白兎事件編17(反撃作戦・2)
(柳瀬)
「柳瀬さん、地響きが!」
「地球生物達がどこかへ向かっていきます!」
「あぁーもう!また仕事増やしたわねあのアホ!」
「一体何を思いついたんですかねぇ」
居酒屋『柩』の地下室で、部下から報告を受けた俺は思わず髪を掻きむしる。
従来の仕事にトラブルの解決、萌葱の食糧確保問題までも追加して、もう頭がパンク寸前だ。今すぐ彼女に会って癒されたい。でもそれは叶わないので仕方なく椅子から立ち上がる。
「アンタ達!地球生物達の足取りを追って、可能な限り手伝ってやんなさい!」
「えっ!?」
「いいから、言う通りにして!」
俺が叫ぶと、一つ目の男と四つ目の男は慌てて部屋を飛び出した。
扉が閉まったのを確認して、はぁー、と俺は深いため息をつく。
「ヒツギ、餌の冷凍保存の件は一任する」
「はい」
「あれだけ派手に動けば兎の方に動きがありそうだ。柚木のアホめ、後でお説教だからな」
「店の準備もしておきますね」
「あぁ、頼んだ。領収書は俺宛でいい!」
俺は言いながら、急いで地下室を後にした。
さぁて、地上はどうなってる?
とてつもない地響きだ。柚木が大規模な命を出したのは間違いない。他にも別の侵略者やテロや離反行為など色々考えられるが、現時点で把握している限りではそんな動きは見られなかった。
しかし小波がいないとこんなに管理が回らないのだと痛感する。柚木のために木戸を出したが、正直それも今となっては痛手だ。
猫の手くらいしか役には立たないが、今は中川すらここにいない。
萌葱に餌を与えた後、柚木のところへ行くと言っていたから一緒にいるはずだけど。とは言っても中川に柚木は止められないか。
ヒツギの店から出ると、宙を縦横無尽にひとが飛び交っていた。
地上にもひとが出てきている。A地区は夜に動く街なのに、昼間にこんなにひとがひしめき合うことなど滅多にない。
ひとは、鋭い眼光で何かを必死で探している。
この光景には見覚えがあった。俺が初めて柚木と出会った時。俺の青髪が目立たないようにしろと言う俺のために、アホで素直なアイツは島中の人間に髪を染めることを命令した。
あの時も大変だった。島のスーパーやドラッグストアは限られている。足りない者は絵の具で髪を覆い、ひたすら油性ペンで髪を塗るものもいた。
アイツの命令は悪意のあるものではない。心根の優しさが根底にあるから、命令された人々に自傷行為や他害行為などが現れることはなかった。
今回も同じようなものだ。奴らが探すのは恐らく―――死神のみ。
「なら俺のする事はひとつだな」
俺の事など見もしないひとの間を縫って、足を運ぶのはA地区の外だ。
俺は人気のない場所まで出ると、腰元に差した扇を取り出した。
地球生物の比較的少ないA地区でこれなら、B地区やC地区は更にひとが多いだろう。
「飛扇華」
言葉を唱えた瞬間、俺の周りを白く細やかな花が舞う。
花は扇へ収束し、扇が巨大化する。軽やかに宙へ浮かび上がる扇へ飛び乗ると、俺は邪魔な髪をざっくりとひとつに結んだ。
目指すのは志賀龍司の息子がいる中学校舎だ。
志賀龍司の息子が助けた獣人がどんな目にあったかは知らないし興味もないが、怯えられて話が出来ないのは面倒だ。話すなら子ども、それも出来るだけ女に近い容姿がいい。
