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-契- 現代陰陽師奇譚  作者: KUMANO
六章 前世を知る者

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私はもう、認知しておりますので


「予約していた田貫(たぬき)です」

「あ、はい! お待ちしておりました〜! ご案内しまーす!」


 新しく来店してきた団体客の足音が、3人が使用しているテーブル席の近くまでやってくる。


「あ!」


 最初に気づいたのは智尋だった。


「あれ? さっきの長身イケメンさん!」


 智尋の声に反応して振り返ったのは、先ほどまでイベントの進行司会を務めていた、たぬたぬだった。服装は浴衣姿からカジュアルなものに着替えていた。さらには他の配信者たちも揃っており、どうやら打ち上げにこの店を選んだのだろうことが予想できた。

 

「あの野郎……!」


 そして打ち上げのメンバーのには、過去世が見えるという占い師、月読もいた。

 月読の姿を見た途端、晴朗の表情が険しくなった。


「うわっ! めっちゃ奇遇〜!」

「先ほどは、どうも……」

「ねぇ! 良かったらちょっとお話ししません?」

「えっ」


 呪呪原は保憲の返答を聞く前に、彼の隣に腰をおろした。


「ちょっと、呪呪さん……」

「いいじゃんいいじゃん! お連れの2人もいいよね??」

「オレは賛成〜!」

「キミノリいいねぇ〜!」


 たぬたぬが申し訳なさそうに呪呪原を止めるが、彼女が席から立ち上がる様子はなかった。

 智尋も好きな配信者たちと一緒に会話できるのが嬉しいのか、呪呪原の提案を即座に賛成した。


「君はど〜お?」

「……どうする?」


 呪呪原は更に味方を増やそうと晴朗にも聞いた。すると彼自身は答えず、保憲に判断を仰いだ。


「……えぇ、私たちも、構わないですよ」

「……はい決まり〜!」


 保憲はどうしようか迷ったが、智尋が子犬のような瞳で、彼らと食事を共にしたいと訴えてくるので、半ば諦めたように了承した。

 すると呪呪原はテンション高く、早速「何食べます〜?」と言いながら保憲と共にメニュー表を見始めた。

 たぬたぬは申し訳なさそうに「すいません……」と一言謝ってから、空いている席に腰を下ろした。

 

「__へぇ〜明後日成人式なんだ! じゃあお祝いに先立ってお酒奢ってあげよっか!」 

「すみません、実はまだ、飲めなくて……」

「もしかして誕生日がまだっていうオチ?」

「仰るとおりです」

「そうなんだ〜、ちなみにいつ〜?」

「ノボルさん! 動画めっちゃ見てます!」

「ありがとうね」

「廃神社に行った時の動画が一番好きで〜、あと某旅館に行った時の動画も好きです!」

「廃神社って結構初期にあげた動画だよね?」

「だってオレ、『ドドド』のチャンネル登録者数がまだ100人行ってない時から見てるもん!」

「まじ? ありがたいな〜。いい年したおじさんしか出てないのに」

「それがいいんじゃん!」

「遅瀬さんは、いつからそういった曰くの物を集めるようになったのですか?」

「5.6年くらい前かな〜。海外旅行に行った時、お土産屋さんで偶然見かけた、とある部族の呪物を見た瞬間『これは買わなあかん』って思っちゃったのが始まりかなぁ」

「ほう……、確か、たぬたぬさんにも呪物を贈られていますよね? 大丈夫なのですか?」

「あの幽霊画の掛け軸ね。時々掛け軸からお線香の香りがしてくるくらいだよ」

「お線香……」


 飲み物や料理も届き、それぞれが会話に花を咲かせており、ちょっとした宴会のような状態になっていた。

 そんな中、月読はただ1人、周囲を見守りながら静かにワインを嗜んでいた。


「ねぇ晴朗」

「どうした?」

「なんかあの女の人、すごい賀茂さんにグイグイいくね……」

「……」


 定期的に相手を変えながら会話を楽しんでいたメンバーたちに対して、呪呪原はずっと保憲の隣をキープし続け、彼女が質問攻めを行なっている状態だった。智尋は小声で「やっぱり顔か……顔なのか……」と呟く中、そろそろ助けてやるべきか。と考えた晴朗が2人の近くに移動した。


「呪呪原さん。先ほどトークの中で見せていただいた木製の人形(ヒトガタ)。あれはどこで手に入れたのですか?」

「え? ……あれはね。視聴者さんが譲ってくれたんだよ〜。心霊スポットに行った時に、偶然見つけたんだって」

「左様……ですか……」

「そういえば、保憲くんは心霊スポットとか行くの?」

「いえ、そういった場所にはあまり……」

「そうなんだ〜意外〜」


 呪呪原は晴朗との会話を手早く終わらせると、すぐに保憲との会話を再開してしまった。

 まるで「邪魔をするな」と言わんばかりの対応の違いに、晴朗は少しだけイラついた。

 

「あの、右近さん!」

「なんだい?」


 一方、智尋は1人で静かにお酒を飲んでいる月読に話しかけていた。

 

「オレの、過去世も見てもらえませんか!」

「もちろん。いいよ」


 月読の快い対応に智尋は「やった〜!」と無邪気に喜んだ。

 

「じゃあ……、差し支えなければ名前を教えてもらっても?」

「智尋です!」

「ありがとう。では……」


 月読はたぬたぬや保憲の時と同様。智尋の顔をじっと見つめ始めた。

 智尋は目をキラキラさせながら見つめ返している。

 近くにいたノボルやたぬたぬも、そんな彼の様子を暖かく見守っている。

 

「……う〜ん、君も人間……」

「本当!?」

「江戸時代の飛脚さんかな……走っているイメージが……見える……」

「飛脚!? まじかぁ〜! オレ走るの早いからそうなのかも!?」


 智尋は「ボルボックスじゃなくて良かった〜!」と言いながら晴朗に向かって、へへんと胸を張った。晴朗はそんな嬉しそうな彼を見ると、やれやれといった雰囲気のまま「はいはい良かったな」とだけ返した。


「良かったら君も見ようか?」


 すると、月読の方から、晴朗にも鑑定を勧めてきた。


「いえ……、私は……」

「遠慮しなくてもいいよ」

「いえ、そういうわけでは……ただ……」

「ただ?」

「私はもう、自分の過去世を認知しておりますので……」

「え!?」


 晴朗の回答に、月読や配信者たちはもちろん、智尋と保憲も驚いていた。


「へ〜、別の人に教えてもらったってことっスか?」

「いえ……、昔、ちょっとした事故で……その時に」

「マジっすか!? どこで!? どんな感じで!?」


 たぬたぬと遅瀬が興味津々に聞いてきている。

 特にたぬたぬは動画配信者としてのネタ探し的な意味もあるのか。かなり前のめりになっている。


 対して、智尋は「うっそだ〜! 賀茂さんもなんか言って……」と笑いながら保憲の顔を伺うと、彼は不安そうな表情をして、晴朗を見ていた。


「じゃあ、右近さんと過去世が合致するかどうか、見てもらうってのはどうです?」

「いいね! 面白そう! 右近さん! どうです!?」


 遅瀬の提案に、たぬたぬはかなり興奮した様子のまま賛同した。

 対して月読は冷静なまま「……君はどう?」と晴朗にも意見を仰いだ。


「私は構いませんよ」


 そうして、晴朗は爽やかな笑顔を顔に貼り付けたまま、月読の対面まで移動し、座り直した。


 

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