幕間(あるお休みの日・2)
もうひとつ続きます。
(夏椎)
クッキーを焼いている間、簡単に晩ご飯の下ごしらえもする。
香流さんに何時に帰ってくるのか聞いたら、「帰らないかも?」と曖昧な返答を受けたので、翔真が拗ねている。何故かサメとイルカが芸をしている動画が送られてきたので、向こうで楽しんでいるようだ。
「おれも着いて行きたかった」
「まぁ、朝4時に迎えに来られたら俺達にはどうすることも出来ないよ⋯⋯」
朝の4時に窓から突っ込んできた柳瀬さんは、俺達に一瞥もくれることなく香流さんを抱えて出て行った。
相変わらず腹の立つ人だ。挨拶くらいすればいいのに。人見知りとか言う以前に、人として礼儀がなっていない。
置いていかれた木戸さんも、柳瀬さんからの電話を受けて出かけて行った。俺たちに「行ってきます」と言って、ちゃんと玄関から、香流さんの靴も持って出て行く木戸さんの方が百倍礼儀正しい。
「あの調子じゃ翔真と晃が見たことなかったのも仕方ないと思うよ」
「夏椎、キャベツ木っ端微塵だよ」
「柳瀬さんが香流さんに甘いと思ってたけど、むしろ逆なんじゃないかと思い始めてきた。何でもかんでも受け入れてるからあんな暴君が出来上がるんだよ」
「ねぇ晃、夏椎ってこんな静かにキレるキャラだっけ?」
「怒っている夏椎も可愛い」
「聞いたおれが馬鹿だったのかな?」
俺も人付き合いは苦手だけど、あんな慇懃無礼な態度を取ったりしない。クラスメイトとも仲良く出来てるはずだし、何より翔真と晃とはちゃんとお互いの意見を言い合いながら過ごせている。
人との関係は一方通行じゃいけない。
手元のキャベツを見下ろす。添えるだけの予定だったけど、ここまで砕いてしまったならいっそメンチカツに入れてしまおうか。
はぁ、とため息をつく。俺は何をこんなにイライラしてるんだろう。
「夏椎、香流お兄ちゃん帰ってこないなら今日はゲーム尽くしにする?」
気持ちの切り替えの早い翔真が、ゲームソフトをベッド上に並べていく。
そうだ、今日新発売のゲームもあるんだった。父さんから軍資金は預かってるから、パッケージ版を買いに行かなければ。
「よし、今すぐゲーム買いに行こう」
「おれ達だけで行って怒られない?」
「うっ⋯⋯」
確かに、俺は外身は人間なんだから気をつけろと口酸っぱく言われ続けている。
でも、パッケージ版が欲しい。そして発売されたと同時にまずクリアしたい。そしてその後に重箱の隅をつつくように2周目をするのが俺の慣習だ。
「石田先生もお出かけするって言ってたし、他に大人残ってたかな⋯⋯」
翔真が呟くと、晃がひょいと手を挙げた。
「黛なら家から出ない」
「ひばりんは休みの日は外に出てこないでしょ。まぁかけてみてもいいけど⋯⋯」
翔真がスマホに指を滑らせる。黛さんは穏やかな人当たりの良いイメージだけど、家から出ないと言うのが親近感が湧く。
「そう言えば、黛さんだけ警察庁に住んでないんだね」
「生徒会長と住んでるからな」
あぁ、あの絵のやたら上手い生徒会長か。
「はいはい、何かあったか?」
翔真は耳にスマホを当てるのが痛いという理由で基本的にはスピーカーでしか電話しない。
だから俺達にも会話が筒抜けだ。電話越しの黛さんは、いつも通りのフラットなテンションだった。
「ひばりん、夏椎がゲーム買いに行きたいんだって」
