第8話【裏切りSIDE】女戦士アンナは冒険者を辞めたくない、新たなダンジョンへ!
「アンナ、今日は結婚式だったんだろう、良いのか俺達とダンジョンに潜って」
「うんリーダー、約束は守ってきたからもう自由だよ!」「いや式は出なくて籍だけって」
「それよりボクはもう、この『クリーンジャスティス』のメンバーなんだから、さあ行こう!」
ご機嫌なボクは未知のダンジョンへ潜る、
今までは魔王のせいで敵が強すぎて入れなかった場所、
どんな魔物が、そしてどんなお宝が待っているかワクワクする!
(それにしても、魔王討伐の6年間は、楽しかったなぁ)
懐かしい6年前、
15歳でS級冒険者になったボクは、
冒険者ギルドに貼り出された募集に心を躍らせた。
『魔王討伐パーティー参加者、若干名募集』
条件は魔王討伐後、異世界から来た勇者と結婚すること!
でもボクにとっては『魔王討伐』という文字にとんでもなくワクワクした、
あまりに強くなり過ぎて、手に負えなくなったと聞く魔王を倒しに行けるなんて!!
(魔王を倒せるなら、戦士として刺し違えても良い!)
それくらいの気持ちで参加した、
あのパーティーは本当に、ほんっとうに楽しかった、
何よりS級になるまでは自分に禁止していた『恋愛』を堪能できた。
(カイトくんは、とても同い年とは思えない男の子だったなぁ)
全てを受け入れてくれて何でも許してくれる大人な男性だった、
なにより勇者様! そう、冒険者でも本当に選ばれた人でないとなれない、
みんなの憧れ……そんなカイトくんと6年間、一緒に組めたのは今でも宝物だ。
「ごめんアンナちょっと待って、ポーションの点検を」
「またー? まったくジャロは」「ここは慎重に行かないと」
「カイトだったら全部把握してるよ」「勇者様だっけ、別れて本当に良かったの?」「巣立ったんだよ!」
そう、カイトくんにはお世話になりっ放しだった、
ボクがどんなにヘマをしてもフォローしてくれて、
笑って許してくれた……そのかわり他のメンバーに怒られたけど。
(ほんと、カイトくんのハーレム、みんなこそがカイトに相応しいんだ)
ボクみたいなそこまで女っぽくない戦士は、
あの中だときっと浮いている、カイトはむしろ良いとか言ってくれてたけど、
きっとボク1人だけ欠けた所で、何の問題もなくハーレムは幸せな家庭を築いていくだろう、きっとそのはず。
(未練はゼロじゃない、そこに入るつもりはあった、だって魔王討伐参加の大前提だったから)
何より魔王討伐前、
結婚しても冒険者は続けても良いと言ってくれた、
さすがに子育てしながらはどうだろうと思っていた所へ冒険者ギルマスのパルムさんから想定外の提案が!
『条件は、約束は結婚すること、では籍だけ入れてはいかがでしょうか』
そんなこと許されるのか聞いたら、
冒険者ギルドとしてはまったく問題ないと言われた、
むしろ冒険者に専念して欲しい、未知のダンジョンを調査して欲しいとまで。
(カイトくんに相談しなかったけど良いよね、他のハーレムいっぱい居るし!)
何よりカイトくんはいつも笑って許してくれた、
でもさすがにもうこれ以上は迷惑かけられないし、
こんな女らしさに欠けるボクはカイトくんに相応しくない、今更だけど。
(きっとカイトくんは『そんなことないよ』って言ってくれるだろうけど……)
だからもう決めたんだ、
籍は入れて良いけどカイトくんにはもう会わない、
そのあたりはパルムさん経由でカイトくんに伝わっているはず!
(少し困った笑顔で『仕方ないなあ』って言ってくれてるんだろうなあ)
良いんだ良いんだ、
やっぱりボクは自由で欲張りな冒険者、
人生で最高に楽しかったあの6年、その続きをまだまだしたい!!
(それでももし失敗したら、カイトくんの所へ戻れば良いよね)
びっくりするだろうなあ、
もう2度と会わないって言っていたボクが、
お嫁さんになりに戻ったら、これってサプライズってやつ?!
(そう、ボクはいろんな面があるのです!)
魔王を倒した直後はあまりの達成感に、
冒険者はもういいかな、と言葉を漏らしちゃったけど、
いざお嫁さんになると、いくら許可貰っても冒険者は続けられないんじゃないか、という気持ちも溢れた。
(でも、どんな僕も許してくれるし受け入れてくれる、それがカイトくん!)
うん、だから今回も甘えよう、
入籍許可と言う最低限の義務だけで約束を果たして、
ボクは新たなダンジョンへ潜る、そして楽しい冒険者生活をこれからも続ける、きっと、死ぬまで。
「……よし準備できた、アンナ、お願い」
「うん、ボクが先頭でみんなを引っ張るよ、なんせ元魔王討伐、勇者パーティーの前衛だったんだから!!」
「じゃあ、ってあれ、冒険者ギルドから緊急メッセージ魔法が、アンナ戻れって」「いいよリーダー、後、後っ!!」
じゃあカイトくん、行ってくるね……とりあえず、さよなら!!
――相変わらず気分屋でマイペースなアンナ、
しかし彼女はこの時まだ知らなかった、我がままにも、限度があるということを……。




