第5話 ヴァルターの話
村長についていき、家の中に入ると、そこは広く温かい雰囲気の家だった。
中央には暖炉があり、4人分の椅子と机、そして赤を基調とした絨毯があった。
「にしても……まさかテラ様がこちらに来るとは」
「久しぶりだね、ヴァルター」
するとヴァルターは俺を見つめ、話し始めた。
「それで、その男は?」
「この人はレン。僕がこの世界に呼び出した転移者だよ」
テラの言葉に、ヴァルターは驚いていた。
「転移者……となるとまさか、帝国に立ち向かうのか?」
「そうさ。この地獄から君たちを、そして過去の栄光と平和を取り戻す為に」
彼女の横顔は真剣だった。
必ずやり遂げる、そんな意気込みを感じた。
するとヴァルターは一冊の本を取り出した。
「もし戦うとしたら、過去のあの悲惨さをもう一度体験する事になってしまう。それも今度はどちらかが全滅するまでだ」
「全滅……?そんなにひどいのか?」
俺の言葉にヴァルターは頷いた。
「ああ、これを見てみろ」
先程の本を開き、俺に見せてくれた。
そこには歴史が沢山書かれていた。
両軍が槍や剣を用いて、一つの街で数千人の死傷者が出たこと。
その後の略奪などで、約2万人が死亡した事。
そしてアストラがガイアの神々を制圧した後、残った人々を処刑した事。
それらの歴史は、とても重く、悲惨な結果と記されていた。
これを見た後の俺は、何も言葉が出なかった。
「そして、今の帝国は新たな兵器や技術を生み出している。だからもし戦争になったら、これ以上の被害が出るだろうな」
ヴァルターは重く、そして静かに語った。
だが、テラはその重い空気を切り裂いた。
「でも希望はある」
「希望?」
俺が質問すると、テラは話した。
「ガイアの神々を解き放つんだ。それも封印されている仲間達を」
「殺されたんじゃないのか?」
「大半はね。でも、力や能力が強すぎて殺せなかった神が何人かいた。だからアストラや帝国軍は、封印をすることにしたの」
そしてテラはヴァルターと向かい合い、真剣な眼差しで話した。
「お願い。力を貸してほしい」
しかし、ヴァルターはすぐに答えを出さなかった。
静かな空間、これから起こる未来。
そしてヴァルターは言った。
「良かろう。だが条件はある」
ヴァルターは壁に飾ってあった剣を引き抜いた。
「若者には戦わせない。戦うのは老兵のみだ」
「分かった。本当にありがとう、ヴァルター」
するとヴァルターは明るい表情になった。
「よし、わしは昔の仲間を集めよう。そっちはどうする?」
「そうだね、僕たちは封印された仲間達を集めるよ」
「わかった。そこの若いの、テラ様を頼んだぞ」
俺は拳に力を入れ、答えた。
「ああ、任せろ」
そうして、俺達は外に出ようとした瞬間、ヴァルターに呼び止められた。
「……その格好で出るのはもうやめてくれないか?」
「あっ」
こうして俺はヴァルターから、ズボンを借りた。




