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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第47話 魔女回路の定着

「さあ、それじゃ、早速始めようかしら」


 ユカリは、引き攣るサキの様子をどこまでも楽しむかのように、薄く、冷たい笑みを浮かべたまま静かにそう告げた。


 その切れ長の瞳の奥に宿る魔力の光が、一瞬にして周囲の空気をピリピリとした緊張感で支配していく。


「クティラ、ルクレツィア。危ないから二人は、壁際に下がっていなさい」


「分かった〜」

「分かりましたわ、ユカリ様」


 クティラは青髪の三つ編みと触手を揺らしながら、ルクレツィアと共に素直に指示に従い、訓練室の頑丈な石壁の際へと足早に退避した。


 二人の気配が遠ざかり、部屋の中央にサキとユカリの二人だけが取り残された、まさにその瞬間だった。


 ユカリは何の前触れもなく、無言で白い衣服の袖から伸ばした細く美しい人差し指を、真っ直ぐにサキの胸元へと向けた。


「――っ!?!?」


 サキの全身の毛穴という毛穴が、本能的な恐怖で一瞬にして引き攣った。

 新しく移植されたばかりの体内の魔女回路が、ユカリの指先に収束していくおぞましい密度のマナを敏感に察知し、脳裏に強烈な危険信号を叩き込んできたのだ。


 サキは考えるよりも早く、床を力任せに蹴って、文字通り必死の形相で真横へと飛び退いた。


ドガァァァァァンッッ!!!


 直後、けたたましい爆音と共に、つい一瞬前までサキが立っていたまさにその場所へ、天井から狂暴な紫色の雷撃が激しく突き刺さった。


 石造りの床が激しく爆ぜ、焦げ茶色の煙と火花が四方に飛び散る。


「うわっ……!!あっぶねぇ――っっ!!な、なにするんだよ!このクソユカ……っ、リ様!!」


 サキは床の上をごろごろと無様に転がりながら、煙にむせ返りつつ叫んだ。


 危うく、本音の罵倒が口から滑り落ちそうになる。


 ユカリは向けた人差し指を微動だにさせず、冷徹な声音のまま、サキの言葉を遮るように静かに問いかけた。


「クソ……なにって?」


「あ、ああ、なんでもない、なんでもないですっ!ク、クソほど驚いたな、って言おうとしただけだからっ!!」


 サキは冷や汗を全身から噴き出させながら、大慌てで両手を振って弁解した。

 心の中でどれだけ毒づこうとも、今のユカリをこれ以上怒らせたら、命がいくつあっても足りない。


「で、でも何だよ急に!魔法のコントロールの訓練をするんじゃなかったのかよ!? 避けられなかったら、どうするつもりだったんだよ!」


 立ち上がりながら憤慨するサキに対し、ユカリは向けた指をゆっくりと下ろすと、感情の読み取れない底冷えのする瞳でサキを凝視した。


「どうして?サキ」


 ユカリはそこまで言葉を紡ぐと、一度言葉を切り、サキがどれほど今の理不尽な一撃に対して動揺しているかを推し量るように、じっと沈黙を保つのだった。


「あなた、どうして――逃げたの?」


 ユカリは、焦げ茶色の煙が薄く漂う訓練室の中で、向けた人差し指をゆっくりと下ろしながら、あまりにも淡々と、静かに問いかけてきた。


「どうしてって、あんな強烈なのが当たったら死んじゃうかもしれないだろ!」


 サキは床に手をついたまま、まだ激しく脈打つ自身の心臓を押さえ、声を荒らげて叫び返した。冷や汗が額から顎へと伝い落ちる。


「どうして死ぬの?」


 ユカリは表情一つ変えず、まるで幼い子供の他愛もない疑問に答えるかのように、重ねて問いを投げかけてくる。その冷徹なまでの冷静さが、サキの苛立ちをさらに煽った。


「ユカリ……様の雷撃が当たったら、怪我どころじゃ済まないだろ!お前……!あ、あなたは、この国で一番の実力を持つ魔女なんだろ!そんな魔女の、あんな魔法の直撃を食らって、無事でいられるわけがないじゃないか!」


 心の中でも『様』をつけろと言われた直後だったため、サキは大慌てで呼び方を訂正しながらまくし立てた。


 だが、ユカリは小さく息を吐き、静かに首を横に振った。


「違うわ。私は、雷撃の威力の話をしているのではないの。私が聞いているのは、『どうして、私が魔法を撃つと事前に分かって、あのタイミングで避けることができたのか』ということよ。その理由を聞いているの」


「え……?」


 サキは、はた、と動きを止めた。

 言われてみればそうだ。


 ユカリは詠唱もしていなければ、腕を大きく振りかざすような、予備動作らしい予備動作も一切していなかった。

 ただ、こちらに人差し指を向けただけだ。

 それなのに、サキは電撃が放たれるコンマ数秒前に、まるで身体が勝手に反応するかのようにして横へと飛び退いていた。


「そ、それは……」


 サキは自分の胸元、今まさに新しく構築されたばかりの、心臓の周りにある魔女回路のあたりをそっと触りながら、言葉を絞り出した。


「それは……ユカリ様の指先に、マナがものすごい勢いで集まっているのを、肌で……っていうか、自分の体内でダイレクトに感じたからだよ」


「私の指が光ったとか? あるいは、術式の火花が散っていたかしら?」


「いや、光ってなんかいないだろ!それはユカリ様自身が一番よく分かっているんじゃないのか!?」


 サキが反論すると、ユカリはフッと、切れ長の目をわずかに和らげて、満足げな鼻鳴らしを漏らした。


「ふん……。新しく移植された魔女回路が、思った以上に早く、そして上手く働き出しているようね」


「え?……それは、どういう事?」


 突然のユカリの態度の変化に、サキは首を傾げた。


「自分でマナを完璧に扱えるようになれば、その洗練された感覚によって、他人のマナの細かな動きや変化も自然と分かるようになるのよ。あなたは、私の指先に一瞬でマナが超高密度に集中していくのを、新しく得た魔女回路を通して無意識に察知したの。だから、魔法が発動するよりも早く、その身体を動かすことができたのよ」

魔法の発動を事前に感知できたサキ。

苦しい目にあった甲斐があったのでしょうか?

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