殺意感染――次の犠牲者は チャプター12
「どうして、野本君が……」
はっとしたように、弥生は尋ねる。
「けど、貴方は最初に肩を刺されたはずだよね!」
「刺されたよ。おかげで自分が襲われたと偽装することで、僕が犯人ではないという先入観を与えるためのカモフラージュができた」
事実、彼の右腕はほとんど動いていなかった。ナイフを握っているのは、左腕。
「どうして、倉森を殺したの?」
弥生が尋ねると、そうだね、と野本は語りだした。どうせ殺すのだ、何を喋っても大丈夫だろうという余裕があるのだ。事実、俺たちは腕を手錠に掛けられているため逃げることは叶わない。
けれど、それでも俺は彼の視界からかいくぐる方法を、頭の中で考え続けていた。
相手は俺たち二人、たやすく捕らえられると思っているはず。だからこそ、スキが生じる可能性だってある。……今はそれを待つしかない。
「彼女はかなり鋭い奴だった。……僕は病室に写真点てを置いていたの、覚えているかい?」
写真点て……。
まさか。
「いつの間にか……消えていた」
野本が襲撃された当時、花とともに添えられていた、伏せられていた写真点て。
しかし、倉森が殺害され集合した時、そして俺、弥生、そして彼のみの会談の際、それはあったか。いや、無かったはずだ。消えていたのだ。些細な変化すぎて、気づくことができなかった。
彼は入院していたはずなのに、どうして写真が消えていたのだろう。
「ああ。彼女が一人でお見舞いに来た時にね、僕が飲み物を買いに行かされたんだ。その時に――今思うとただの好奇心だったんだろうね――彼女は写真点てを開いた。僕と姫路が映っている写真を、ね」
「確かにあいつは姫路を見殺しにしたことや、怪異を調べていた。姫路に妹がいるというのもあいつからの情報だった」
「だからこそ殺す必要があったんだよ。彼女は頭がいい奴だった、全てを理解し、警告するだろうからね」
野本はクルクルとナイフを弄びながら微笑を浮かべる。
この一連の事件は、一つの大前提があった。それは俺たちが見殺しにした姫路の呪いであるという事象が、怪異を生み出していたということ。このおかげで俺たちは今の今まで警官に頼ることはなく、このような状況に陥る羽目になったのだ。
しかし、真っ先に倉森は犯人を特定してしまった。彼女が確信を持っておらず、他人にむやみに知らせなかったとはいえ、彼女の存在は野本らにとって障害となったのだ。
実際、倉森は気づいていた。だからこそあの夜に電話を俺にかけてきた。あの日倉森が頼ることができたのは、精神衰弱の稲村や、ヒステリックに陥った織田、当時行方不明の寺井、犯人だとわかった野本ではなく、俺か、弥生の二人だけだった。
そして倉森は俺が弥生と合流することを知っていた。
あの日倉森が俺に連絡をよこしたのは、まさにたまたまだった。弥生でもよかったのだ。
「そういう、ことだったのか」
舌打ちする俺。彼女の思考をもっと類推してさえいれば、初期段階で彼が犯人だと特定できたかもしれなかったのに。
「寺井を殺したのは……」
「僕達だよ。風邪を偽っていたのは知っていたからね、僕たちが向かっている間に、姫路が殺しに向かっていたんだ。彼は彼で怖いから来なかったというわけではなくて、面倒だから行かなかったといっていたから、多分姫路からしたら彼が最も許せなかったんだろうね。最優先で彼は殺す標的になった。死体は廃墟の風呂場に隠しておいた。廃墟を燃やしたのは死体を発見させるため。織田あたりの冷静さを奪えるだろうし、ついでに姫路の廃墟を焼くことで、サラに呪いとの関連性が強まると思ってね」
