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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第80話 目覚めと困惑

「う、んん……重い……」


 鉛のように重い瞼をどうにか押し上げると、サキの視界に最初に入ってきたのは、救護室の天井に灯る淡い魔導灯の光だった。


 頭が、激しくクラクラする。脳にまともに酸素が行き渡っていないような、あるいは酷い貧血の時のように頭痛がして、意識がぼーっとしてうまく働かない。


 それになにより……胸のあたりに、尋常ではない重苦しさがあった。


「なんか……息が、苦しい……。お、重いのは……って、ええっ!?」


 ぼやける視界のピントが徐々に合ってくると、自分の胸元に、艶やかな黒い長髪が広がっているのが見えた。サキの身体の上に、力なく覆い被さるように倒れ込んでいる人物。それは、普段なら絶対に見せるはずのない、あまりにも無防備な姿で横たわるユカリだった。


「ゆ、ユカリ様……!?なんで私の上に覆い被さって寝てるの……?」


 サキの細い身体に、ユカリのしなやかで冷たい身体がぴったりと密着している。

 胸と胸が合わさり、お互いの体温がダイレクトに伝わってくるような、およそ普段の彼女からは考えられない超近距離。


「お、重くて動けない……っ。あ、あの!ご、ごめんなさい!重いというのは、その、体を密着して上に乗っているからそう感じるだけで!決してユカリ様がそういうこと……その、体重的に重いだなんて、そんな不敬なことは決して思っていませんからっ!!」


 目を覚ました瞬間に「重い」などと口走ってしまった自分に気づき、サキは背筋に冷や汗を流しながら大慌てで言い訳をまくし立てた。もしこの冷血ドS魔女の意識がはっきりしていれば、思考を読み取られ、今すぐ部屋ごと雷撃で消し飛ばされてもおかしくない。


 しかし、どれだけサキが焦って叫んでも、上から降ってくるはずの冷徹な毒舌は返ってこなかった。


「……あれ?ユカリ様……?」


 不審に思ったサキは、ユカリの細い肩に手をかけ、恐る恐るその身体を揺り動かしてみた。 すると、なんの抵抗もなく、ずるりと、ユカリの身体がサキの寝ている横のシーツの上へと力なくずり落ちた。


「ユカリ様……?え?!大丈夫ですか?!」


 ベッドに横向きに倒れたユカリの顔色は、いつもの白磁のような美しさとは違い、痛々しいほど青ざめていた。

 その呼吸は極めて浅く、眉間には苦痛に耐えるような微かな皺が刻まれている。


 サキは混乱しながらも、焦ってユカリの手首を掴み、その脈を測った。


(脈は……ある。当たり前だけど、生きてる。脈拍はかなり弱いけど、死んではいない……。気を失ってるだけ、なのかな?でも、どうしてユカリ様がこんなところで気絶してるんだ……?)


「そういえば、ここはどこ?私クティラ達と街を歩いていたんじゃ……?あつつ、頭がまだ痛いよ」


 サキが自分の状況と、ユカリの身に起きた異変に頭を悩ませていた、まさにその瞬間。


 バタンッ!!!


 重厚な救護室の扉が、壊れんばかりの勢いで左右に跳ね上がった。


「え? うそ!何で?!サキっち、生きてる……っ!!」


「へ?」


 扉の向こうから真っ先に飛び込んできたクティラが、ベッドの上のサキを見るなり、その青い瞳を限界まで見開いた。

 その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃに汚れている。


「お、お姉様……っ!よかったですわ……本当に、本当によかったですわ……っ!!」


 続いて入ってきたルクレツィアも、両手を胸の前で握りしめ、信じられないものを見るかのように大粒の涙をポロポロとこぼし始めた。


「え?え?ちょ、ちょっと待って。どういうこと……?」


 サキは、二人の尋常ではない取り乱しように完全に困惑した。


「生きてるって……何言ってるんだよ。元々、私生きてたよ?ちょっと頭が痛くてぼーっとするけど、普通に元気だし……って、うわっ!」


「サキっちぃぃぃーーーっっっ!!!」


 サキの困惑を置き去りにして、クティラが弾かれたようにベッドへと飛び込んできた。

 お尻の上から生えた青い触手たちまでサキを抱きしめようとする。

 クティラはサキの首筋へと勢いよく抱きつき、その小さな顔をサキの胸元へと力一杯こすりつけた。


「あぐっ!ク、クティラ、苦しい、ちょっと痛いって……っ!」


「よかったぁぁー!サキっちが冷たくなって、本当に死んじゃったと思ったんだよぉー!」


「お姉様……っ!!」


 ルクレツィアもベッドの反対側にすがりつき、サキの細い手を両手できつく壊れ物を扱うように優しく握りしめた。その手は、恐怖の名残で小刻みに震えている。


「あ、あの……二人とも、本当に何が起こったの?私、なんで救護室のベッドに寝かされてて、なんでユカリ様が隣で倒れてて……それに、クティラたちがそんなに泣いてるの?全然状況が掴めないんだけど……」


 二人の温もりと涙の熱さを肌に感じながら、サキはただ、果てのない困惑の中で、二人の顔を交互に見つめることしかできなかった。


目覚めたサキ。

街に出かけていて、知らず知らずの内に、急に意識を失った後に、ユカリが自分の上で気を失って、クティラやルクレツィアが抱きついてきて……もちろん皆の苦労が分かるわけもなく、困惑するのも当然ですよね。

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