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地球の果ての島の物語  作者: 亜滝紅羽
白兎事件編
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79/85

白兎事件編32(文化祭・2/お店巡り)

切れるところがなかったので長めのお話です。

己の欲望に忠実な大人組と、お互いを気付き合う子ども達です。

(三人称視点です)


 島には各学校は1校舎しかない。

 柚木達が通っていた時も中高一貫学舎として運営されていた。そのため、グラウンドは6学年が使えるよう広く、教室数も各学年3クラスまでは有せるように整備されている。

 10年前、島の人間が消え去ってしまったため昔ほど生徒数はいないが、それでも各学年10名以上は在籍している。その保護者、そして友人、招かざる客もこの祭りに便乗して集まってくる。


「じゃあ、チーム分けはこうね」


 教会前で、柳瀬が豊満な胸元を柚木の腕に押し付けた。

 女の姿に変わった柳瀬は胸元のぱっくり開いたニットを着ている。見下ろすと谷間が見える算段だ。


「却下!!」

「木戸、財布の準備はいい?」


 キリッと中川は眉毛を釣り上げる。

 木戸は駄々をこねるように全力で首を振った。

 

「こんなに可愛い先輩と離れるのなんか嫌だ!みんなで行けばいいじゃん!」

「アホか。目立ってしょうがねぇだろこんな色とりどりな集団」

「じゃあ俺が先輩と行く!柳瀬子ども嫌いだろ!俺だったら最近まで一緒にいたし馴染みがあるはず!」


 必死の抵抗に柳瀬は引いているが、柚木は素直に悩み始める。

 子ども達と一緒に文化祭を回ると約束した手前、柳瀬ばかりに構っていられないのは事実。

 でもみんなで回るのは確かに目立って仕方がない。じゃあ木戸とふたりで行けばいいかと思いかけたその時、中川がふふっと小首を傾げて微笑した。


「そういえば。俺、翔真と一緒に文化祭回ろうって約束したんだった」


 あざとい仕草を加えながら、中川が柚木にすっと手を伸ばす。

 柚木は中川の手を取った。


「約束は守らなきゃな」

「じゃあ、チームはこれで決まりね!」


 コイツ⋯⋯!


 木戸も柳瀬も何も言えない。柚木は約束を重んじる男だ。特に子どもとの約束は破りたがらない。


「中川、俺財布持ってないけど」

「えー?そんなのいいよ。俺が出す出すー!」

「さっきと言ってたことが違う!」


 見事に出し抜かれてショックを受ける木戸を振り返って、中川はパチンとウインクをする。

 

 ぜんっぜん可愛くない!先輩は後ろ姿も華奢で可愛い!あの人、これを見越して先に約束取り付けてたな!


「あんの腹黒天使⋯⋯!」

「ま、無難な分け方だな」

「もー!全然納得いかねぇんだけど!」


 納得はいかないけれど今更この決定を覆せるとも思えない。

 柳瀬は眉を釣り上げて不敵に笑う。コイツもこの状況は想定していたな。先輩どもふたり揃って後輩の恋路を邪魔してきやがって。

 木戸はぶすくれたまま、学校へ向かい始める先輩達の後ろを付いて行く。

 その隣で柳瀬が小首を傾けて上目遣いをした。見下ろすと谷間が目に入って木戸は頭を抱えたくなる。


「悲しい⋯⋯」

「おい、悲しいって何だ悲しいって。こんな超ド級の美人捕まえてよぉ」

「人の美醜に興味はねぇわぁ」


 さらりと悪態をつく木戸の胸元を叩いて、柳瀬は形の良い唇を尖らせる。

 

「じゃあ柚木の顔にも興味ねぇんだな」

「俺にとっては先輩だけが輝いて見える。出会った時から変わらない美しさと可愛さは俺のハートを掴んで離さないんですよ」

「そうか。俺の視点ではアホ丸出しだったけどな」

「それは俺でもそう思う」


 にへらと思い出し笑いをする木戸は幸せそうだ。

 いつも幸せそうでいいな、コイツは。柳瀬は長い睫毛を伏せると、前のふたりには聞こえないように小さく口を開いた。


「木戸、小波が帰ってきたら柚木を家に連れて帰れ」

「えっ、何で?」


 木戸は驚いた。柳瀬が柚木を手放そうとするなんて。昨日あんなに雁字搦めにして柚姫が隙間がないと怒っていたのに。

 

