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戦う者と逃げる者 (Ⅳ)

拳銃から出た弾は赤屋の体に当たる前に男達の視界から消えてしまった。同時にカランカランと何かが落ちる音が響いた。


「拳銃で能力者が倒せると思うか?」


拳銃から発射された弾は消えてはいなかった。赤屋はナイフを持っていない方の手で能力を使い弾を薄い鉄板に変えたのだ。弾は厚さ数ミリの鉄板に変わり威力を失い床に全て落ちてしまう。

少し男達は戸惑っていたが赤屋はふと違和感に気がついた。1、2、3、4・・・違和感の正体に気づき少し赤屋は顔を顰めた。


「保険という事か?卑怯な手を使ってくるな」


それだけ言うと赤屋は下に降りる階段の方にナイフを投げた。同時にドタバタと何かが落ちる音と叫び声が響いた。


「足がぁ!俺の足が!」


階段の下でうずくまってる男はナイフが刺さっている足を握っていた。止まることなく血がタラタラと垂れている。


「隠れて狙うとはな。そこまでして勝てないと思うなら最初から戦おうとするな」


片手を手すりに置き軽々と2階から赤屋は飛び降りた。片手にはまたナイフが握られている。少しずつ前進する赤屋とは反対に男達は少しずつ後退する。

その中で一番前にいた男だけはまだ赤屋に銃口を向けていた。カタカタと少し拳銃が震えているようだ。それでも男は迷わず引き金を引く。

バンっとクラッカーのような音が鳴り響くと同時に赤屋が走り出した。

スパッとナイフで簡単に弾を切り落とされ男の顔は驚きに満ちていた。そして男の目の前にはいつの間にか赤屋がいる。同時にバキバキと骨が砕けた音が鳴り男の体は真横に吹っ飛んだ。

赤屋の回し蹴りが男の脇腹に直撃したようだ。


「肋骨が何本かいっただろうが、死ぬことはないだろう?」


男は痛みでうずくまっている。当然答えることなんて出来ないようだ。

「次は誰だ?」赤屋は吐き捨てるように言った。

「アァァ!!」という叫びと同時にパンパンとまた赤屋に向かって弾が発射された。

5つの弾は赤屋に吸い込まれるように飛んで行ったが一振りでスパッと切り落とされる。


「くそぉ!この化け物が!」


男達の中の一人が初めて声を出した。


「そうだ、分かっただろ?俺は化け物だ。お前たちが敵うと思ったのか?」


「ッ・・・。逃げるぞ!」


一人が言うと5人全員赤屋に背を向けて走って行った。せわしく一番最初に車に乗り込もうとした男がなぜか吹き飛ばされた。


「下っ端がなに逃げようとしてる?所詮あいつも弾くらえば死ぬんだぞ!」


車から出てきたのはさっきのサングラスを付けている男だった。吹き飛ばしたやつから拳銃を奪い赤屋に近付いてきた。下っ端が役立たずで激怒しているようで男は赤屋しか見てないようだ。

だけど、赤屋は男なんか見てなかった。いや、見れなかった。もっと他の物、ボスらしき男の左側・・・他の男達も気付いてるようだが恐怖で声が出ないらしい。



今の世界を狂わせたドス黒い赤い色の生命体・・・ブレーンがいた。



ブレーンの目は真っ直ぐ男を見ている。そう、ひさしぶりに『獲物』を見つけて喜んでいるみたいだ。そして、一段と大きく口を開けて男に飛びかかった。同時に男は赤屋の目線が自分に向いてないと分かり何かに気付いたようだがもう・・・遅かった。




「ギャァァァァ!!」




頭に飛びつかれ少し男はジタバタしていたがグチャバキッと音が鳴りバタっと仰向けに倒れてしまった。

断末魔の叫び声が響き、恐怖で固まっていた男達はやっと行動できたようだ。急いで車に乗りどこかに逃げてしまった。同時に赤屋も何が起こっているか気づき持っていたナイフをブレーンに投げた。グチャと音が鳴りブレーンの頭は破裂してシュゥと蒸発した。食事中だったからなのか避ける様子もなくあっさりと死んでしまった。

ブレーンは死んでも消えるが・・・人間は死体として残る。

ゆっくりと赤屋は死体に近付くと思わず口に手を当ててしまった。

心臓は嫌いなのかあまり喰われてなく胸は雑に穴が開けられていた。少し血肉が月明かりに照らせれて不気味に光っている。頭は上の部分が無理やり開けられており半分ほど無くなっているようだ。血肉と一緒に見える白い物は頭がい骨だろう。


(自分もこんな死に方したのか。確かにこれで生きてたら化け物だ)


口に当てていた手をゆっくり外し地面に落ちているナイフを回収した。

そして怪我をしている2名を病院に送る為に携帯をポケットから出した。しかし、今は夜なので当然病院には誰もいなく救急車が来るのは夜が明けてからだろう。

さすがにずっと死体を見たくはないので赤屋はアパートの方に体を向けた。


「救急車お願いします。場所は―――」




ガァン!




何かが割れる音。

赤屋はなぜか下を見てしまった。何もない地面を。

不可思議に割れている地面を・・・。


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