白兎事件編21(距離感の微調整・1)
木戸くんは恋に全力な男です。
(木戸)
無事に子ども達を送り届けた俺は、はーやれやれと肩を回しながらA地区へと足を伸ばした。
子ども達は怪我もなく、しかも親玉まで片付けたんだから上出来だろう。自分で自分をたくさん褒めてあげた。俺はとってもえらい。
愛しの先輩に報告したらハグくらいはさせてもらえるかもしれない見事な働きっぷりだ。本当は生きたまま捕獲したかったけどなぁ。まぁ、危険はなくなったのでそれはそれで良しとしてもらいたい。
今すぐ会いに行ってすっぽりと収まる華奢な身体を余すところなく抱きしめたい。
⋯⋯なんて思う訳ですが、トラウマを知ってしまった手前気軽に触れられなくなってしまった訳で。
なんか好意を示すのもダメなのかなとか思うようになってしまった訳で。
とりあえず子ども達の面倒を見て株を上げてみるかと思って行動してみたけど、良く考えれば熱出して寝込んでるあの人がそんな事思う余裕もなさそうだ。
「俺、詰んでない⋯⋯!?」
最後に抱きしめたのが泣いてる時って言うのがさぁ!
触りたいのに触れない。犯罪の文字が脳裏に過ぎって何も出来ない。
だからと言って大人の先輩も可愛すぎて触ったら我慢出来なくなりそうで怖い。俺が何をするか分からない。
もういっそ一旦離れるべきでは。前みたいに離れたところから見守るくらいでちょうどいいのでは。
でも、側にいたい。例え子連れでも一緒に暮らしているという今の最高の環境を手放したくはない。
「柳瀬ぇ、中川さーん、どうしよう⋯⋯」
「知らねぇよ」
「同じく」
先輩が病院にお泊まりするので、久しぶりにヒツギの店を訪れると柳瀬と中川さんが揃って飲んでいた。
柳瀬が貸切にしたらしく、他に客もいない。柳瀬は相変わらず忙しいのか疲れた顔をして日本酒の瓶を抱えている。
「お前の話なんかどうでもいいわ⋯⋯。俺は早く小波に会いたい⋯⋯」
やべぇ、重症だった。
据わった目をしている。なんかメソメソしている。
いつもの傍若無人はどこへいった。凹んでいる柳瀬なんか不気味で仕方がない。俺は鳥肌が立った。
そんな柳瀬の頭を中川さんがよしよしと撫でている。中川さんは優しいな。俺なら絶対触りたくない。
「小波ぃ〜⋯⋯」
「もう1週間近く会ってないもんねぇ」
「1週間も触れてない⋯死ぬ⋯⋯」
先輩の前ではいつも通りに振舞っていても、愛敬がいないダメージが重すぎる柳瀬は気持ちが深海層へ行き着いている。
それでも店先には立っているし、相変わらず阿漕な商売で金は巻き上げている。むしろ羽振りがいいとA地区では評判だ。
「他の女の子じゃダメなん?」
「俺が小波一筋なのはお前が一番知ってんだろ!そっくりそのままお前に返すわ!」
「失礼しました」
高校生の時に他所で埋め合わせしようとしたけど無理だったもんな。経験値だけを獲得してしまった。これも先輩には内緒の話だ。