「今の柚木と母親を引き合わせたくない。うちのクソババアは綺麗なものを見ると虫唾が走るタイプだ。柚木とは元々相性が悪い上に、あの可憐な少女の姿は見せられない」

「柳瀬も大概だよね」


 可憐な少女て。柚木香流は男の子ですけど。

 けれど、ふーん、と木戸は納得する。柳瀬の母親はちらりと見たことはあるが、明らかに人の領域を超えた何かだったのは間違いない。

 柳瀬も人ではない。ただ柳瀬は何であるかは誰にも明言していないし、木戸もそこに興味はない。


「ま、もちろんいいよ。ただうちなーんもないけどね」

「警察庁で働いた分の金で冷蔵庫くらい買えよ」

「じゃあ今度先輩と見に行こ。わーい、デートだ」


 呑気な木戸の背中を柳瀬は思い切り叩いた。

 バン!と大きな音がして前のふたりが振り返る。


「痛い⋯⋯」

「手ぇ出したら滅ぼすからな」

「しないよ、大事に気持ちを育てるって決めてんだから⋯⋯」


 ヒリヒリする背中を押さえながら、きょとんとしている前のふたりにへらへらと手を振る。

 前のふたりは何の話をしていたのかな。時々笑いあってたから楽しい話だろうな。


「先輩は中川さん相手だと自然だねぇ」

「そりゃ、中川は柚木の安全地帯だからな」

「俺は安全地帯になりたくはねぇや」


 木戸は柳瀬へ囁くように言うと、前のふたりの元へ早足で進んだ。


「何の話してたの?」

「中川と何食べようかなって話してた」

「見て、これ翔真がくれたパンフレットだよ」

「食いもんばっかり丸して⋯⋯」


 何を楽しそうにしてんだか。目の前の友人達はまるでこれから遊びにでも行くようだ。

 でも、俺も何も言っていない。柳瀬は内心そう思いながらも、口は開かない。

 じっと眺めていると、柚木が近付いてきた。長い髪が揺れ、柳瀬の前でピタリと足を止める。


「柳瀬?」

「⋯⋯怪我すんじゃねぇぞ」


 腕を伸ばして、頬に触れる。

 素直で可愛い俺の親友。俺が触れてもくすぐったそうに目を細めて、安心しきった様子を見せる。その姿に少しだけ胸が痛んで、柳瀬は安堵した。


「おう!任せろ!」

「アホ面」


 今度はデコピンをお見舞いすると、柚木はへへっと声を零して笑った。


「柳瀬も怪我すんなよ!」

「アタシの柔肌に傷一つでもつけようもんなら、蓮ちゃんに責任取って貰わなきゃだわぁ」

「何で俺?慎んでお断りします」

「あっ!ねぇねぇ見て!豪勢な門が立ってる!」


 中川が指を差す方向を見ると、ゴテゴテと食べ物の写真が飾られた両柱の門がそびえ立っていた。

 校舎の門に装飾される形で、右側にフード、左側におやつ。そしてアーチの中央には『第8回中高一貫文化祭』と銘打たれている。


「第8回?」

「文化祭やり始めたのっていつだっけ?」

「文化祭行ってないから分かんねぇな」


 中川と柚木はお互い苦笑いした。

 

「あの時はそれどころじゃなかったもんな」

「侵略者が来たり、違う世界に呼び出されたりで大変だったねぇ」

「そして無傷記録を誇る俺」

「ついこの間百足相手に大怪我してたじゃない」

「⋯⋯⋯」


 柚木は何も言えなかった。中川はつんつんと柚木の頬をつつく。

 その隣を、すっと柳瀬と木戸が通り過ぎて行った。

 ザワ、と門の近くに集まっていた人たちが一斉に視線を向ける。

 中川は柚木の背中を押して、門の影にしゃがみ込んだ。こそこそと陰から中の様子を伺う中川は真剣な表情だ。


「中川、真剣だな」

「いい?柚木、もうミッションは始まってるんだよ」

「ミッション⋯⋯」


 そうだ。子ども達と合流して、アリアスと異世界へ飛ぶ。

 何か起こればすぐにあちらへ飛ぶよう柳瀬から指示を受けている。アリアスを守るためだ。奴らがどんな手を使ってくるか分からない以上、早めに避難させておいた方がいいと柳瀬は言っていた。

 

「いかにアイツらと他人のフリして買い食いできるかっていう、重要なミッションなんだから!」

「⋯⋯ミッション?」


 ちょっと言ってる意味が分からない。

 中川はどこから取り出したのか柚木にカラーサングラスを手渡した。お揃いの薄いブルーのサングラスをかけて、中川はすっくと立ち上がる。


「あのクソ目立つふたりが異性を吸収してる間に空いてるお店に向かうんだよ!さ、今のうちにいこ!」

「これはかけなきゃダメ?」

「いい?柚木、俺達は可愛さの権化だよ。時に可愛さは隠さなければならない時がある。それが今なんだよ!」


 中川の力説の意味が分からないけれど、迫力に押されて柚木は素直にサングラスをかけた。

 視界が悪い。すぐに外すと、中川は黙って柚木にもう一度サングラスをかけさせて、ブリッジ部分を指で押さえる。


「お腹を空かせた子ども達を黙って見ているなんて、柚木香流のプライドが許すの?」

「えっ」

「文化祭の準備の緊張、外部から人が来るというワクワク感、敵襲に備えて朝ごはんをロクに食べられていないかもしれないんだよ。そんな子ども達に、食べ物を差し入れしてあげないなんて保護者失格だよ」


