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必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 3冊目
37/42

学生人出陣

 今日あった出来事を書く。清春は昨日から話しかけてこない。今日の仕事は俺一人でやった。朝起きてロビーに降りたらヤクザがウロウロしてたので、こりや大当りかなと思ってたら昼近くになったらどんどん増えて明らかになんか準備をしてるみたいだったのでここに泊まって正解だった。電話するフリしたり1階のトイレに入ったり売店で新聞買ったりしながら30分おきぐらいに1階に降りて見張ってたけど山野はいつまで()っても来ないので自分の部屋に戻った。学生服に着替えて、三村からもらった資料で山野の特徴を復習した。写真だと柔道やってそうなてっぺんハゲで薄茶色のサングラスしてて、外国タバコを吸うってドコで調べたんだろうとか思いながらロビーに降りたら、もう山野が来ていた。そのままフロントでチェックアウトした。殺した後だと騒ぎになるだろうし、警察が宿泊客全員に足止め()わすかもしれないからだ。そこにいるヤクザは全部あわせても10人くらい。お忍びってのは本当かもしれない。レストランを貸し切ってるみたいだったけどレストランとロビーの仕切りがないし、山野はちょうどフロントの斜め後ろに背中向けて座っていたからだいたい何を話してるのか聞こえた。もちろんチンプンカンプンだったけど、なんか相談してるみたいだった。松田会長と会うとか言ってたけど、相手はあんまりジジイに見えなかったのでちがう奴だろう。待ってる間になに気なく後ろ向いて山野を確認して確かに山野だったけど、本当に外国タバコを吸ってたのは笑えた。外に出ると右側にホテル2階の喫茶店と美容室に行くための階段が玄関とは別にある。そこを上がって、踊り場で学生服の上着を脱いでジャンパーに着替えた。喫茶店を素通りするとホテルの中の階段のトコに出る。そこで1階と2階の間の踊り場で1階のトイレを見張る。たぶんココが山野が一人になる唯一のチャンスだ。誰かが階段を降りてきたら2階に上がってそこのトイレに行くふりをする。下から上がってきたら見つかるまえに2階のトイレに隠れる。そうやって見張ってたけど他のヤクザは何回もトイレに入って、よく似たハゲなんかがいて間違えそうになったけど山野本人はなかなか来なかった。シビレを切らしてこっちがトイレのなかに入って待ち伏せすることにした。もちろん極力見られないようにして入って、掃除用具の入った個室に隠れた。そうしててもしばらく誰も来なくていい加減イライラしてきた。こういうときタバコが吸いたくなるんだろうなとか考えているときに誰か入ってきた。二人いた。

「会長はいつ()るとですか?」

「知らん。」

「もうすぐ()らるっとでしょうね。」

()んでも()るまで待っとかなならんやろうな。」

 ひょっとしてと思って白い陶器の流しに乗って上から覗いたらピッタシ山野だった。二人とも後ろ向いて小便してるけど、頭ハゲだしさっきと服が同じだから間違いない。でも二人なので必要になるかもしれないから、スポーツバッグから拳銃出してベルトに差した。でもこれ使えば俺の人生もココでジ・エンドだなと思ってたら、チャンスがやってきた。小便が終わったとき、

「ワシちょっとクソして行くけん、先行っとけ。」

って言って山野が手下みたいなのを帰して“大”の方に入った。手下が出て行ってから俺は用具入れからそーっと出て、また学生服に着替えた。やっぱり学生服は偉大だ。山野は個室から出てきてからちょっと変な顔をしたが、黙って通り過ぎようとした。

「あの……」


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