柚木からはまだ獣人は起きていないと聞いているが、それがどのような状況か分からない。起きたくないのか、起きられないのか、そもそも抜け殻なのか。
だが、恐らくあの獣人は奴らに必要な何かだった。
死神を呼び出すのに必要なものは何か。
現世での童貞狩り。
背中に傷の負った兎。
学校区へ現れる装身具を売る露天商。
これまでの奴らの動向から鑑みるに、奴らが利用したいものは純潔の血と臓物だ。
俺は相対していないが、木戸から聞いた話では死神は明確な殺意を持って柚木を狙っている。
狙いはアイツを手中に収める事ではない。
そして、手持ちの駒がなくなればどうするか。
奴らの移動手段は現時点では魔王が有している。現世にも行けない、自分の世界にも戻れない。この島で駒を増やせなくなった奴らの次に取る手段は、何だ。
中学校舎が見える。
懐かしい校舎だ。あの頃は平和だった。⋯⋯いや、約1名のせいであんまり平和ではなかったな。
柚木が騒ぎを起こしているなら、子どもなら窓を開けて外を見るだろう。
ほら、大口開けてアホ面が並んでいる。ふ、と俺はつい笑みを浮かべた。
まぁ可愛いもんだねぇ。
「柚木、アホを1匹借りるぞ」
俺は独り言ちると、窓から外を眺めていた志賀龍司の息子の腕を掴み上げた。何かを言われる前に扇へ放り投げて、速度を上げて中学校舎から離れる。
★★★★★
(夏椎)
「えっ!?」
「鮮やかな誘拐だろ?」
気が付けば、目の前に柳瀬さんがいた。
上ばかりを向いていたのが良くなかったのか、柳瀬さんの接近に全く気付かなかった。柳瀬さんは美しい顔で口角を上げて、ウインクを浮かべる。
あまりの美しさに背筋がゾクリとする。この人は人を惑わせる人だ。そして、自分の使い所を良く分かっている。
怖い人だ。俺が出会った誰の中より、妖艶で恐ろしい。
「落ちないように捕まってろよ」
「⋯⋯あ、あの」
柳瀬さんが俺から視線を離したことにほっとした。周りを見れば、空にもまばらにひとが浮かんでいる。
「今から病院へ行く」
「病院?」
「お前は兎を守れ」
この人⋯⋯前会ったのと同じ人だよな?
香流さんと一緒にいた時は、女性のような口調で話していた。それに、ここまで俺を拒絶するような態度を取っていなかったはずだ。
戸惑いを隠せなくて、返事が遅れてしまう。
「あの⋯⋯、柳瀬さん?」
「何だ」
「なんで俺を連れて来たんですか?」
「お前には利用価値があると判断したまでだ。何か文句でもあるか?」
俺が尋ねても、柳瀬さんは振り向きもしない。
「文句は⋯⋯ないですけど」
「なら話は早ぇな」
柳瀬さんの真横で、何かが黒い霧となって霧散した。
一瞬見えたのは、白い面だった。柳瀬さんが何かしたようには見えなかったのに。
「もうすぐ着く。武器は出せるようになったか?」
「あ、えっと、小さな剣なら」
「なら俺はお前に構わねぇから、自分で何とかしろ」
言うなり、柳瀬さんは俺の胴体を掴んで扇から飛び上がった。
扇が病院の窓ガラスへ突入する。柳瀬さんは扇の端を掴んて、俺を病室へ放り投げた。柳瀬さんも後から病室へ入ってきたのか、窓ガラスの割れた破片がギャリ、と不快な音を立てた。
「危なっ!」
俺はベッド柵の上に着地する。もう少しでベッドで眠る兎の女の子を下敷きにするところだった。
「雑さが香流さんそっくりですね!」
「怪我させなかっただけありがたく思え」
怪我しなかったのは俺のお陰ですよねぇ!?
