第10話【裏切りSIDE】大聖女ぺトラは逆らわない、ただ、言われた命令を忠実に遂行するのみ、女神様のために!!
「おお聖女ぺトラ、昨夜はどうであった」
「はい大司教マルコ様、坊ちゃまに可愛がって頂きました」
「そうか、良い婚姻だったな」「大司教様のご命令通り、婚姻の書面にも昨日の内に記名と血印を」
教会内において血印は最重要なもの、
これをさせられるというのはよっぽどの話、
魔王討伐までは勇者パーティーの言うことは何でも聞く、という誓約書以来でしたわ……
「うむ、これで我が教会も安泰じゃ」
「しかし本当に、婚姻先変更のお告げが」
「女神様の干渉はもう無いであろう、それに更に上位の神からのお告げだ」
……教会の聖女たる私は、
ただ上の命令に従えば良い、
それだけの話、生まれてから1度も逆らったことは無いもの。
(今頃は大教会で結婚式、私以外の皆さんで……少し胸が痛む)
でも大司教様の命令は絶対、
しかもあの女神様より上位の存在からのお告げとあらば、
これはもう私に逆らうと言う選択肢は無かった、魔王討伐の参加も、そう。
(この身、私の純潔だって、カイト様の命令があれば、いつでも差し出すつもりがあったけど……)
なんとなく周囲の雰囲気が『魔王を倒すまでは』といった感じだったわ、
私は『命令』が無いと動いて良いかわからない、もちろんとっさの判断はするけど、
基本的には言われてその通りにするタイプ、今回の嫁ぎ先変更だって、正しい流れのはず。
「あの、今からでも結婚式に」
「ぺトラのであれば来月、教会総出で行う、大聖女の公爵家への嫁入りだ」
「いえそうではなくてカイト様の」「もう終わったようだ」「では1度お会いしてお詫びを」「ならぬ」
……謝罪すら出来ないのね、
6年間、一緒に戦って私が嫁ぐつもりでいた勇者様、
こうもあっさり別れる事になるなんて、でも命令だから仕方が無い、教会の大聖女ですもの。
(私の命は、教会の、そして女神様のもの、逆らうなんて考えられない)
これからの私は公爵家の妻として生きていく、
それが私の運命、これからの下された、決められた人生、
私は一応、大司教マルコ様に確認を取る、そう、念のために。
「公爵家への嫁入りは、女神ラウラ様は」
「それより上位の神様からだ、それにラウラ様も言っておったのだろう、自由にして良いと」
「はい、それは確実に女神ラウラ様の声でした」「その上での話だ、何の問題も、心配もない」
私の受けたニュアンスとしては、
もう魔王討伐の責務から自由になって良い、
あとは好きに日常生活に戻って良いという意味に感じたのだけれども。
(勇者から離れて良いだなんて、それは勇者カイト様が不憫すぎる)
でも私以外のみんなが結婚してくれているなら、
私は大聖女として、大聖女の成すべきことをするだけ、
そう、魔王討伐を成し遂げた時のように、今回も……女神ラウラ様のために。
「かしこまりました、してマルコ様」「なんだ」
「勉強させて頂きたいのですが、その女神ラウラ様の上位の存在、上位神様の名は」
「そう簡単に名前を口にして良い相手では無い」「ひょっとしてラウラ様が以前おっしゃっていた、チキュウ……」
話の最中に若い神官が入って来た。
「なんだ、大聖女ぺトラの報告を受けている所であるぞ」
「マルコ様、冒険者ギルドのマスターが慌てた様子でこちらへ」
「まさか新たな魔王でも?!」「いえ、ぺトラ様に御面会をと、公爵家へ行ったらこちらと聞いてと」
魔王討伐までお世話になった、
あの冒険者ギルド元敏腕受付嬢にして、
今やギルドマスターで魔王討伐、ある意味で最大の功労者と言えるパルム様が?!
「よし、私が対応する、ぺトラは裏から公爵家へ戻れ」
「よ、よろしいのでしょうか」「これは命令だ」「はいっ」
「まったく何の用だ、今更……魔王が退治された今、協力する義務など無いのだが……」
こうして教会の裏から出た私、
いっそ1度、勇者様のお屋敷へ寄ろうか考えたものの、
大司教様の命令で公爵家へと戻る……そう、命令ですもの。
(私の今後、これからの一生は、もう公爵家に……)
これも命令、これも天命、女神様のために。




