黒い犬と白い猫 (Ⅳ)
「お前、名前は?」
古びたマンションの一室に20歳前後の男と16歳程度の少女がアライグマを抱いて座ってる光景は少しシュールだろう。
少女は真っ白な服に日本人の顔だったが、目は青色。そう・・・ブレーンの目と同じ色だった。髪は銀色でツインテールになっていた。
部屋の中央に置いてある机に座りながら赤屋は少女に問いかけた。
「私・・・リリス」
「おいおい、お嬢さん。あんた外人さんか?」
リリスの胸元に抱かれている狭間が上を見ながら言った。
「あ、このクマ・・・しゃべる?」
「クマじゃない、俺は能力者だ!」
リリスの腕の中で狭間はジタバタ動いていた。
「俺は赤屋信世だ。そっちの馬鹿クマは狭間俊って名前だ」
「誰が馬鹿だ!」と言いながら必死に狭間は抜け出そうとしていた。
「え、と・・・このクマの能力って・・・変身?」
「いちおう変身だ。ついでに俺は金属変換の能力を持っている」
リリスはキョトンとしながら狭間の方を見た。
「私・・・クマより猫がいい・・・」
「っな!」と言いながら狭間は抜け出すのを止めてリリスを見た。
「だそうだ、馬鹿師匠。猫ぐらいなってやれよ」
右手を上げながら赤屋は狭間に言った。
「ま、お嬢さんの頼みなら仕方ないか・・・」
リリスが優しく畳の上に狭間を置いた。すると狭間はアライグマの姿だったが、顔の方から徐々に猫に変わっていき数秒で茶色の猫になった。
しかし、リリスは少し不満げに猫を見ていた。
「私・・・茶色嫌い。白が好き・・・」
「ッチ、わがままなお嬢さんだな」
狭間は呟いた。そして軽く顔を回すと茶色の毛が頭から白色に変わっていった。
ジーと変身するとこを見ていたリリスだったが白になった瞬間に両手で掴みまた自分の胸元に持って行った。
「って結局掴むのかよ!」
ギャギャーと狭間は騒いでいたがリリスは「可愛い・・・」と言いながらムギューと人形を抱くように狭間を抱いていた。
その光景を見ていた赤屋は少し口元をひくひくさせていた。
(何なんだ、こいつ・・・。俺らが能力者と分かっても怖がろうとしない)
能力者になるには脳と心臓を喰われなければならない・・・というのが赤屋の知っている能力者になる唯一の手段だった。
脳と心臓を喰われても生きてる人間なんて周りから見れば完全に『化け物』。それがなくても能力なんて危ないものを持ってるから周りは避けてしまう。
結局能力者は『化け物』だった
だけど、この少女はまるで怖がろうとしない。
(まさか彼女も能力者・・・?)
赤屋の頭の中でその考えが過った。しかし考えても仕方ないと思った赤屋はリリスに聞き出すことにした。
「本題入るぞ。お前なんで捕まってた?」
無表情でジタバタする狭間を抱きながら赤屋の方を見た。
「私、サンプルだから・・・」
「何のサンプルだ?」
赤屋がリリスに聞いたが、彼女は少し黙ってしまった。そしてゆっくりと口を開けて小さな声で言った。
「ブレーン・・・。人工的に能力者を創ろうとしたの・・・」
「「っな」」
その場にいた狭間と赤屋は同時に声を出したのだった。




