黒い犬と白い猫 (Ⅵ)
依頼主が何かを言おうとした時には赤屋は既に携帯を切っていた。
狭間はジッと赤屋を見て口を開けた。
「おい、赤屋。分かっているだろうがお前の心は―――」
「わかっている。そんな事最初から・・・」
狭間が全てを言う前に赤屋は呟いた。もう聞き飽きたと赤屋は思っていた。
「私・・・どうすればいい?」
会話をずっと聞いていたリリスがまた声を出した。
「京都だ。そこに俺の旧友がいる。とりあえずそこに向かうぞ」
立ちながら赤屋が二人に言った。
旧友・・・昔すぎて実際今もいるとは赤屋は思ってないが彼にしか頼る人がいなかったのだ。
「おいおい、ここから京都まで行くのか?相手はブレーン殲滅が専門のBEOだ。途中で必ず足止めくらうのが関の山だぞ」
ストっとリリスの手から離れて畳の上に狭間は立った。
BEO、敵は国だと考えるのが普通だ。赤屋もそれぐらい考えていると思ったがそれでも気になってしまった。
「自分の良心に従い、邪魔する者がいれば倒すだけ・・・師匠が昔、言ってくれた気がするな」
天井を見ながら赤屋は昔の事を思い出してるように言った。
ッチ と透かさず狭間は舌打ちした。
そんな昔の事を出してきたら狭間も何も言えなかった。
「分かったよ。このお嬢さんを身捨てられないんだろ」
「師匠・・・」赤屋がその言葉を発する前にガチャッと車のドアが開く音が聞こえてきた。
「くそ、もう来たか」忌々しそうに赤屋が呟いた。
「師匠とリリスは窓から逃げてくれ。落ちあう場所は駅だ。途中でATMから下ろせるだけ金を下ろして持っていてくれ」
赤屋はポケットから財布を出して机の上に置いた。
「おい!お前だけで戦うのか!」
赤屋の顔を見ながら狭間は言った。心配もある、しかし赤屋に死んでもらったらこれからどうするか分からなかったのだった。
「相手はどうせ無能力者。殺しはしないから大丈夫だ」
玄関に赤屋は歩いて行った。
下を向きながら狭間は少し考えたが、すぐに無駄だと思った。
彼・・・赤屋は昔から決めた事は必ず実行する人物だった。4年間同じ屋根の下で住んでいる狭間にはそれぐらい分かるのだった。
「・・・。あーもう!しっかり駅に来いよ!」
裏から狭間の声が聞こえたが赤屋は気にしなかった。
『死ぬつもりはない、こんなところで』
赤屋の胸にはその言葉だけが刺さっていた。




