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-契- 現代陰陽師奇譚  作者: KUMANO
十章 現代の陰陽師

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例えどんな批判に晒されようとも


 

「……____では、元から陰陽師本来の姿はしっかり心得ている上で、敢えて万人受けする陰陽師像をこれまで演じていた……。ということですか」

「そういうことだ。……だが方向性を変えたい、と相談するも、事務所側は『それじゃ再生数が稼げない』として、ずっと反対していたそうだ」

「だろうな」

「そんな時に、(くだん)の動画が投稿されて……、それが自称陰陽師にとって追い風になったんだろう。ついに事務所側が渋々折れたらしい」


 (くだん)の動画、というのは、たぬきTVの動画のことである。

 

「けれども事務所側が危惧していた通り、再生数こそは一時的に増えたものの……。登録者数は激減、コメントも非難の嵐の炎上状態……。これからどうするんだろうな」


 晴朗は他人事のように言いながら、熱々のお茶をお供に茶菓子を頬張り始めている。

 一方で話についていけてなかった忠行は、保憲からHIKARUの動画と、元凶となったたぬきTVの動画を教えてもらい、静かに視聴している。


「あの自称陰陽師(いわ)く、『例えどんな批判に晒されようとも、私はやらなくてはいけない』……と、豪語していた。相当の覚悟と自信があるんだろうな」

「その自信はどっから出てくるんだ……」

「奴はこれまでにあらゆる文献を読み漁り、研究したと自慢していた。俺の『小右記(日記)』はもちろん、道長(あのバカ)の『御堂関白記』、その腰巾着の『権記(ごんき)』なども、ある程度頭に入れていた」


 実資は更に「研究する分には構わんが、それを嬉々として自慢してくるあたり人の程度が知れるな」と続けながら、HIKARUの言動を鼻で笑った。

 

「まさか……私たちと同じ……?」


 するとこれまでずっと静かに動画を見ながら状況を把握していた忠行が、「HIKARUも過去世の記憶を持っている、元陰陽師なのではないか」と勘繰った。しかし実資は、すぐに首を横に振って否定した。

 

「恐らくそれはないかと。奴が語った内容は、あくまで現存している記録と、それらを元に現代の学者がどういった解釈をしているのかという、かき集めた知識をそのまま披露している。そう感じられましたので」

「……なんか前も似たようなことしてた奴がいたような……」


 今回の問題にどことなく既視感を覚えたのか。お茶を啜っていた晴朗がふと、記憶を探った。

 

「法師陰陽師の奈夜郎だろ」


 中々名前が出てこない晴朗の代わりに、保憲が答えた。

 

 約4ヶ月前、忠行の教え子や智尋の友達を騙して、怪しいセミナーに通わせていた謎の自称陰陽師奈夜郎。その正体は陰で動いていた元法師陰陽師であり、今もどこかで活動しているであろう円能と妙延の傀儡兼隠れ蓑(かくれみの)的役割を担わされていた男である。


 するとようやく思い出した晴朗が「そうだ! 俺アンチのインチキ野郎!」と声を大きくすると、

 

「お前アンチが他にもいたのか。奇遇だな。奴も安倍晴明(お前)をボロクソに叩いていたぞ」

「はぁ!?」

 

 と、本人にとっては聞き捨てならないことを言い出した。


「……なんと、言っていたのですか?」

 

 忠行も少しばかり険しい表情になり、HIKARUがどんなことを言っていたのかを聞くと、実資は昨日のことを思い出しながら、彼が言っていたセリフをそのまま口にした。

 

「……『現代に伝わっている、蘆屋道満や安倍晴明の伝説は、そのほとんどが嘘ででっち上げられた、偽りの陰陽師の姿だ』と……」

「それは前も聞いた! なぜどいつもこいつも叩くところが一緒なんだ!」


 空になった湯呑みをドンと机に置きつつ、ぷんぷんと頬を膨らませ怒っている晴朗を隣に、保憲が「一番目につくからだろ」と冷静に突っ込んだ。

 

「あと……」


 実資は更にこう続けた。

 

「『私の家こそが、最も優秀な陰陽家の血を、連綿(れんめん)と受け継いできた後継者だ』とも、言っていましたね」

「家……? 陰陽師を輩出してきた家の多くは、既に断絶しているはず……」


 顎に指を当てつつ「まだ密かに残っていた……? いやでも……」と、呟きながら考えている保憲を見ながら、実資が口を開いた。


幸徳井(こうとくい)……」


 その聞き覚えのある苗字に、保憲や晴朗、忠行はひどく驚愕し、そして戸惑いの表情を見せた。


その腰巾着=藤原行成(ふじわらのゆきなり)


実資は日記の中で、行成をはじめとした、自分の仕事より道長の仕事ばかりをやってゴマスリをしたり、顔色を伺っていた取り巻きたちのことを「恪勤(かくご)上達部(かんだちめ)」要約すると「公卿のくせに従者の真似事をしているバカ共」と批判しています。(解釈が誤ってたらサーセン)


こういうハッキリバッサリ切っていく所がかっこいい俺たちの賢人右府。

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