表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球の果ての島の物語  作者: 亜滝紅羽
白兎事件編
PR
71/74

白兎事件編28(文化祭前日・中編・1)

警察庁のお話、子ども達のお話です。


(三人称視点です)

 

 話は平行線を辿っている。

 警察庁30階。白い檻と黒い檻が静かに佇むその部屋で、むす、と不機嫌を隠さず黛はソファーの上で足を組んで眉根を寄せている。

 眼前には初老の男が居心地悪そうに縮こまっていた。高価そうなスーツも型なしの萎縮具合だ。


 現在早朝4時30分。


 眠らなくてはならない身体は不便だ。仮眠をとる間に話を詰められるのも厄介なので、夜中はずっと睨み合って過ごしていた。

 はぁ、と何度目かのため息をつく。

 びくっと初老の男が反応した。(まゆずみ)が顔を上げたその先で、ゆっくりと扉が開かれる。


「⋯⋯賢吾!?」


 黛は思わず声をあげた。

 川崎は黛の顔を見てほっとした表情を浮かべる。対照的に、黛はぎりりと歯噛みして連れてきた男を睨みつけた。


「おい加瀬!香流の家族には手を出すなって言ったろ!」

「僕は指先ひとつ触れていないよ。この子から来てくれたんだもの」

「は⋯⋯!?」

「君が心配だったんだよ、ねぇ」


 黛はそれ以上は何も言えず、頭を抱えて俯いた。


 くそっ、くそっ!


 俺の弟いい子だなぁもう!


