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異世界カルコサの魔女回路・理不尽にTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第28話 交わされる信頼

「クティラ! 大丈夫か!?」

 サキは慌てて膝を突き、クティラの元へと駆け寄った。

 クティラはいつも通りの表情のまま、傷ついた右手を庇うように、触手を手に当てて丸めている。


「大丈夫、ただのかすり傷……っ、痛っ!?」


 強がろうとしたものの、傷口から流れる汚れたマナが神経を苛むのだろう、クティラは顔をしかめて小さな悲鳴をあげた。


「それ完全にフラグだから! かすり傷の痛がり方じゃないだろ! 早くアザレアに診てもらわないと……クティラ、そこで待ってて、私がアザレアを呼んでくるから!」


 慌てて廊下を走り出そうとするサキの服の裾を、クティラが残った左手でぐいと引っ張った。


「待って、サキちゃん……。一人になると危ない、呼びに戻らなくても、『通信魔法』を使うの。頭の中で、一番話したい人を、強く思い浮かべる。私は今集中出来ないから、お願い」


「通信魔法……? ええ〜っと、アザレア、アザレアを思い浮かべればいいんだな……?」


 サキは必死に目を閉じ、あの美しい青い髪と、きついけれど、どこか顔の作りは優しいアザレアの顔を脳裏に強烈に描き出した。


「そう、そして脳内に直接話しかけるイメージ、マナを少しだけ乗せて声を届ける」


「ええい、やってみるっ! アザレア! 頼む、早くこっちに、廊下の奥に来てくれっ!」


 サキが祈るようにして頭の中で叫んだ、その瞬間だった。

 頭の奥で、カチリと何かが繋がるような妙な感覚が走った。


『――ちょっと、どうしたの!?』


 サキの脳内に直接、アザレアの驚きに満ちた声が響き渡った。

 本当に繋がったのだ。


「アザレア! 良かった、繋がった! 大変なんだ、クティラがさっきの奴らの魔導兵器に刺されて――」


『なっ!? すぐに行くわ! そこでじっとしてなさい!』


 頭の中の声が途切れると同時に、遠くの廊下から激しい足音がこちらに向かって走ってくるのが聞こえた。


「はあ……クティラ、繋がったよ。アザレアがすぐ来てくれるって、もうちょっとだから」


 サキがホッと息を吐くと、クティラは感心したようにぱっちりとした目を丸くした。


「サキちゃん、やっぱりすごい。やり方分からない通信魔法を、一発で成功させた……。ユカリさんが言ってた通り」


「え? ユカリが? ユカリが私のことを何か言ってたのか?」


「なんか、ユカリさんが言うには、サキちゃんは――」


「クティラ! 大丈夫なの!?」


 クティラが言葉を続けようとしたその時、廊下の角からアザレアが血相を変えて飛び込んできた。

 彼女は床に転がる新たな暗殺者の死体には目もくれず、すぐにクティラの前に膝をついた。


「あ、アザレア、早く! クティラを頼む!」


「分かってるわ……っ! ああ、またこいつらにやられたのね……。ごめんねクティラ、ちょっとだけ我慢して」


 アザレアはクティラの右手に目を留めると、躊躇うことなく、その肉体に深く突き刺さっていた三本の手裏剣のような暗器を、一気に引き抜いた。


「痛っ!!アザレアっち、痛いよ……」


 クティラが涙目で小さく身をよじる。

 アザレアはすぐにその傷口へ両手をかざし、自身の最も得意とする光の魔力を解放した。


「大丈夫か?クティラ」


「ごめんね、でももうこれで大丈夫だから。――『ノーデンス』」


 まばゆい純白の光がクティラの右手を包み込み、傷口にこびりついていたハイパーボリアの魔導兵器で注入された汚れたマナを、急速に浄化していく。みるみるうちに肉体が修復され、クティラの顔にいつもの穏やかさが戻っていった。


「はあぁ〜……痛みが消える」


 いつもの能天気な調子に戻ったクティラを見て、サキは心の底から安堵の溜息を漏らした。


「クティラ、本当によかった……」


 すると、クティラはアザレアを見上げて、嬉しそうに言った。


「アザレアっち、さっき、サキちゃんが私のために一緒に戦ってくれた」


「え? あんたが?!」


 アザレアが信じられないといった様子で、ジロリとサキの華奢な身体を睨んできた。


「何よそれ。まさか……あんた、女の武器でも使って敵を油断させたの?」


「なわけあるか!! 『ケラエノ』を使って、ちゃんと正面から敵の動きを封じたんだよ!」


 サキが顔を真っ赤にして反論すると、アザレアはふん、と鼻を鳴らした。


「あんたのー? あの特訓の時に出していた、ひょろひょろの情けない雷撃でー?どんだけ弱い敵なのよー」


「いつもより回路を多く、思いっきり開いたんだよ! そしたら敵の前面が黒く焦げて、完全に動きが止まったんだ。そこをクティラが触手ちゃんで、一気に相手を倒してくれたんだよ」


 サキが身振り手振りを交えて必死に説明すると、アザレアは「ふ〜ん……そうなんだ……」と、珍しくそれ以上は口答えをしなかった。


 そして、治療の手をクティラの傷口に当てたまま、アザレアはふいとサキから顔を背けた。

 サキに聞こえるか聞こえないかというほど、いきなり声をガクンと落として、蚊の鳴くような声で囁いた。


「ふん……ちょっとは、やるじゃん……」


「え? なに? 急に声が小さくなってよく聞こえなかったんだけど?」


 サキが首を傾げて、アザレアの顔を覗き込もうとすると、アザレアの耳たぶまで真っ赤に染まっているのが見えた。アザレアはサキを激しく睨みつけ、怒鳴るように声を荒らげた。


