表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球の果ての島の物語  作者: 亜滝紅羽
白兎事件編
PR
47/75

白兎事件編15(シアルーム)

(夏椎)


 日曜日の朝。起き抜けに木戸さんから連絡が入ってから、翔真の機嫌がすこぶる悪い。

 悪いといっても知れたもので、耳が前に倒れていたり、尻尾が逆立っていたりするだけで俺と晃に対する態度は変わらない。

 変わらないのが誰に怒っているのか良く分かる。俺も複雑な気持ちだからだ。

 翔真的には木戸さんから連絡が入った、と言うのが余計に腹立たしいんだろうな。木戸さんが香流さんの事を運命の人とか言うからややこしいことになるんだ。


「翔真⋯⋯」

「なぁに」


 宿題をしながら俺が声をかけると、翔真がにこっと笑顔で顔を上げた。

 でも耳は前に倒れている。犬の態度はとっても分かりやすい。同い年なのについ可愛いと思ってしまった。


「ヤキモチ妬くなんてまだまだ子どもだな」

「晃は休みの日は起きられるんだね」

「学校がないからな」


 そんな大威張りで言われても。

 翔真はしれっとした態度で宿題の続きをする。晃の悪態には答えるつもりはなさそうだった。


「俺が来るまでそんなに香流さんはしょっちゅう来てたの?」

「見回り行こうぜ!なんか食いに行こうぜ!空の散歩しようぜ!」


 晃は腕を組んで眉根を寄せた。


「アイツは外に出ないと死ぬ病にでもかかってるんじゃないか。大人のくせに」


 残念ながら絶賛落ち着きのない大人更新中だと思う。


「だから翔真と相性いいんだね」


 俺が言うと、翔真の耳がぴく、と反応した。


「ま、まぁね?おれの家族だしぃ?」

「じゃあ翔真は柚木翔真になるのか」

「んふふ」


 翔真の耳がぴこぴこ揺れている。

 尻尾が如実に語っている。一発で機嫌が良くなった。ついほのぼのと見守ってしまう。


「柚木翔真かぁ⋯⋯」

「良かったね。翔真は苗字がなかったもんね」

「今まであんまり気にしたことなかったけど、高校生って苗字で呼び合ってる人多いもんね」


 中川さんと柳瀬さんも香流さんのことを柚木と呼んでいた。香流さんも名前を呼んだら精神異常をきたす黛さんを除いて、基本的は苗字で呼んでいる。


「えへへ⋯⋯」


 翔真の尻尾が左右に揺れて、頬が緩みきっている。

 そんな翔真の尻尾が、急にピタリと止まった。みるみるうちに眉間に皺が寄っていって、パタリとテーブルに突っ伏してしまう。


「何で呼び捨て⋯⋯」

「あ、思い出しちゃった」

「ねぇ何で呼び捨て!?夜も一緒にいたの!?あー!!もやもやするぅ!」


『香流は今日は行けないから大人しくしとくように』


 木戸さんから俺のスマホに届いたメッセージを見た翔真は、鬼のような形相をして固まっていた。


 複雑だよね。分かるよ、その気持ち。俺だって問い質したい気持ちはあるけど、その答えを聞くのが怖くて躊躇っている。

 翔真が頭をわしゃわしゃと掻きむしっていると、今度はピコンと翔真のスマホが鳴った。

 ボサボサ頭のまま翔真がスマホの画面を開く。


「夏椎、晃!見てー」

 