「ダウンロード版じゃダメなの?」
「パッケージ版がいいんです。ゲームソフトが増えていく楽しみがあるんですよ」
「はぁ」
気のない返事をされた。後ろでカタカタとキーボードを叩く音が聴こえる。
「ひばりん、何してんの?」
「島の電波塔の遠隔監視システムの点検中」
「休みの日に仕事してんの?」
「仕事じゃないよ。趣味みたいなもんだから」
やっぱりこの人も頭おかしいのかな。
完全なワーカーホリックだ。そこは休みの日に海で動物達と遊んでいる同僚を見習って欲しい。
「なぁ鴫、今暇?」
どうやら鴫さんも同じ部屋にいるらしい。鴫さんは遠くにいたらしく、黛さんの元へ歩いてくる音が聴こえた。
「香流の弟達がニール行きたいってよ」
「今は暇ですけど。たまには兄さんが行ってあげればいいんじゃないですか?運動不足だって香流兄さんに怒られますよ」
「この後作りたいのがあるんだよなぁ。香流が乗れるドローン欲しいって言うから既存の型を改良しようと思って」
「また頭ばっかり使って⋯⋯」
はぁ、と鴫さんのため息が聞こえた。
「夕方までなら空いてるから付き合いますよ。警察庁の下で待ち合わせしましょうか」
「すみません⋯⋯」
「俺が呆れているのは兄さんにですから。出不精ここに極まれり、仕事がなければただの引きこもりですからね」
「ねぇ、兄は目の前にいるんですけど」
「少しは香流兄さん達を見習って下さいね」
それもそれでどうかと思うけど、鴫さん的にはあの人達の方が健全に見えるんだろうな。
不健全な兄の方はちょっと不服そうにしながらも、
「じゃ、そういうことで」
と通話を切った。悪態をつかれても外には出たくないんだな。でも、俺だってゲーム中に外に出ろと言われるのはちょっと⋯⋯いやだいぶ嫌だから気持ちは分かる。
そうこうしている間にクッキーが焼けた。オーブンから取り出して、テーブルに天板を置いて冷ます。
「鴫お兄ちゃんと出掛けるのも楽しみだなぁ」
「お前は年上なら何でもいいんだな」
「何で!年下も好きだよ!香流お兄ちゃんの周りの人はみんな優しいもん」
翔真はぴょんと俺に飛び付いてきた。尻尾をパタパタと左右に揺らして、ご機嫌な様子だ。
「もちろん、夏椎のパパも好きだよ!」
「ありがとう」
「すぐ準備しよ!おっでかっけおっでかっけ♪」
黛さんとは対照的に、お出かけが大好きな翔真はスキップしながら靴下を履いて準備を始める。
「夏椎が欲しいのはどんなゲームなんだ?」
「10年前のソフトのリメイク版だよ。追加コンテンツが増えてて、隠しボスが実装されてるんだって」
「そうか、それは楽しみだな」
俺も準備をしながら、ワクワクを隠せないでいた。
父さんが遊んでたって言うゲームだから、父さんが帰ってきたら父さんも遊べるはず。一緒に楽しめたらいいな。
必要最低限の荷物を抱えて、香流さんの家を後にした。
(柚木)
〈柳瀬が疲れてるよ〉
そう中川から連絡が入った。いつもなら愛敬が発散させているストレスが発散されず、無の状態が続いているそうだ。
愛敬と同じことはおれには出来ない。と言うかそもそも愛敬と柳瀬がどう過ごしているのかも知らない。
最近良くくっついてくるから寂しいのかな?と思うけど。とりあえずストレスが溜まったら運動すればいいんじゃねぇかな!まゆも柳瀬も外に出ないからモヤモヤするんだ!