 さっきから中川がおかしい。

 一見正論に聞こえるが、両瞳に食べ物が浮かんでいる。クレープ食べたいと目が訴えかけている。

 柚木は為す術なく頷くしかなかった。柚木が頷くと、中川はふふんと鼻を鳴らしてすっと手を伸ばした。


「ほら、行こう!子ども達が待ってる!」

「う、うん⋯⋯」


 こうして、側仕えの天使は唯一神を引き連れて屋台巡りを満喫した。




 柚木と中川は大量の食べ物を両手に抱え、中学3年生達の待機室へ向かう。

 途中チラチラと見られていたが、誰も声をかけてこなかった。中川は鼻歌を歌いながら、スキップでもするような足取りで前を歩いている。

 はぁ、とため息をついた柚木の耳元に、撫でるような風が吹いた。


「―――」

「え?」

「香流お兄ちゃん!!」


 誰かに呼ばれた気がしたが、翔真の声にかき消される。

 柚木は返答出来なかった。その隣を、女生徒ふたりが談笑して歩いて行く。


「ねぇ、可愛いお人形あったよー」

「私もそのお人形さん欲しいなぁ!どこで売ってたの?」

「文化祭限定デザインで、生徒会室に⋯⋯」


 通り過ぎていく女子生徒が、制服を着た女の子の人形を持って笑いあっている。

 足が止まってしまった。ほんの一瞬、思考が途切れた柚木の様子を見て、翔真は顔を青ざめさせる。

 

 しまった。つい嬉しくて叫んでしまった。身を隠すためにわざわざ変装して来てくれたのに。

 

 動かないふたりを見て、中川がパチンとウインクする。


「お待たせ、翔真!」


 機転を利かせた中川に続いて、夏椎が翔真の後ろから声を上げた。


「遅いですよ!何買ってきてるんですか、大量に!」

「えへへ、みんなで食べようよ!―――日生(ひなせ)、早くおいで!」


 立ち止まっていた柚木へ、中川が声をかける。

 柚木ははっとすると、慌てて中川の元へ駆け出した。

 思考を振り払うようにして、中川の背中へ突撃する。中川は微笑すると、食べ物を夏椎達に預けて柚木の頬を撫でた。


「慣れない場所で緊張しちゃったかな」

「⋯⋯ごめん」

「いいんだよ。大丈夫、俺がついてるから悪いものは寄せつけないよ」


 柚木は何度も頷いた。

 中川はにこっと笑みを浮かべて、柚木から食べ物の袋を受け取る。


「子ども達、紹介するよ。この子は日生」

「日生⋯⋯」

「可愛いでしょ。よろしくね!さ、教室入って腹ごしらえしよ!」

「いや、まだ11時前ですけど⋯⋯」


 夏椎の突っ込みには応えず、中川は待機室のドアを開ける。

 中にはアリアスと晃が無言で座っていた。机は端に避けられ、真ん中にブルーシートが敷かれている。


「ねぇねぇ、何食べるー?」


 にこやかな笑顔で教室へ入ってくる中川を見上げて、晃は嫌そうな顔をした。

 ふふふ、と中川は声を零す。夏椎達も教室へ入ると、隣のお化け屋敷から真生(まお)も入ってきた。


「いやー、(きみ)くんのお陰で大盛況⋯⋯って、あ、こんにちは」

「こんにちは」


 ぺこりと中川は頭を下げた。真生が翔真へ目を移すと、翔真はふるふると首を振る。


「香流お兄ちゃんはお仕事で来られないから、代理で来た中川です」

「あ、そうなんだ⋯⋯。残念だったな、翔真」

「う、うん」


 そこにいるんだけど。


 ちらりと柚木へ目線を移すと、夏椎と一緒に買ってきた屋台飯を広げている。クレープ、フランクフルト、ワッフル、焼きそば、フルーツ飴⋯⋯どれも美味しそうだ。


「いっぱい買ってきたから食べていいよー」

「えっ?」

「恵みを与えるのも天使の務めですから」


 キリッとしているが、自分が食べたかっただけじゃないだろうか。

 言ってる側からクレープを頬張っている。マイペースな天使は、アリアスにはいっとたい焼きを渡した。


「肩の力抜いて、楽しむのも子どもの努めだよ」

「は、はい⋯⋯」


 アリアスも中川の隣に腰掛けて、たい焼きにぱくりとかぶりつく。

 アリアスの目が輝いた。中川はふふっと笑みを零す。


「いい匂い⋯⋯」


 がらりとドアが開いて、えおのがふらふらと入ってくる。

 中川がひらひら手を振ると、またお化け屋敷の方へ戻って行った。かと思えば、苦虫を噛み潰したような顔で戻ってくる。


「⋯⋯私にも食べるもの下さい」

「どうぞぉ」


 えおのはしぶしぶ中川の隣に座った。似たような容姿のふたりは、隣に並ぶと姉妹のようだ。

 