 それは真生(まお)さんからのメッセージだった。




「やっほー!おはよう3人組!」


 中学・高校合同門の前で真生さんがぶんぶん手を振っている。

 制服姿でない真生さんを見るのは初めてだ。髪型は名称不詳だけれどちゃんと整えている。俺にファッション関係の語彙(ごい)はないけれど、とてもオシャレな外観だった。

 隣のグルーさんはいつも通り熊だった。Tシャツがピチピチしている。今にもはち切れんばかりの熊ボディは制服を脱いでも強そうだ。


「おはよう、真生!」

「妖怪勢にも声かけたんだけどさぁ、アイツら家の用事で忙しいんだってさ。大変だなぁ妖怪っていうのも」


 真生さんはしみじみと言った。グルーさんも一緒になって頷いている。


「という事で、シアルームに行こっか!」


 真生さんは大振りな尻尾を振りながらにかっと微笑んだ。

 俺はちらりと晃と翔真を見上げた。2人ともさりげなく寄ってくる。寄っては来るけど嫌がりはしていない。


「てかあんなに嫌がってたのに、どういう風の吹き回し?」

「俺達は荷物持ちが増えて助かるけどな」

「今日は家にいたくなかったのー」


 翔真は渋い顔をして答えた。悩んでいる時は身体を動かしたい気持ちは俺にも分かる。それに、シアルームは教会の近くだと言っていたから道のりも覚えている。

 昨日教会へ連れて行ってもらえて良かった。後で香流さんに苦言を(てい)されても言い訳が立つ。


(きみ)がどうしても井戸から出たいって言うから、でかいダンボールないかなと思って」

「謎のこだわりだね⋯⋯」

「妖怪勢のこだわりは時々めんどくさいよなぁ」


 目の前を犬人間と獣人が並んで歩くと、尻尾が揺れて妙に可愛らしい。

 2人とも素晴らしいもふもふをお持ちだ。正直獣姿が見たい。尻尾からおしりにかけてのあのふわふわもふもふが見たい。

 けど2人に「獣型のおしりが見たい」とは言えない。友達だからその辺は我慢しないと。俺は内心ひとりで葛藤していた。


「そう言えば教会にはえおのがいるな」


 グルーさんが熊の手をぽんと打った。俺は慌ててグルーさんのごわごわした腕を掴む。


「教会には入っちゃダメ!」

「お?入らないけど、何だ?」

「⋯⋯滅される!」


 中川さんの人あたりのいい笑顔が今は恐ろしいものに思える。

 グルーさんは思わず身震いした。その大きな振動で俺まで一緒に震えるほどだった。


「わ、分かった。シアルームは教会から少し離れてるから大丈夫だろう」

「良かった⋯⋯」


 クラスメイトが知り合いに滅されるのはすごく心苦しい。俺はほっとした。

 中学校舎を抜けて、オフィス街に入るととても閑散としている。

 昨日はちらほらスーツ姿のひとを見かけたけれど、今日はがらんとしていた。ビルの明かりもなく、何だか薄暗く感じる。


「ねぇ、廃材もらったらどうするの?」

「とりあえず校舎まで持ってくかなぁ。西田先生はいないけど、名前書いて置いとく分には問題ないはず」

「いいのあったらいいねぇ」


 友達と一緒に過ごせて翔真はご機嫌だ。

 尻尾が揺れたり、止まったり、俺を振り返ったり、分かりやすく表情がくるくる変わって面白い。

 あれから木戸さんからの連絡はない。

 一緒にいるのか、今は別々なのか、それも分からない。聞いてもいいんだけど、何て聞けばいいのかも分からない。そもそも何が気になってるのかすら曖昧だ。


「香流さんがそんな簡単に手篭めにされるとは思えないけど⋯⋯」

「縁起でもないことを言うな」


 俺が呟くと、晃が苦々しい表情で言葉を被せてきた。なんだかんだで晃も気になってはいるらしい。


「もうすぐ着くよ」


 真生さんが先の方を指さして俺達を振り返る。

 オフィス街の奥側に、コンクリートで囲まれた教室ひとつ分程度のスペースがあった。そこには、思っていたよりは丁寧にたくさんの廃材が並べられている。

 翔真と真生さんがシアルームに足を踏み入れる。


 瞬時に、2人の間に真っ白な光が差し込んだ。


「ふぇ?」

「何⋯⋯」


 あまりに一瞬過ぎて俺も目に追えなかった。

 翔真と真生さんの間で、何かが弾けて消えた。辺りを見回しても何も無い。


「虫かな?」

「蛍みたいな?」


 まぁいいか、と呟きながら2人はシアルームに足を踏み入れた。



 ★★


 

