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黒い犬と白い猫 (Ⅲ)

赤屋はアパート前にまで来ることが出来た。


「何時見ても、ぼろいな」


前にある木造建築のアパートを見て赤屋は呟いた。

築・・・30年といったところだった。

1階と2階に分かれており左の階段から2階には昇れる。

1階は6部屋あり、2階は7部屋ある。

あの男達が追ってこないのをみると途中で引き離せたらしい。

鉄の階段を昇りながら赤屋は少女を見る。


(こいつを依頼主に渡していいのか・・・?あの男達がサンプルと叫んでいた。何かの実験対象か?)


ガンガンと2階の床を歩きながら赤屋は考えていた。

いつの間にか自分の部屋の前に来てたことが赤屋は分かった。

しかし、両手を塞がれているので仕方なくドアを1,2発蹴った。

夜中のアパートにバンバンという音が響いた。


「俺だ、信世だ。両手が塞がってるからドア開けろ」


部屋の中から「んー?」という声とともに古びたドアがゆっくりと開いた。

しかし、ドアが開いてみるとそこには誰もいなかった。


「おい、馬鹿師匠。今度は何に変身してる」


そう言いながら赤屋はドアの下の方を見ると茶色のアライグマが座っていた。


「馬鹿とは失敬だな。ついでに今度はアライグマだ。こいつはいいぞー何よりも動きやすい。ん?誰だ?お前の抱いているお嬢さん」


こちらをアライグマが見上げながら話しかけてきた。


「依頼の物だ。詳しい事は中で話す」


そう言いながら赤屋は靴を脱ぎ部屋の中に入って行った。


「全く今度はどんな依頼を受けたんだ」


はぁーとため息を吐きながらアライグマは赤屋の後について行った。




「で、そのお嬢さんは誰なんだ?」


アライグマが部屋の中央にある机に座りながら赤屋に問いかけてきた。


「知らん、こいつが起きたら聞けばいいだろう」


少女を窓側の畳の上に寝かせながら赤屋は答えた。


「おいおい冗談だろ。見ず知らずの少女をお前は家に連れてきたのか」


「こいつは依頼の物だ。依頼主から電話が掛かってくるまで置いておくだけだ」


それだけ言うと浴室に赤屋は向かった。


「何だお前、今から風呂か」


「二日続けて仕事だったんだよ。彼女が起きてもビビらせるなよ」


「あいよー」と言いながらアライグマは机を下りて少女の傍に近寄った。


赤屋のアパートは廊下の途中に浴室がある。後はトイレと台所があるだけだった。しかし、4年前から赤屋はここに住んでいるが台所はほとんど使ったことがない。

ガラッと扉を開け、赤屋は浴室に入って行った。




「また厄介な物家に持ってきやがって」


アライグマは少女の傍に座りながら呟いた。

彼・・・狭間俊はざましゅんは4年前ブレーンに襲われた赤屋を拾った男だった。変身能力に長けていて動物なら何でも変身出来るという。しかし、あまりにも長いこと動物の姿だと人間の姿になった時に体がおもうように動かなくなる。

この能力は戦闘には使えないが、彼自身がかなりの身体能力を持っているので不必要。もしも、戦闘に使える能力だったら鬼に金棒だった。赤屋でも闘えば1分ともたないだろう。

狭間が少し下を向きながら考え事をしていると前方で何かが動いたような気がした。

「ん?」と狭間が言った時には既に遅かった。

ガシッといつの間にか起きていた少女に両手で腹を鷲掴みされた。


「っな!お前何する気だ!」


かなりの力で掴まれている・・・という事ではなかったが何かに押さえつけられていたら人間に戻れないのだった。

そして無表情の顔で彼女はジーと狭間を睨みつける。


「・・・・・・クマ」


彼女が出した第一声がそれだった。




時間は少し戻り、赤屋はシャワーを浴びていた。二日間の疲れを全て洗い流していたのだった。

赤屋は思い詰めていた。


(奪取・・・又は破壊。依頼主は彼女を必要としていたのか?しかし、だったら破壊しては困るはず。そして、あれにそこまでする価値があるのか・・・?)


「とりあえず彼女に聞けば全部分かるか・・・」


ガラララと浴室のドアを開けて真っ黒な服を着る。4年前狭間が買ってくれた物だった。


「もうこれを着て4年も経つのか」


少し昔のことを思い出そうとしていた赤屋だったが部屋の方から叫び声が聞こえてきた。


「っな!お前何する気だ!」


誰かに襲われたのか!と思い部屋に急ぐ赤屋だったが、彼の目に映っていたのは少女が狭間を鷲掴みしてる姿だった。


「・・・・・・クマ」


彼女がポツリと声を出した。


「何やってるんだ、お前ら・・・」


赤屋は呆然と二人を見ていたのだった。


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