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-契- 現代陰陽師奇譚  作者: KUMANO
十章 現代の陰陽師

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自分で言うな

 二月二十六日 庚申(かのえさる)


「……安倍晴朗……? へぇ、もしかして君のご両親、陰陽師好きだったりする?」

「えぇ、お察しの通りです。母が筋金入りのファンでして」

「そうかそうか。そして君は……」

「初めまして、丹生(にぶ)保喜(やすき)と申します」

「父で民俗学専門の教員をしております、忠平(ただひら)と申します」

「よろしくお願いいたします。では、私からも改めまして……」

 

 数日後、晴朗と賀茂親子は実資と共に、東京都内のとある芸能事務所に併設されているスタジオにやってきていた。


「一応、陰陽師として活動しております。『HIKARU』と申します」

 

 あれから実資は、

 

『自分が所属している大学に、史実の記録に基づいた陰陽師について、研究している教員と学生がいる。彼らがぜひ取材させてくれないか。と言っている』

 

 と、友人伝いに連絡を入れた。

 

 配信者に対して、出会い頭に喧嘩をふっかけたような言動を取った実資に、果たして了承してくれるかと少々不安があったものの、すぐに本人から快諾の連絡が返ってきた。

 

 その後それぞれのスケジュール確認を行った結果、全員が奇跡的に空いている日にちが2月26日のみだった。


「本日はお忙しい中、私たちの我儘を快く引き受けてくださり感謝申し上げます」

「いえ、こちらこそ。現代に広く知れ渡っている誤った陰陽師像ではなく、本来の在るべき姿である陰陽師を研究しているあなた方であれば、いつでも大歓迎です」


 物腰柔らかく、丁寧に対応しているスーツ姿の男。

 陰陽師系動画配信者『HIKARU』


 これまでは開運方法のレクチャーであったり、心霊現象で悩んでいる相談者の家に赴いて除霊を行ったり、オカルトやスピリチュアル的な内容で、多い時には一本の動画で50万回以上の再生回数を記録するなど人気を博していた。

 

 だが先日の動画を公開して以降は、主に陰陽師の歴史を辿る授業のような内容に一転。占いや天文、暦の豆知識などを披露はしてはいるものの、再生回数は新規を上げるたびに減り続けている。

 チャンネル登録者数も10万人を超えてはいるものの、こちらも少しずつ減少している。

 

 そんなHIKARUの元へ、今回4人が事務所ではなく、スタジオに足を運んだのは、HIKARU側から『もしかしたらこの取材を動画で公開するかもしれない』という打診があったからだ。これを受けて、実資のみ顔出しでの出演を承諾。


 晴朗と保憲は学生の身であることと、賀茂親子に関しては、本名のまま接触するのは警戒心を持たれる可能性があることを加味して、偽名を使用することにしたのだが、顔出しをしてしまうと本名がバレることを危惧してのことである。


 そんな今回の内容は、主に『陰陽師の虚像と実像について』


「……それにしても、安倍晴朗くんに藤原実資さんか。偶然とは恐ろしいね」

 

 談話室のようにセットされているスタジオ。そこに一人がけのソファーが1つ、その隣には二人がけのソファーが2つ設置されている。


 HIKARUが一人がけのソファーに腰掛けながら、あらかじめ用意されていた資料を、まじまじと見つめながらつぶやいた。


「本名なんですよね」

「そうです。血筋は全く関係ありませんが……、身内に優秀で有能な実資を尊敬していた人間がいたんじゃないですかね」


 HIKARUの疑問に、実資は顔色一つ変えずにしれっと答えた。

 すると二人がけのソファーに腰掛けていた晴朗が、小声で「……自分で言うな」と突っ込んだ。


「確かに、実資は本当に有能な貴族でしたからね。公卿に列しながらも決して驕ることなく、そしてあの道長に(おもね)ることもなく、最期まで朝廷に尽くした素晴らしい人物でしたから。影響を受けるのは当然でしょうね」


 HIKARUはクスリと笑いながら、実資を褒め倒した。それを聞いた本人はどこか得意げに笑っている。

 

「いや実はね、私のスタッフの中にも、あなたや晴朗くんと同じような影響を受けた名前をしている男がいるんですよ」

「同じような影響……?」


 どういう意味だ? と言いたげに首を傾げた彼らに対して、HIKARUはカメラの近くでスタッフと会話をしていた、一人の男性を呼んだ。


「お呼びです? HIKARUさん」


 背丈は実資と同じくらいか、40代ごろの、黒髪に混じる白髪が少々目立つ、細目が特徴的な男性が、首から下げた社員証を揺らしながらやってきた。


「彼の名前は出雲清明(いずもきよあき)。私のマネージャーをしてくれているんだ」


 

 

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