05 改造は徹底的に
シーチキンの、フレークじゃなくてファンシーの方が好きなんですが、
ご飯とみそ汁用意して、ファンシー(オリーブ油漬け)の缶の蓋を取って酒と醤油を適量ぶち込んで食べるのが好きです。
塩分過多な為、たまにしか食べられませんが。
魚は好きだけど、肉の方が安いからなぁ………
さて、今日も本編どうぞー
数匹の虫ならばなんとも思わない。
盗賊の奴隷だった時期は、食事と言う物を与えられるのは大きな利益を上げられた時のみで普段は虫や害にもならない小さな獣を食べていた為、有るだけなら別に何とも思わないスペーラだが、さすがに部屋全てに芋虫が這っている様子には耐えられなかったらしい。
「何ですか!? 何なんですかアレ!!??」
「おちつこ?」
「落ち着いていられませんよ!」
虫を絞って壁を拭くシノに詰め寄る緑色のスペーラ。
飛び込んだ部屋の中、スペーラは人生初めてで、最後にしたい経験をしたとだけ言っておこう。
「あんなのどこに居たんですか!?」
「天井裏」
「天井裏!? あ、あんなのが居るんですか?」
「ん、いっぱい」
「………そ、外で頭洗ってきます」
「ん」
ピギャー、ビギャー、と言う芋虫の声に見送られてスペーラは二階から降りていく。
「あれ、どうしたんですか?」
「………ああ、案内してくれた人じゃないですか」
「どうも。そんなところで髪を濡らして、どうしたの?」
やってきた彼が来た理由は一つ。
スペーラとシノが宿舎を出ていくと言うだろうから迎えに来た、それだけである。
もともと正門の主任からの紹介だとは言え、宿舎に人を泊めることはオススメしたくないのだ。警備兵と言っても全部が全部きちんとした性格をしていて領主に忠誠を誓っているわけでもない。
だから彼は、綺麗で安全を売りにしている宿舎ではなく、男性寮と女性寮に挟まれた汚いがあまり人の寄り付かない宿舎に案内したのだ。一泊ぐらいなら出来るだろうか、一泊以上はしたいと思われないだろう宿舎に。
「あ、ああ。何だか変なものを見たような………そんなことなかったかのような」
「なんだいそれ?」
「あははは………」
引きつった笑いをするスペーラの様子に頭を傾げる。
もともとこの舎は取り壊す予定だったのだ。
一階の部屋はどの部屋も罰ゲームのせいで汚れているし、二階は誰も入らないからほこりまみれだし、三階は誰も修理しないから床や扉が腐っているし、天井裏に至っては妙な音がするとかで誰も確認に行きやしない。
「そう言えば娘さん? は」
「あー………掃除? をしてるかと」
「おいおい、大の男が手伝わねーでどうすんだよ」
呆れたように彼は言うと、顔を真っ青にするスペーラを引きずって階段を上っていく。
「嬢ちゃーん、いるかー?」
「ん、いる」
丁度シノは桶を持って階段の方に出たところだった為、階段を上ってきた二人と鉢合わせた。
ぴちゃぴちゃと揺れる桶の中で水が震えているが、丁度陰になっていて桶の中を見ることはできないので彼は水でも捨て行くのかなと考えるだけだが、スペーラは中身を知っているので青い顔が白くなり顔を引きつらせる。
「おう、一人で掃除頑張ったんだって?」
「ん」
「こいつにも手伝わせりゃいいのによ」
「洗濯もの、お願いした」
「そうだったのか」
「ん。休むなら二つ目の部屋」
そう言ってシノは階段を上っていく。
「嬢ちゃん、水場は下だぞ?」
「ん」
返事をしても上に上がっていくシノに、首を傾げて一緒に昇ろうとする彼だったが、スペーラが必死に引き留める。
「良いですから! 考えがあるんですよ! きっと! だから部屋で待ってましょう! ね!」
「分かった! 分かったから引っ張るなっ」
体の割には強い力で引っ張られたことを不思議に思いながら、彼はスペーラに引き連られて二階の廊下へと足を踏み入れる。
天井から降ろされている布を潜れば、そこは彼にとって別世界のようにも見えなくない様子だった。
「あ、良かった」
手を放したスペーラは、彼をおいて二つ目の部屋の扉を開けほっと息をつく。
廊下の様子で唖然としていた彼は、驚いている自分がおかしいのかもしれないと思いながらスペーラが入った部屋に入っていく。
そしてさらに驚く。
「………ここ、一刻前まで埃まみれで住めたものじゃなかった気がするのだけど」
「ああ、掃除しましたから」
掃除しましたから。
そう言ってスペーラが座る椅子は廊下の床と同じように木目が綺麗に光り、安物には見えず、武骨だったテーブルの上には精密に編まれた布がかかり、茶器が置かれ、そのカップからは紅茶が湯気を立てている。
掃除しましたから、で片づけられることではないだろうと彼は思うのだが、スペーラはコップの中に入っているお茶で普段通りに喉を潤している。