「行ってきますのキスも、おかえりのハグもない。もうお店頑張れない⋯⋯」
「柳瀬、頑張れ!」
「中川の応援じゃあなぁ⋯⋯」
「柳瀬、大好き!」
「ちょっと元気出たわ」
柳瀬がすくっと起き上がる。それはいいんだ。相変わらずアホの子ガチ勢の柳瀬は頭のネジがどこか外れている。
はぁ、とため息をついて柳瀬は日本酒を煽った。頬杖をついて、斜め前に座った俺を冷めた目で見てくる。
「で、柚木と一緒に暮らしてみてどうだって?」
「ただただしんどいです」
「はっ。苦しめ」
ムカつくなぁその顔。小馬鹿にしてくる柳瀬は俺でストレス発散しようとしてるな。でも俺だってストレス溜まってんだよ。
俺は溜まりに溜まったストレスを吐き出すように、地を這うような声で語り始めた。
「毎日毎日一瞬たりともふたりきりになれないふたり暮らしでさぁ」
「だろうな」
「先輩のご飯が美味しい。先輩の寝顔が可愛い。先輩の起き抜けが愛おしい。風呂上がりなんかもう⋯⋯。いや何で俺触れられなくなったの⋯⋯」
もう泣きたい。何だこの現状。天国と地獄なんだわ。
「俺だって翔真みたいに先輩の髪乾かしてあげたい。アイツ気軽に飛びついたり擦り寄ったりしやがって羨ましい。俺も今すぐあのサイズになりたい」
「木戸は大きいもんねぇ」
「スクスク立派に成長しました⋯」
「でも柚木は嫌がるよねぇ」
中川さんにばっさりと切り捨てられた。
情け容赦のない天使の言葉に俺は声を上げて泣いてしまう。ひどい。俺だって好きで大きくなった訳じゃないのに。
「こんな事ならせめて柳瀬くらいのサイズで留まりたかった!」
横から思い切り柳瀬に殴られた。痛い。顔を上げると、柳瀬が俺を睨み付けていて悲しい。
「何でお前の方がトラウマになってんだよ」
「可愛いとは言えるけど好きって言えなくなってしまったんだけど、どうしよう」
「知らないよ」
「だから知らねぇわ」
無慈悲に中川さんと柳瀬が即答する。
俺の先輩は2人して優しくない。俺は同級生のヒツギに目を向けた。
「ヒツギ、俺を慰めて」
「知らん」
「どいつもこいつも俺に優しくねぇ!先輩に対する優しさの1/10でも俺に向けてみろよ!」
3人は静かに首を振った。
「可愛くないもん」
「お前は可愛くねぇ」
「柚木さんは可愛い」
「くっ⋯!あの人ただのアホなのに⋯⋯!」
3人は静かに頷いた。
「せっかく愛敬に邪魔されずに一緒にいられる貴重な時間なのに、このままだと何も進展ないまま追い出されちゃう⋯⋯」
「生きて帰れるかなぁ」
俺は思わず息を飲んだ。この天使さっきから全然優しくねぇ。天使の微笑みが悪魔に見えてきた。
「中川さん、なんか怒ってます?」
「よくも柚木を怪我させたな?」
「だってあの人止める間もなくひとりで突っ込んで行くんだもん!」
なんかさっきからトゲトゲしてるなと思ったら原因それか!
それについては弁明させて頂きたい。あのアホの子勝手に突っ込んで勝手に怪我して勝手に熱出してるだけなんだもん!
