第12話【裏切りSIDE】妖精メアリは結婚します、相手はもちろん同族で!
「ふう、まさか急に結婚相手を用意して貰えるなんてね」
人間が決して入れない深く広い妖精の森、
相変わらず複雑な道で時間がかかってしまうものの、
全てを成し遂げ、故郷の森で結婚が決まったと伝えられ喜びに満ち溢れていた。
(危うくカイトの永久従属妖精になる所だったわ、まさか戻れるなんて、ね)
私は魔王討伐のために妖精王から派遣された、
妖精としての高い能力の他に人間体になれる時間が誰より長いこと、
何より人間がそこまで嫌いじゃない性格から選ばれたのだが、人間との契約は妖精王でなければ取り消せない。
「そして魔王討伐のご褒美に、取り消してくれたのよねえ」
誰がどう働きかけてくれたのかわらからないけど、
もう帰ることは無いと思っていた妖精の森へ帰れる、
それどころか結婚相手まで待ってくれている、はず!
(あのままだと、カイトと結婚する所だったわ……)
妖精の身ながらまったく気乗りじゃない訳じゃなかった、
むしろ、私としてもカイトを一生からかって妖精として妻になる未来も、
まんざらでも無かったかも知れない、あの当時はそこまで嫌じゃなかった。
「でも今はもう、帰る事しか考えられないわ」
商業ギルドが勝手に妖精サイズの、
そして人間サイズの花嫁衣装を用意してくれた、
あれを見た時、それなりにときめきはしたのだけれども……
(なんとなーく違和感も感じたわ)
本当にこれで良いのかって、
でもあれって隣で一緒に見ていた、
冒険者ギルドマスターの人間パルムの誘導もあったわよね、今にして思えばほとんどそう。
「あの人間、口が上手いのよね」
なんとなくお腹の中の黒さは見てとれた、
人間の悪い部分を内服しているとでも言うか、
もちろんカイトもそういった部分が無かった訳じゃないけど、人間にしては良い人間だった。
(だからこそ、からかうと面白かったのよね~カイト……)
あくまでも親愛の延長線、
それをカイトも酌んでくれていたと思うわ、
たまーにハーレムの人間に怒られたけれども!
「ま、人間は人間同士で、仲良くやってちょうだい、だわ」
もう知ったこっちゃない、
結婚式に見学で出てあげても良かった、
ノリで参加する可能性も無かった訳じゃないけど……
(妖精王から急いで戻れってパルムおばさんからの伝言だものね)
本来ならもう戻ることは無いと思っていた、
でも魔王を退治して、女神とかいう声で解放宣言されて、
ひょっとしたらとも思ってなかった帰路がギルマスから伝えられた。
「そういう意味では良い仕事をしてくれたわ」
冗談で『私の代わりにカイトのハーレムに入ったら?』って言ったら、
本気で引いていたわね、眼鏡がずれてた、いやそこまで嫌がらなくても、
きっとカイトは受け入れてくれるわよ、好意さえ持っていればだけど……
(むしろ殺意の片鱗が見えたわ)
まあいっか、という訳でもうすぐ妖精の集落、
のはずなんだけれども……あっれえ、おかしいわね、
いつもの入口へ通じる草の門が見当たらない、それどころか……
「って森の外へ出されちゃってるじゃないのー!!」
あたりを見回すと、
人間がうろついていた!
「あっ妖精メアリ様ですね」
「そうだけどアンタ、何してるのよ」
「冒険者ギルドより伝言です『至急、戻るように』と……以上です」
それだけ伝えて離れて行った、
あれ相当探していたわねきっと、
そんなの手紙にして、対人間用の郵便受けに放り込んでおけば良いのに!
(至急戻れ、ねえ)
って集落に戻れなかった原因はあの人間ね、
きっと結界が、侵入拒否の妖精魔法が発動されて、
入れない、戻れないようになっていた……まったく迷惑だわ!
「ていうかあれ、私にも効いちゃうのね」
人間界に6年も居たもの、
身体が人間になっている間は、
そのまま人間の食事だって食べていた。
(味はまあまあ、そこそこ、それなり、悪くはなかった)
人間界の良い思い出ね、
それを言ったら勇者パーティーを助けていた6年間、
私としてはどっちあと言えば楽しかった、あまり口にはしたくないけど……さて。
「うん、伝言も聞いたわ、言われた通り、さっさと至急、妖精王の所へ戻りましょう」
そして結婚よ結婚、
やっぱり相手は同族に限るわ、
しばらくは、当分は、もう人間は、いいかなっ!!
――そしてまた妖精の森へ入って行くメアリだった、のだが……。