 ビルの屋上から足を下ろして、わいわいと楽しそうな5人を見下ろしながら中川は微笑ましそうに頬杖をつく。


「青春の時間を邪魔するなんて野暮なことするもんだねぇ」


 毎年、この時期になると子どもを狙う羽虫が絶えない。

 オフィス街に人通りのない日曜日なら尚更だ。


「気をつけて帰るんだよ〜」



 ★★



 シアルームからダンボール、和紙、壊れた手押し車など役に立ちそうなものを手に入れた俺達は、それぞれ荷物を手に持ちながら学校までの道を戻っていた。

 それにしても色んなものが置いてあった。カエルの置物なんか誰が使うんだろう。壊れた棚やコピー機なんかも置いてあった。廃材置き場と言うか、何だかゴミ捨て場にも思えるような⋯⋯。


「なんか、ごちゃごちゃしてたね」


 翔真がうーんと首を傾げた。確かに、綺麗に整えられてはいたけど雑然としていた。


「毎年あんな感じ?」

「本当に使えなさそうなものはC地区に持って行って処分されるらしいよ」

「誰が持ってくの?」

「警察じゃない?」


 この島の警察はなんと言うか便利屋のようだ。

 ゴミ収集業者みたいな事もやってるのか⋯⋯。でも、そう言えば路上にゴミが落ちているのを見たことがないことに俺は気付いた。

 翔真の家のゴミも、警察庁の近くにゴミ捨て場があることは知っていてもその後の事は知らない。


「この島、すごく綺麗だよね」


 俺の住んでいた場所は比較的綺麗だったけど、学校の近くではポイ捨てやゴミでごった返している場所もあった。

 バスに乗ってその様子をぼんやり眺めていたのを覚えている。


「なんか、島中のゴミはC地区に住んでる地下生物が処理してくれるらしいよ」


 新聞紙を抱えた翔真が妙なことを教えてくれた。地下生物、とは。俺は嫌な想像を振り払うように首を振る。


「ちょっと響きが嫌だな⋯⋯」

「おれも香流お兄ちゃんに聞いた時夏椎と同じ顔してたと思う」

「香流さんは見たことあるのかな」

「微妙な顔してたから、多分見たことなさそう」


 あの人、苦手なものとかなさそうなのにな。そんな香流さんが微妙な顔をする生物とは一体⋯⋯。

 とそこまで考えて、俺は思考を停止した。

 深く考えない方がいい。知らない方が幸せな事もある。そんな気がする。


「あれぇ?夏椎、翔真、晃〜!」


 俺が脳内の謎の妙な想像上の生き物を打ち消すために今日の晩ご飯の事を考えていると、校舎側から声がかけられた。

 知っている声だ。顔を向けると、校舎内には今日も石田先生がいた。


「石田先生!今日も学校?」

「今日は部活!」

「何の部活?」

「野球部だよー!」


 それはすごく似合う。でもこの人剣道部じゃなかったっけ。父さんの剣道部お気に入りリストに入ってたと思うんだけど。


「石田はいつも学校にいるな」

「晃が俺の名前呼んだ!?どう言う風の吹き回し!?⋯⋯もしかしてついに俺のこと尊敬しちゃった!?」

「鬱陶しい」


 晃ときちんと話せたあの日から、晃の大人に対する態度は目に見えて軟化した。

 今まで職業や記号でしか呼ばなかった人達を、名前で呼ぶようになったのはとてもいい変化だと俺は思う。


「あっ、みんなでシアルームに行ってきたの?正門開けようか?」

「裏門に置こうと思ってたんですが⋯⋯」