「何でもないのよ!! 静かにしなさい、魔法の集中が乱れるでしょ!!」


「ああ、ごめん。そんなに怒るなよ……」


「アザレアっち、顔真っ赤」


「クティラ!しっ!」


 サキは苦笑いしながら首をすくめた。 アザレアのツンデレな態度に呆れつつも、サキは自分の仕事部屋がある廊下の奥へと視線を向けた。


「ああ……でも、早く仕事に行って、男たちに魔法を出さないとな……」


 客たちのことを思い出し、サキが呟くと、クティラが触手を振りながら優しく微笑んだ。


「サキちゃん、アザレアっちの治療、もう少しで終わる。ちょっとだけ待ってて。そしたら、一緒に行こう」


「まあ流石に、館の中にそんなに何人も何人も刺客が潜んでいるとは思えないけどね」


 アザレアが周囲を警戒しながら言うと、クティラは「念には念を入れないと、いけない」とのんびり返した。


「そうだね、クティラ」


 サキは優しく微笑み、自分のために傷ついてくれたクティラの、自分のすぐ隣で、ふよふよと揺れていた触手の先を、心からの感謝を込めて、ぎゅっと両手で優しく握りしめた。


 もう、その冷たくて不思議な触手に対する嫌悪感は、サキの心には一欠片も残っていなかった。

 この世界で共に戦い、生き抜くための、大切な仲間の温もりとして、サキはそれを確かに受け入れていた。


 アザレアの「ノーデンス」による純粋な光の魔力は、クティラの体内に残っていたハイパーボリアの魔導兵器からのおぞましい「汚れたマナ」を、一滴残らず綺麗に洗い流した。


「アザレアっち、ありがとう。もう完璧に回復した。 どこも痛くない」


 クティラは傷口が完全に塞がった右手を何度も握ったり開いたりしてみせ、さらには背後のお尻から生えた青黒い触手をぴょこぴょこ、パタパタと嬉しそうに波打たせながら、満面の笑みを浮かべた。


「ふん、当然よ。私を誰だと思っているの。……でも、今回はサキが敵の動きを止めてくれなかったら、いくら万能型のあんたでも危なかったわ。本当に無事でよかった」


 アザレアは、ホッと胸をなでおろしながら、手にした杖をトントンと床について立ち上がった。

 その言葉を聞いたクティラは、さらに目を輝かせてサキを見つめる。


「うん、サキちゃんが助けてくれた――というわけだから、アザレアっち、私は引き続きサキちゃんの護衛任務に、元気よく行ってくる!」


 クティラは、ピシッと綺麗に、けれどどこか可愛らしい敬礼をアザレアに向けてしてみせた。

 それから、サキの隣へ並ぶと、迷うことなくその細い両腕をサキの右腕へとからめ、嬉しそうにぎゅっと腕を組んだ。


「あ、おい、クティラ……っ」


「さあ、サキちゃん。お仕事へ出発」


 サキは突然の密着に少しだけドギマギしながらも、先ほど自分を命懸けで守ってくれた彼女の温もりを拒む気にはなれず、そのまま二人の足音と触手の衣擦れの音を響かせながら、薄暗い廊下を奥へと進み始めた。


 アザレアはそんな二人の後ろ姿を、どこか呆れたような、けれど少しだけ微笑ましそうな表情で見送っていた。


 ――しかし、二人が数歩ほど歩んでいった、その瞬間だった。


(え、ちょっと待って。私、クティラがやられたって聞いて、慌てて部屋から飛び出してきたけれど、あの時、私の頭の中に直接声を響かせてきたのって……)


「ちょっと待ちなさいよサキ!! 何かあったらすぐにその通信魔法を使いなさいよね、って……って、あれっ!?さっきのって、私を呼んだのはサキだったわよね!?あいつ、いつの間に通信魔法なんて使えるようになってたのよぉぉーーっ!?」


 サキは背後から飛んできたアザレアの叫び声に、思わず肩をビクッと跳ね上げ、振り返りながら苦笑いを浮かべた。


「い、いつの間にって言われても……クティラに頭の中で思い浮かべろって言われたから、必死にやっただけだよ!」


「うそ?!そんな事って……」


 アザレアの驚愕の声を背中で聞き流しながら、サキとクティラは、目的の客室の前へと、たどり着いた。

 アザレアはまだ廊下の向こうで、頭を抱えてブツブツと呟いている。


 クティラは腕をほどくと、扉の横にあるソファへと腰掛けた。

 やはり触手があるため浅めに腰をかける独特のスタイルだが、今度は周囲への警戒を怠らず、ぱっちりとした目を廊下の左右へと鋭く走らせている。


「サキちゃん、お仕事頑張って。この部屋の守りは、今度はこの触手ちゃんも含めて完璧。安心してて大丈夫。それと、サキちゃん、これからサキっち、って呼んでいい?」


 クティラはそう言うと、自身の細い右手と、そして背後から伸ばした数本の触手の先を、サキに向かって、ふよふよと頼もしげに振って見せた。


 サキはその愛らしくも最高に心強い護衛の姿に、今度は心からの温かい微笑みを返した。


「もちろんだよ!ありがとう、クティラ。……守りは任せたよ」


 サキは静かに客室のノブを掴み、ゆっくりと扉を押し開けた。

 ハイパーボリア皇国の残酷な世界の真実を知り、そして初めて自分の魔法で仲間と共に敵を打ち破ったサキ。その胸に宿る覚悟は、今や本物の魔女としての輝きを帯び始めていた」

 サキは迷いのない足取りで、自分を守る(維持する)ため、ひいては人々を救うために、自分のマナを分け与える仕事に向かった。

サキと、クティラとの間に、深い信頼関係が生まれました。

ウルは?!もう少ししたら出てきます。

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