「俺だって先輩が嫌いな百足に突撃して行くとは思わなかったよ!」
「百足!?」
「うわぁ⋯⋯」
中川さんと柳瀬がドン引きしている。
何で俺が引かれなきゃならないのか。全くもって納得がいかなかった。
「エンなんちゃらって星の侵略者らしいですよ」
「あぁ、俺その星のひと見たことあるかも」
「良く頑張ったな、柚木」
「帰ってきたら褒めてあげなきゃね」
「そうだな。全力で褒めてやろう」
「ねぇ俺も褒めて!」
中川さんと柳瀬はまた静かに首を振った。
「柚木を怪我させたから駄目」
「反省しろ」
「ほんっと優しくねぇ⋯⋯」
俺はさめざめとテーブルに突っ伏した。
先輩は褒めてくれたのに。百足倒したよって報告したらおばあさん達に囲まれながらとてつもなく破壊力のある可愛い笑顔を見せてくれたのに(木戸視点の話であって実際の状況とは異なります)。
その後も平然としてたから、地面が血まみれになっているのに気付くのが遅れてしまった。
先輩の怪我を発見した時の翔真の叫びが史磨山に木霊していた。澄ました顔して、痛みを我慢してた顔じゃないんだよなぁ。なんならそのまま頂上まで行こうとしてたもん、あの人。
「て言うか何で先輩が怪我したの知ってんですか」
「柚木にお弁当の写真送ってって言ったら怪我して病院にいるって直接聞きましたぁ」
「お弁当の写真なら俺が見せてあげますよ」
朝早くから先輩と一緒に作ったお弁当だ。ふたりで台所に立って新婚さんみたいなすごく楽しい時間だった。
何故か川崎さんと石田さんもいたけどね。俺はふたりきりになれない呪いでも愛敬にかけられてるんだろうか。
中川さんにスマホを渡して、俺はまたテーブルに突っ伏した。
「でも珍しいね。柚木が油断するなんて」
「おばあさん達がいたから、あんまりビビらせる戦い方したくなかったんでしょ。俺が来たらすぐ避難させてたし、あの人子どもと老人にはすこぶる優しいから」
いつもならどこかしらにナイフや拳銃を所持しているはずなのに、合流した先輩は何の武器も持っていなかった。
拳銃はおばあさん達がびっくりしそうだもんな。そういう事には頭回るのに、自分の事になるとてんで無頓着なのが先輩と言うひとだ。
「お前は柚木の事になると無駄に冴えてるよな」
「俺は先輩の一番の理解者ですからね!」
「でも飛び出して行くのは止められなかったんだね」
「はい、無理でした⋯⋯。すみません⋯⋯」
俺は素直に謝った。
中川さんは溜飲を下げるように深く息を吐く。
「信じて託してるんだから、ちゃんとしてよ」
「肝に銘じます」
「でも俺は百足は絶対に嫌だ」
「俺も嫌だ」
「めんどくせぇなこの先輩達は⋯⋯」
「そこが可愛いんじゃないか」
先輩箱推しのヒツギがハイボールと真っ黄色の何かを運んできた。見た目はナッツに似ている。
「何これ」
「リリカンヌの実。味は酢の物に似ている」
言いながら、ヒツギは中川さんの隣に座った。中川さんは躊躇いなく箸を伸ばして目をきゅっと閉じる。
可愛い。言わなくてもヒツギの顔が物語っている。
「しゅっぱい」
「柳瀬さんもどうぞ」
「俺は平気だけどな」
柳瀬は平然とつまんでいる。ヒツギはとても満足そうだ。
「木戸も惚れた腫れたではなく推しと言う対象へ鞍替えすればいいじゃないか」
「やだ!俺は先輩とイチャイチャしたいの!」
「でも八方塞がりなんだろ。柚木さんは触れられたくない、お前は触れられない。まるですごろくのふりだしに戻るだな」
ヒツギの正論に俺は何も言えなくなってしまう。
「お前が好きの種類を変えても柚木さんは全く意に介さず、むしろお互いストレスなく過ごせるんじゃないか」
「それは⋯⋯」
「大体、高校生の時は遊び歩いてただろ。それと何が変わるんだ。その無駄な見目の良さを有効活用すればいい」