その言葉は口から出なかった。見上げた視線の先、柳瀬さんが何かを締め上げている。
白い法衣の女の人だった。目元は百合の花が描かれたフードで覆われている。
足が、宙に浮いている。柳瀬さんの表情は一切の感情が見られない。女の人が震えている。か、ひゅ、と息の漏れる音だけが俺の耳に届いた。
ぞわ、と背筋が寒くなった。
この人、―――怖い。
「柳瀬さん、死んじゃう」
「だからなんだ」
「香流さんがここに来たらどうするんですか!?」
柳瀬さんは舌打ちすると、ガラスの破片の上へ白い法衣の女の人を放り投げた。
足元の手頃な破片を手に取って、思い切り女の人の足首へ叩きつける。女の人が悲鳴をあげて、鋭利な破片が肉を割ってくい込む。
一切の躊躇もなかった。ついでとばかりに、手のひらサイズのガラスの破片を俺に放り投げてくる。
「うわっ!」
「殺さなきゃいいんだろ」
慌ててガラスを受け取る俺の手のひらに血が滲んだ。いや、いずれ武器を出す時に血は流そうとは思っていたけれども!
柳瀬さんは女の人へ突き刺さったガラスの破片を足で踏み付ける。全ての行動に容赦はなく、人を傷付けることを手馴れている動きだ。
「どうせ大した情報も吐かねぇなら殺した方が有益だろうけどな。⋯⋯あぁ、それよりも餌にするか。冷凍庫の試用運用に丁度いいな」
「柳瀬さん、俺は訳も分かってないんですけど!」
「お前はその兎を守ってりゃいい。ソレが傷付けば柚木が気に病む」
この状況下で香流さんにだけ優しいのが不気味すぎる。
背筋が冷たい。なにか、香流さんとは真逆の異質さを見ているようだ。絶対に俺には勝てない、そう思わせる暴虐さが美しさの影から滲み出ている。
「まぁ、一応聞いてやろう。今更この兎に何の用だ。お前が首謀者か?」
「ち、が⋯⋯!」
「だろうな。お前からは術の臭いがしねぇ。こんなもんに時間を割かれてしょうもねぇなぁ」
気ままに足で踏みつけたガラスを動かしながら、柳瀬さんはにっこりと微笑む。
俺はドン引きしていた。新手の拷問が目の前で行われている。痛そうだし可哀想すぎる。
そして柳瀬さんの行動の意味も、言っている意味も分からない。
「あの、俺にも説明して下さい!」
「柚木から何も聞いてないなら俺から話すことは何もねぇ」
はっ、と柳瀬さんは俺を鼻で笑った。
「流石の柚木もガキは全く信用してねぇんだな。後で褒めてやろう」
「なっ⋯⋯!」
む、ムカつくこの人⋯!
怖いを通り越して腹が立ってきた。香流さんが何も話さないのは信頼とか信用云々じゃなく、俺達に対する優しさだろ。
後ろのこの女の子のことだって、香流さんはきちんと経過を教えてくれている。
「っ、アンタ⋯⋯!女子供相手にイキがってダサい男ね⋯っ」
痛みに慣れてきたのか、女の人が喋り始めた。
柳瀬さんはため息と共に扇を振った。瞬間、胸元が膨らんで麗美な女の人の姿へと変化する。
「ならこれで満足か?」
「⋯⋯っ!?アンタ、ベリアル様の⋯っ!?」
「へぇ。その名を口に出すって事は⋯⋯覚悟出来てんだな?」
柳瀬さんが扇を閉じるのと、女の人が舌を噛むのはほぼ同時だった。
ちっ、と柳瀬さんが舌打ちする。
目の前に死神が現れる。黒い法衣に白い骸骨のお面。俺が肩を竦ませる前で、柳瀬さんが扇を前へ突き出す。
「鋼扇華!」
柳瀬さんの扇が届くより速く、死神は一瞬で姿を消した。
「柳瀬さん!」
「いいから、兎を守れ!」
死神が兎の女の子の真上へ現れる。病室は白くて黒い法衣は目で追いやすいとは言え、あまりにも動きが速い。
俺は兎の女の子を慌てて引き寄せた。その真横を鎌が掠る。
