第22話 セイレーン
「私フラン・ボヌールは古の盟約に基づき召喚する。汝が力を示せ、セイレーン!」
フランさんの呪文が終わると同時に床の魔方陣が青く光り始め、ゆっくりとキラキラと光る物が姿を現す。やがてその全身が魔方陣から出ると、それは下半身が魚の姿をした人魚の様な女性だとわかった。
透き通った水色の長い髪に、溢れる水のような色の瞳、そして大きな胸! なんていうか、すっごいセクシー!
そうか彼女がセイレーンなのね。フランさんが魔法で彼女を呼び出したの? 召喚術ってすごい!
セイレーンはフランさんの周りを泳ぐ様にくるりと一周して頭上まで行くと、空中で大きく手を振る。すると振りかぶった手からきらきら光る水しぶきが出て、見ている生徒達から一斉に大きな歓声が上がった。
「すごい……なんて綺麗!」
「俺初めて見るよ! あの子セイレーンを召喚できるってすげえな!」
「でも今回魔方陣は先生が描いてるんだろう? あれだったらそこまで魔力は消費しないんじゃないか」
「ねえセイレーンの唄の効果ってなんだっけ?」
「祝福、回復、あとは……」
興奮して一斉に喋り出した生徒達で、舞台はうるさい位騒然となった。
セイレーンはそんな興奮した私達の上に、まるでからかう様に水しぶきをかけた。そしてしばらくして気が済んだのか面白そうにくるりと舞台を見回すと、私とメイベルの方を見て急にぴたりと動きを止めた。
あれ? どうしたの? もしかして私達を見てる?
セイレーンはまるで知人を見つけたかのように優しく微笑むと、綺麗な瞳を細め大きく口を開き、そしてゆっくりと歌いだした。
綺麗な良く通る声で紡ぐ不思議な音、そして神秘的な旋律。
セイレーンの澄んだ声は静まり返った舞台の隅々まで響き渡る。なんて綺麗な唄なんだろう……なんだかホッとしちゃう……。私は目を閉じてうっとりと聞き入った。
やがて唄が静かに終わるとセイレーンはにっこり笑い、再びフランさんの周りを優雅に泳ぐ様にくるりと一周すると、魔法陣に飛び込むように姿を消してしまった。
それを見たフランさんは丁寧にお辞儀をすると、レイモンド先生の後ろに戻った。
「皆さん、セイレーンの唄には様々な効果があります。今のは回復の唄でしたね。彼女はとても気まぐれなので、このような場でなかなか歌を聞くことはできません。今日はとてもラッキーでした。フラン、ありがとう」
一瞬舞台が静かになった後、わあっと拍手と歓声が上がった。もちろん私も手が痛くなるくらい拍手した。
「メイベル、セイレーンすごく綺麗だったね! ねえ召喚術って難しいのかなあ」
「普通の召喚術はそんなに難しくなかったわよ。でも召喚したのがサラマンダーとか下級の精霊だったからなのかもしれないけど。ねえこの高等召喚術って面白そうよね。私も授業取ろうかしら。」
うう、いいなあ、私もレイモンド先生の高等召喚術の授業受けてみたい! でもまずは普通の召喚術の授業を受けないとなんだよね? 道のりは遠そうだなあ。