 黛はぱっと顔を上げ、川崎を手招きする。川崎は黛と加瀬と呼ばれた男を見比べると、促されるまま黛の隣に腰掛けた。

 柔らかなソファーへ身体を落ち着ける。加瀬も小さな初老の男の横に座って、にこりと柔和に微笑んだ。


「さて、話の続きをしようか」

「話す事はねぇ。さっさと現世へ帰れ」

「柚木くんを連れてなら帰るよ」

「な、まるで話が通じねぇのよ」


 黛は加瀬を指さした。川崎は何も言えず苦笑いを返す。


「会議中に香流を物扱いして机投げたとこまでは聞いたけど⋯⋯」

「あぁ、それはこっち」

「ひぃっ!」


 ギロリと黛に睨み付けられ、初老の男は一瞬で縮小した。

 まぁまぁと隣の加瀬が宥める。


「畑中さんは人間社会では偉い人なんだから、あんまり虐めないでよ」

「はぁー?お前らのルールをここへ持ち込んでくんな。それを言うならこの島のトップは俺だよ、敬った上でさっさと帰れ」

「ね、まるで話が通じないんだよ」


 あははと加瀬は和やかに笑った。

 ものすごくギスギスしている。こんな苛立った黛を見るのはとても珍しい。

 子どもの時に村の大人相手にブチ切れていた時以来だ。その時に黛だけは怒らせないようにしようと柚木と一緒に心に誓ったことを思い出した。


「大体、さっきも言ったけど現世には柚姫が赴いてるだろ。それで十分じゃねぇか」

「求めているのは無機物よりも有機物だよ、黛くん」

「そういう言い方をすんな!」


 ぶわ、と黛が重い殺気を放つ。

 ふっと畑中と呼ばれた初老の男が意識を失った。隣の川崎は驚いて、黛の肩を宥めるように叩く。


「落ち着いて、雲雀」

「あぁ、なんだ。君は知ってるのか。なら知らないのはあの子だけなのかな」


 加瀬は柔和な笑顔を浮かべたまま足を組んだ。長い指を立て、上から下へと線をなぞるように落としていく。


「神降ろし」


 黛はソファーにどっかりともたれかかった。


「人が行う限りなく愚かな行為だが、君が降りてきたと言う点においては有効だったのかな」

「それはお褒めに頂きありがたい話だが、今の俺はただの人間だよ」

「なら人らしく這いつくばって敬いたまえ」

「這いつくばるのはてめぇの方だよ、粘着ストーカー野郎」


 お互い笑顔だが、後ろに見えてはいけないものが見えている。

 あまりの剣幕に川崎はここへ来たことを後悔し始めていた。全然人間相手じゃなかった。ただの人間の自分の手に負える相手ではない。


「雲雀、森谷さんは?」

「現世へ行った瞬間、コイツが魔界に大量に人間をぶち込んだせいでそっちに手を取られてる」

「アレは僕の手にも負えないからねぇ」

「ほう。俺は手に負えると?」

「だから交渉材料にこの子を連れて来たんじゃないか」


 雲雀はすかさずパチンと指を弾いた。

 瞬時に川崎の周りに薄い膜が張られる。川崎が唖然としている間に、目の前に鋭利な何かが突き付けられていた。


「手を出すなっつったろ」


 揺らぐように雲雀の瞳が黄金色へ変化する。

 加瀬はふふふと楽しそうだ。


「家族の腕の一本でも持って行けば柚木くんが出てくるかなと思って」

「⋯⋯あの、どうしてそんなに香流に執着するんですか?」


 加瀬には川崎を殺す意思が感じ取れない。

 何も腕一本と言わず、先程一階で相対した時に首を刈り取れたはずだ。でもそれはせず、穏やかにあくまで対話でのやり取りを好んでいるように見える。


「うーん。人らしく答えるなら、一目惚れかな」


 またか。


 この手の(たぐい)には食傷気味だ。川崎はげんなりする。


「香流は男ですが」

「本来の生まれは女の子だよ」

「そうだとしても、今は男ですが」

「川崎くん。あの子に何もかも忘れて幸せに暮らして欲しいと思ったことはない?」


 ぴく、と川崎の肩が揺れ動いた。


 あるよ。そんなものあるに決まっている。


 だけど、それは余りにも酷なことだ。香流にとってはばあちゃんとじいちゃんと過ごした日々はかけがえのないもので、あの過酷な環境の中の唯一の救いだった。

 その思い出を消すことは出来ない。香流だってきっとそれだけは望まない。


「あの子を本来のあるべき軌道へ乗せてあげようよ。地球の神様なんて大それた役割を与えられず、村に捨てられていた美しい女の子として愛され、優しいおじいさんとおばあさんに育まれる。やがて彼女はその一生をなだらかに終えるんだ」

「村に、捨てられていた⋯⋯?」

日生(ひなせ)楪羽(ゆずりは)。それがあの子に与えられるはずの名前だったんだよ」


 日生。


 じいちゃんとばあちゃんの名字だ。川崎はさっと顔色を変えて隣の黛を見る。

 黛は、表情ひとつ変えていない。そんなものは荒唐無稽な話だ。御伽噺(おとぎばなし)でもあるまいし。


「賢吾。妄言に耳を貸すな。この世界が現実だ」

「う、うん⋯⋯」

「捻れた現実だよ」

「捻れていても地に足付けて立ってんのはここだよ。俺達の軌跡を馬鹿にするんじゃねぇ」

「4年も隣人に欺かれていた役立たずが、随分な口を利くものだ」


 ―――分からない。


 分からなくなってきた。現実はここだ。でも、香流がはじめから村で育っていたなら。


 その姿を知っている。中学生の時、辛い記憶を封じられた兄は、屈託なく笑うどこまでも明るくて友達思いの泣きたくなるほど眩しい姿だった。

 出会った時の優しさそのままに、穏やかに成長して欲しかったのは紛れもない本音だ。


 間違いを正して苦しみから解放してあげようとしている加瀬と、間違っていてもその中の平穏を守ろうとしている黛と。


 どちらも香流のためにと言う根本は同じだ。


 敵ではない。目の前の男は、限りなく味方に近い存在なんだ。

 