「アイツはお前には手を出さない。絶対その兎を離すなよ!」
「っあ、あれも父さんの家族ですか?」
「まぁ似たようなもんだ」
柳瀬さんは苦々しくそう零すと、顔の前で扇を限界まで開いた。
「おい、志賀龍司の息子。俺が死神の動きを止めるから、お前がとどめを刺せ」
「で、でも兎さんが⋯⋯」
「兎は離すな。とどめは刺せ。奴らにお前が柚木の味方だと示す必要がある」
この人もめちゃくちゃ言うなぁ⋯⋯。
顔をひくつかせる俺を見ようともせず、柳瀬さんはふ、と息をこぼした。
おもむろに兎の女の子の病衣を掴んで、壁へと投げる。必死で抱きしめる俺の身体も浮き上がった。
兎の女の子の着地地点に死神が待っている。
「棘扇華!」
柳瀬さんは扇を前へ突き出した。
扇の先端から無数の小さな薔薇が咲き誇り、同時に棘が轟速で飛び出していく。死神の法衣を囲むように壁へ縛り付ける棘に向かって、柳瀬さんは叫んだ。
「しくじるなよ!」
「分かりましたよ!」
俺は自分の血から顕現させた深紅の小型剣を思い切り死神の面へ叩きつけた。
瞬間、霧散する黒い霧。
先程、柳瀬さんの真横を通り抜けていったものと同じだ。
柳瀬さんは、コレをあの時どうやって退けていた?
それに、柳瀬さんはずっと兎を守れと言っていた。
まるで柳瀬さん自身には死神は向かってこないような言い方で。
「柳瀬さんは⋯⋯」
俺が尋ねようと口を開いた瞬間、病室のドアが開けられた。
ナース服の女の人と男の人が3人、俺と俺が抱える兎の女の子を見てぎょっとする。
「何だ君は!?」
「病室内は子どもは立ち入り禁止だぞ!」
「あっ、えっ!?」
バタバタと中へ入ってくる看護師さん達は険しい顔をしている。俺はうろたえて柳瀬さんのいた方を向いた。
はずが、いない。
「はぁー!?」
慌てて兎の女の子をベッドに下ろして窓から身を乗り出すと、柳瀬さんは颯爽と逃げ出していた。
巨大な扇の上に白い女の人も乗せている。あの人こっちを振り返りもしない。
「もぉー!なんなんだよ、あの人!」
「君、ちょっと話を聞かせてもらおうかな」
「女の子をどこへ連れていこうとしてたの?」
「違います!」
いやでも完全に不法侵入は俺の方だ!
窓が割れて、床には血がついていて、兎の女の子を抱えていた。
弁明の余地もない。
ナースステーションまで連れて行かれた俺は、報告を受けた川崎さんが来るまで看護師さんにくどくどと説教を受けていた。
もうあの人は信用しない。何があってもついて行ったりしない。俺は心に固く誓った。
川崎さんに連れられて警察庁へ行くと、「お疲れ様」と黛さんが労ってくれた。
黛さんの顔を見たら安心して一気に力が抜けた。張り詰めていた糸が解けていく感覚がする。
いや、でも待てよ。
あの人がいない。
「香流さんは?」
「あー、爆睡中」
「俺が大変な目にあってた時に寝てるんですか、あの保護者」
「その保護者が大変な目にあわせた張本人だけどね」
はぁー、と黛さんは頭を抱える。
そしてゆっくりとしゃがみこんでいった。
「物品及び建物の損害被害、仕事を放棄したひとについての責任所在、交通停滞に伴う事故の発生、そして警察庁内の人員不足」
ブツブツと呪文のように呟く黛さんの顔から生気がなくなっていく。
「夜中までに終わるかなぁ⋯⋯」
「お、お疲れ様です⋯」
可哀想な黛さんの目は死んでいる。これにはさすがに同情した。俺よりも黛さんの被った被害が甚大すぎる。
「怪我人と死人が出てないのだけは救いかな⋯⋯」
「いっそ何の奇跡なんだろうね」
黛とさん川崎さんは2人して眉を寄せていた。