「柳瀬、服乾かしがてら山の向こうまで競走しようぜ!」
「ちゃんと着替えろ!」
海から上がって提案したら、柳瀬にバスタオルを被せられた。
そんなこと言われても起きたら柳瀬の家にいたんだから、着替えなんか持ってきていない。
「俺の一式貸してやるから、小屋で着替えてこい」
「柳瀬も濡れてるだろ。一緒に行こ」
「俺は後で行く」
それはだめだ。柳瀬が風邪引いたらもっと大変なことになる。
おれは日が変われば怪我や状態異常は治るけど、柳瀬は治らない。前に風邪を引いた時は愛敬がそばにいたけど、今はいない。昔と違って毎日看病に通うことも出来ない。
「いいから、行こう」
「おい、押すな!」
「押してるのはおれじゃない。アシカとオットセイ」
「そういうのを屁理屈って言うんだよ」
柳瀬がようやく歩き出したので、アシカとオットセイに手を振ってからふたりで並んで森の方へ向かって歩く。
「木戸、着替えてくる」
「俺も海入れば良かった⋯⋯」
「今日は恋心は封印するんじゃなかったんすか、木戸さん」
なんだ、遊びたかったならこっちに来れば良かったのに。
後でまた海に入ればいいか。どうせ靴も濡れてるし。そう思いながら砂浜から湿った土へ足を移動させる。
森に入ると鳥達が飛んできた。いつの間にか足元にタヌキとアナグマもいる。懐かしいなぁ、やっぱり自然の中が一番落ち着く。
拗ねたような顔で、おれの少し後ろをついてくる柳瀬の視線が遠い。そう言えば戻るのを忘れていた。大人の姿に変わって、少し歩みを緩める。
柳瀬の隣に並ぶと同じ視線の高さになる。じっと見ているとようやく俺と視線を合わせた柳瀬は、やっぱりちょっと元気がない。
「なんだよ」
なんだよ、と聞かれてもどうすればいいのか⋯⋯。
柳瀬にはいつもワガママ聞いてもらってるから、たまには恩返ししたい。けど俺は柚姫と違って人を喜ばせる能力はない。
柳瀬が元気になるためには、愛敬が必要なんだよな。愛敬、愛敬⋯⋯。
そうだ、愛敬の話したら元気になるんじゃねぇかな!?
「柳瀬は愛敬のどこを好きになったんだ?」
人を好きになる気持ちがイマイチ分からない俺には、ピンとこない質問内容だ。
柳瀬と愛敬がどう過ごしているのかもちょっと気になる。賢吾と石田は一緒にテレビ見たり、映画見たり、たまにふたりで顔を突き合わせて黙々と仕事してる姿をよく見かける。
俺から見れば友達だった時とあんまり変わらないんだよな。あ、でもたまにくっついてるか?でも俺も翔真によくくっつかれてるからな⋯。
家族と友達が違うのは分かるけど、そこから派生した恋人同士とは一体何なんだ。
違う好きの種類。俺と柳瀬、愛敬と柳瀬の違いは何なんだろう。
「⋯⋯柚木にはまだ早い!」
柳瀬が急に崩れ落ちた。
「俺達はまだ仲良しグループでいいんだよ!せめて小波がいる時に話進めてくれよ!」
「ご、ごめん」
「柚木に恋人が出来るなんて耐えられないから、お願いだから精神状態が穏やかな時に言って!」
「出来ないから大丈夫だよ⋯⋯」
ぽんぽんと背中を叩きながら宥めていると、柳瀬が泣きそうな顔を上げた。
そんなに?質問のチョイスを間違えたのか?愛敬の話したら喜ぶと思ったのに。
「愛敬いいやつだもんな!柳瀬が好きになるのも分かる!」
「お前のいいやつの基準がイマイチ分かんねぇけど。俺もいいやつなんだろ?」
「柳瀬も中川もヒツギもいいやつ!」
「木戸は?」
「⋯⋯いいやつ?」
即答出来なかった。
