3 年寄りには荷が重い
「突然カンベチヨコ様をお呼び立てしたのは他でもありません、その聖女のお力を貸して頂きたく思いまして。
我が国はこの三年ほど、干魃と大雨が交互に来てまともに生活ができないのです。
食糧難と天候不良のせいで二年前からは疫病が流行り、魔国との国境付近では魔物との小競り合いが起こる有り様」
千代子はフンフンと聞きながら、はるか遠い昔に似たような話を聞いたことがあるような気がした。
少女時代、おじが古本屋で買ってきてくれた外国小説にそんなような話があったかもしれない。
「カンベチヨコ様にはそのお力で、この国難を救って頂きたく!」
ドーナッテ(仮)はその力強い瞳でまっすぐに千代子を見つめた。
良く見るとロバート・レッドフォードに似ている気もする。
学生時代に皆でキャーキャー騒いだ銀幕俳優に見つめられていると思うと、返事をするより前に昔の甘酸っぱい記憶が蘇ってくるようで千代子はドキドキした。
が、次に出てきた言葉は自分でも思いもよらないものだった。
「天気で困った時は雨降り地蔵様しばって川に投げ込んだらいいじゃないの」
言ってから、自分でも「あっ」と思った。
ここは異世界で、雨降り地蔵様なんてあるわけないのだ。
弁解しようと口を開きかけた時、ネルソンが話し始めた。
「さすがは聖女様、かつてこの国にあったアミャーラジゾ様のことを御存知とは……。
しかし、アミャーラジゾ様は100年前にはすでにボロボロで崩れてしまったと伝え聞いております。」
「あ、あみゃーらじぞ?」
「はい、聖女様のおっしゃっている話は、我が国ではアミャーラジゾ様と呼ばれていた石像のことかと。
天気に困った時はその石の神様を縄でしばって近くの川に投げ込むと、お天気がみるみる変わったそうです。今ではその川もなくなってしまいましたが……。
アミャーラジゾ様は初代聖女様が石工に彫らせ、祈りを捧げたと伝え聞いております」
「なるほどぉ……」
全員の目が期待を込めて千代子を見た。
言いたいことは分かる。千代子にまたアミャーラジゾ様を作って欲しいのだ。
いくら千代子がそれに近い仕事をしていたとはいえ、さすがにそれは荷が重い。
そもそも自分にそんなことが出来るのかも怪しいのだ、ここに呼んでくれた皆さんには悪いが。
「ちょっと疲れましたわ。少し休んでから考えてもいいですかね」
「もちろんです、お部屋を用意しておりますので案内させます。ゆっくりお休みください」
国王は立ち上がって侍女を呼んだ。
千代子はものすごい疲労を感じながら部屋を後にした。




