黒毛玉
「どこにも無い……だと……!?」
「占いの店がそもそも見当たらないとは……」
13時ごろ、3人は稲荷大社の近くにある食事処で遅めの昼食をとっていた。
あれから2時間近く、件の占い師を手分けして探したのだが、それらしい店はどこにも見つからず、歯がゆい思いをしていた。
「まだ時間に余裕はあるけれど……どうする?」
一足先に昼食のきつねそばを食べ終えた忠行が、スマホの時刻を確認しながら晴朗に意見を募った。
「もう少し粘りたいです」
晴朗は大きないなり寿司を頬張りながら、自らのスマホで地図アプリを起動した。
「保憲は稲荷駅周辺、忠行様は参道沿い。私は伏見稲荷駅周辺……。あとまだ可能性がありそうで探していない場所で言えば……本殿から見て北……このあたりはまだ未捜索です」
地図アプリを見ると、稲荷大社からみて西側に商いが集中しており、3人はその辺りを重点的に捜索していた。お土産屋や食事処などは数多く構えられている一方で、占い屋らしき店はほとんど見当たらなかった。
「南はほぼ住宅街で線は薄いし、東は稲荷山……。だな」
「見つかるといいね」
食事を終えて、食事処を後にした3人は捜索を再開しようと歩き出した。
「さて、道順は……」
晴朗が目的地までの道のりを確かめるため、スマホを取り出して地図アプリを起動した。
その時だった。
「あっ!! おい!!」
一羽のカラスが飛んできたかと思うと、素早く晴朗のスマホを強奪して飛んで行ってしまったのだ。
「大丈夫か晴朗!!」
「俺のスマホ!! まちやがれ黒毛玉!」
「は、晴朗!」
「すみません! すぐ戻ります! 二人はこのまま捜索をお願いします!」
カラスは晴朗のスマホをくちばしで器用に咥えたまま、稲荷山の方角へと飛んで行く。
晴朗も捜索を一旦親子に任せると、千本鳥居へと通じる道のりを走り始めた。
「待て晴朗! 俺のスマホ持ってけ!」
あっという間の出来事に、親子は晴朗をそのまま見送りそうになったが、もしこのまま彼のスマホが帰ってこなかった場合を想定して、保憲は急いで自分のスマホを取り出して晴朗に投げ渡した。
「悪い! 恩に着る!」
高く舞い上がった保憲のスマホは、無事に晴朗の手に渡り、晴朗は素早く礼を言うと、そのまま走って千本鳥居の中に消えていった。