ふ、と柳瀬が笑う。柳瀬が笑うとほっとする。良かった、やっぱり愛敬の話で正解だったんだ。
「柚木の周りはいいやつばかりだもんな」
すごく優しい瞳で言われて、思わず言葉に詰まってしまう。
そうか、柳瀬の周りはいいやつばかりじゃないよな。
人を殺したり、食べたり、人の欲を扱う場所で暮らしている柳瀬は俺には見せないものをたくさん見て過ごしている。
柳瀬は「柚木は見なくていい」と言った。
俺が蓋をしておくから、裏は任せろ、と。
高校を出る時に、そうやって俺達は分かれた。柳瀬は裏側、俺は表側。
あの時は余裕がなくてそこまで考えられなかったけど、柳瀬、すごくしんどいこと引き受けてくれたんじゃないか。
「⋯⋯柳瀬は、いいやつ」
中学1年生の春、たまたま柳瀬を学校へ誘いに行ったのが俺だったから、柳瀬は俺と友達になってくれた。
俺が全部思い出した後も、柳瀬は側にいてくれる。俺の過去を気持ち悪いとか歪んでるとか否定もせずに、ずっと友達でいてくれる。
大事にしたい。俺の親友だから。
「柚木もいいやつだよ」
今度は柳瀬が俺の肩を引き寄せる。
お互い濡れてるから、ちょっと冷たくて潮の香りがする。柳瀬と視線が合うとつい笑ってしまって、柳瀬はぐしゃぐしゃと俺の髪を撫でた。
「髪、金色に戻せよ。柚木は金の方がいい」
「黒にしろって言ったの柳瀬のくせに⋯⋯」
「黒も可愛いけど、俺は金色が好き。柚木の色だろ」
注文の多い柳瀬だ。まぁ言う通りにするけど。
髪を金色に戻すと、柳瀬はまた笑って髪を指でなぞった。ぽたりと滴が地面に吸い寄せられて、地面の色が変わる。
「早く着替えようぜ。風邪引くだろ」
「俺は平気だけど、柳瀬が風邪引いたら大変だな」
「アホか。お前が風邪引いたら俺が平気じゃねぇよ。ほら、行こうぜ」
また柳瀬と並んで森の中を歩いていくと、少し開けた場所にぽつんと小さな小屋が建っている。
平らな地面の上に積み上げられた丸太がある。木戸が運んだのかな。綺麗にカンナで削って作られたドアを開くと、がらんとした小屋の中に、
「⋯⋯!?」
ペンギンがいた。
黒いくちばし。身体に描かれた帯のような黒い模様と、真っ白なお腹に散りばめられた黒い斑点模様。
「ケープペンギン⋯⋯!」
思わずドアの前で立ち止まる俺の横から、くっくっとくぐもった笑い声が聴こえる。
「これはこれで悪くねぇな」
「は⋯!?どういうこと!?」
「パッセルから『夏休み島』にペンギンが辿り着いたって聞いたから、驚かせてやろうと思って。本当はお前だけ小屋に入ってもらって後から反応見てやろうと思ってたけど、目の前で反応見れるのも悪くねぇな」
なんだ、だからさっき拗ねた顔してたのか。
それにしても、本物のペンギンだ。ケープペンギン。温帯に住むペンギンで、よく日本でも動物園で飼育されているペンギンだ。
『夏休み島』にペンギンが来たのは始めてだ。迷子だろうか。迷子だったら帰して⋯⋯
いやいやいやいやいや!
だめだだめだ!何を迷ってるんだ俺は!迷子だったら返してあげないと!現世の生物に手を出すのはご法度だろ!!
将次のことだって「まぁ、グレーかなぁ⋯⋯」ってゼウスが言ってたし!賢吾とまゆの特別扱いを許してもらってるんだから、これ以上島に動物を連れて帰るのはたぶん怒られる!
『あるじさま、はじめまして』
「可愛い⋯⋯!」
やっぱり連れて帰っちゃダメかな!?
今度は俺が崩れ落ちた。頭を下げる姿が可愛すぎる。こんなのどうやって我慢すればいいのか分からない!
