白兎事件編28(文化祭前日・中編・2)
柚木が少しだけ蓋を開けるお話です。
学校寮へ戻ったかと思えば、木戸はそのまま機嫌良く駅へ向かっていく。
柚木は黙っていた。どうせ力勝負では木戸には勝てないし、下ろす気もなさそうだ。
もう諦めて寝ようかなと思っていたところで、木戸から呆れたような声がかかる。
「いや、寝ないでよ。デートだってば」
「これは誘拐だろ」
「じゃあ下りても付いてきてくれる?」
「⋯⋯帰らないの?」
「せっかくふたりきりなんだから、遊びに行こ」
「遊びに行く気分じゃない」
緩く押し問答をしながらたどり着いた場所は、島唯一の駅舎だった。
駅舎の屋根に下りた木戸は、柚木をゆっくりと下ろす。何をばか丁寧にするのか知らないが、そう言えば昔から木戸に放り投げられたことはなかったなと思う。
「まだ人少ないね」
「木戸、俺は⋯⋯」
「まぁまぁ、こっち来てよ」
木戸に手を引っ張られるようにしてふたりで駅舎の屋根上を歩き始める。
新しく作り替えられた屋根は丈夫で、人ふたりが乗っても軋みもしない。促されるようにして歩く背中を眺めながら、何をどうすればいいのか靄がかった頭で必死に考えていた。
屋根の端まで来ると、木戸は何もない空間を軽く指で弾いた。瞬間、何とか人ひとりが入れるくらいの穴が現れる。
向こう側には緑と茶色が見える。木戸は立ち止まる柚木の手を引き寄せた。
「先輩、先どーぞ」
「やだ。行きたくない」
「まぁーまぁー」
抵抗していると、がっしりと押さえつけられ、無理やり穴の中へ押し込まれる。
木戸にしては珍しく強引だ。何なんだよ、もう。
穴を抜けた先は、土の地面があった。少し湿った土の上に座り込んで不満げに眉根を寄せる柚木の頬に、すり、と固い毛に覆われた何かが優しく触れる。
『主様』
「⋯⋯えっ!?」
柚木が振り返ると、ゾウがいた。
唖然と口を開けたままの柚木の周りから、ひょこひょことたくさんの動物達が顔を出す。
『主様!』
『わぁ、本当に主様だ!』
途端に集まってくるたくさんの動物達に、柚木は目を丸くする。
後からよいしょと狭そうに木戸が入ってきた。木戸が空間を閉じると、その先からゆったりとした歩調で老人が歩いて来る。
その人には、見覚えがあった。
「園長さん!」
「はい、はい。お久しぶりですね、小さな神様」
「もう小さくねぇよ⋯⋯」
穏やかに微笑む老人は杖をついている。
その隣を支えるように、ひとりの女性がついていた。その女性にも見覚えがあった。ペンギン舎にいた飼育員さんだ。
ふたりが働いていた島の動物園は、柚木が中学生の時にとっくに閉鎖されている。その後の消息は分からなかったが、てっきりあの白い光に包まれて亡くなったものだと思っていた。
それに、動物達も。各地に散らばって、第2の生を生きるのだと園長から聞いていたのに。
覚えている。背中に乗って園内を散歩したゾウも。首を下ろして滑り台をつくって、怖がる中川と一緒に滑らせてくれたキリンも。
ゴリラに強さの秘訣を聞いたけど良く分からなくて柳瀬が呆れていたことも、木戸と一緒にトラとチーターとかけっこして柳瀬に怒られたことも。
忘れない。忘れたことはない。あの日々は柚木にとっては紛れもない宝物だった。
「何で?みんなバラバラになったはずじゃ⋯⋯」
「俺と園長さんでこっそり集めといたの」
「へ?」
