第6話 帝国親衛隊、そして略奪
ヴァルターの家を出た。
辺りは先程の混乱はなくなり、村人達は普段通りの生活をしていた。
「ではテラ様、準備ができ次第──」
その瞬間、一人の村人が息を切らしながら走ってきた。
「ヴァルター村長!大変です!近くで魔物討伐を終えた帝国軍が補給の為ににこちらにやってきてます!」
その言葉を聞いた村人達は焦り始め、外にあった商品をしまい込み、窓も閉じ始めた。
そしてヴァルターは厳しい顔をしていた。
「くそ……また来るのか」
俺は気になって質問した。
「そんなにヤバいのか?だって帝国軍って言っても、自国の国民は殺しはしないだろ?」
ヴァルターは首を横に振り、答えた。
「奴らはワシらを、国民とは思っておらん。特に異種族に対してもだ」
「差別ってことか……」
するとヴァルターは俺達に指示した。
「もしテラ様の存在がバレてしまえば、全てが終わってしまう。早く私の家に隠れなさい!」
「わ、わかった。ヴァルターはどうするんだい?」
テラが質問すると、ヴァルターは笑顔で答えた。
「村長のわしが出向かなければ、怪しまれるではありませんか」
ヴァルターの言葉に、テラは少し考え込み、答えた。
「わかった。でも無茶はしないで」
こうして俺とテラは、村長の家に入った。
***
隠れ始めて3分後。兵士達の軍靴の音や、装備から放たれる金属音が鳴り響いた。
窓からこっそり見ると、先程までいた村人達はいなくなり、その影響か音がいつもより大きく感じられた。
「ヴァルターはどこだ!」
「ここでございます、アロイス中隊長どの」
馬から降りたのは、漆黒の制服に身を包んだ男だった。
背丈は高く、辺りの兵士は槍や銃らしき物を担いでいた。
「兵士どもに休息を与えるため、ここにいさせてもらう。勿論拒否はしないよな?」
「えぇ、勿論ですとも。何か必要な物はございますか?」
するとアロイスはニヤッと不気味な笑顔で答えた。
「酒と女を用意しろ。勿論、飯も必要だ」
その発言に、ヴァルターの表情は変わった。
「お言葉ですが、ここは異種族や子どもしかおりません。帝国軍の方々には失礼にあたってしまうかと」
「うるさい!女ならば良いのだ!どうせガイアの生き残りだろう?」
「それに、俺は精鋭部隊の指揮官だぞ?」
ヴァルターの拳は震えていた。
そして俺は小声でテラに質問した。
「テラ、あれって……」
「あいつらは帝国軍の中でも長い歴史と高い練度を持つ、帝国親衛隊の一部だね」
「つまりは精鋭って訳か……。にしても酷すぎる要求だな」
するとテラは彼らを睨みながら話した。
「奴らは異種族やガイアの人たちを、生き物だと思ってないんだ」
「あの態度からにして、そうだろうな。でもどうして親衛隊なのに非難とか指摘されないんだ」
「それは簡単だよ。彼らが強いからだね」
「実績を持つからこそ、何も言えないってわけか」
そしてアロイスは兵士たちに指示した。
「貴様ら!パーティーの時間だ!」
その号令が放たれた瞬間、兵士たちは獣のごとく、村を漁り始めた。
ある者は女を外に引き連れ、並べている者。
ある者は食料と酒を強奪し、悪魔のように歌いながら貪る者。
ある者は高級品や物品などを盗み出し、袋いっぱいにしている者。
それらの光景をみたヴァルターは何もできずに、ただ拳を震えさせながら見ていた。
「酷すぎる……。テラ、何かできないのか?!」
「……何もできない。相手は精鋭だし、何より数が多いんだ」
俺は居ても立っても居られず、ヴァルターの家の中にあった銃を取り出した。
「な、何をしているんだ!一人で何とかなる事じゃないよ!死にに行くようなものさ!」
「俺の親父からよく言われたんだ。俺がやらねば誰がやるってな?」
その瞬間、一人の少女の叫び声が聞こえた。
窓から見ると、複数人の兵士が整列させた異種族に段々と近づいていた。
「くそっ……テラ、ここで待ってろ」
そして俺は、裏側にある窓から飛び出した。




