表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタ芸を極めし無能、異世界で聖下と呼ばれる 〜タイガー!ファイヤー!と叫んだだけで古代の超魔法(ワシンジ)が発動する件〜  作者: シャー・アズン
第3章「異国(とつくに)の現場(ステージ)、踏破す!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/54

第42話:決戦の地は、世界で一番でかい現場(ステージ)

シルの一件から、数日が経った夜のことだった。


宵ノ國の空に、異変が起きた。


星々が、一つ、また一つと、黒い靄に覆われていく。まるで、夜空そのものが、腐り始めているようだった。


「アキ様……!」


フィリアが、俺の部屋に駆け込んできた。


「王都から、緊急の報せです……! アルベルト大神官長より」


俺は、フィリアの差し出す羊皮紙を受け取った。


『邪神ナイアル、動く。世界各地の瘴気が、ヤマトの聖地に向けて集結している模様。急ぎ備えられよ』


短い文面だったが、その緊張感は十分に伝わってきた。


「聖地……」


俺は、地図を思い浮かべた。ヤマトの中央にある、最も古い神社。ミカドの御所からもほど近い、この国の信仰の中心地。


「あそこに、集まってくるのか」


「はい……おそらく」フィリアの声が、震えていた。「各地の瘴気を集めて、ナイアル本体が、本格的に顕現しようとしているのだと思います」


俺は、サイリウムを握った。


「ついに、来るか」



翌朝、宵ノ國の広場に、全員が集まった。


レナ、ミレイ、シル、ツバキ、フィリア。そしてゴエモン。


「聖地に、瘴気が集まってきている」と俺は言った。「ナイアルの本体が、姿を現そうとしてる」


「……ついに、か」とレナが呟いた。


ミレイが、緊張した面持ちで頷いた。シルは、サイリウムをぎゅっと抱きしめていた。ツバキは、静かに、でも確かな決意の目でこちらを見ていた。


「今までの戦いとは、規模が違う」と俺は続けた。「これは、みんなの力を全部合わせないと、太刀打ちできない」


「みんなって」とゴエモンが聞いた。「俺らだけやないんか」


「違う」


俺は、首を振った。


「太陽神教も、ヤマトの民も、エルドラドの騎士団も。全員だ」



その日のうちに、動きが始まった。


ミカドの使者が、宵ノ國に駆けつけた。


「御所より、正式な要請にございます。ヤマトの民、そして御所の兵も、聖歌隊の方々と共に戦う所存です」


「ミカド様が、そう仰ってるんですか」


「はい。異国の神の力とはいえ、この国を守ってくださる方々を、見捨てるわけにはいかぬと」


俺は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


同じ頃、王都からも報せが届いた。


アルベルトが、太陽神教の神官たちを率いて、ヤマトへ向かっているという。ヴァルターも、近衛騎士団の一部を引き連れて、同行しているらしい。


「本当に、集まるんだな」とレナが、報せを聞いて呟いた。


「集まる」と俺は言った。「これだけの規模の現場、そうそうない」


「不謹慎な言い方だな、それ」


「これだけの人数が、力を貸そうとしてくれてるってことだ。悪い意味で言ってない」


レナが、小さく笑った。



三日後、聖地への道に、続々と人々が集まり始めた。


ヤマトの民が、武器を持たずとも、祈りのための道具を手に集まってきた。太陽神教の神官たちが、白い法衣を纏って行進してきた。エルドラドの騎士団が、旗を掲げて到着した。


そして、聖地の広場に、アルベルトの姿があった。


「聖下」


「大神官長」


アルベルトが、深く頷いた。


「太陽神教は、全力を尽くす。儂らの信仰も、光あるものだ。邪神などに、好き勝手はさせん」


「頼りにしてる」


ヴァルターが、その隣に立った。


「近衛騎士団も、この地に馳せ参じました」


「ありがとうございます」



聖地の広場に、これまで見たこともない規模の人々が集まっていた。


エルドラドの民、ヤマトの民。太陽神教の神官、ルミナ教の聖歌隊。騎士団、浪人、歌巫女。


全員が、一つの場所に、一つの目的で、集まっていた。


俺は、その光景を見渡した。


前世で見た、どんな大規模フェスよりも、この光景は圧巻だった。何万人という単位ではないかもしれない。でも、集まった人々の熱量は、それに匹敵する、いや、それ以上のものがあった。


レナが、周囲を見渡しながら言った。「こんな数の人間、初めて見た」


「あたしも」とミレイが頷いた。「緊張してきました……」


シルが、サイリウムを強く握りしめた。その目には、恐れよりも、確かな決意があった。


ツバキが、静かに言った。「わっちも、これほどの現場は、初めてでありんす」


「現場、って言葉、覚えたのか」と俺は聞いた。


「アキ様の口癖、うつってしまいんした」


その軽いやり取りに、張り詰めていた空気が、少しだけ緩んだ。


「アキ様……」


フィリアが、隣で声を震わせた。


「これほどの規模の集会は、ワシンジの歴史上でも……」


「ワシンジの話は今しなくていいです」


「し、失礼しました……!」


俺は、サイリウムを掲げた。


夕暮れの光が、聖地の広場を、オレンジ色に染めていた。


「みんな」


俺は、集まった人々に向かって、声を張った。


「これだけの観客が集まったんだ」


前世の言葉が、自然と口をついて出た。


「最高のライブにするぞ」


その言葉に、意味が分からない人々もいただろう。でも、その熱量だけは、確かに伝わったはずだった。


「「「おおおおおおっ……!!」」」


広場が、地鳴りのような歓声で満ちた。



夜が更ける頃、聖地の奥、社の中央に、瘴気の柱が立ち始めた。


これまでとは、規模が違った。柱は空高くまで伸び、その先端が、まるで黒い太陽のように、禍々しく脈打っていた。空全体が、その柱を中心に、渦を巻くように歪んでいる。


広場に集まった人々の間に、動揺が走った。


「な、なんだあれは……!」「あんな瘴気、見たこともない……!」


ヤマトの民の何人かが、後ずさりした。太陽神教の神官の中にも、顔を青ざめさせる者がいた。


「怖じ気づくな!」


アルベルトが、杖を掲げて声を張った。


「我らはここに、共に立つと決めたのだ! 光あるところに、恐れることは何もない!」


その声に、動揺していた人々が、少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「来る……!」


フィリアが叫んだ。


「アキ様……あれが、ナイアル本体の顕現……!」


俺は、サイリウムを構えた。


隣に、レナ、ミレイ、シル、ツバキが並んだ。ゴエモンが、刀を抜いた。アルベルトが、杖を構えた。ヴァルターが、剣を掲げた。


そして、その後ろに、何百人という人々が、それぞれの武器や祈りの道具を手に、並んでいた。


「準備はいいか」


俺は、みんなに向かって言った。


「「「はい」」」


「んっ」


「ありんす」


「おう」


「いつでも」


「儂も」


「私も」


声が、重なった。


俺は、瘴気の柱を見上げた。


その中心で、何かが、生まれようとしていた。


「行くぞ」


サイリウムの光が、夜の聖地に灯った。


決戦が、始まろうとしていた。


少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、毎日の更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