第26話 これがサラマンダー?
びっくりして目を開けると、私の手の上には本当に黒いトカゲが乗っていた。
体の大きさは20cm位、小さい羽が背中にちょこんと付いていて時々ぴこぴこ動くのがすごく可愛い!
2本の後ろ脚で私の手の上に立って、大きくて真っ黒な瞳で伺うように私を見上げている。
この子、羽があるってことはトカゲじゃないんだよね、きっと。あ、そうか! もしかしてこれが……
「サラマンダーだ!」
「ぐっ!」
突然私の後ろにいたエリス先生が咳き込む音がした。私が振り返ってみると、エリス先生は綺麗な顔を真っ赤にして口元を押えて咽ている。
「エリス先生、大丈夫ですか?」
「……こほん、失礼しました。ユーリ、何でもありません。気にしないで下さい。それより魔力の放出が止まったようですね」
「え? そうなんですか?」
思わず自分の手をじっと見るけど、特に変わった様子はない。自分が何かした覚えもなくて、強いて言えばサラマンダーが急に手に乗ってきてびっくりした事くらい。一体どうして魔力が止まったんだろう?
うーん、まあでも魔力放出が止まったのなら本当によかった。だってコロッセウムが吹き飛ぶとか怖すぎる。
でも魔力は止まったものの、相変わらずエリス先生が張った結界の中は私の金色の魔力で一杯のままだ。これはどうすれば消えるんだろう。
ふと見るとエリス先生もすっかり考え込んでしまってた。
「さて困りましたね。後はこの溢れた魔力をどうするかですが……」
エリス先生が困ったようにそう呟くや否や、黒いサラマンダーは私の手からぱたぱた羽ばたきながら地面に降りた。
そして魔法陣の上に立って大きく口を開けたかと思うと……、
次の瞬間、結界の中にあれだけあった私の魔力は綺麗さっぱり消え去っていた。
「えっ!」
今のって、もしかしてこの子が私の魔力を食べちゃったの? いや、まさかこんなに小さいのに? それに魔力って食べても大丈夫なの? 私は思わずエリス先生の顔を見た。
「エリス先生、今のってこの子が私の魔力を食べちゃったんですか?」
「……もしかしたらこのサラマンダーが助けてくれたのかもしれませんね。でも詳しい話は後にしましょう。ユーリ、よく聞いてください。今から私の結界を解除しますが、先程の魔力は私の魔力だという事にしておきましょう。高等召喚術のレイモンド先生やここにいる生徒達には絶対貴女の事がばれないよう、くれぐれも私と話を合わせてください。いいですね」
「は、はい」
とても真剣なエリス先生の顔を見て私ははっとした。
そうだ、竜だってばれたら私は学校を辞めなきゃいけないんだ。
せっかく新しいお友達も出来て、取りたい授業もやりたい事もいっぱいあるのに、初日からこんな騒ぎを起こしてる場合じゃない。……もっと気を付けないと。
「では結界を解除します。いいですか?」
「……はい!」
エリス先生の言葉と同時に結界が無くなると、一気に視界が開けて舞台の周りが見える様になった。
生徒達がざわざわとする中、心配そうな顔をしてこちらを見ているレイモンド先生と目が合った。そして次に舞台の脇にいるメイベルと目が合うと、やっぱり心配そうな顔をしたメイベルは私を見て大きく両手を振ってくれた。
……メイベルも心配してくれてたのかな。悪いことしちゃったな……
でも私は彼女を顔を見たらなんだか安心して、ふっと力が抜けてしまった。
「ユーリ?」
「きゅっ!」
私、どうたんだろう、なんだか急に眠くなってきた……
そばにいる筈のエリス先生の声が遠くから聞こえるような気がする。
私は突然やってきた眠気に抵抗できずに、引きずりこまれる様に深い眠りに落ちて行った。




