9
雨はずっと降り続けている。
雷もずっと鳴っている。
電気のないこの城では、本物のランプを使っている。
「懐かしいねぇ。あたしが子どものころはまだ電気がひかれてなくて、電気が通ったのは戦争が終わってからだったっけ……。
初めて電気がついた日の明るさをすっかり忘れていたけど、ここにいるとあの日のことをハッキリ思い出せるよ」
部屋に戻った千代子はなんとはなしにハナコに話しかけていた。
「日本と全然違うだろ? 早く晴れてるこの国が見たいねぇ。
お風呂も電気もエアコンもテレビもなくて不便だけど、昔を思い出すよ」
ハナコも相づちを打つようにハナコを見る。
「ハナコをさ、星光寺の肇ちゃんが拾ってきてくれたでしょ、覚えてる? は・じ・め・ちゃん」
「ワンッ」
「やっぱりね、賢いねぇハナコは。肇ちゃん好きだったなあ……もう70年か……」
しばらく感傷に浸っていた千代子だが、
「そうそう、晴れ乞いの舞のおさらいしとかないとねぇ。もうずいぶん踊ってないから、覚えてるか」
そういって部屋の真ん中で踊り始めた。
滅多に踊ることはないと言っても、若い頃に何度も練習した踊りは頭の中で神楽を流せればあっという間に体が動きを思い出した。
スっと手が伸び足が伸びる。
手首を返せば頭の中で鈴が鳴り響く。
笛を奏でる相馬さん、太鼓を鳴らす太田さん、懐かしい顔が脳裏をよぎっていく。
「あいたたた」
手を上にあげようとして、痛みで踊るのをやめた。
肩の可動域が狭くなっているのだ。
「こりゃ少しづつストレッチでもしないとダメだね。あとは神楽のメロディを教えなきゃいけないけど……楽器はこの世界にあるものでいいかねぇ」
笛、太鼓、銅拍子。
似たような音を出せる楽器はこの世界にもあるだろう。