いくら訓練を積んだ兵でも、人である以上違和感から来る居心地の悪さを忘れることはできない。まるでそれが当然であるかのように過ごされると、自分の方が間違っているのかもしれないと疑心暗鬼に陥ってしまうのは人間の性であろう。
スペーラは、シノだったらあり得るだろうと納得、思考放棄して、冒険者らしく今を生きているせいで馴染むのが早いだけだ。
「お茶、飲みません?」
「………戴こう」
適温より少し熱いくらいの茶は、口に含めばふんわりと香りが口の中に充満する。すっきりとした味でしつこくない甘さに、茶葉のことを知らない彼も高級なのではと思ってしまうが、冒険者なのだから手伝いによる報酬でも受け取ったのだろうと考える。
そんな高級な茶葉を扱うところは冒険者を引き抜くことはしてもそのまま雇うことはありえないと思うがそんなことは頭にない。
「茶菓子も、どうぞ」
「………戴きます」
勧められたのは黒い斑点が入っているクッキーである。
サクッとした触感に驚き、ふわっとした甘さとピリッとした辛さが同居する初めて食べる味のクッキーに目を見開く彼。
「これは一体なんです?」
飲み物に関しては特に興味はなかったが、酒が好きな彼は酒に合いそうなこのクッキーに興味を持つ。未だ独身でこの寮で暮らす彼にとって、寮に暮らす友人らと話すのは酒とつまみと肴のことだけ。肴のほとんどは色事や同僚の愚痴で、つまみに関しては自慢大会気味ている。
そこで発表しても遜色ない、むしろ自分が見つけたと言えば大層盛り上がること間違いなしとおもい言ったのだが、スペーラの言葉で項垂れる。
「シノ様が作ったクッキーですよ」
「………手作り?」
「そうです。粉にしたイデゼの実に、ススルの花粉と砕いたファマンの種を入れてピルゥの実の汁で固めて焼いただけのお菓子だったと思いますよ」
イデゼの粉は売っているが、植物魔物であるピルゥが手に入るのは稀であり、ススルなど聞いたことがなく、小さい粒状のファマンなどお高い料理屋が購入していると言う噂しか聞いたことがない。
原材料を聞いても作れない、それが判明した彼は、項垂れる。
「僕としてはロマフェの赤い方を輪切りにしてチーズとパオエで挟んで、ピルゥソースに付けて食べるのが好きですね」
美味そうに語るのはやめてくれと言いたい彼。
「お酒にも合いますし。すっきりとした酒ではなくしつこくない甘さを感じる酒ですが」
「ロマフェの赤い方とはどんなのなんだい? 生憎この街から出たことがなくてロマフェを見たことがないんだ」
「あー、そうですね、チュウは知ってます?」
「知ってる」
「チュウは液体ですけど、ロマフェにはあの中身が固まったモノが生っているんですよ。赤い見た目はちょっと気持ち悪いですけど、少し酸っぱくて甘くておいしいですよ。あれば街でも売れるかもしれませんが、ロマフェ以外は山の中で自生している植物ばかりですし―――」
後日見回りと称して彼は山の中に分け入り、料理人になったりするのだが、今は関係ない話だ。
戻ってきたシノも交えて料理談義をした後、そろそろ暗くなる時間だとクロを残してシノとスペーラは冒険者ギルドへと向かう。
シノの手料理を食べさせてあげると言ったら、門の警備を行っている上司と共に向かいますのでその間の警備は任せてくださいと茶菓子をむさぼりながら言っていた彼にクロを任せてある。シノとスペーラとクロの宿泊代を料理で賄った口である。
「どんな方と一緒に試験を受けるんでしょうね」
「さぁ」
「ヴァナグみたいな人が居たら面白いかもしれませんねー」
「エンゼが居たら?」
「止めてください。僕が女装癖持ってるみたいじゃないですか」
なんて会話をしながら着いた会議室だったが、まだ誰も来ていなかった。
「こちらでお待ちください」
「何人?」
「はい?」
「受けるの、何人ぐらい、ですか?」
たどたどしく敬語を話すシノにくすくすと笑いながら、女性職員は答える。
「一応あなたも含めて五人は受けると思うわ。下に試験開催の張り紙をしているからそれ以上になるかもしれないわね」
シノの頭を撫でて出て行った女性職員。
シノは席に座り、スペーラはその後ろに立ち。
「今回は二人、かな?」
「そうですね、恐らく二人の回し者でしょう。シノ様がいきなり入って来たことと他二人のEランク冒険者がBランク冒険者の試験内容だと考えれば妥当でしょう」
Bランク冒険者になるための試験が魔植物の討伐であるように、Aランク冒険者になるための試験はEランク冒険者をDランクにすることである。ギルドから斡旋された者であったり、知り合いの中から選んで来たりと受け方はさまざまだが、なかなかに難しい試験である。長期間街や町などに留まらなくてはならないから、ギルドとしても戦力の保持と言う意味で安心できるという理由もある試験内容である。
ちなみにそれらの情報はスペーラが酒場で集めたモノである。
