第7話【裏切りSIDE】女剣士ポーラは憧れの騎士団長を選んで幸せの絶頂に居た!
「あぁアラン、私はなんて幸せなのでしょう」
「ポーラよ、これでこのオレは、あの男に勝ったのだな」
「そうよ、1度も決闘で勝てなかったカイトに、こうしてプロポーズで勝ったのよ」
王都から離れた騎士団の保養地、
魔王討伐パーティーの1人、王宮騎士団員の女剣士ポーラは、
6年前まで憧れの存在だった騎士団長アランの傍で酔いしれていた。
(これで良いのよ、そう、これで……)
昼間にも関わらず大きなベッドで昨夜の余韻に浸るポーラ、
ワインをあおってご満悦なアランの胸元で甘えながら回想する、
思い起こせばまだ17歳の頃、異世界から来たと言う当時15歳の勇者は、とても強そうには見えなかった。
(騎士団長になりたてのアランと、一騎打ちをしたのよね……)
そう、女騎士団員憧れの存在アラン様、
訓練でも実戦でも連戦連勝、私の勇者への派遣と婚約は、
その一騎打ちに勝てたらという条件があった、結果、勇者カイトは圧勝した。
「あのカイト、今日の結婚式にポーラが来ていない事で吠え面をかいているだろな」
「大丈夫よ、カイトにはアンナやキャロルやぺトラやバルバラ、誰かが居るもの、最悪、メアリが居るでしょ」
「メアリ……あぁ、あの妖精か、羽虫と結婚とか、あの勇者らしいな!」「もうアラン、口が悪いんだからぁ」
結局、私はその結果を受け、
王命で勇者カイトのパーティーに入り、
しかも婚約までした、確かにカイトは強かった、でも……
(私の憧れる『強さ』とは違う、違和感を感じた)
研ぎ澄まされた、鍛えられた強さとは違う、
努力や技術によって磨かれたものではない、
元の能力が桁違い、アラン曰く『反則』であると。
(人間的には悪くない、むしろ、良くして貰ったわ)
ただ中身が大人過ぎた、
現に異世界では大人どころか、
いえこっちの世界を救いに来てくれたのだからそこは関係ない、と覚悟を決めた。
(確かにあの6年間は、カイトの剣であり、婚約者だった……)
この勇者との子供はさぞかし強い子になる、
それをどう育てようかと真剣に考えた事も確かにあった、
生涯愛すべきカイトをいかに幸せにするか、なんてことも……
「まあ、あの男に感謝はしているさ、こうしてポーラとの未来をくれたのだからな」
「そうね、私なんか居なくても、きっと相応しい残りの婚約者と、幸せな結婚式を挙げているはずよ」
「しかし奴に貸していた騎士団のメイド達も、全員こっちに引き上げて来て良かったな、オレは何もしないで済む」
そう、魔王を討伐するまでの間、
いえ討伐し終えても結婚式までの間は、
王命により騎士団付きのメイドが何人か私たちを世話してくれていた。
(若手騎士団員もメイドをしていたわね)
みんな私についてきれくれた、
正確にはアランの命令、魔王を倒した今、
もう王命も終了したはず、そう、カイトとの婚約も。
(それを教えてくれたのは、冒険者ギルドマスターのパルムさんだったわね)
確かに彼女の言う通り、
魔王を倒した直後、女神様の声が響いた、
もう自由にして良いと、それはすなわち誰と結婚しても良いはずだ、と……
(そして王都に戻ったとたん、アランからプロポーズを受けたわ)
まったく迷わなかった訳じゃない、
でも6年前、淡い恋心を抱いていたアランからの『騎士団長からの命令』に、
なぜか私はときめいた、そして1度も勝てなかったカイトに、こういう形で勝たせて欲しいと。
「憧れだったアランのためだもの……」
「しばらくはお前1人だ、その間に子作りを頑張らなければな」
「……しばらく、それは」「子育ては任せた」「あっ、そういうことね」
子供が出来るまでは私1人ってことねきっと、
沢山の女性と噂のあったアランだけれどもでも、
こうして新婚旅行に連れて来てくれたのはきっと、私だけを……
(カイトには私以外、奥さんが4人も居るもの、1人くらい欠けたって、幸せになるはずよ)
もうカイトのことは忘れよう、
元々、この世界に居なかった異世界人、
私には最初から、アランしか居なかった、そういうことにして……
コンコンッ
「失礼致します」
「なんだメイド、オレはポーラと愛し合っているのだぞ」
「王都の冒険者ギルドから連絡が、ポーラ様を至急、結婚式に」「捨ておけ」
手でしっしっとメイドを下げさせるアラン、
私が居ないことで何か不都合でも、でも連絡は、
アランにプロポーズされたからそちらを選んだということはギルマスのパルムさんには伝えてあるはず。
(何かあったのかしら)
私はアランの胸にすがりながら表情を見る。
「アラン……」「心配するな、どうせ陛下が騎士団のメンツどうこう言っておるのだろう」
「大丈夫よね?」「ああ、ポーラは魔王討伐の立役者、その立場からポーラが言えば陛下も文句は言えまい」
「そうよね、アラン、信じて良いのよね?」「陛下にモノを言える騎士団長という立場だ、何があっても護ってやる!」
ぎゅっと私を抱きしめてくれるアラン、
あぁ、良かった、私はこのお方を選んで……
6年間の空白を、これから幸せになるために、永久に埋めましょう。
「愛しているわ、アラン」
「あの勇者よりもか?」「もう、意地悪」
「はっきり言ってくれポーラ」「私が生涯愛するのはアラン、貴方だけよ、女神様に誓って」
こうして私は、
勇者を踏み台にしてアランと結婚するのだった、
いえ、もう籍は入れたはずだから、結婚した、だわね。
(まさに幸せの絶頂……そしてこの幸せは、きっと、永遠に……続く)
――しかしまだポーラは知らない、
この裏切りの代償は、絶対に幸せにならず、
この先、深刻な事態が待ち構えていたということを。