「この島の作り上げられた平穏は、羽を奪われた鳥籠の小鳥と同義だ。あの子はもっと広い世界を知るべきだよ」

「必要ない。香流にはこれ以上人間の醜聞(しゅうぶん)(さら)さない」

「まるでここはドールハウスだね。どうせここへ連れてくる人間も君が選んでいるんだろう」


 加瀬は呆れたように眉根を寄せた。


「綺麗なものだけを見せ、醜いものには蓋をする。今頃柚木くんは羽毛で包まれた檻の中にでもいるのかな」

「お前に香流は渡さない。お前の魂胆なんて透けている」

「へぇ、どんな?」

「本来の姿なんてお前の妄想だ。夢の世界へ閉じ込めて、ありもしない幻覚を見せ続けるだけだ。それを現実と錯覚させて仮初(かりそめ)の自由を与えるなんて、お前の方こそ人形遊びなんだよ」


 ゴゥ、と風が吹き荒れる。

 黒い粒子が舞う。加瀬の隣の男は散り散りになって霧散していく。川崎はゾ、と背筋が凍る思いだった。


「⋯⋯僕は心底君のことが嫌いだよ、黛くん」

「奇遇だな。俺もアンタのことが大嫌いだよ、加瀬さん」


 恐ろしい程穏やかにふたりは微笑みを交わす。

 川崎は芯の底から冷えていくような感覚に見舞われながら、どうして兄は変なのにしか好かれないんだろうと遠い目をするしかなかった。

 