「にしても暇ですね。日が沈む前には始まるはずですけど、まだ来ないとは」
備え付けられた窓から見える空は赤く染まっている。
全員がそろったところで登場する試験官らは置いておいても、日が沈むのが早いこの時期にまだ来ていないのは不思議で仕方ない。
「そう言えば、あの舎に居た芋虫、魔物だったんじゃないですか?」
「ん」
「………討伐しなくて大丈夫なんですか?」
魔物が魔物と呼ばれる所以は、詰まるところ人に対して魔石を持っていて攻撃的意識を持っているか否か。
「比較的、安全」
「………」
「間引きしないと、舎が倒壊」
「危ないじゃないですか………」
「迷宮とか、あるんじゃない?」
まだ迷宮に潜ったことは無かったりする。
迷宮に潜るとなると、探索者用のタグを発行しなくてはならない為、また試験やらなんやらで長期滞在を義務付けられてしまう為、見送ったのだ。
そんなこんなを話して、空が紫色になる時間になって会議室に一人入ってくる。
「いっちばーん! ………じゃなかったかー、残念」
「こら、静かに入りなさい」
「えーいいじゃん!」
「煩い」
「兄ちゃんひどいっ」
入ってきたのは、良い装備で固めた兄姉らしき人と共に入ってきたランクにしては良い装備に身を固めた少年。
錆色の髪がぴょこぴょこと揺れている。
腰元の剣の留め金がゆるそうなのは少年の性格ゆえなのかも知れない。
「そこ、退いてくださる?」
「んあ? ごめんごめん、今退くよー」
続いて入ってきたのは執事らしき者を従えた一人の女性。
荒くれ者が多く集まるギルドにあまり似つかわしくないすっきりとした印象のドレスを身にまとっている。
シノとスペーラをちらりと見ただけで、そのまま席に座る。執事らしき人はその後ろに静かに佇んでいる。
「うわー女もいるのかよ。面倒そうだな」
目が見えないほどボサボサな髪と汚らしい恰好で入ってきた少年。
腰元にはきちんと手入れが成されているだろうナイフが付いている。
それ以外に武器は見当たらないが、貧民街出身だとしたら何かしらの武器を持ち歩いている可能性はあるだろう。
「汚らしい」
「ここはあんた見たいな見た目が綺麗な奴が来る場所じゃねーよ」
「それはどうも。人前に出ることを考えたら少しは綺麗な格好をしてくるのがマナーというものよ」
「へへ、ご高説どーも」
にらみ合いをする二人に、錆色の少年はおろおろとしているが、この部屋で反応しているのは彼だけだ。
それからまた時間が過ぎ、空の色が濃くなってきた頃にまた一人訪れる。
「………席、自由なの?」
「自由だと思うぜー」
「そう。ありがとう」
長い紫紺の髪を一つに括った青年。
その装備は魔物を退治しに行くのと同じようなもの。ランクに合わないと言えばその通りであると頷ける。使い込んだらしい長剣を腰に差した青年は、空いている席に座ってカバンから取り出した本を読んでいる。
「遅刻! じゃなかったか。よかった………」
「だから大丈夫っつったろー。遅れても平気なんだって」
「師匠の大丈夫は信用してません! 特に時間については」
「ったく、もう少し師匠を信用しやがれ」
「痛い! 頭が痛い!」
入って来てじゃれついている恐らく師匠と弟子のような関係である二人。
少年の方は手に布を巻いていて、普段着だが腰元に手甲をぶら下げている。
「あ、あの、すみません。退いてくだしゃい」
噛んで顔を真っ赤にする少年。
長いローブを身に着け、背中には大きな杖を背負っている。
「ごめん! ほら、師匠は図体でかいんですから、退かないと痛い痛い痛い」
煩いのが二人になったが、完全に日が落ち静かになった室内に入ってくる職員。
「今回の試験を担当するデリアードです。よろしくお願いします」
結局試験を受けるのはシノを含めて七人であった。
「事前にお知らせしているように、Dランク試験の内容は盗賊への対処です」
討伐依頼になる盗賊の対処だが、相手は者であり、奴隷として働かせることもできる人材でもある。取り返しがつかないようなれんちゅであれば一思いに殺す方が未来の安全につながったりもするが、環境によって更生できるようであれば奴隷に落とした方が良かったりする。もちろんこの考え方はシシラギヤだからこそ、であるが。
「皆さんの自己紹介をしてもらいます。名前と、使用武器、戦闘形式などですね。その後集まって盗賊への対処を考える時間を設けます」
一番端に座っているのはシノと、二番目に入ってきた少年。
職員はシノと少年を見比べて、少年ほうから自己紹介するように促した。
試験を受けるのは七人。
そして試験官の名前。名づけてから気が付いた。
「ポ○モンのサンタさんと一文字違いじゃん………」
意図はない。胸はないがすらりとした美人(予定)
また次回、お会いしましょー!