「なんか、きょうだいみたい」

「えおのは俺に憧れてるんだよねぇ」

「生き様に憧れてはいますが、人となりに憧れてはいません」

「わぁ、辛辣ぅ⋯⋯」


 えおのは中川からたい焼きをもらうと、もぐもぐと食べ始める。柚木は何度かえおのとは会ったことがあるので、少し離れた場所にちょこんと座った。


「日生さん、何か飲みます?」

「あ、えっと⋯⋯」


 見上げる瞳は綺麗な海の青だ。声も、子どもの姿の声に変えている。

 確かに、これでは例え警察庁の同僚でも分からないだろう。極めつけにはサングラス。

 でも、サングラスはいらないので夏椎は柚木のサングラスを外した。


「これは没収しますね」

「俺のじゃないんだけど⋯⋯」

「ねぇ日生さん、焼きそば半分こしよ!」


 翔真がすかさず紙皿とお箸を持って柚木の隣を陣取る。

 千切れんばかりに翔真の尻尾が揺れている。いつも通りの光景に柚木はほっとすると、よしよしと翔真の頭を撫でた。


「いっぱい食べろよ」

「えへへ。変わったけど、変わらないね!」

「そりゃそうだろ」


 柚木は手際よく晃の分も取り分けると、3人の前に並べた。

 こういう時、柚木は絶対自分の分は用意しない。翔真はむーと眉根を寄せながらも、お腹は空いているので焼きそばを食べ始める。

 柚木は穏やかに微笑んだ。夏椎はなんだか少しほっとして、肩の力を緩める。


「日生さんって誰の名字なんですか?」


 ひそひそ声で尋ねると、柚木も同じように小さな声で返してくれる。


「俺を育ててくれたばあちゃんだよ」

「なるほど⋯⋯!」


 合点がいった。柚木のそばにいるとこの妙に落ち着く感じ。

 香流さんはおばあちゃん属性だったのか!


「納得しました」

「あ、うん⋯⋯?何を?」

「ねーぇ、食べ物網羅しすぎて回るところほとんどないじゃん」

「なら石田のところにでも行くか」


 石田はステージと、教室でライブ喫茶をすると言っていた。

 アリアスを連れて回らなければならないし。柚木がアリアスを見ると、アリアスもこちらを見ていてぴこんとうさぎの耳が立つ。


「あ、あの。こんにちは」

「うん?こんにちは」


 柚木が応えると、頬を赤らめてアリアスが近付いてきた。

 えっ、と翔真と中川が衝撃を受ける。

 女の子にはまるでモテないはずの柚木が、女装をすると女の子に頬を赤くされている⋯⋯!?


「ど、どうしたのアリアスちゃん」


 慌てて翔真が立ち上がる。これは由々しき事態だ。警戒すべきか見守るか。


 いやでも、木戸さんよりは百倍いい!でもダメ!なんかダメなんだけど!


「お姉様と同じ金髪⋯⋯」


 ほう、とアリアスが柚木の髪を撫でる。

 がくっと翔真と中川は肩の力が抜けた。ただのシスコンだった。柚木は何も気にせず大人しく髪を撫でられている。


「もうすぐお姉様に会えるからな」

「はっ、はい!」


 嬉しそうなアリアスが、柚木の隣でちょこんと正座する。

 アリアスとはこれから行動を共にする予定だ。腹ごしらえしててもらわないとな、と柚木は中川からおやつを分けてもらおうと立ち上がる。


「中川、どれかちょうだい」

「適当に持ってっていいよ。俺はまた後で買うから!」

「たくさんおにぎり持ってきたのに?」

「それも食べる!」


 柚木は苦笑した。まるで屋台を食い尽くさんばかりの勢いだ。

 隣のえおのも無言で食べ続けている。天使という種族は本当に良く食べるなぁ。

 柚木はフルーツ飴を人数分持って夏椎達の元へ戻る。はい、と差し出した時に、翔真からずぼっとフルーツ飴の串を口に突っ込まれた。


「もう。食べなきゃダメだよ」

「甘い」

「か⋯⋯、日生さんは人のことばっかり。俺は一緒がいいんだからね!」


 口いっぱい甘いいちご飴を食べて、串を抜く。食べたことない、不思議な味だ。まだまだ食べたことのないものはたくさんあるんだな、と柚木は感心した。


「休憩したら文化祭回ろうな」

「聞いてないし⋯⋯!」

「聞いてるよ。一緒に行くって約束しただろ?」


 もー!違うんだよなぁー!その前なんだよなぁー!


