第24話 初めての召喚術
えっ? それって私のこと……?
私が思わず助けを求めて隣のメイベルを見ると、メイベルも訳が分からないみたいで首をぶんぶん横に振ってる。
レイモンド先生はつかつかと私の前までやって来ると、舞台上から私に向かって手を差し伸べた。
これって、この手を掴めってこと、……だよね?
私がおずおずと右手を出すと、レイモンド先生は私の手をぐいっと引っ張って、あっという間に私は舞台の上に載せられてしまった。
「ああ、やっぱり……」
私が一人オロオロしてる横で、レイモンド先生は難しい顔で私の左手を取ると、巻かれてる包帯を見て納得するように頷いた。そして声を潜めて私だけに聞こえる様に言った。
「どうやら召喚した精霊達は君のこの怪我に反応していたようだね。これは特殊な怪我だろう? あまりよくない気配がするね。高位の精霊が気に掛けるなんてとても珍しい事だけど、……うん、納得した」
そう言ってレイモンド先生はにっこり笑うと顔を上げ、今度は生徒達に向かって大きな声で話した。
「皆さん、せっかくの機会です。今日は新入生に実際に簡単な召喚術を体験してもらいましょう」
レイモンド先生は私の手を引くと中央に書かれた魔法陣の前まで行き、そして私を魔法陣の前に立たせた。
「初級の召喚術の授業では、まず最初の試験でサラマンダーを呼び出します。サラマンダーは下級の火の精霊で、比較的召喚に応じやすい精霊です。なので今から実際にサラマンダーを召喚してみることにしましょう」
レイモンド先生は私の背中に回ると肩に手を置いた。
「今から私が君の魔力の流れをサポートする。君は魔法陣に自分の魔力を流すイメージをして。魔力の流し方は分かるね? それから私の真似をして呪文を唱えるんだ。どうだい、できそうかな?」
「は、はい!」
そっかあ、これから私はサラマンダーを召喚するのね。私に上手くできるかな。 ああもう、緊張でどきどきする!
「ではまず君の名前を教えてもらえるかな」
「はい、ユーリです」
「ではユーリ、この地面に書いてある魔法陣に自分の魔力を流し込むんだ。魔法陣に魔力を流したことはあるかい?」
「いいえ、ありません」
「そうか、でも簡単だから大丈夫だよ。まず自分の手に魔力を溜めてごらん。そうだな、掌に水がある様子を想像するんだ。そこから水が溢れて零れていく様子をイメージする。それができたら次は呪文だ。『我、ユーリは我の魔力を糧に汝を呼び出す。汝、サラマンダー、求めに応じて召喚に応えよ』だ。言えるかな?」
「はい!」
本当は魔法陣どころか魔法自体が初めてなんだけど、大丈夫だよね?
ええと、まず私の魔力を感じる、魔力……ってどうするんだっけ。
そうか! ルツが私にも魔力があるのを教えてくれた、あの時と同じにすればいいんだ。
私は胸にあるルツがくれたペンダントを服の上からぎゅっと握ると目を瞑って想像した。
私は掌の中には水がある。それはルツの魔力みたいにとても暖かい水。水は湧水の様にどんどん湧いてくる。やがて水は掌いっぱいに溜まると私の手から溢れて下に……
私はすっと息を吸った。
「私ユーリは我の魔力を糧に汝を呼び出す……」
「ユーリ、駄目だ! やめろ!」
「いけません! ユーリ!」
その時、そこにいない筈の人の声が響いた。