「パッセルが言うには、親がシャチに食べられてひとりぼっちなんだと」
「よし、飼おう」
「お前のペットに怒られんぞ」
「う⋯⋯」
確かに、ルフはルフが認めた生き物しかペットと認めてくれない。
これまでも何度か違う世界の生き物を飼おうと試みたことはあるけど、ことごとくルフに拒絶されて追い出された。追い出された生き物は柳瀬がこの島で預かってくれていて、パッセルが面倒を見てくれている。
「ま、行くとこねぇならここにいさせてやってもいいけどな」
「柳瀬⋯⋯!」
「ここにいりゃいつでも会いに来れんだろ 」
「そ、そうだな!うん、ここにいろよ!」
『ありがとうございます』
ケープペンギンが歩いてきて、俺の身体に擦り寄ってきた。
じいちゃんに見せてあげたかったな。じいちゃんもペンギン大好きだったもんな。
「元気出た?」
柳瀬が覗き込んで、笑いかけてくる。
元気なかったのは柳瀬の方じゃなかったっけ。そう思いながらも、俺は頷いた。
「そうだ!蓮に見せてあげよう!」
「おい柚木、着替えは?」
「後でするー!」
ケープペンギンを抱き上げて、森の中を走っていく。
昔、蓮と一緒にペンギン探ししたことを思い出す。きっと蓮なら喜んでくれる。慌てて走ったから土が跳ねてズボンが汚れるけど、今はそんなことどうでもいい。
「蓮!」
「ん?」
「ペンギン!いた!」
蓮の前に立派なお城が立っている。
パッセルがそーっと魚みたいな何かをお城に乗せるところだった。蓮は俺を見上げて、パチパチと拍手をしてくれた。
「おー、念願叶ったねぇ!」
やっぱり、喜んでくれた。
なんだかほっとする。腕の中のケープペンギンも羽を合わせて拍手をしてくれた。
「見て!こっちもお城出来たよ!」
「すげぇ、でかい!雀のパッセルなら住めそうだな」
「SNSにあげるでやんす!」
「パッセル、そんなのしてたの?」
蓮が笑いながらゆっくり立ち上がって、こっちに向かって歩いてきた。
なんだかうずうずする。どうしようか悩んでいたら、蓮の方からぎゅっとしてくれた。
「嬉しいね!」
嬉しい。
俺は口に出しては言えないけど、嬉しいって思っていいのかも分からないけど、俺の代わりに蓮が言ってくれた気がしてどうしようもなくむず痒くなる。
「この子は家のぬいぐるみとは違う子?」
「蓮がくれたぬいぐるみはジェンツーペンギン、この子はケープペンギン」
『ぼくはケープペンギンですか』
「そう。人間が分類上決めた種族の名前だよ」
「ケープペンギンって呼ぶのも味気ないし、名前つけてあげたら?」
向こうでパッセルが砂のお城をパシャパシャ撮っている。
すごい角度から撮るな⋯⋯。ぼんやり眺めていたら、ピンと来た。
「よし、お前はペイ丸だ!」
『はい!あるじさま!』
「ペン丸じゃないんだ」
「そっちの方が可愛いかなと思って」
「うん、可愛い」
蓮の手が伸びて、ペイ丸の頭を撫でる。
「木戸さん、雀になるんで写真撮ってください!」
「パッセルがモデルになんの?」
「あっしの可愛さを全世界に発信するんでやんす!」
蓮の手が伸びてきて、俺に触れる直前でパッセルから声がかかった。
蓮は手を下ろして俺から離れて行った。遠くなっていく背中を見ることが出来なくて、ペイ丸の頭をじっと見下ろす。
『あるじさま?』
「⋯⋯⋯」
良かった、すぐ離れてくれて。
風邪を引いたのか顔が熱い。そうだ、濡れたままでいたのがいけなかったんだ。早く柳瀬のところへ戻らないと。
「小屋に戻ろうか、ペイ丸」
『はい!』
ペイ丸を抱えて、ふたりから背を向ける。
何となく振り返りたくなくて、そのまま小屋へ向かってまた走った。