 はぁ、と翔真はため息をついた。もういいや。俺が香流お兄ちゃんを大事にするから。


 

 

 中川が買ってきた屋台ご飯は、あっという間になくなってしまった。

 ほとんど中川が食べていたことには誰も突っ込まない。翔真は柚木の腕を組んで、尻尾をパタパタ揺らしながら歩いている。歩いているだけでとっても楽しそうだ。


「お化け屋敷展示って発想が面白いな」


 薄暗い部屋の中、迷路のように作られた壁にたくさんの妖怪の解説書が貼られている。


「絵上手だね〜」

「クラスメイトの子が描いてくれたんだよ」

「あっ、鬼だ。木戸と並べて写真撮りたかったな」


 中川は写真を撮って、くすくすと微笑みながら口元に手を添える。


「本人が言ってましたけど、木戸さんって妖怪じゃないんですか?」

「なんかよく分かんないけど俺は元気!って言ってたよ」

「元気かどうかは聞いてないんですけど⋯⋯」

「まぁ、誰にだって言いたくないこともあるだろ」


 柚木は静かに呟いた。驚いたような夏椎の視線を受けて、柚木は人差し指を口元へ当て微笑する。


「なんだって木戸は木戸だよ」

「ふふ。まぁ、解答を求めるだけが正解じゃないからね」


 中川はぽんぽんと夏椎の頭を撫でた。天然と大食らいだけど、このふたりは本当に心根が穏やかだ。

 このふたりから、人として学ぶべきところはたくさんある。


「それもそうですね」


 自分だって、良く分からない他種族の混ぜ物だ。

 聖と闇、天と地、正と悪。ドロドロに煮詰めて溶け込んだものがこの人間の身体の中に混ぜ合わさっている。

 それでも、香流さんはいいと言ってくれた。俺は俺でいいんだから、木戸さんだって木戸さんでいいんだ。

 それはそれとして気になるものは気になってしまうのは、自分の知的好奇心の賜物だと夏椎は苦笑いした。


「ここで最後?」


 中川が薄く張られた黒いカーテンを開ける。


「あ」


 翔真がぽつりと呟いた。瞬間、


『GYAOOOH』


 鈍く地の底から響く音と共に、巨大な骸骨の妖怪が井戸から這い出す。


「ふみゃぁぁぁ!?」


 目に涙を浮かべて中川は柚木に飛びついた。

 柚木もひょいと中を覗いてみると、ヒツギよりも大きな骸骨が井戸からおどろおどろしく登場している。


「でけー」


 一言。


 翔真はがくりと膝をついた。違う。思ってた反応と違う。


 うわ!?とか、ひゃあ!?みたいな反応を期待してたのに。


「骨のお化け!怖い!」

「実体があるから大丈夫!」

「お化けの判断基準絶対間違ってるからね!」


 中川をくっつけながら、柚木はキラキラと目を輝かせている。

 良く分からない生き物を見るのは大好きだ。小学生みたいな反応をする保護者は翔真の期待した反応とは違っていたけど、まぁこれはこれでいいかと苦笑する。


「なぁ、これ本物?偽物?」

「本物だよ。がしゃどくろって妖怪だよ」


 翔真が指を差すと、がしゃどくろの長い骨の指先がちょんと触れた。

 ハイタッチのつもりだろうか。後ろから別のお客さんがやって来ると、がしゃどくろはしゅるしゅると井戸へ戻って行く。


「お疲れ様」


 柚木が声をかけると、井戸が小さく揺れる。

 偉いな、子ども達で考えて色んな工夫をしていることが良く分かる。

 自分が中学生の時はどうだったかな。⋯⋯毎日楽しかったな。中川と柳瀬に会えることが嬉しくて、先生も好きで、学校に通うのは大好きだった気がする。

 そう言えば、文化祭に出れなくて悲しんでいたのは先生の方だった。

 