「島にいた動物達を買い戻して、園長さんにお世話をお願いしてたんだよ。死んじゃった動物もいるから全部じゃないけど。大体帰ってきたよねぇ」
「はい。私も、この子達と別れるのは寂しかったですから」
園長は柚木の前に立つと、ゆっくりと腰を曲げた。
優しげな瞳が細められるのを眺めながら、柚木は何も言えなかった。
「⋯⋯なんで?」
ただただ、疑問しか出てこない。
良く分からない。どうして、そんな事をする必要があるんだろう。
確かに、動物園が閉園してしまって、動物達やそこで働く人達に会えなくなったのはすごく残念だった。とても優しくて穏やかな人達だったから。少しだけ村の雰囲気に似ていて、しょっちゅう行きたがっては中川と柳瀬に呆れられていた。
でも、なくしたことは諦められた。
諦められる。そうするのは慣れていたから。もう一度会いたいなんて口にしたこともなかった。
木戸は柚木の前にしゃがみこんで、柚木の寄せられた眉間をきゅっと摘む。
「ただ先輩が喜ぶかなと思っただけだよ」
「⋯⋯意味が分からない」
「じゃあ意味を付けましょう。俺にとっての香流は、初めて出会った時のアホで明るくて優しい記憶がなかったときの香流なんだよ。俺の知らない過去に苦しめられてる香流が、ここに連れて来ることでちょっとでも元気になってくれたらいいなと思ったの」
「なんで」
「好きな人には全力で尽くすタイプなの、俺」
何をそんな自慢げに。
分からない。言われていることも、笑顔を向けられる意味も、俺はここまでしてもらうひとではないのに。
知らないからそんなこと言えるだけだ。
俺は、ずっと。
「香流はひとのことはすぐに褒めるのに、自分のことに関してはとことんネガティブだよねぇ」
夜空みたいな黒髪を撫でながら、木戸は掬うように言葉を紡ぐ。
「すかすかの自己肯定感の上にたくさん荷物積まれて重かったね。でも、ひとりで持たなくていいんだよ。⋯⋯話してよ。俺が力持ちなの知ってるでしょ」
「で、できない⋯⋯っ」
「聞いたって嫌わないよ。大体、中川さんと柳瀬は良くて何でずっと一緒にいた俺はダメなの」
柚木の昔の話を聞きたいかと問われれば、別に聞きたくはない。
知ったところでもう取り戻せない。何も出来ない。失ったものは戻らなくて、人は還って来ない。
でも、それで香流が少しでも楽になるなら俺は聞きたい。
「俺、どんな香流も好きだよって言ったでしょ」
「お前には、言いたくない!」
「なんで」
「だって縋りたくなるから!」
なんか可愛いこと言われた⋯⋯。
「中川さんと柳瀬はいいの?」
「良くなかった!話したくなかった!だってアイツら怒ると怖いから!本当は嫌だって言いたかったのに間違っていいよって言っちゃったんだよ!」
理由がすごくアホだった。
まぁ想像出来る。どうせ柳瀬が問い詰めたんだろうなぁ。素直は香流はそれに言いくるめられた、と。想像に易いわ。
「ネガティブで悪かったな!どうせ俺は自分のことなんか大嫌いだよ!俺以外がみんな優しくてすごい人なんだよ!そうやってずっと言われ続けてきたんだからもうそれでいいだろ!」
「香流だってすごいと思うけど」
「俺は地球の神だからみんな仕方なく好きだって思うんだよ!俺がすごいのは目がいいことだけ!」
ちょいちょい可愛いの挟むの勘弁してくんねぇかな。
真面目に聞けばいいのか笑えばいいのか分からない。とりあえず神妙な感じでいるけど、肩が震えそう。