 ★★★★★



 鈍色のコンクリート壁に木戸が手をつくと、絵の具を水に落としたように濃い緑色と灰色が滲みながら広がっていく。

 学校寮4階の南側。その壁の向こうには妖怪達が暮らす街がある。妖怪達は学校寮へは入らず、ほとんどの者がここから通っている。

 翔真は荷物を抱えながら、ワクワクした瞳で扉が現れるのを待っていた。

  クラスメイトの話で聞いたことがあるのは、たくさんのひとが住んでいて、美味しいお菓子屋さんがあったり、とても賑やかな商店街があったりと楽しい話ばかりだったからだ。


「みんな起きてるかな!」

「まだ6時前だから寝てるんじゃない?」

「晃もまだ寝てるもんな」


 呆れた顔をしているが、ついさっきまで爆睡していたのは柚木だって同じだ。

 しかも外で。夏椎はじとりとした瞳で柚木を見上げた。今朝よりはスッキリした様子の柚木は、きょとんとした瞳を夏椎へ向ける。


「何?」

「香流さんは良く寝ますよね」

「寝つきがいいのはいい事だよね!」


 翔真まで甘い。夏椎はもう、と零しながら肩を落とした。

 晃は木戸に担ぎ上げられたまま、まだ起きる気配がない。木戸は壁沿いに現れた薄灰色の扉を開けると、ひょいっと晃を放り投げた。


「えっ!?」


 夏椎が声をあげた瞬間、耳を(つんざ)くような怒号が廊下に響き渡る。


「蓮!!ひとの話は最後まで聞けと毎度毎度言っておるだろう!!」

「わぁ、うるせー」


 扉から現れた、天狗面を頭部にかけた灰色の短い髪と黒い瞳を持つ壮年の男性が、厳つい雰囲気を湛えてずんずんと扉から大股で歩いて来る。

 男は小脇に晃を抱えていた。先程の怒号でさすがに目を覚ました晃が男と木戸を見比べて、木戸の後ろに夏椎を見つけてほっと眉尻を下げる。


「大天狗、朝からごめんな」

「はっ⋯⋯!?主殿!?」


 木戸の後ろからひょこっと柚木が顔を出すと、男はずざーっとものすごい勢いで五体投地した。投げ出された晃はさっと夏椎の後ろへ回り込む。


「日の出から声をかけて頂けるとは幸甚(こうじん)の至り!!」

「あ、うん」


 あまりの勢いに柚木はたじろぐ。いつもながら声も大きいし圧もすごい。コンクリートがビリビリと振動している。

 木戸は面倒くさそうに眉を(ひそ)めた。


「ジローさんマジでうるせぇ」

「おじさん、ジローさんって言うの?」

「ジローさんって言うらしいぞ」

「ジローさん⋯⋯!?」


 柚木に名前を呼ばれて大天狗が上擦った声をあげた。

 もはやジローさんがゲシュタルト崩壊している。夏椎は冷めた瞳でこのやり取りを見守っていた。


「香流お兄ちゃん、知り合いなのにおじさんの名前知らなかったの?」

「名前で呼べって言われなかったから⋯⋯」

「名前で呼んであげたら?」

「別にいいけど。ジローさん、しばらく子ども達がお世話になるけどよろしくな」

「待って、先輩。ジローさん気絶しちゃってる」

「何で?」


 何でと言われても⋯⋯。


 木戸は少し考えて、もうめんどくせぇやと五体投地したまま動かない大天狗をありのままの姿で担ぎあげた。




 朝焼けの光が教科書で見たような昔ながらの日本の町並みを照らし、まばらに外を歩く妖怪達を照らしている。

 島の中とあまり遜色(そんしょく)ない人ならざる者達の姿。中には人間の姿もあったが、あの人達も本当は人間ではないのかなと翔真は思う。

 みんな、一様に赤い門へ向かって歩いている。その光景を上から眺めながら、翔真は欄干から足をぷらぷらと遊ばせていた。


「みんな学校寮に向かってるの?」

「学生と教職はそうみたい。そのもうひとつ向こうに駅に繋がる門もあるよ」

「木戸さん詳しいねぇ」

「ジローさんに修行させられてた時、ここに住んでたからねぇ」


 夏椎も翔真の隣に腰掛けながら、へぇ、と呟いた。


「木戸さんも妖怪なんですね」

「違うよ」

「違うんですか?」

「そーそー」


 ふわっと緩やかに質問をかわされてしまう。木戸は欄干にもたれかかって、部屋の中へ視線を向けた。

 中では、まだ目が覚めない大天狗に付き添って柚木が困った顔をしている。挨拶したら帰るつもりだったのに帰れなくなってしまったと顔に書いてある。分かりやすくてとても可愛い。


