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ネルソンが、建記・附記に書かれた通りに祝詞を読み上げ、それからトネリコの葉を水に浸し、葉についた水滴を辺りに撒いて場を清めた。
笛の音が静かに始まると、千代子は神楽殿に足を踏み入れた。
最初は落ち着いた曲調だが少しずつテンポが上がっていき激しくなるのが、天地神社の晴れ乞い舞だ。
手に持った神楽鈴をシャン……シャン……と一定のリズムで振りながら、少しずつ上に上げていく。
そしてまたゆっくりと下ろす。
この間に、神に存在を気づいてもらうことになっている。それから今度は鈴を扇に持ち替えて舞っていく。
地上に降りてきた神を楽しませるのだ。
ここから曲が早くなっていく。
千代子は腕を真っ直ぐ天に向かって伸ばし、足を真っ直ぐ大地に向かって伸ばす。
その時、見ている人に不思議な光景が写った。
千代子が手足を動かすたびに、彼女の容姿が若返っていくのだ。
白髪が少しずつ減り黒髪となり、シワの多かった顔がハリ艶のある頬へと変化していく。
「これが神楽舞……なんと神々しいのでしょう」
エリザベス王妃はうっすらと涙を浮かべながら見ている。
舞は恍惚と佳境に入り、千代子は一心不乱に舞っている。
再び持った神楽鈴の音と白く長い紙幣が作り出す空間は、誰も外の様子など思い出せないほど神秘的だ。
そしてまた、ここにいる誰もが千代子が白髪の老人であったことを忘れていた。
そこで舞踊っているのは、まごうことなき黒髪の乙女だったのである。
千代子は晴れ乞いの呪文を唱えながら踊った。
体は軽く、肩の痛みなど全くなかった。
足もいつもより上がるし、ジャンプも軽々とできた。
何よりも楽しかった。
無心で踊ることは、何にも代えがたい喜びで体内を満たすことでもあった。
神楽囃のテンポが落ちていき、黒髪が少しずつ白髪に戻り、皮膚もたるみ、神楽舞が終わる頃、千代子の容姿は元に戻った。
そして静かに神楽は終わり、千代子は退場した。
「チヨコ様、お疲れ様でした」
椅子に座って休む千代子の元にネルソンが声をかけた。
「チヨさん、すごい舞でしたね、僕感動しましたよ、まるでチヨさんが若いお嬢さんみたいに見えましたもん、な、ハナコ」
ハナコを連れてきたルオンも言う。
「何だかとっても充実した舞だったわ。
雨は上がったかしら」
二人は窓の方へ寄った。
バルコニーの方から、「見ろ、雨が落ち着いてきたぞ」という声が口々に聞こえてきた。
実際一寸先も見えなかった景色が、少しずつ見えてくるようになった。分厚い雲も少しずつ遠退いているようでうっすら明るくなってきた。
「効果は……ありそうですな……!」
ネルソンが感激に満ちた声で言う。
「でもまだやんでないわ」
千代子が心配そうに言う。
そこへバタバタとやってきた者がいた。