 全部終わってから、あの時あぁしとけば良かったなと思うのは。いつもその繰り返しだ。


「お化け屋敷楽しいから、今度警察庁のイベントでも提案してみよう」

「却下!!」


 中川の本気の拒絶に柚木はけらけら笑う。


「警察庁で何かイベントするんですか?」


 後ろから、夏椎が尋ねた。柚木は振り返りたかったけれど、ふたりもくっつけているのでさすがにそれは出来ず、こくりと頷く。


「愛敬がなんか楽しいことしたいって言うから、3月くらいに舞台と出店をしてるんだよ。この前は愛敬とまゆと柊が柚姫の歌で踊ってたな」

「日生さんは何してたんですか?」

「C地区のばあちゃん達と花見団子作ってた」


 あぁ、想像つく⋯⋯。

 そしてしっくりくる。脳裏に浮かぶ光景に夏椎はとても和んだ。


「翔真も晃も声かけたけど来なかったもんなぁ」

「⋯⋯ごめんなさい」

「謝ることじゃないだろ。夏椎探し頑張ってたんだもんな」


 頭を撫でられ、翔真はうぅと涙目で顔を上げる。

 きっと、さっきの自分と同じことを思ってるな。


「今度は一緒に何かやる?」


 夏椎も見つかったし、翔真は警察官になると言っていた。

 視線を合わせて微笑むと、翔真は目をぱちくりさせていた。


「歌とダンス以外なら付き合うよ」

「か⋯⋯日生さん⋯⋯っ!」


 左側が重くなった。翔真はぎゅうっとしがみついて、風の音が鳴るくらい尻尾を振る。


「中川も毎年遊びに来てるもんな」

「うちのシスターが色々作って出店するからねぇ。アリアスちゃんも行けたらいいね」

「は、⋯⋯はい」


 振り返る中川へ、アリアスは視線を合わせなかった。


 この先の事なんて考えないようにしていた。学校は楽しい。見たことのないものを見るのも、知らないことを知るのも楽しい。

 お城の中では学べなかったこと。生活するのに必要な家のお仕事、人との関わり、対等に扱ってもらえることのありがたさ。

 特別種として腫れ物を扱うでもなく、そこにあるがまま受け入れてくれるクラスメイトの人達。

 

 私は、エリーゼお姉様に会えたらどうするんだろう。

 この星に残るのだろうか。

 それとも、お姉様を連れてサリュアーナへ帰りたいのだろうか。


 突然拓けた選択肢は、あてのない海の旅へイカダの舟で放り出されたようだ。


「まぁ、先のことは後にしてとりあえず石田くんのところに行こうよ!」

「どこにあんの?」

「えぇっと、高校学舎の2階だって」


 中川は歩きながら、文化祭のパンフレットを開く。

 その隣を、す、と通り過ぎていく人物に思わず翔真は口を開いた。


(しぎ)お兄ちゃん!」


 呼び止められた鴫は、文化祭開始の挨拶の時に笑いあっていたオレンジ色の髪の女の子と並んで歩いているところだった。


「どうも。翔真くん、楽しんでますか?」

「どうも!あたしのオススメはハニーナッツジンジャーオレだぞ!」


 突然オレンジ色の髪の女の子に話しかけられ、翔真は肩を竦ませる。

 鴫は苦笑いして女の子を窘めた。


「いきなり高校生に話しかけられては驚きますよ」

「鴫の知り合いならあたしの友達だと思って、つい」

「お姉さん、副会長さん?」


 翔真が見上げると、女の子はにぱっと微笑んだ。


「あたしは橋元(けい)!鴫の相棒で親友で生徒会副会長の高校2年生だ!」

「相棒で親友」

「あたし達は男女の友情が成り立つ数少ない成功例だぞ。例え同衾しても何も起こらない自信がある!」

「静かにして下さい」


 鴫はため息混じりに橋元の腕を掴んで歩き始めた。

 唇を尖らせて文句を言いたげな橋元へ冷めた瞳を寄越して、鴫は夏椎達へぺこりと頭を下げる。


「俺達は見回りがあるので、失礼します」

「鴫ぃ!まだ部活への勧誘が終わってないぞ!」

「それは俺がやっておきますから。君が喋るとあらぬ誤解を招くんですよ」


 鴫はちらりと柚木へ視線を向けると、す、と人差し指を口元へ当てた。


 黙っておくから大丈夫ですよ。


 暗に仄めかされ、柚木はう⋯⋯と肩をすぼめる。年下に気を使わせてしまった。でも知らないフリをしてくれる鴫はやっぱり出来た弟だ。


 それにしても、どうきんってなんだろう。ぞうきんの仲間かな?


「中川」

「俺には答える術を持ちません」


 中川は先手を打った。知らないことをすぐ聞いてくるのはいい事だけれど、世の中知らなくていい事もたくさんある。

 柚木はそっか、と納得した。素直で結構。このままさっきの単語は忘れて欲しい。

 でも、柳瀬と木戸に聞かれるのも後々面倒くさいな。

 とか何とか考えていたら、「あ」と柚木がぽつりと声を零した。


「どうしたの?」


 中川も柚木の視線を追うと、知った顔があった。

 ファー付きベストのロック調の若い男と、それとは対照的なぴしっとしたタイトスカートを履いた若い女が同時に表情を綻ばせる。


「よー!か⋯⋯」


 柚木はしーっとジェスチャーをした。若い男はおぉっとたじろいで、うーんと腕を組む。


「日生って呼んであげて、クロちゃん」


 中川はにこやかに手を振った。夏椎は不思議そうな顔で中川を見上げる。


「どちら様ですか?」

「悪魔の偉い人と、天使の偉い人」


 中川はさらりと答えた。

 天使の偉い人の方は、見たことがある。輝くような赤い髪の白いスーツの女性は、確か最高神ゼウスと一緒にいた天使のひとだ。

 