「お前おかしいんだよ!俺は男だし、みんなにアホって言われるし、他にたくさん女の子いるのになんで俺なんだよ!お前の面倒見てたのは中川と柳瀬だって一緒だろ!男がいいならそっちへ行けよ!」
「勘弁して下さい」
「俺よりすごくて、優しくて、頭もいいし女に見える!」
「アイツらなんかいらないいらない。香流がいいです」
「俺は、―――歪で腐ってるから」
苦しい。
苦しい。
胸が苦しい。息ができない。でも止まらない。言いたくないのに勝手に口が動いてしまう。
「女みたいなのに男の身体してるから、気持ち悪い。柚姫は完璧なのに、俺はおまけで生まれただけだから、役に立たない。家族の役に立つにはアイツらの言う通りにしなきゃいけないんだ。じゃないと柚姫と賢吾に同じことするって言うから、従ってた」
柚木は木戸を睨み上げる。
「どこを切り落とされても、壊されても、息が出来ないくらい痛くても、ただ従ってた。俺は人形だったから」
「⋯⋯嫌じゃなかった?」
「嫌に決まってんだろ!!」
声が、出た。
腹の底から柚木は叫ぶ。厳重に締め付けていた蓋が開かれる。ふつふつと湧き出る怒りが止まらない。
「痛いのなんか大っ嫌いだよ!誰が好き好んで女みたいな真似なんかするか!重いし痛いしうざいし気持ち悪いしうるさいしアイツらなんてみんな大っ嫌いだった!!」
ずっと言えなかった。
言ったって無駄だって分かってた。理解した顔をして諦めていた。
諦めるのは得意だ。少しずつ傷を隠すのが上手くなって、上辺を泳ぐだけの自分がどれだけ大嫌いだったか。
惨めな自分に嫌気が差して何度殺したかったか。
「柚姫だけでいいなんて俺が一番思ってたよ!あんな思いしなきゃならないならずっと死にたかったよ!死ねばいいんだよ、俺なんか!なのに、治るから!⋯⋯っ柚姫が、賢吾が、生きて欲しいって、言うから⋯⋯!」
違う。俺だって一緒にいたかったんだ。生きていくなら一緒が良かった。どれだけ我慢してでも一緒が良かった。
でも死にたかった。終わらせたかった。もう怖いのも痛いのも人の中で生きていくのも本当は怖くて仕方がなかった。
いつ、また拒絶されるか分からないのに。
「香流は人形じゃないよ」
ぽつりと木戸が呟いた。
真っ直ぐに見つめられ、柚木は息が詰まる。
「嫌だったって、ちゃんと言えるじゃん」
「⋯⋯っ!」
「嫌だったんだよ。いいんだよ、当たり前だろ。香流は何も間違ったことなんか言ってない」
「⋯⋯あ、」
途端に青くなる柚木の身体を抱き寄せて、木戸はキッパリと言い放つ。
「俺は絶対拒絶しない!」
びく、と柚木の細い肩が震える。
「塩対応慣れしてる俺が香流のこと今更拒絶するわけないんだから!むしろもっと言って!でもちゃんと深呼吸して!」
「し、深呼吸⋯⋯」
「この腕はこう!」
柚木の腕を自分の背中へ回させて、木戸は柚木の顔を胸元へ押し付ける。
「香流の顔はここ!顔見ないから、泣いていいよ!」
「な、⋯⋯なんで?」
「俺の前では我慢しなくていいから!⋯⋯と言うかごめんなさい!知らなかったとは言え嫌なこと思い出させることばかり言って反省してます!」
「い、言ったっけ⋯⋯?」
勢いに押されてされるがままの柚木は戸惑うことしかできない。
あれ、俺さっきすごく醜いことを言ったよな?なんでこんな事になってんの?