やはり、俺と弥生が廃墟に訪れた時、そこに寺井はいたのだ。
釘で封鎖された風呂場に、彼は死んでいた。そして、俺らは知らずに二階に上がって……。
「あとは簡単だったよ。平塚が僕たちに集まろうと集合を掛けたのは偶然だった。本当は僕が誘おうとしていたんだけど、まさかこうなるとは。稲村が精神を病んでいたのもそこで知った。少し揺さぶりをかけたら、本当に織田を殺して、しかも今度は突然飛び降りるなんて。さすがに僕もびっくりしたよ」
弥生が十年前の贖罪に行こうといったのは、野本らにとって全くの偶然だった。そして、彼らはそのチャンスを生かし、見事にあの日の呪いだと仕立て上げた。
俺たちはすぐに勘違いした。そして織田や稲村を死に追いやる間接的な原因となってしまった。
「焚きつけたのは、お前だったのか」
弥生が稲村の家に訪れた時、うわごとのように繰り返していたそれ。精神的に不安定な者は、悪意ある言動に簡単に惑わされる。
「ああ。最初に姫路をひき殺したお爺さんを殺した時にはこの計画は練りあがっていた。いくつか偶然が積み重なったけれど、ここまでうまくいくとは、ね。しかもみんな保身のために僕たちの関係や、昔の事故を警官に話さなかったから、余計にうまくいった」
柔和な笑みのまま、野本は微笑する。
「天澤を殺したのは、どうしてだ」
先ほど殺され、臓物を爆ぜ死んだ天澤。
「あいつは、関係なかっただろうが!」
「もちろん彼を殺すことは僕たちにとっては最大の誤算だった。もともと君を殺すつもりで姫路を幽霊の化粧を施して追いかけたんだけど、まさか生きていたとはね。その原因は天澤だったし、事実何度も二人が会っているのを尾行してたから、すぐにわかったよ」
あの日俺を追ってきたのは、姫路だったのだ。幽霊ではない、奴は、確かに生きている人だったのだ。
人間が犯人だと考察した天澤は正しかった。そしてその冷静な判断力が、彼を殺害するに足りうる動機となった。
俺のせいで、彼は死んだ。
彼を巻き込んだ自分の軽率さに歯がゆさを覚えつつも、今は感情的になるなと自分を抑え込む。観察しろ。奴が隙を見せるまで。
「今度は昼時に誰もいないことをリサーチして、君の家に侵入したんだけど、家具がそのままで衣類が消えていたから、平塚のところにいるのだろうなと思った。まさか、二度も君を殺し損ねるとはね」
「家をあさったのは、お前だったのか」
「ああ。平塚の家も特定ができていたから、倉森のように隙を見て押しかけて殺そうとしたんだけど、今度は織田が君たちに連絡したから、手間が省けた」
俺たちは織田を助けにこの廃ビル――因縁のビルにやってきた。
「稲村は姫路が監視していたから、動きは筒抜けだった。織田が君たちに連絡をしたのは知っていたからね。あとは織田が死ぬのを見届け、イレギュラーだったけど、稲村が転落したのを見、平塚を誘拐した」
「彼女を誘拐したのは……」
「別に。ただあそこは警官が来るだろうから、離れたところでじっくり殺すつもりだった。藤間も人気のない道で殺そうとしたんだけれど、何故かナイフを持っていたからね、驚いたよ。だから計画を変更して、背後から殴り殺すことにしたんだけど、打ちどころが良かったのかね、普通に生きてたし。しかも酔っ払いのサラリーマンが通りかかったから、近くに止めた車に君を乗せてここまで来たんだ」
君を運ぶのはとても苦労したよ、と野本は笑う。
「だけど、お前がこんなことをする義理はないだろう!」
お前は見捨てた側だ。倉森の言う、見殺しにした姫路の妹の婚約者だといって、こんな連続殺人の被害者になる筋合いなんてない。
