第23話 フェニックス
「では次にリチャード、前に出て」
「はい」
レイモンド先生の声に呼ばれて、今度はひょろりと背の高い男の子がおずおずと前に出た。
彼はぺこりと頭を下げると魔法陣の前に膝をついた。そしておもむろに魔方陣の上に手を置くと、私達に聞こえるか聞こえないか位の声で、ぼそぼそと呪文を唱え始めた。
「古よりの血の契約により我は召喚する。い、出でよフェニックス!」
魔方陣はリチャード君が手を置いた場所からじわじわと赤く光り始めたかと思うと、その円に沿って小さい炎が立ち上がった。
みんなが見る中炎はどんどん高さを上げ、1メートル近くまで背が伸びる。
そしてその燃え盛る炎の中からゆっくりと赤い光を身に纏った一羽の大きな鳥が姿を現した。
クジャク位の大きさのその鳥は、角度によってゆらめく炎の様な色の不思議な羽をまとっている。長い尾羽がゆらゆら揺れると、そこがまるで反射したみたいにきらきらと光った。
「あれがフェニックス?」
「あいつフェニックスと契約してるのか! 凄いな!」
「私生まれて初めて見るわ! こんな高位の精霊を呼び出せるなんて!」
フェニックスはリチャード君の頭の上をぐるぐると旋回すると、ゆっくりと羽ばたきながら彼の腕に止まった。赤く煌めく両方の翼を広げたその姿は荘厳で、まるで燃え盛る炎がそのまま鳥になったみたい。私は思わず手をぱちぱちと叩いた。
フェニックスって不死鳥のことだよね。それこそ有名な漫画やハリー・ポッ◯ーの映画でみた事ある!
さっきのセイレーンも、フェニックスも、想像上の伝説の生き物だと思ってた。それがこんな目の前で見られるなんて……すごい! すごいよ召喚術! 私も自分で何か召喚してみたい! 私もこの絶対授業受ける!
するとフェニックスは私の拍手の音に気が付いたのか、ちらりとこちらに顔を向けると私と目が合った。
フェニックスは瞳も真っ赤な宝石みたいですごく綺麗。私がじっとその瞳を見ていると、フェニックスは突然リチャード君の腕から飛び立ち、舞台の上高くまで行って大きく旋回を始めた。
そしてゆっくり羽ばたくフェニックスが突然炎に包まれたかと思うと、優雅に揺れるその翼と尾羽から赤く煌めく光が舞台の上にきらきらと零れ落ちてきた。
見ていた生徒達は一斉にわっと歓声を上げると、その赤い光を触ろうと手を伸ばした。
「すげえ! フェニックスの祝福だ!」
「私にも触らせて!」
「ちょっとどいてよ!」
上を見上げて赤い光を掴もうとする生徒達で、舞台の周りは騒然となった。それを見て慌ててレイモンド先生が声を上げた。
「皆さん落ち着いて! フェニックスの祝福は赤い光に触らなくてもこの場にいる皆さんに効果がありますよ。落ち着いてください!」
それでもざわざわする生徒達を、リチャード君は真っ青になっておろおろした様子で見ている。その横でレイモンド先生は苦笑いしながら思案するように腕を組んだ。
「それにしても不思議ですね。セイレーンもフェニックスも癒しの効果がある魔法を使うとは……」
レイモンド先生はそう言うと、舞台の周りをまるで何かを探すように見回した。そして確認するように生徒一人一人順番に目を移していくと、途中で何故か私とばっちり目が合った。
「君、そこの金髪の新入生の女の子、ちょっといいかな」
えっ? それって私のこと……?