「俺、香流の嫌がることはしないから。一生プラトニックでもいいです」
「プラスチック?」
「はい、もうそれでいいです。じゃあこのまま復唱しましょう。ちゃんと言うんだよ」
「⋯⋯??」
何が何だか良く分からない。
でも、ここは安心する。
うるさい心臓の音が聴こえる。大きな手が背中に回されて、少しずつ呼吸が整っていくのが自分でも分かる。
「―――寂しい!」
「さみ⋯⋯」
「ちゃんと言って。寂しい!」
「さ、寂しい⋯⋯」
「帰りたい!」
「帰りたい」
「俺の身体は俺のもんだコノヤロウ!」
「俺⋯⋯の身体は俺のもんだ、このやろう」
「俺は人形じゃない!」
「俺は人形じゃない⋯⋯っ」
「ばあちゃんを返せ!」
「ばあちゃん⋯⋯」
「家族と一緒にいたい」
「家族と、⋯⋯っ!」
柚木は言葉に詰まる。
木戸はきつく抱き締めた。いいから言えと。そう促されて、柚木はようやく言葉に出す。
「⋯⋯っ離れたくなかった⋯⋯!」
うん。分かってた。
やっと知ることが出来た。香流にかけられた呪いの正体を。
香流はずっと呪われている。底の見えない沼から足掻くことも出来なくて、息継ぎもできないまま溺れ続けている。
聞き分けのいい顔をして、いい子でいようとしなくていいんだよ。離れたくなかったよな。ずっと失くすことを怖がってるのに、居場所を奪われて何も出来なくて苦しかったよな。
「こんなにちゃんと自分の気持ちが言えるんだから、香流は人形じゃなくてちゃんとみんなと同じなんだよ」
「で、⋯⋯も、言ったら、またアイツらがくる⋯⋯!」
「次は俺が全員消してあげるから。こんなに怖かったのに、良く頑張ったな⋯⋯」
「⋯⋯っ、なんで!また、人形って言われなきゃならないんだよ⋯⋯!」
もうあの時のことは何も思い出したくない。
なのに、たった一言で引き戻される。引き摺り落とされる。振り払おうとしても脳が固まってしまって、そこから視線を逸らせなくなる。
「痛い、のも、怖いのも、いやだ⋯⋯!嫌だ、もう嫌だ⋯⋯!」
嫌だった。夜中に連れて行かれることも。その中で与えられる耐え難い痛みも。家族を盾にされたことも。拒絶されるのが怖くて、助けて欲しいなんて誰にも言えなかった。そのくせ、逃げることもできなかった弱い自分も。
大嫌いだ。アイツらなんか大嫌いだ。何でこんなに痛くて苦しいのに俺の方が悪いんだよってずっと思ってた。
あんな奴ら死んで当然だ。賢吾が言う通りそう思いたかった。なのにそう思えなかったのは、自分が悪いと言い聞かせないとアイツらが帰ってくる気がして怖かったんだ。
「好きで、こんな姿で、生まれたんじゃない⋯。気持ち悪いって、言われるのもいやだった⋯⋯!俺は、蓮みたいになりたかった⋯⋯っ」
「――⋯⋯!」
急に名前を呼ばれ、木戸は思わず身体が硬直する。
「蓮のばかぁ⋯⋯!お前なんかだいっきらいだ!」
「仕方ねぇじゃん、俺だってこんな大きくなるつもりなかったんだよ⋯⋯」
「小さい方が可愛かった!」
「何でアンタら先輩方は俺に可愛さを求めてくるんですかねぇ」
怒りの矛先が俺に変わってしまった。
でも離れない。本当に仕方ねぇな、香流は。
甘えるの下手すぎんだろ。可愛すぎて嫌になるわ。
「香流はさ、分かってねぇなぁ」
「なにが⋯⋯」
「みんな、神様だから香流が好きなんじゃなくて、香流の優しいところが好きなんだよ。アホで天然で頼りないところも、何も考えなしに突っ走るところも可愛くて仕方ねぇんだよ」
「悪口⋯⋯」
「これが悪口じゃねぇんだよなぁ」
柚木の身体を離して、濡れた頬を指で拭う。
少し赤く色付いた頬が可愛いな。木戸はからりと明るく笑うと、ふにっと両手で柚木の頬を伸ばした。
