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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第82話 容疑者の少女

「サキさん、救療院で子供が、という事でしたが……何人いたか覚えていますか?」


 息を切らせて戻ってきたエルダは、サキのベッドの傍らへ歩み寄ると、爬虫類のような紫色の縦長瞳孔を鋭く細めて問いかけた。


「え?人数……?う〜ん、確か……四人くらいだったかな?」

 突然の質問に、サキは少し面食らいながらも記憶を辿って答えた。


「全員、以前から見たことのある顔でしたか?」


「いや……初めて見た子も、いた、かも……」


 おぼつかないサキの返答を聞き、エルダは小さく頷き、部屋にいる一同に向けて自身の調査結果を厳粛に語り出した。


「やはり、ですね。昨日から救療院に入院していた子供は全部で四人でしたが、そのうちの一人が今朝、退院したばかりでした。入院中の残りの三人には私が直接会って確かめましたが、マナの動きにも術式の残滓にも、特に不審な点はありません。ですが……問題は退院した最後の一人です。救療院に残されていたその子の住所を頼りに、私が直接家を訪ねてみたのですが――そこに、家はありませんでした。完全に空き地だったのです」


「……そうすると、その子が限りなく怪しいわね」


 ユカリはベッドの上で、青白いながらも冷徹な威厳を取り戻した面持ちで、細い顎に手を当てた。


「サキ。その、退院したという子の顔は覚えているかしら?」


「え〜っと……。多分、思い浮かべられれば思い出せますけど……ちょっとうろ覚えかな……」


「サキ、昨日の痛みを感じた時の救療院での場面を思い出しなさい」


 ユカリの指示に、サキははっと目を丸くした。

「そうか! ユカリ様なら、私の思考を直接読み取れるんですね!」


「普通は言葉としての思考だけだけど、情景を読み取ろうとすれば、読み取れるわよ。あなたが脳裏に強く思い浮かべた情景くらいなら、手に取るように分かるわ」

 ユカリが事もなげに言う。


(え?そんなのって……本当に、私の頭の中のすべてが普段から読み取られてるじゃん。オタクな妄想とか、恥ずかしい記憶とかまで筒抜けだったらどうしよう……!)


 サキの背筋に冷や汗が流れた、まさにその瞬間。ユカリは呆れたように片眉を上げた。


「心配しないで。知ってもしょうがない、あなたのプライベートな情景までは、普段は読み取ったりしていないから」


(うわ!目が覚めたと思ったら、本当に秒単位で毒舌と心の中のツッコミの連続かよ、この人!)


「あなたが、私に対して悪口を言われそうな思考ばかり考えるからよ」


「……はい、本当にすみません」


 ユカリの完璧な先読みに、サキはベッドの上で小さくなって平謝りするしかなかった。それを見ていたアザレアがくすくすと笑う。


「さあ、おふざけはここまでよ。サキ、昨日の救療院でのその時を思い浮かべて」


 ユカリが静かに命じ、自身の白く細い手をサキの額へとそっと置いた。

 続いてエルダも真剣な面持ちで、サキの頭の横に手をかざす。


「私はさきほど子供たちを見て来たので、入院中の三人の顔は分かります。サキさんの記憶の中にある子供たちと照合すれば、残りの一人が自ずと容疑者として浮かび上がりますね」


「クティラも、やる〜」


 サキのすぐ横に座っていたクティラも、お尻の上からふよふよと柔らかそうな青い触手をそっと伸ばし、サキの頭に優しく這い回らせた。


(う、なんかみんなに頭をペタペタ触られて、ちょっと変な感じだな……。よし、思い出すぞ。昨日の救療院の廊下で、子供たちが私に抱きついてきて、ワイワイ騒いでいた、あの瞬間――)


 サキは目を閉じ、脳裏に救療院の廊下の光景を鮮明に描き出した。


「……あ、この女の子です。この子は太ももに痛みを感じた時に後ろにいた子です」


 サキの記憶の情景を、三人で同時に脳内で共有し、監視する。

 子供たちの顔が順番に浮かび上がり、そのうちの、少し癖のある茶色い髪をした見慣れない少女の姿に、エルダが「この子は救療院にいませんでした!」と声を張った。


「サキが痛みを感じた時に後ろにいたのも、この子ね。間違いなくこの少女が『黄衣の刻印』のインジェクター(注入役)よ」


 ユカリが魔眼を細め、犯人を特定した。すると、隣にいたクティラの衣服の奥から伸びる触手たちが、瞬時にじわじわと怒りで赤い色に変色し始めた。


「クティラ、覚えた。このガキ見たら……絶対に、絶対に、触手ちゃんの餌にする!」


「クティラ、だからそれは本当にやめて!私の方がトラウマで眠れなくなっちゃうから!」

 サキが必死に叫ぶと、クティラは触手を少しだけ収めて膨れっ面になった。


 ユカリはそんなサキを無視し、冷酷に先を見据えた。

「そうよ、まずはこの子を見かけたら捕まえて、背後関係をすべて探るの。この子の頭の中の思考をすべて読み取ってね。クティラ、この子の顔を、ルクレツィアにも見せなさい」


「分かった!ルクレっち、この子!」


 クティラは触手を介して、ルクレツィアの額に自身のマナを軽く繋げ、サキから読み取った少女の顔の画像を直接ルクレツィアの脳へと送った。画像を受け取ったルクレツィアは、その吊り目を鋭く輝かせ、ツインテールを揺らして激しく頷いた。


「確かに、このお顔、しっかりと受け取りましたわ!早急にこの思念画像を『魔警察』と、この王国のすべての魔女たちへ共有いたしますわ!これは……我が国に対する、極めて重大な反逆犯罪ですわよ。国を挙げて、全力で探し出しますわ!」


「え?ええっ!?そんな……国を挙げてって、そんなに大事なの!?」


 サキは急激に話の規模がデカくなったことに驚愕し、思わず声を裏返した。


「サキ、馬鹿ね、そんなの当たり前じゃないの」


ユカリは厳しい眼差しをサキへと向け、静かに、しかし有無を言わせぬ調子で言い放った。


「例え、大して使えない未熟な見習い魔女であっても、この国を守る大切な魔女の一人を、こんな卑劣な呪いで害そうとしたのよ。これはセラーノ王国に対する明確な挑戦状。それに、今回の容疑者は、子供の姿をしてはいるけれど……裏で糸を引いているのは、確実にハイパーボリアの手の者だわ。絶対に、許してはおけないのよ」


「は、はい……」


 ユカリの、冷酷でありながらも、自身の配下――そしてサキという存在を侵した者に対する絶対の激怒。

 サキはその迫力に気圧されながらも、どこか自分を守ろうとしてくれる魔女たちの強さに、深く頷くことしかできなかった。


やはりチクチクの時が呪いを送り込まれた原因でした。

サキたちは犯人の子供を見つける事が出来るのでしょうか?

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