「確かに俺たちは姫路さんを見捨てた。今思い返せば最悪な行為だった。けれど、平塚や稲村は、ずっとこの出来事を悔いていた! お前の独善で、俺たち全員を皆殺しにするなんて間違ってる!」
無関係な天澤を巻き込み、稲村を利用し、そしてこうして俺たちに刃を向ける野本は目を見開く。
「姫路はどこにいるんだ? この家にいるの――」
「黙れ腐れ外道」
低い声色に、俺の言葉はさえぎられた。一瞬で豹変した彼に、ヒッと弥生が息を呑む。
「僕の愛している美愛をお前みたいな薄汚い奴が語ることが許せないな」
「野本君……」
姫路美愛。……あの日死んだ姫路の妹の名。
「君たちに言ったよね。僕は」
『大切にしたいと思っている。何があっても、ね』
「僕は彼女の思いに応えたいだけなんだ。そうすれば美愛は僕のことをいっぱい愛してくれる。僕は彼女のためなら、なんだってできる」
恍惚とした表情の野本に、俺は即座に悟る。
狂っている。
「彼女は僕を許して、あろうことか僕と交際してくれた。とても聡明な女性なんだ。ずっと愛している。僕は彼女の願いを聞き届けなければならない」
「だから、このような凶行に走ったのか」
「ああ。彼女、僕の肩を突き刺す時も涙を流すほど優しい人なんだ。けなげだし。大学時代に逢って、そこからずっと僕の傍にいてくれた」
その目に宿る狂気はもはや俺達ではない、恐らく姫路のことを夢想していたのだろう、焦点が合わない。
……逃げるなら、今しかない。
手錠は、ギリギリ出ることはできない。
親指が引っかかってしまう。
頼む……抜けてくれ。しかし下手な行動をすればまず間違いなく勘づかれ、殺される。動きは最小限にしなければ、その時点で終わりだ。
鍵を持っているのは、恐らく野本か、後は彼の婚約者である姫路か。
「ハハハ! もう少しだよ、もう少しで僕が君の願いを成就させてあげるからね」
ふと思い出す。
俺のポケットには、ナイフが入っていた。
途端に、早鐘の如く心臓が鳴った。
……馬鹿な考えなのは分かっている。
ありえない。
普通だったら。
だけど、今の状況に普通という概念はない。
野本は自己陶酔が終わってしまえば、俺たちを殺すだろう。
仮に野本を倒しても、奥には姫路の妹がいるに違いないのだ。
……今ここで、手錠を抜けなければ、まず間違いなく、俺たちは死ぬのだ。
体全体が汗ばみ、自分の親指を見つめる。
ちらりと横にいる弥生を見やる。
彼女は震えながら、体を小刻みにし涙していた。
俺は、彼女を守ると誓ったはずだ。
考えるな。体だけ動かせ。
やるしかない。
たとえ、どれだけの激痛が襲おうとも。
痛みを想像し、俺の喉がカラカラに乾いていく。怖い。怖い。怖い。
吐きそうになる。呼吸ができない。涙で目がかすむ。手錠にかかる右腕が震える。本能的な恐れ。相反する生存本能。
野本の処刑まで、あと三十秒もない。
急げ。
俺はそのままポケットに手を突っ込んだ。野本がはっと我に返る。その目が嫌に正気で、ああ彼は、本気で正しいと信じてこの殺戮を行ったんだとどこか冷めた目線で見ていた。
握ったところが刃であり、左腕に痛みが走る。顔を歪め、ようやく弥生が俺を見やった。
柄を握りしめ、ポケットからナイフを取り出した。
「お前……」
野本が反応するも、既に遅かった。
彼が駆け寄る前に、俺は思い切り自分の指にそれを突き立てた。
骨は硬い。知っていた。
だから、思い切り刺した。
逆手に持ったナイフは、簡単に俺の親指を切り取った。
痛みはまだ来ていない。
血もまだ垂れてない。
骨を貫いた刃の先端がへしゃげる。
アドレナリンが全開なのか、体じゅうの血液がどくどくとめぐり、心臓が破れんばかりにバクバク言っている。
