↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/85

第76話 黄衣の罠、迫る刻限

「サキっち!サキっち!死なないで、お願い!しっかりぃ!」


 激しく揺れる馬車の中で、普段のおっとりした様子からは想像もつかないほど、クティラが涙をボロボロと流しながら必死に泣き叫んでいた。

 その何本もの触手が、ぐったりとしたサキの身体を、壊れ物を扱うように優しく抱きしめている。


「クティラさん、お気を確かに……っ!ユカリ様が何とかしてくださいますわ!絶対に、絶対に、大丈夫ですわ!」


 ルクレツィアがクティラの肩を抱き寄せながら、自分自身をも安心させるように、必死に声を震わせて叫んだ。その顔は恐怖で真っ白に染まっている。


 サキの冷たくなり始めた手首を掴み、じっと目を閉じて脈を取っていたナイアルが、険しい表情のまま口を開いた。


「まだ脈はしっかりとしている……けれど、少しずつ弱くなりつつあるね。これは、心臓からマナがどんどん減りつつあるのかもしれない」


「エルダっちーー!早く! 早くぅー!」


 クティラの悲痛な叫びに、魔導馬車の最前列で、直接マナの糸を伸ばして馬たちを制御していたエルダが、額に大粒の汗を浮かべて応じる。


「分かっています!もう少し、もう少しで着きます!」


 エルダは脳内でユカリとの通信魔法を維持し、現在のサキの状態をリアルタイムで伝えながら、夜のルルイエの最短ルートを弾き出していた。


 限界を超えてマナを注ぎ込まれた馬車の制御術式が、キィキィと軋んだ悲鳴を上げる。


『 門を開けさせてあるから、そのまま飛び込みなさい!』


 頭の中に響いたユカリの鋭い声と同時に、見慣れた『蜘蛛の糸』の重厚な門が夜闇の中に現れた。


 魔導馬車が凄まじい火花を散らして、娼館の敷地内へと滑り込み、急停止する。


 その正面玄関の前には、夜風に黒いドレスを翻したユカリと、白衣姿のアザレアが、焦燥を孕んだ瞳で待ち受けていた。


 馬車の扉が勢いよく開くと同時、クティラの触手に載せられたサキの身体が滑り出てくる。


 ユカリは一歩前に踏み出すと、横たわるサキの前に膝をつき、すぐさまその左胸へと白く細い手をかざした。

 ユカリの放つ妖艶な紫のマナがサキの胸元を透過し、その心臓の奥深くへと潜り込んでいく。その間にアザレアは、サキの脈を取り、自分のマナを流し込み容体を調べている。


 数秒の後、ユカリの美しい眉が不快そうに、そして怒りに満ちて大きく跳ね上がった。


「――これは、『黄衣の刻印(イエロー・サイン・レイ)』ね」


 わたしもそうだと思います。とアザレアが焦った口調で告げる。


「イエロー・サインなのですか……!そんな、いつの間に……」


 その名を聞いたエルダの顔が、恐怖で引き攣る。


 ユカリはサキの胸から手を離すと、立ち上がりながら冷酷な声でその呪詛の性質を告げた。


「ハイパーボリアの連中が好む、実におぞましい遅効性の呪いよ。刺された瞬間は微かな針の痛み程度しか感じさせず、数時間をかけてじわじわと体内に浸透し、マナの源である心臓と、本人のマナの結合を強制的に解除していくの。完全に結合が解ければ、この子は二度と目を覚まさなくなってしまうわ」


 ユカリの言葉に、クティラが息を呑む。

 しかし、ユカリはすぐに厳しい眼差しで全員を見据え、毅然と言い放った。


「クティラ!サキを救護室へ運びなさい!アザレア!ルクレツィア!二人も一緒に来て!それと、ウタを呼んで!」


「分かった!」


「はい!ユカリ様」


「承知いたしましたわ!」


 泣き言を引っ込め、クティラは触手を力強くうねらせると、サキの身体を抱えたまま、娼館の奥へと猛スピードで駆け込み、その後をユカリとアザレアが追って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。