俺は何も言えなかった。死人は出た。ただ、あれは香流さんが関与しているのかは分からない。
分からないことを勝手な憶測で言えなかった。
病院では、面会の出来なかった彼氏が勝手に窓を割って彼女へ面会を果たしたと言う美談になっている。
柳瀬さんの事も言うべきか分からなかったので、もうそれでいいやと俺は半ば諦めながら受け入れた。どうせ怒られるのは保護者だ。保護者が悪いんだから後でしこたま怒られればいい。
川崎さんには柳瀬さんの事は伝えた。川崎さんは苦笑いしながら、「あの人は俺でも止められないかな⋯⋯」と零していたのでまぁそういう人なんだろう。
次会ったら文句のひとつでも言ってやる。
香流さん経由で文句が伝わるのは負けた気がするので絶対香流さんには言ってやらない。
でも、もう決めた。
今まで遠慮していたけど、これからはガンガン言わせてもらう。
特に香流さんには絶対後で説教かます。ひとりだけすこやかに眠るなんて誰が許しても俺が許さない。
そして、もうひとつ。
俺は父さんの家族に与しない。
父さんを敵に回すつもりはない。それでも、俺の戦うべき相手はアホだけどあの人ではない。
俺は自分の手のひらを見下ろした。
もう既に傷は治っている。この戦い方を教えてくれた人を、俺が傷付けるのは絶対に違うと言い切れる。
そのためには、まず父さんと香流さんの顔合わせだ。
この島に来てから幾度となくテレビ電話をお願いしているのに、今は忙しいだの川崎さんが代わりにするだのとひたすら逃げまくっている香流さんを捕まえて、父さんの前へ差し出す。
俺は香流さんの味方をすると宣言したところで、顔も知らない相手にはいそうですかと頷くような甘い父ではない。
絶対とっ捕まえて通話画面に引きずり出してやる。
余程悪い顔をしていたのか、川崎さんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
★★★★★
ヒツギの店先でヒツギに白い法衣の女を渡した柳瀬は、扇を元に戻して地下へ戻った。
店を空けておいてもらって良かった。余計な手間が省けて済んだ。柳瀬はここ最近の中では久しぶりに機嫌が良かった。
「死んでるじゃないですか」
「まだ10分も経ってねぇし大丈夫だろ」
釣果は上々。外へ赴いた甲斐があった。
舌を噛まないよう猿轡を噛ませ、両手両足は解体台へ縛り付ける。喋りたくなるようにするにはコレには何が効くかなぁ?
「蘇扇華」
扇を白い法衣の女の胸元へ当て、柳瀬は一言唱える。
蓮の花が女の胸元へ咲き誇り、目を見開いて白い法衣の女は息を吹き返した。
は、は、と短い呼吸を繰り返す白い法衣の女へ向かって、柳瀬は優しく微笑む。
「あぁ、大丈夫よ。助けてあげたお代は後払いで構わないから。今アタシご機嫌なのよ〜」
「⋯⋯怖」
部屋の隅でぼそりとヒツギが呟いた。
金に汚い柳瀬が後払いで済まそうだなんて、何で支払わされるのか想像もしたくもない。
「ねぇ、アンタは何が好き?アタシなら何でも見せてあげられるわよ。お話したくなる楽しい幻をたくさん見せてあげようね。大丈夫よぉ、幻の中では死ぬことなんてないんだから」
柳瀬の術は万世の術だ。
言の葉に込めた全てを具現化できる。
理など無用だ。柳瀬にとって、柚木の敵は媚びても嘆いても喚いたところで一切の沙汰が許される存在ではない。
「幻扇華」
そして扇が開かれた。
柳瀬の髪色と同じ、青いケシの花が一面に咲き誇る。
鮮やかな美しい花の中で、歓喜の悲鳴を浴びながら柳瀬はより一層美麗な微笑みを浮かべていた。