「そう言えば、木戸さんしばらく警察庁に行くんじゃなかったんですか?」

「川崎さんに頼んで来た。俺があんまり役に立てることなさそうだったし」

「川崎さんはお医者さんじゃないですか⋯⋯」

「それを言うなら俺もあそこの職員ではないから同じでしょ」

「そもそも木戸さんって何の仕事してるの?」

「先輩のためになることなら何でもする人!」


 それは仕事としてまかり通るのだろうか。

 3人とも駄目な大人を見る目で見上げている。木戸はあっけらかんと笑っていた。


「縛られるの嫌なんですか?」

「別に?警察庁も楽しかったよ」

「じゃあ何で無職なんですか」

「あの、無職ではないです。まぁ平たく言うと何でも屋さんかなぁ⋯⋯」

「そんな不安定な収入の人に香流お兄ちゃんは任せられません」

「そんな真顔で⋯⋯」


 とりとめのない話をしていると、眠っていた大天狗ががばりと起き上がった。

 すぐさま柚木に向かって土下座をしている。荘厳で強面の大天狗が情けない顔をしているのは見ていて面白いけれど、柚木が困っているので助けない訳にはいかない。


「ジローさん起きた?」


 木戸がベランダから続く出窓を開けると、大天狗はさっと木戸を振り返った。


「蓮!主殿が来るなら先に言っておけ!おもてなしの準備をしておいたのに!」

「すぐ帰るけど」

「すぐに帰るの!?」


 大天狗の情緒が不安定だ。

 おっさんがパニクっている。木戸は思わずくくっと肩を震わせて笑った。


「だって長居すると他の奴の所にも行かなきゃならなくなるだろ」

「主殿、せめて朝餉(あさげ)だけでも」

「もうパン食べてきたし⋯⋯」


 にべもなく断られ、大天狗はがくりと肩を落とした。

 なんかちょっと可哀想になってきた。まぁ朝ごはんくらい別にいいかと言おうとしたその肩を、木戸はぐいっと抱き寄せる。


「俺達は今からデートだからダメでーす」

「主殿に気安く触るでない!」

「ひとり人間の匂いがするから、怪我させないでね。じゃあしばらく子ども達をよろしく」


 誰にも何も言わせず、木戸は柚木を抱き上げると颯爽と欄干から飛び降りた。

 相変わらず行動が速い。もう姿が見えない。呆然と固まる夏椎達は、出窓から出てきた大天狗のため息で顔を上げた。


「蓮め、勝手なことばかり言いおって」

「あの⋯⋯すみません。お邪魔します」

「犬の子。先程主殿をお兄ちゃんと言っていたが、どういう事だ?」


 尋ねる大天狗は険しい顔をしているが、声音は穏やかだ。

 犬の翔真には分かる。この人は悪いひとじゃない。はい!と元気に手を上げると翔真はにっこりと微笑んだ。


「柚木翔真です!中学3年生です!香流お兄ちゃんの弟です!」

「成程。主殿の弟殿だったか。それならばこちらも最大限のおもてなしをさせて頂こう」


 大天狗は(うやうや)しく座礼をする。

 えっ、えっ、と翔真は戸惑ったが、びしっと手のひらを突き出して元気いっぱいに答えた。


「よきにはからえ!」

「違うと思うけど」


 夏椎が冷静に突っ込みを入れる。

 翔真はきょとんとしていた。大天狗はくつくつとくぐもった笑みを零す。


「中学3年生なら、雪女の子等と同じか」

「後ねぇ!がしゃどくろの(きみ)と猫又の(あずさ)もいるよ!」

「賑やかだのう」


 大天狗はパン!と手を叩いた。

 瞬間、バサバサと音を立てて3羽の烏が欄干の上に羽を下ろす。


(くだん)の子等を連れて来い」


 大天狗が命令を下すと、烏はまた羽音を立てて飛び立って行った。


「ジローさんも動物とお話出来るの?」

「儂にそのような芸当は出来んよ。アレは儂の使い魔なのだ。子等よ。もう朝餉は摂ったか?」

「こっちの黒いのは食べてないでーす。香流お兄ちゃんのご飯食べたけど俺もおかわりできまーす!」

「う、羨ましい⋯⋯」


 大天狗から本音が漏れている。

 出窓から室内へ戻っていく大天狗について行きながら、翔真は興味津々で大天狗を見上げる。


「ねぇ、なんでそんなに香流お兄ちゃんが好きなの?」

「主殿はどんな生き物にも慈悲を下さる素晴らしい方だ。何より美しく聡明。判断力と決断力に優れており、全てにおいて完璧なる正に天上人」

「誰の話?」


 大天狗の言う柚木と、翔真の知る柚木が全くイコールで結びつかない。


「夏椎、どう思う?」

「誠に遺憾」

「そんな顔する?」


 部屋の中は畳が敷かれ、家具も何もないがらんとした部屋だった。

 大天狗は襖を開ける。襖の向こうも同じような部屋が繋がっており、全部合わせるとなかなかの広さになった。翔真が走り回りたそうにウズウズしている。


「3人でここを使うと良い。学校へ行っている間に必要なものを用意しておこう。何が必要だ?」

「お布団とー、テーブルとー、テレビとー、ゲーム機とー」

「お部屋借りてるのにワガママすぎるよ、翔真」


 咎めるように夏椎が言うと大天狗はカラカラと笑いながら翔真の頭を撫でた。

 

「構わん構わん。主殿はなかなか頼ってくれんからのう、弟殿は全力で甘やかせて頂こう」

「わぁい!ジローさんおじいちゃんみたい!」

「おじいちゃん⋯⋯!」


 大天狗はトゥンクとときめいた。


 弟殿からおじいちゃんと言われたということは、主殿にとっても⋯⋯!?


「じいちゃん」


 なんて主殿に言われたら、儂、儂⋯⋯!


 バターン!!


 大天狗は直立不動のまま倒れた。3人組はびくぅ!と身体を強ばらせる。


「翔真、今後迂闊(うかつ)な発言禁止ね」

「さすがは老人落としのC地区長」

「なんという通り名⋯⋯」


 またもや動かなくなってしまった大天狗を、3人は囲みながら見守ることしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