えるべきだ。馬の速さよりも早く山を駆けられるなら要らないだろうがな」


 ちらりとシノを見てくる。

 以前あったことがあるかと首を傾げるが、シノの記憶にミズは居ない。もしかしたら他の『夢』の者を見たのかもしれないと考えて、思考を止める。

 助けてと言う怨叉が頭の中で響きそうだったから。


 「それに、物資の他に人を囲っている可能性もある。近場に村があるが、その村は盗賊と交易をしているかもしれない。あとはそうだな、盗賊を生かして捕え奴隷に落とすか、殺して永遠の安らぎに逝かせるか、選んでおいた方が良いかもしれないな」


 罪を犯した者にとって、罪を冒したと言う意識がある場合、生かして罪を償わせるのが一番だ。もちろん『所有印』という契約があり、心眼の玉という嘘か真か判断できる秘宝があるから出来る事であるが。

 結局馬を持っているのはミズと貴族のミーシャ、それにウーラとシノで、メイとサズ、カイラは乗馬をしたことがないとのことで、ミーシャが馬車を貸し、馬はギルドから二頭借りることになった。


 「盗賊の一日は大抵遅い。大きい団になると情報専門で街で暮らす盗賊が居たりするが、試験になるような盗賊であればそんなことはないだろう。そうなると商隊が街道を通る昼前頃に合わせて活動を始めるはずだ。明日は馬持ちが斥候して洞窟の大きさの確認と人数の確認だな。少し離れた所に休憩所を作って作戦会議してから昼過ぎに偵察、夕方に突撃、が一番普通か?」


 眼をやった先に居るのはミーシャ。


 「いいんじゃないの? どうせ何も考えず突進しようとした馬鹿どもが居ることだし、それ以上にいい考えを出すとしたら………いえ、別にいいわ。それで話は終わりね、ごきげんようまた明日、お会いしましょう?」


 ミーシャは一瞬シノを見たが、瞼を落としそのまま一礼して執事を引きつれ会議室を出て行った。


 「それじゃ、君らも遅れないように。俺は準備して帰るからここで」


 ミズも会議室を出ていく。

 それからはぞろぞろと騒ぎながら会議室を出て行き、結局シノとスペーラだけが会議室に残された。


 「シノ様、帰りましょう夕飯を食べて早く寝ないと、明日の動きが散漫になってしまうかもしれません」


 ちなみに、一度だけシノはスペーラの目の前でクロから落馬したことがある。

 持ち前の運動神経の良さのおかげで特に大きな怪我をしたと言うことはなかったが、徹夜を三日続けて注意力散漫になると、何も考えられなくなって寝てしまうのはシノの特質だとスペーラは認識している。クロに乗り闇をかなりの速さで駆けながらその鞍の上で寝扱けるなんて、スペーラにはできないが。


 「ん………帰ろう」


 シノは椅子から飛び降りて会議室を後にする。

 スペーラがBランクの昇格試験を受ける手続きをしている間、酒場で突っかかってきた大男を手懐けて遊んでいると、スペーラが返って来て綺麗にした宿舎に帰る。


 「一体何をやったんですか………」

 「ん?」

 「いえ、さっきの大男さんは、冒険者? ですよね」

 「ん。果実水を馬鹿にした、から」

 「あー………」


 ご愁傷様と、心の中で追悼の祈りを捧げるスペーラ。

 あの黒歴史になったであろう大男が再び冒険者としてやっていけるようになるまで回復することをひたすらに願うばかりである。


 「そう言えば、野菜とか買って行った方が良いんじゃないですか?」

 「いらない。出させる」

 「それもそうですね」


 シノがいつも料理で使っている物は基本的に貴族に取引されるほどお高い物で、山に自生していた物をシノが採集して使えるようにしているだけだ。その調味料を出すだけでも、普通の金銭価値にあてはめれば大衆食堂が買える(・・・)


 「あ、帰ってきた」


 そんなこんな話していると、宿舎の前で二人の男性が待っていた。

 一人は門の所でシノたちの応対をした者、もう一人は宿舎へ案内をした者。二人とも武装を外し、普段着らしいものを身に着けている。


 「やあ、彼から食事に招待してくれるって聞いてね」

 「ん。野菜」

 「はは。だろうと思って持って来たよ。足りるかな?」


 地面に置いていた袋の中にはゴロゴロと野菜が入っている。

 シノは袋の入口を開けて中身を確認すると、頷く。


 「………十分」

 「ならよかった」


 笑った彼が、「俺のことはルドと呼んでくれ」と言ったので、案内した者が「自分がオワだよ」と言う。


 「名前も言ってなかったのか………」

 「いやー、例えルドさんの紹介でも帰ると思ってたんで」

 「ん? 今泊まれる宿舎で何も言わず帰るような場所なんてあったか?」

 「え? あ………」


 さーっと分かりやすく顔を青くさせるオワに、ルドは呆れたような目を向ける。


 「すまないな。どうやらこちらのミスがあったようだ。今なら別の宿舎を紹介するが」

 「いい。平気。改造した」

 「ほう?」

 「彼が二階の改造の許可を出してくれまして、そのあとで改造に関することの責任は全て取るとの言質も取ってますよ」


 叱ってから行くというルドと、助けてくれと目線で訴えるオワをその場に置いて宿舎に帰る。

 知らずのうちにクロが厩舎を出て周囲を警戒していたのか、いくつかの視線が集まってくるが、その全てを無視して一回の調理場へと入る。


 「うっ………」

 「………」


 調理場の惨状もそれはもう素晴らしく。


 「掃除」

 「そう、ですね」

 「全部、流す」

 「え゛」

 「『“Aqua” quasi ad repraesentandum cffectum expectationem. Purgato.』」


 シノが居る場所からあふれるように水が出、部屋の床や壁、天井まで全てを這った後、汚れと共に邪魔な物品全てを外へと掃きだした。


 「『“Ignis” quasi ad repraesentandum cffectum expectationem. Siccatio.』」


 その部屋の気温が一気に上がったと思うと、一瞬で発生した白い煙と少し先が歪んで見えるほどの熱気に覆われ、それも外へ出て行った時には、綺麗とはお世辞にも言えないが、ところどころ変形しているもののもとの金属の台が見えるような状態まで復元はされた。焦げや油は表面に浮き、きっと布でふき取ればそれなりな状態に戻るかもしれない。


 「えーっと、拭きましょうか」

 「ん」


 スペーラが拭き終わり、シノが料理を作り、二階へ持ち込む頃には、いろいろと驚いたルドと再び呆れたオワが居て。四人で食べる料理は、とてもおいしかった、ようです。

現代魔術よりも、調合魔術の方が弱い。

弱いが、注いだ魔力量によってその威力は大きく変わる。

どんな料理を作ったかは、ご想像にお任せしませう。


熱い夏にご注意を。

また次回!

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