「俺が責任持つから教室か準備室まで運んじゃいな。また平日に運び直すのの面倒くさいでしょ」


 石田先生が正門を指さすと、真生さんとグルーさんはキュンとときめいたのか胸を押さえた。

 石田先生はいい人だもんな。優しくて頼りになる。正に理想の先生といったところだ。


「石田先生って優しいんだな⋯⋯」

「石田先生は俺達が高校生になったら担任になるんだって」

「やべぇ、俺達の高校生活超明るいじゃん」

「西田先生も優しいんだけどねぇ〜」


 正門を開けながら、石田先生はあははと笑った。


「西田先生は今日韓流アイドルのライブだって」

「若っかいなぁあのばあさん」


 真生さんが呆れがちに肩を竦めた。

 西田先生は山姥(やまんば)の妖怪だと聞いているけれど、スマホも使いこなせているし都会生活も満喫している。とても元気なお婆さんだ。

 正門を抜けて、石田先生に頭を下げながら俺達は中学校舎へと向かった。

 いつもの靴箱で外履きを脱いで、上靴へ履き替えてから教室へ向かう。道中で、真生さんが窓の外を眺めながら長い息を吐いた。


「俺も大きくなったら島から出られるかなぁ」

「真生は島から出たいの?」

(あゆむ)先輩と結婚式したい」

「それは島でも出来るのでは⋯⋯?」

「島に結婚式場はないんだよ!」

「教会は⋯⋯」


 と言いかけて、なんとなく俺は口を閉じた。

 中川さんが牧師のような真似をする姿が思い浮かばない。

 一応天使だと言っていたけど、羽を見たことがないからなのかな。いい人はいい人なんだけど、牧師のような清廉潔白の立ち姿とはなんかイメージが違うんだよな。

 

(せっかく助けたのに散々な言われような天使だった)


「翔真は島を出たくないの?」

「出たくなーい!だって家族も友達もここにいるもん」

「新しい出会いがあるかもよ?」

「やだぁ。離れてる間に何されるか分かったもんじゃないし⋯⋯」


 ふ、と翔真は遠い目をした。


「何の話?」

「ええと、ちょっと昨日色々あって⋯⋯」

「おれやっぱり帰る!ちょっと突撃してくる!」

「最悪の展開だったらどうするの!?」

「最悪の展開ってなに!!」


 持っていた資材を放り投げて、翔真が勢いをつけて廊下を走り出す。俺も慌てて持っていた資材を晃に渡した。

 まさかないとは思いたいけど、今後も保護者をしてもらう以上お互い大惨事になる事態は避けたい。

 必死で走っても、あまりに速すぎて翔真に追いつけない。さすが犬!と賞賛を送っていたら、真横を真生さんが通り過ぎて行った。


「俺が追うから荷物運んどいて!」

「う、うん!」


 バタバタと廊下を走り抜けていく犬2匹は、もう背中が見えなくなってしまった。

 後から追いかけてきたグルーさんと晃が俺の隣に並ぶ。俺は息を整えながら、2人を見上げて苦笑いした。


「とりあえず、片付けよっか⋯⋯」

「家族が出来ても落ち着きないな、翔真は」

「アイツは昔から落ち着きはない」

「あはは⋯⋯」


 ポメラニアンは小型犬だもんなぁ。


 翔真が子犬だった時分も、ずっと俺の周りを走り回っていた。すばしっこくて捕まえられなかった記憶がある。


「さ、お二方。もうひと仕事したらファミレスにでも行こうか」

「ファミレス!」


 グルーさんが荷物を抱えながらにかっと笑った。

 なんか友達っぽい。そういうのちょっと憧れてた!


