↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタ芸を極めし無能、異世界で聖下と呼ばれる 〜タイガー!ファイヤー!と叫んだだけで古代の超魔法(ワシンジ)が発動する件〜  作者: シャー・アズン
第3章「異国(とつくに)の現場(ステージ)、踏破す!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/59

第45話:俺たちのワールドツアーは、まだ二箇所目だ

決戦から、一週間が経った。


ヤマトの各地に、光の女神ルミナと聖歌隊の噂が広まっていた。宵ノ國はもちろん、ミカドの御所からも、正式な感謝状が届いた。


エルドラド王国からも、国王直筆の親書が届いた。


『聖下の武勇伝、王都まで轟いている。ヤマトとの友好、そしてルミナ教の名声、両方とも大きな成果である。ゆっくり休むといい』


「陛下、前は問答無用で国教化を決めてきたのに、今回はえらく気を遣ってくれるんだな」と俺は呟いた。


「昔から、根はお優しい方ですよ」とフィリアが言った。「表現が独特なだけで」


「独特すぎて伝わらなかっただけかもな」


宵ノ國の茶屋の座敷で、俺たちはようやく落ち着いた時間を過ごしていた。畳に寝転がったミレイが、「肩が凝りました……」と呟きながら、伸びをしていた。レナは、縁側で刀の手入れをするゴエモンを、興味深そうに眺めていた。シルは、ツバキの隣で、地面ではなく紙に文字を書く練習をしていた。ツバキが、一文字ずつ、丁寧に教えていた。


その光景を見ながら、俺は、この数ヶ月の旅を振り返っていた。ギルバートの小さな教会から始まった聖歌隊が、今では二つの国を巻き込む規模になっている。ヲタ活の力は、想像以上だった。



「アキ様」


ツバキが、正座をして、俺の前に座った。


「改めて、お礼を言いたいのでありんす」


「礼なら、もう十分もらってる」


「いいえ、まだでありんす」


ツバキは、深く頭を下げた。


「わっちに、心を込める歌を教えてくださり、ありがとうございんした。そして、わっちの過去を、聞いてくださり」


「過去?」


「歌巫女として生まれ育った、あの息苦しさをでありんす」


ツバキが、顔を上げた。その目に、迷いはなかった。


「わっちは、これからも、あなた様たちと共に、世界中に歌を届けたいありんす」


「もう仲間だろ、それ」


「改めて、言いたかったのでありんす」


俺は、少し笑った。


「なら、これからもよろしく頼む」


「はい」



「アキ」


ゴエモンが、刀を担ぎながら、隣に座った。


「俺も、一つ言うとかなあかんことがあるわ」


「なんですか」


「次、どこ行くんや」


「まだ決めてないです。ルミナちゃんの布教は、まだヤマトとエルドラドの二箇所だけなんで」


「ほな、俺も付いていったるわ」


俺は、ゴエモンを見た。


「いいんですか」


「ええも何も、もう決めとる」ゴエモンは、にやりと笑った。「お前らみたいな、けったいで面白い連中、他におらんしな。それに」


「それに?」


「守るって決めた奴らを、途中で放り出すわけにはいかんやろ」


その言葉に、レナが小さく笑った。


「なんや、笑うなや」


「いや、お前らしいと思って」



「アキ様……!」


フィリアが、羊皮紙の束を抱えて、こちらに来た。


「今回の記録、まとめました……! ヤマトでの布教活動、邪神教団との死闘、太陽神教との和解、そしてルミナ様の再臨……全て、後世に語り継がれるべき偉業です……!」


「いつもの解釈だな」


「今回は、盛ってません! 本当に凄いことだったんですから!」


「珍しく強く言うな」


「当然です! だって……」


フィリアが、少し言葉を止めた。


「わたくしにとっても、忘れられない旅になりましたので」


その声のトーンが、いつもより、少し違っていた。


俺は、少しだけ、フィリアの顔を見た。


「フィリアさん、大丈夫か」


「え? は、はい、大丈夫です」


フィリアが、慌てたように羊皮紙を抱え直した。


「なんでもありません! それより、次の目的地についてですが!」


「ああ」


フィリアの様子が少し気になったが、今は聞かないでおいた。



その夜、聖歌隊全員で、宵ノ國の広場に集まった。


「これから、どうしたい?」


俺は、みんなに聞いた。


レナが、最初に口を開いた。


「もっと強くなりたい。剣も、歌も」


「歌?」


「センターとして、もっと歌えるようになりたい。今のままじゃ、まだ足りない」


ミレイが、続いた。


「わたしは、もっと遠くまで届けたいです。ヤマトでの経験で、少し自信がつきました」


シルが、地面に文字を書いた。


「もっと、たくさんのひとに、きいてほしい」


ツバキが、静かに言った。


「わっちは、まだ知らない歌を、たくさん覚えたいでありんす。世界には、まだ知らない音楽があるはずでありんす」


俺は、全員の顔を見渡した。


それぞれが、この数ヶ月で、大きく変わった。レナは剣士から歌えるセンターへ。ミレイは空砲から届ける声を持つ者へ。シルは声を封じた少女から、みんなに気持ちを伝えられる歌い手へ。ツバキは技術だけの歌巫女から、心を込める歌い手へ。


まだ、みんな途中だ。でも、確実に、前に進んでいる。


「よし」


俺は、サイリウムを取り出した。


「世界はまだ広い。次の現場へ行くぞ」


「「「はい」」」「んっ」「ありんす」


俺は、夜空を見上げた。


「ルミナちゃんを、世界で一番の推しにするまで、止まらない」


サイリウムの光が、夜の宵ノ國に、静かに灯った。



一人になった座敷で、フィリアは、羊皮紙に向かっていた。


でも、筆が、進まなかった。


(アキ様……)


今日のツバキとのやり取りを、思い出していた。


ツバキが、アキ様に向かって深く頭を下げる姿。アキ様が、それに柔らかく応える様子。


その光景を見たとき、フィリアの胸の中に、何か、小さな棘のようなものが刺さった。


(なんでしょう、これは)


自分でも、意味が分からなかった。


ツバキのことは、嫌いではない。むしろ、好ましい仲間だと思っている。


なのに、あの光景を見たとき、胸の奥が、ちくりとした。


(わたくしは……)


フィリアは、筆を置いた。


(アキ様……)


その名前を、心の中で呟くたびに、何かが、少しずつ、形になっていく気がした。


まだ、それが何なのか、はっきりとは分からない。


でも、確かに、何かが、動いていた。



一人のヲタクの推し事が、世界の歴史を書き換えていく。


その旅は、まだ二箇所目を過ぎたばかりだ――。


第3章はここで終わりです。まだまだヲタ活布教は続きますので、お楽しみに!


少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、毎日の更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。