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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第51話 絶対防御のエルダ

「エルダ、次元を歪めるその『空間湾曲』の魔法が、万が一にもこの城塞の内部で発動された時に、その発動の兆候を事前に察知できるような、新しい探知術式を組むことはできるかしら?」


 ユカリは机の前に背筋を伸ばして立つ真面目な少女を見つめ、静かに重みを持った声音で、問いかけた。


 次元を操作する高位魔法。それをあの野蛮で狂信的なハイパーボリアが自力で扱っているとは到底考えられない。

 裏で糸を引いているのが、邪神と呼ばれる、ニャルラトホテプであるとするならば、奴らは今後も容易にこのカルコサの絶対防壁をすり抜けて侵入してくるだろう。一刻も早い対策が必要不可欠だった。


 ユカリの問いに対し、エルダは端正な銀髪のショートボブを微かに揺らし、白磁の肌に浮かぶ爬虫類のような紫色の縦長瞳孔をすっと細めた。


「次元魔法の発動感知、ですか……。確かに、現在の私のサインを用いた多重結界は、主に物質や既存のマナの『流入』を遮断する目的で最適化されています。空間そのものを歪める変則的なマナの動きとなると、通常の術式回路ではノイズとして処理されてしまう可能性が高いですね」

 エルダは、専門家として極めて冷静に分析を口にした。


「ですが、不可能なことではありません。空間を歪める際、その接点となる座標には必ず微弱な『次元の歪み(ほつれ)』が生じます。少々お時間はいただくことになるかもしれませんが、私を含め、私が統括している『防御魔術編成室』の総力を挙げ、その歪みを瞬時にマナの異常として捉える特異術式の構築に努めます。ただ……」


「ただ……?何か問題が?」


「魔法術式でしたら、探知可能ですが、呪いとなると……」


「確かにそうね。呪いを扱えない、あなただと少し難しいわね……分かったわ、そちらの方は考えてみるから」


「はい、お願いいたします。魔法術式については、絶対防御を引ける様に進めたいと思います」


「頼もしいわね。大変な労力になるとは思うけれど、ここの防衛は、あなたのその盾に懸かっているの。お願いね、エルダ」


 ユカリが労うように視線を和らげると、エルダは表情一つ変えることなく、恭しく一礼した。


「すべてはユカリ様と、このセラーノ王国のためです。必ずや期待に応えてみせます。……それで、お話は、以上でしょうか?」


 エルダが退出の許可を求めるように問いかけると、ユカリはふっと、どこか悪戯っぽい影を宿した薄い笑みを口元に浮かべた。


「いいえ。……実は、もう一つ。あなたにお願いしたいことがあるのだけれど」


 ユカリの言葉の温度が、少しだけ『私的なもの』に変わったのを敏く感じ取り、エルダは、不思議そうに首を傾げた。


「はい……私にできることであれば何なりと。一体、どのようなご命令でしょうか」


 ユカリは机から静かに立ち上がると、洗練された執務室の窓の外を見つめながら、その「お願い」を口にした。


「現在、訓練室でルクレツィアの移植した回路を使って『ケラエノボルト(雷撃弾)』の特訓をしている異世界人のサキ。明日の彼女の特訓に、あなたのその『絶対防御』の力で、少しばかり付き合ってあげてほしいのよ」


「あの、異世界人のサキさん、ですか?」


 エルダは一瞬だけ驚いたように縦長の瞳孔を見開いた。

 噂には聞いていた。ユカリがどこからか連れてきた、不器用だけれど、体内に異常なマナを宿しているという人間の少女。


 深階第二位のウルが眠りについているこの混沌とした状況下で、なぜユカリがそれほどまでに一人の異世界人に固執し、手厚く訓練を施しているのか、エルダには今ひとつ理解出来なかった。


「はい。サキさんについては、ルクレツィアから『魔女回路の構築は無事に完了した』との報告を受けております。ですが、私の加護を訓練の標的にする、というのは、どういう意図なのでしょうか?」


「言葉の通りよ、エルダ」

 ユカリは振り返り、その切れ長の目を静かに細めた。


「彼女の体内のマナは、現在の魔女たちの中でも屈指の量を誇っているわ。けれど、彼女自身がまだその制御方法を感覚的にしか理解できていないの。だから、あなたの『エルダー・シグナ(旧神の障壁)』を相手にして、その最大出力の雷撃弾を何度も撃ち込ませることで、マナの調整と実戦的なコントロール技術を叩き込んでほしいのよ。……カルコサで最も強固なあなたの盾なら、彼女がどれだけ暴走した魔法を放っても、傷一つ付かないでしょう?」


「なるほど……。彼女の力を正確に制御するための『壁』になれ、ということですね」

 エルダは納得したように頷いた。

 

真面目で完璧主義な彼女にとって、ユカリの命令は絶対であり、同時にその意図も非常に合理的であると感じられた。

 それに、これほどまでにユカリが目をかけるサキという存在が、一体どれほどの力を持つのか、防衛の専門家として自身の目で確かめておきたいという、微かな好奇心もあった。


「承知いたしました、ユカリ様。私の『絶対防御』の術式を以て、そのサキという方のマナの技量、徹底的に測らせていただきます。それでは、明日訓練室へ出向くという事で、よろしいでしょうか?」


「ええ、お願いね」


「はい、それでは失礼致します」


 ユカリの冷たくも楽しげな言葉に、エルダはもう一度深く一礼すると、カツン、と静かに靴音を響かせながら、重厚な執務室の扉を開けて出て行った。


「さあ、サキ。エルダから、防御魔法を盗み取ることができるかしら?」

エルダの登場で、サキは今度は防御魔法について訓練を受けることになります。

どんな訓練が始まるのでしょうか?

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