 さっきの疲れなんか吹っ飛ぶくらいの提案に、俺は翔真と真生さんが置いて行った資材を両手に抱えた。



 ★★★★★


 

(翔真)


 石田先生が止めてきたのを聞かないフリして学校を飛び出したおれは、家に向かって走⋯⋯ろうとしたところを、誰かにひょいとつまみ上げられた。

 足がつかなくてバタバタしても、その人は動かない。見上げると、どこかで見たことのある人がにこにことおれを見下ろしていた。


「あれ、会長!」

「かいちょ?」


 黒くて短い髪。涼しい目元。

 背が高くて格好いいお兄さんは、おれをそっと下ろして優しく頭を撫でてくれた。


「急に飛び出すと危ないですよ」

「捕まえてくれてありがとう、(しぎ)〜!さっき中学校舎入ったばっかだと思ったのに、もう!」


 石田先生がグラウンドから追っかけてきた。おれの前に立って、腰に手を当ててぷんぷん怒っている。


「最近物騒なんだから単独行動ダメ、絶対!」

「うぅ、だってぇ⋯⋯。香流お兄ちゃんが心配だったんだもん⋯⋯」


 おれは香流お兄ちゃんのことが心配だっただけなのに。

 せっかく気持ちの通じ合った大好きな家族が、よく知らないあの大きい人にてごめされるのだけは阻止しなければならない。

 使命に燃えるおれを見下ろして、石田先生は丸い目を大きくした。

 

「香流?香流なら家で寝てるよ。賢吾と柚姫もついてるし大丈夫でしょ」

「うちの兄さんも行ってると思いますよ」

「あぁ、雲雀(ひばり)もいてんの?」

「ひばりん?」


 おれも目を丸くしてお兄さんを見上げた。

 そうだ。見たことあると思った。ビアガーデンの時はちらっとしか見えなかったけど、ひばりんの弟だ!


「良く似てるけど全然似てない弟!」

「良く言われます」

「翔真、会長の兄ちゃん知ってんの?」

「うん。おれのお兄ちゃんの幼なじみだよ」

「あぁ、C地区長さん⋯⋯」

「ひばりんはB地区長さんだよ」

「翔真の人脈すげぇな」

「あの時はA地区長さんの小波ちゃんもいたよ」

「⋯⋯警察暇なん?」

「さぁ⋯⋯」


 おれにはそこまではフォロー出来ない。確かにいつも落ち着きはないけど、香流お兄ちゃんと小波ちゃんはセットで動いていることも多くて、昔は良く一緒に色んな場所へ連れて行ってもらっていた。

 今は、あんまり呼んでくれなくなったけど。

 だんだん唇がとがってくる。いいもん。これからはおれの方からグイグイ行くもんね。


「ちなみに、会長は何しに学校へ?」


 真生が耳をピコピコさせながら尋ねた。

 そうだ、ひばりんの弟は生徒会長だった。でも、今日は制服姿じゃない。

 

「石田先生のお手伝いをする約束してたんです。野球部、マネージャーいないですもんね」

「聖人君子みたいな解答が返ってきた!」


 せいじんくんしってなんだろう。ぽかんとしていると、真生がさっとおれの後ろに隠れた。

 

「眩しい⋯⋯。彼女に会いに来たのかなとか俗っぽいこと考えてごめんなさい⋯⋯」

「真生⋯⋯」


 真生は人の恋にも一直線だな。おれには恋はまだ分かんないけど、そんなに気になることなのかなぁ。

 

「鴫、いつもありがとう!助かるよ〜」

「後で橋元(はしもと)達も来るって言ってましたよ」

「えー、橋元来るなら野球になるじゃん」

「石田先生、野球部なんだよね?」

「せっかくだから試合でもしたらどうです?」

「そうだなぁー⋯⋯」


 石田先生はちらりと俺達を見た。


「じゃあ、正門開けたお礼として君たちもお手伝いよろしく!」

「えっ!?」

「俺、野球のルールなんて知らないよ!」

「大丈夫、石田の野球はふわっと適当に楽しめばいいから!」


 がっしりと俺達の襟首を捕んで、石田先生はそのままズルズルと引きずっていく。

 

 石田先生、力強くない!?女の人なんじゃなかったっけ!?やっぱり香流お兄ちゃんみたいに女の人みたいな男の人ってこと!?


 

 その後の石田ルールでの野球は大いに盛り上がって、しばらく中3部では野球の話題は禁止になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