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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第45話 KAWAIIの約束

「サキさん、もう少しだから……っ!これであなたの魔女回路が、完全に出来上がりますから!」


 銀色の光の渦の中心で、ルクレツィアが吊り目気味の瞳に、悲壮な色を浮かべ、必死に声を張り上げてサキに向かい叫んだ。

 彼女の額からも、精密な術式コントロールによる疲弊の汗が幾筋も流れ落ちている。


「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、我慢してくださいまし!!」


「ぐああああーーっっ!!痛い、痛い、痛いーーっっ!!」

 サキの絶叫が地下訓練室の冷たい壁に反響する。


 体内のあらゆる隙間に銀色の糸が張り巡らされ、それがパチパチと音を立てて肉体に融着していくような、未知の激痛。サキは歯が砕けんばかりに噛み締め、全身の筋肉を硬直させてその最後の衝撃に耐え続けた。


「サキっち、頑張って……っ!!」


クティラの祈るような声が響いたその瞬間、ルクレツィアの両掌から放たれていた鋭い銀色の光が、粒子となって空間に霧散し、少しずつ、けれど確実に消え去っていった。


「ハァ……ハァ……。サキさん、本当によく頑張りましたわね。……これで、あなたの体内にも、私たちと全く同じ魔女回路が完全に移植されましたわ。おめでとうございます」


 ルクレツィアが大きく息を吐き出しながらそう告げた。


 その場にドサリと崩れ落ちたサキは、はあ、はあ、と四つん這いになりながら、冷たい床の上で荒く激しく息を弾ませていた。


 昨日ユカリに回路を破壊された時ほど、身体の表面からの酷い出血や、皮膚の異常、あるいは骨肉が砕けるような大怪我は見られない。


 だが、今日も絶望的な激痛に耐えるために床を狂ったように掻きむしり続けたため、サキの両手の指先は爪が数枚剥がれ落ち、痛々しく赤黒い血がジワジワと滲み出ていた。


「サキっち――っっ!!」


 術式の終了を察知したクティラが、すぐさま壁際からサキの元へと弾かれたように駆け寄った。


 クティラは、サキが指先からの血で汚してしまった、固い石の床から彼女を優しく引き離すと、自身の背中や衣服の裾から伸ばした、ふかふかとした触手のベッドの上へとサキの身体を丁寧に横たえた。


 そして、その触手の吸盤から、深淵の神性たるノーデンスの慈愛に満ちた、柔らかな癒しの魔法の光を放ってサキの指先を包み込んだ。


 それを見守っていたユカリは、サキの体内のマナが静かに、けれど力強く循環を始めたのを確認して、ふっと口元を緩めた。


「ふぅ……良かったわ。今日はアザレアの治療は必要なさそうね」


「そうですわね、ユカリ様。わたくしの精密調整の術式が完璧に機能いたしましたわ」


 ルクレツィアは誇らしげに胸を張ったが、すぐにサキの胸元を見つめて驚きに目を見開いた。


「しかし……サキさんは本当に凄いですわね。こうして無事に回路の移植は構築いたしましたけれど、彼女の体内から溢れ出てくるマナの生成量は、この世界で見渡しても間違いなく屈指の量ですわ。これほどのマナを、異世界人の肉体で生み出し続けるなんて、ユカリ様からお伺いした通りの、規格外の方ですわ」


 触手のベッドの上で、ノーデンスの光に指先を癒やされながら、サキはゆっくりと重い瞼を持ち上げた。


「ああ、クティラ……。何とか今日は……気を失わずに、済んだよ……」


「うん、うんっ! サキっち、本当に、本当によく頑張った!」


 クティラは再び目に涙を浮かべながら、優しくサキの頭を何度も何度も撫でた。


 その様子を見て、ユカリは呆れたように小さく肩をすくめた。


「もう……。元々サキの護衛のつもりで側に付けたのに、クティラは完全にサキに懐いちゃったわね。まるで恋人同士ね」


 ユカリのその言葉に、ルクレツィアも「ふふふ」と上品に笑いながら同意した。


「本当にそうですわね、ユカリ様。クティラさんは、これまでは大変な人見知りで、わたくしたちに対しても、どこか壁を作っていらっしゃいましたのに……。サキさんに対してここまで懐くなんて、本当に珍しいことですわね」


「あ、そうですわ!」

 

 ルクレツィアはハッと思い出したように、横たわるサキの顔の近くへと再びトコトコと近づいてきた。


「サキさん、本日の特訓も本当によく頑張りましたわね。これでようやくあなたの肉体に『魔女回路』の基礎が構築出来ましたわ。これからは、この回路の数をさらに増やして、一本一本を太くしていく訓練に移りますわ。そうすれば、遠からずマナをあなた様ご自身の意志で、自由に扱えるようになりますわよ」


 ルクレツィアのその言葉に、サキは触手の上で少しだけ身を起こし、目を輝かせた。


「そうなの!? ……ちなみに、あとどれくらい訓練すれば、魔法を自由に使えるようになるの?」


「そうですねぇ、順調にいって、あと1ヶ月ほどでしょうか?」


「1ヶ月……っ!? そんなに、そんなにかかるの……?」


  サキは予想以上の長さに、少しだけ落胆したように声を漏らした。


 ウルの意識を一刻も早く戻したいサキにとっては、1ヶ月という時間はあまりにも長く感じられたのだ。


 しかし、ルクレツィアは真剣な表情で首を振った。


「サキさん。やはり何事も、命に関わる身体の事ですもの。急激に回路を拡張し進めるのは、決して良くありませんわ。こればかりは、サキさんの肉体への魔女回路の定着度合いとの相談ですわね。……もちろん、わたくしも深階第五位の名に懸けて、少しでも早く回路が定着できるよう、毎日最高の術式を構築いたしますわ」


「……分かったよ。お願い、ルクレツィア。あなたを頼りにしてるよ」


「はい! 確かに承りましたわ!」


 ルクレツィアは満面の笑みで答えたが、その直後、急に目をキラキラと輝かせ、サキの顔に極限まで近づいて声を潜めた。


「――ところで、サキお姉様……、わたくしとの、『お約束』の件ですけれど……」


 そのオタク特有の凄まじい圧迫感に、サキは思わず苦笑いを浮かべた。


(はは、訓練が終わったら、呼び方まで変わっちゃったよ……)


「もちろん、分かっているよ。クティラの魔法で、この指先の怪我が完全に治ったら、すぐにあの『あにめ調』の下絵を描いてあげるからね」


「まあっ! 楽しみに待っていますわ! クティラさん、サキお姉様の指先を大至急お直しして差し上げてくださいましね。そうですわ!わたくしもノーデンスで、少しでも早く、お姉様が癒されるように、お手伝いをいたしますわ!クティラさん、よろしくですわ!」


 ルクレツィアが興奮気味に頼み込むと、クティラは肩から垂らした大きな青髪の三つ編みを弾ませ、親指をグッと立ててみせた。


「サキっちの指、クティラ、綺麗に治す。心配しないで」


「お願いいたしますわ、クティラさん。お姉様の手は特に入念に、お願いいたしますわ!」


 早速、ルクレツィアはクティラの横に並び、二人でノーデンスの魔法をかけるのであった。


 そんな二人の、元の世界のアニオタ仲間のような、微笑ましいやり取りを見つめながら、サキは体内の痛みを忘れ、何とも言えない温かい居心地の良さを感じて、優しく微笑むのだった。

 

オタクのルクレツィア。

訓練中とは違った親しみやすさがありますね。

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