「るー、元気してたー!?」


 と言うことは、紺色と黄色が織り交ざった派手な髪の男性が悪魔の偉い人なんだろうか。

 悪魔であるらしい男性はにこやかな表情を浮かべながら駆け寄ってくる。細身の大きな人で、近くに来るとひょいっと夏椎の顔を覗き込んだ。


「この子が噂の子?」


 さっと夏椎の前に翔真と晃が立つ。

 悪魔のひとはニマニマと微笑んで、ぽんぽんと翔真と晃の肩を叩いた。

 

「イイね!その調子!」


 なんか軽いなこの人。

 どことなくチャラチャラしている。格好もチャラチャラしている。金属がいっぱい付いていて邪魔そうだ。


「何しに来たんだよ、サ」

「ノーンノンノン!俺は黒田くん!あっちはシロタ株!」

「乳酸菌?」

「俺達はきちんと保護者枠として参加してるから、遊びに来るなと言う君との約束は破っちゃいなぁい」


 中川の背中に隠れる柚木の目の前で、チッチッチと黒田と名乗る悪魔は人差し指を振った。

 遅れてきたシロタ株⋯⋯もといセラフィムは、申し訳なさそうにペコペコと何度も頭を下げる。


「ルナ⋯⋯えおのに、見に来て欲しいと頼まれたのですよ」

「俺なぁんにも聞いてないけど⋯⋯」

「何故」

「えおのは俺に冷たいからぁ」


 はぁー、と中川はため息をついた。まさかこんな所で合流してるとは夢にも思ってないだろうなぁ。

 

「俺はグルーに来るなって言われたから来た!」


 なんか相反する言葉が出て来た。


「来るなって言われたのに来ちゃったの?」

「嫌よ嫌よも好きのうちでしょ」

「お兄さんはグルーのお兄ちゃん?」


 翔真が尋ねると、黒田はウインクで答えた。


「俺の子分はみんな俺の親戚!」

「ダメですよ、そんな言い方しては」

「じゃあ俺の親戚はみんな俺の子分?」


 より悪くなった気がする。

 セラフィムは頭を抱えた。中川はうふふと微笑んで夏椎にこそりと耳打ちする。


「あのふたり、高校生の時に島にいたんだよ」

「そうなんですか?」

「だから日生も仲良しなんだよね」


 急に話を振られ、柚木は狼狽しながら頷いた。

 仲良し?なのかな。まぁいつも触ってくる変な神よりは断然良い。

 セラフィムを見ると、ぱちりと目が合って困ったように眉尻を下げた。


「上司には山積みの仕事を託してきたので、安心してください」

「それは本当にありがとう」


 柚木と中川は同時に深々と頭を下げた。

 

「るー達は今からどこ行くの?」

「石田くんとこだよ」


 さっきも言ってたけど、るーって何なんだろう。


 夏椎は中川を見上げる。中川は特に気にした様子もなく会話を続けている。


「そういやとごたんは?」

「今は別行動だよー。多分その辺の人だかりの真ん中にいるんじゃないかな」

「後で探してやろ」


 にひひと黒田は楽しそうだ。その笑顔のまま、ぽんぽんと夏椎達の頭を軽快に叩いていった。


「うちの可愛いテディベアちゃんを今後ともよろしく」

「テディベア⋯⋯」


 夏椎達はリボンを巻いたグルーを想像した。妙に似合っている。ふふふと後ろでアリアスが小さく笑みを零した。

 