「無駄言うな。好きでこんな見た目に生まれた訳じゃねぇわ」
「それは柚木さんだって同じだろう」
コイツ、めちゃくちゃ痛いところをついてくる。
ヒツギだって先輩達の可愛い顔が好きなくせに。俺が何も言えずにいると、珍しく柳瀬が助け舟を出した。
「大体なぁ、俺も男相手に商売してるけど身体明け渡すのなんて絶対嫌だね。全部幻術に相手させてるもん」
助け舟を出したのはヒツギの方へだった。
わぁ、俺の味方が誰もいない。
「お前⋯⋯金払わせてんのに最低だな」
苦し紛れに反論すると、柳瀬はさも当然と言うように肩を竦めた。
「見た目がこんなでも俺には男としてのプライドがあるからな」
「俺にそんなプライドはない!」
「自慢げに言うことかよ⋯⋯」
元気いっぱいに宣言する中川さんに柳瀬はげんなりした顔をして、仕切り直しとばかりにこほんと咳払いをする。
「だって柳瀬も可愛い俺に癒されてるでしょ!」
「うん」
「わぁ、素直」
「でも柚木は違うだろ。アイツの考えは俺寄りだよ。だからと言って女に興味も無さそうだけどな」
柳瀬はグラスの縁を指でなぞった。見た目はほとんど女のくせに、動作だけは無駄に洗練されて格好いいのが柳瀬という男だ。
「そもそもアイツに興味のある女もいなかったけどな。男にしかモテなかったし」
「柚木、可愛いからね⋯⋯」
「木戸は知らねぇかもだけど、アイツ、良く知らないでかい男に迫られると身体が硬直して動けなくなるんだよ。特に人間に近いと駄目だ。⋯⋯簡単に押し負ける」
柳瀬はグラスを煽った。長い睫毛を伏せながら、静かに語るように話す。
「学校では俺か中川がベッタリくっついてたからほとんどそういう状況もなかったけどな。警察官になってから何度かそういう事があったらしいよ。小波から聞いた」
「あぁ、もれなくボッコボコにして再起不能になった人達の事?」
中川さんの目がビー玉のように澄んでいる。めちゃくちゃ怒っている。普段温厚な人ほど怒ると尾を引いて恐ろしい。
「柚木はプライドが育つ前に壊されてるから多分俺とは拒否感のベクトルが違う。けど、俺だってあのくそババアに女になれって言われてぶっ殺したいくらい嫌だったんだから、柚木だって嫌なんだろ」
「その割には楽しそうだけどな、お前⋯⋯」
「そりゃあ楽しいさぁ。男なんて馬鹿ばっかだもん。俺は金さえ払えば何でも見せてやってんだから、双方ウィン・ウィンの良い関係だろぉ〜?」
実に金に汚い柳瀬らしい理論だ。俺が何かを言うより早く、柳瀬は人差し指を俺の唇に押し当てる。
「なぁ、蓮。もう柚木のことは諦めろよ。柚木は色恋沙汰に溺れるよりも、気ままに人助けしてる方が向いてるよ」
綺麗な笑みで、柳瀬はとても残酷な事を言う。
それは確かに俺だってそう思うよ。
でも、それを声に出すのはどうしても憚られた。
分かってる。恋愛なんてあの人にとってはストレスでしかない。
好意を向けられるのも、好意を向けるのも、どっちも精神が拒否してるんだから。
柳瀬の言う通り、そこに欲が絡むと尚更だ。
先輩だって俺に別の誰かを見つけろといつも言っている。別の誰かってなんだよってずっと思ってたけど、まぁーここまで身内に否定されるとさすがの俺もちょっと凹むなぁ。
ヒツギの言う通り、好きの種類を変えて、友人として支えてあげるのが先輩にとっては一番なんだよな。俺も遊び歩けるし、きっと何も我慢しなくてもいいし。
でも、先輩以外にまっったく反応しないんだよなぁー。
鬼のくせに不能って⋯⋯。笑えねぇなぁ。まだ若いのに可哀想な俺。これも長年患った片思いの後遺症なんだろうか。
「でもなぁ、あの手のタイプはデレると化けるぞ?」
「なぁ、さっき諦めろって言ってなかった?」