「何をやって――」
目を白黒させる野本。
顔を背け、えづく弥生。
野本を睨みつけた俺は。
そのままいとも簡単に手錠から手を抜いた。
「野本ぉ!」
彼に襲い掛かる俺。もはやそれは本能だった。
俺のナイフが、反射的に顔をかばった野本の手を切り裂く。鮮血が飛び、地面に赤い斑点がこびりつく。痛みに彼がナイフを落とす。
「藤間ぁ!」
不意に鳩尾に衝撃が走り、壁に背中をしたたかに打ち付けた。
思い切りけり飛ばされたのだ。野本がナイフを取ろうとかがむ。
痛みは、まだない。
彼がナイフを持つ前に、俺は雄たけびを上げ、彼に突進した。というより、それしかすることができなかったから。
まともに野本は喰らい、そのままよろけながら扉に当たる。
「こいつ――」
必死の抵抗とともに、俺はようやく痛みを覚える。痛みというより、熱い。
力が抜けた瞬間、野本が俺の胸元をつかみ、奇声をあげながら扉を開けた。思わず手からナイフを落とす。カランカランとナイフが地面に落ちた。
扉の下には、階段があった。下は真っ暗で、奥底が望めない。
落とすつもりだと気づいたときには、にやりとゆがんだ笑みを野本は浮かべていた。
とにかく階段から離れる。俺より小柄なはずの野本は、ものすごい怪力でこちらへ引き付けようとする。足がふらつき、そのまま引きずられる俺。
ここから落ちたら、もう助からない。けれど力で負けて、そのまま俺は階段側へ引き寄せられる。
ヤバイ……!
「藤間君!」
弥生の劈く叫び声に、俺は思わず野本を引っ張っていた。弥生の切羽詰まった声が、一瞬だけ俺の全力を引き出させた。体育祭で応援された時、力がみなぎる経験と同様の物だった。
咆哮とも、絶叫ともつかない大声を上げ、俺はそのまま野本ごと、闇に沈む階段へ飛び降りた。
野本の目に恐怖の色が走る。自分が巻き込まれるとは思っていなかったのだろう、何かを口走ったが、それは言葉になることなく、俺の胸元を握りしめたまま、落ちた。
階段の角に体のあちこちをぶつける。どちらが発したのかもわからなくなった、くぐもったうなり声。
痛い。痛い。痛い。
刹那、鈍い音がした。グシャ、という音とも違う、何か、硬いものが折れる音。
思い切り後頭部をぶつけた。
腕にも痛みがして、涙がこぼれた。
やがて、背中に平たい、冷えた床の感触がした。
どうやら、階段は終わったようだ。
天井が見える。高い、高い天井。電気は消されており、一見すると部屋がない、廊下が広がるばかりだ。
廊下の奥は左折しており、そこからほのかな光が漏れていた。
どうやら俺が想像したよりも、この家は巨大らしい。とにかく、異常に広いのだ。木造の床からはヒノキの香りが漂っているし、廊下も一軒家のそれではない長さだ。なんとなくホテルを連想するほどにまで長く、広い。
いや、観察している場合ではない。
俺の胸元に、野本が顔をうずめていた。覆いかぶさるような体制の彼は、ピクリとも動くことはなかった。
ヤバイ、と内心思う。上を取った彼が明らかに有利に決まっているからだ。
「野本!」
思わず両腕で彼の胸元を思い切り押し出す。
しかし、野本の抵抗はなかった。
俺が与えた衝撃を受け、彼はぐりんと体を仰向けにし、ゴンと音を立てて階段の段に当たった。
起き上がり、俺は絶句した。
野本は、死んでいた。
首の骨が折れているのか、ありえないほど首が後ろへ沿っていて、無防備な喉仏が見えた。
目から光が消えていたのが、何よりの証拠だった。
「の……もと……」
女性のような顔立ちの彼の表情は、まるで意志を持たぬ人形のようにぐったりとしていた。
「……なんでだよ」
稲村も、野本も、俺のせいで……?