「ヒナちゃんもまたね」


 すごく不名誉なあだ名を付けられてしまった。

 柚木は嫌そうな顔をする。絶対今後も言われる気がする。でも今は何も言えない自分が歯がゆい。


「黒田さん。長居してはお邪魔になりますし、もう行きましょう」

「はいよー。るー、そのうち堕天しろよ!るーならいつでも大歓迎」

「しません」

「絶対やだ!」

「それはダメです」

「わはは、三部合唱」


 ケタケタ笑いながら去って行く背中を、セラフィムはぺこりと頭を下げてから慌てて追いかけた。


「ベル。ルシフェルは絶対あげませんからね」

「じゃあ俺は香流もーらいっ」

「それもダメですからね!」

「ならセラがおいでよ、俺んとこ」

「⋯⋯1日だけですよ」

「やったね、デートだ」


 さらりとそんな事を言われては、真面目なセラフィムには否定することは出来ない。

 うぐ、と言葉に詰まるセラフィムの鼻先をつんとつついて、黒田は嬉しそうに頬を緩ませた。


「イチャイチャしてる⋯⋯」


 そんなふたりの様子を眺めながら、ぼそりと翔真が呟いた。


「あのお姉さんとお兄さん、天使と悪魔なのに恋人同士なの?」

「え?付き合ってなかったと思うけど」

「⋯⋯大人の距離感って難しい」


 翔真は眉根を寄せた。結局恋人同士って何なんだ。

 中川は笑顔で誤魔化した。


「中川さん、宙なのに何でるーなんですか?」

「俺の天使名がルシフェルだから〜。ちなみにあのふたりにもちゃんと名前があるんだよ」

「白田さんと黒田さん⋯⋯」

「そ。白田さんと黒田さん」


 ふふっと中川はにこやかに微笑む。


「名前がふたつあってややこしくならないんですか?」

「ならないよ。それに、俺にとっては(そら)はとっても大事な名前だから」


 尋ねる夏椎に、中川は嬉しそうに声を弾ませて答える。

 

「宙は俺の神様がくれた大事な名前。記号的に付けられた天使名よりもよっぽど温かくて大切な名前だもん」

 

 例え島で暮らすための登録上の名前だとしても、中川は天界でも宙と名乗っている。ルシフェルと呼ぶのは上司と旧知の天使だけだ。


「それに、地上で天使名を使っちゃいけないんだよ。天界でそういう決まりがあるの」

「理由はあるんですか?」

「俺も良く知らなーい。何でだろうねぇ」

「何でだろうなぁ」


 細かいことを気にしない中川と柚木は、顔を見合せて小首を傾げた。

 何故疑問が出れば出た時に解消しないのか。気になったことは解決したくならないのか。職業柄細やかな疑念は気にならないのか。

 色々突っ込みたかったが、柚木はあっけらかんと「気にならない」と答えそうだ。俺が気にするのも無駄かと夏椎はため息をついた。


「ごめんな、アリアス。知らない人と立ち話して」


 そしてこういう気配りだけは出来るんだよなぁ、このお巡りさんは。


「いえ!グルーさんとえおのちゃんの保護者の方なら私もきっと無関係ではないです」

「いい関係性を築けてて何よりだねぇ」

「高校卒業までずっと一緒だもんな。クラスメイトがいいやつらで良かったな」

「はいっ⋯⋯」


 当たり前のように言われ、アリアスは咄嗟に頷いてしまった。

 頷いた後に、あっと口を手で塞ぐ。柚木は気にする様子もなく前を歩き出す。


「クロちゃん来てるの知ったら柳瀬嫌がるだろうねぇ」

「アイツすぐ柳瀬の写真撮るもんな」


 前を歩くふたりは、何事も無かったかのようにいつも通りだ。

 通りすがりの生徒達にちらちらと見られているのも気にしていなさそうだ。鈍感で天然なふたり組の中ではきっとアリアスを断罪するつもりなんて毛頭ないんだろうな。

 夏椎はアリアスに向かって苦笑いした。


「当たり前のように言われると困りますよね」

「いえ、あの⋯⋯」

「高校生になったら部活があるんだって!アリアスちゃんも明日の舞台見に行こうよ!」

「あぅ、あの」

「あぁ、高校生のイベントだよね。見に行ってもいいんだ」

「何で夏椎知ってるの?」

「先生がHRで言ってたよ。中学生は休校だから明日は自由登校なんだね」

「真生が行くって言ってたから、みんなで行こうよ!」

「確かに、みんな行くって言いそう」


 アリアスが口を挟む間もなく、話がどんどん進んで行く。


 ブカツとは何でしょうか。キュウコウとは。ジユウトウコウとは?


 分からない単語がたくさんあって、アリアスは戸惑うことしか出来ない。


「晃はなんかしたいことある?」

「夏椎がしたいことなら何でもいい」

「聞いたの翔真なんですけどぉ」


 はぁーやれやれと肩を竦めて、翔真は後ろから柚木へ飛び付いた。


「日生さんっ!来年も一緒に回ろうね!」

「いいよ」

 

 大好きな家族と友達と一緒にゆったりとした歩調で校内を歩く。

 初めて来た文化祭は賑やかで、そこらかしこから呼び込む声や笑い声が聴こえる。

 

 夏椎がいなかった時は、学校生活を楽しむ事がなんだか悪いことのように感じていたけれど。今は、学校の中を歩いているだけでもすごく楽しい。

 去年も来れば良かったな。

 きっと香流お兄ちゃんなら、仕事があるって言いながら去年も来てくれただろうな。

 過ぎた日はもう戻らない。選択の後悔をしたって選び直すことは出来ない。

 今、ここに香流お兄ちゃんがいて、夏椎がいて、おれすごく幸せだな。

 

 うへへと眉尻を下げながら、翔真は千切れんばかりに尻尾を左右に揺らした。

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