手のひら返しが早すぎる。こういうところだよ、柳瀬の悪いところは。ニヤニヤしながら俺の純粋な気持ちを弄んでくる。
「甘え下手が甘えて来る時のあの下手さ加減が可愛いんだよなぁ〜」
「なぁ、誰のこと言ってる?」
「柚木みたいなタイプはツンツンツンデレくらいの割合が手に入れると急に逆転するんだよな。しかも素直で顔も可愛いし、柚木なら男でも全然⋯⋯。⋯⋯蓮が諦めんなら俺がもらおうかな」
柳瀬が急に真顔になった。この声のトーンは本気だ。
慌てて俺はバン、とテーブルを叩いて柳瀬を正気に戻す。
「ダメ!香流は俺の!」
「でも諦めるんだろ?」
「そうした方がいいのは分かってるけど。⋯⋯別に、何も出来なくてもいいから、あの人のことをあの人よりも好きでいたい⋯⋯と思う⋯⋯」
いや、何も出来なくてもいいは嘘だな⋯⋯。
欲は出るよ。だって好きだもん。
色々言い訳してみても、やっぱり俺はあの人のことが好きだ。好きだから大事にしたいし色んな顔も見たい。
辛い過去があったからって、俺じゃ駄目かも知れなくたって、そう簡単に諦められるなら10年近くも片思いしていない。
大事にしたい。香流の置いてきた感情も全部。
結局、行き着くところはそこしかないんだって痛感する。
「なら、これからも余計な事は考えずに柚木だけ見てろよ」
柳瀬は席を立った。
トイレ〜と歩いて行く柳瀬の背を見送りながら、俺も勢いに任せて席を立つ。
「ちょっと出てくる!」
拒否されてもいいから、やっぱり俺は香流の側にいたい。
しょうもない話でもいいから話をしたい。声が聴きたい。あのお日様みたいなキラキラした笑顔がどうしたって脳に刻まれて消すことなんか出来ないから。
ヒツギの店を飛び出して、空を見上げる。
むしゃくしゃした気持ちをかき消すように、俺は走り出した。
★★
バタバタと忙しなく店を出て行く赤色を見送って、中川とヒツギは顔を見合せた。
「ヒツギは中立?」
「俺は先輩方が幸せなら何でもいいんです」
「天使みたいなこと言う⋯⋯」
「中川さんは?」
中川は笑顔を崩さない。柳瀬の持ってきた日本酒を飲んでふーっと天井を見上げる。
「俺はお酒飲めたらそれでいいよ」
「酒豪の天使⋯⋯」
「あっ、それいいね!格好いい!」
「格好良くはないでしょう」
「お前ら何の話してんの?」
柳瀬が帰ってきても、木戸の事は聞かなかった。
どうせアイツの事だからどこかで適当にストレス発散して、柚木の元へ行くのだろう。いつもそうだ。何だかんだ悩んだところで、アイツが柚木から離れる選択肢を取れるはずがないのだから。
「小波が帰ってきたら丸1日休むから、中川とヒツギで後はよろしくな」
「ええぇー⋯⋯」
「丸1日何するんですか?」
「デートプランはまだ考え中」
柳瀬は麗美な笑みを浮かべた。
柚木は難儀な奴だ。素直で分かりやすいくせに誰にも心は許さない。家族にすら受けていた傷の全てを徹底的に隠し通した頑固者だ。
感情表現が豊かだった出会った頃に比べて、記憶が戻った後はただ淡々と上澄みだけの感情で生きているように見える時もあった。一緒にいる時は笑ってくれるしアホなところも変わらなかったけど。
それでも、怖いとか、悲しいとか、苦しいとか、誰かに縋るような真似は絶対にしなかった。
親しくしていた人達が消えた時でさえアイツは泣かなかったのに、木戸には素直に泣けたんだろ。
柚木に必要なのは、積み重なった重荷を分かち合える誰かだ。それが誰であれ、アイツがもたれかかれる誰かがいつか見つかればいい。
木戸なら申し分ないだろ。
木戸は力持ちだもんな。
「ヒツギー、お腹すいた」
「何がいいです?」
「俺、焼き鳥〜!」
「中川が頼むのかよ」
まだ時刻は日付が変わる前だ。
A地区の夜は長い。それでも明けない夜はないのだから。