狂ってる。
一度は同じ釜の飯を食った俺達が。
高校で最も意気投合した旧友同士の俺達が。
なんでこんな殺し合いを演じているんだ。
倉森も、寺井も、織田も、稲村も、そして今、野本が死んだ。
全ては、俺たちが、姫路を死なせた報いなのか。
「……どうして、こんなことに」
親指の切断面から、経験したことのないほどの激痛が走っているけれど、俺は動くことができなかった。無性に涙がこぼれた。
「……病院に、連絡、しないと」
応急措置は……どうすれば……いいんだったっけ。
駄目だ、頭が働かない。
涙をぬぐい、俺は野本のポケットを探る。
俺の予想通り、彼のポケットの中には鍵があった。
俺と弥生を縛っていた手錠の鍵なのだろう。
「これが、あれば」
不意に、足音がした。
向こう側の廊下からだ。
「……まずい」
鍵を抜き取り、俺は即座に二階へ駆けあがる。
ぼたぼたと血が地面に垂れていく。
痛い。
「そうだった……断面を冷やさないと……」
接合するときに冷やしていなければそれだけ成功率が下がるのだ。
「早く上がらないと……。奴が来る……」
鍵を手に取り、再び上階へ上がる。
扉を開くと、ガタガタと震えている弥生がいた。
「平塚……」
「の、野本君は……」
「殺した。もう駄目だ。逃げよう。もう、何もないところへ」
手錠を外した俺は、弥生の手を取る。
さっさとここから引き上げなければ、せっかく生き延びたところで殺されるのがおちだ。
「指、大丈夫? 親指……」
「大丈夫だ。……そんなことより、早く逃げよう」
奴らが追ってこない場所まで。ギリギリまで。
もう何も失いたくない。だから、頼む。
弥生の華奢な手を引き、下へ降りる。なるべく駆け足で。
そのまますぐ一階へ降りる。
人の気配はないものの、あちこちの部屋は電気がついている。野本が付けたのか、はたまた、姫路がどこかに潜んでいるのか。
野本の死体が転がっているところに行くと、弥生が口元に手を当てて顔を背けていた。
これで、生き残りは二人だけ。
弥生の顔を見る。十年ぶりに会った時の快活さに満ちた表情は、今や憔悴しきっている有様だ。恐らく、俺もそうだろう。
ギシ、ギシと鳴る長い、木造の廊下。
左折すると、玄関口が見えた。
誰もいない。
……けど、かすかな足音がしていた。
「……リビングが」
廊下につながるリビングからだ。こちらからでは扉が開いているものの、中の様子を窺い知ることができない。
「……平塚」
「何?」
小声でささやくように、俺は彼女に指示を出す。
「二階の窓から降りろ」
「なんで――」
「いいから! それと、俺たちは今スマホがない。一刻も早く交番か、公衆電話に行け」
足音が、ゆっくりと、でも確実に、大きくなってきている。
「けど、藤間君は」
「俺は後から絶対にたどり着く。……だから早く」
弥生はしばし躊躇していた様子だったが、俺の真剣な表情に、ようやく首を縦に振った。
「けど、藤間君は何をするの?」
「俺は、全てを終わらせる」
禍根を絶つのだ。すべての決着をつけ、生きてここから出る。
「早く行け!」
「気を付けてね、藤間君!」
急ぎ足で二階へ上がる弥生を見送る。
……すぐに、地面に影が差した。
「一人逃したことで贖罪にするつもりかしらぁ? 藤間守恵さん」
長い黒髪。切れ長の瞳。冷徹な目をした女性。
姫路美愛。
俺たちが見殺しにした、姫路真の妹。頭一つ分小さな女性だ。二十歳くらいだろうか、どこかあどけない印象なのだが、その目だけは冷徹そのもので、俺を標的と見定めているハンターそのものだった。