「今度は俺が香流に言葉を教えるよ」
教えるのが苦手なのに、言葉を知らなかった俺に一生懸命言葉を教えてくれた香流の優しさが嬉しかった。
次は俺が返す番だ。案外泣き虫なこの優しい神様は、ひとのことばかり大事にするんだから。
もう我慢しなくていいんだよ。
もう積み上げなくていいんだよ。
重いものは全部俺が持つよ。きっとそのために俺は生まれてきた。
「嫌だって言えて偉かったね」
「―――⋯ぅ」
蓮のアホ。
また、コイツの前で泣かされる。崩れていく。嫌だと思うのに、止められなくて壊れてしまう。
何で蓮には簡単に見破られてしまうんだろう。我慢出来なくなるんだろう。年下のくせに、俺の方がお兄さんなのに、上手く騙せないのが悔しい。
「子ども扱いすんな⋯⋯」
「してねぇわ。好きだから大事にしてるだけですー」
「バカ。大嫌いだ。蓮なんかうざくてデカくて顔だけ男のくせに」
「それは悪口」
ごん、と柚木は木戸の胸元に頭突きをする。
「⋯⋯手紙が落ちてきたんだ。俺が人形だったことを知ってる奴からの手紙。書いてあったのはいつも言われてた文言で、たったそれだけなのに、頭が真っ白になった」
「だからずっと様子がおかしかったのかぁ」
「俺はちゃんといつも通りにしてたのに。木戸が大きいせいでバレた⋯⋯」
するりと大きな手で耳たぶを撫でられて、固まった柚木の両頬を木戸は包む。
「俺に隠し事が出来ると思うなよ」
「⋯⋯はい」
なんか怒られてる⋯⋯?
整った顔に凄まれて、柚木の思考が停止した。やれやれと肩を竦める木戸の上から、園長が柔らかく声をかける。
「おふたりとも。中でコーヒーでも飲みませんか」
「ご、ごめんなさい」
「いえいえ。辛いことは人に話すと楽になることもありますからね。幸いここには人は来ませんから、ゆっくりしていってください」
「⋯⋯⋯」
ゆっくりなんて、していていいのだろうか。
戸惑う柚木の手を引いて、木戸はひょいと立ち上がらせる。見上げてくる瞳が愛らしくて、可愛くて、木戸はうーと唸って柚木の肩口に頭を乗せた。
「ふたりの時は名前で呼んで欲しい」
「⋯⋯もう怒ってない?」
「怒ってる。でも香流に怒ってんじゃねぇから」
木戸の言っていることが良く分からない。
木戸は分からんちんの柚木の軽くて華奢な身体を抱き寄せて、はぁー、と大きなため息をつく。
「俺は、俺に腹立ってんの」
「蓮は何もしてないだろ」
「はい。何にもしてねぇの、俺は。愛敬が怒ってた理由がよーく分かったわ」
何も知らないくせにのうのうと好き好き言ってた俺を放任してた柳瀬は、その方が香流にとって都合がいいと判断したからだろう。
俺は穏やかな世界に取り残されたままだった。俺だけが記憶のなかった香流と一緒にいたんだ。
やっと追いついた。追いついて、手を繋ぐことができる。ようやくここにいる香流を抱き締められる。
でも、周りの視線が痛い。早く譲れと動物達の圧がすごい。
「⋯⋯ま、のんびりしようよ。今日は何もする事ないでしょ」
仕方なく木戸が柚木の身体から離れると、柚木の周りに動物達が集まってきた。
心配そうに見上げたり、擦り寄ったりと動物達の愛情表現は素直だ。諦めて木戸が歩き出そうとすると、柚木は咄嗟に木戸の服を掴んだ。
「蓮⋯⋯っ」
「ん?」
は、と柚木は目を見開いて言葉に詰まる。
何してんだ、俺。何言おうとしてた!?ぐるぐると脳内をヒヨコが闊歩して、導き出した言葉はたった一言だった。
「⋯⋯バカ!」
「あ、はい」
自分がとった訳の分からない行動にぐあっと顔に熱が集まる。
柚木は手を離して園長の後を追い始めた。動物達もそれに続く。ぞろぞろと賑やかな列を眺めながら、木戸ものんびり後に続いた。




