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第1話 初めての夜

「お、お、女の子……!? いやいやいや! 異世界には来たかったけど、性別を変えてくれとは一言も言ってないぞ!これじゃ俺が夢見ていたチートな美少女ハーレム展開が……!?じゃ、じゃあ、性転換の代わりに、俺にどんなチート能力をくれたんだよ?」


「何を寝言を言っているの。さあ、まずは私が『初歩』を教えてあげるから。覚悟を決めなさい」


 そう言って、優花里がいきなり同じベッドの上に這い上がってきた。

 整った美貌が、信じられないほどの至近距離に迫る。

 ああ、こんな美人に近づかれるなんて、これまでの人生には無かったよ。異世界転移した甲斐があったのかな?

 ただ、彼女は甘く、けれどどこか危険な香りがした。


 え……? 待てよ、これって、もしかして形は違えど、ハーレム展開ってやつが来たのか?こんな美人に迫られるなんて。


 でも俺は今、女の身体で……あれ?どういうシチュ?!あ、これって異世界系の百合展開なのか!

 そうなのか!?


 期待しながらも、困惑する俺の太ももに、ユカリの身体が密着する。

 その瞬間、彼女の股間に、およそ美少女には似つかわしくない強烈な違和感が触れた。


 ……って、ええええええええええええっ!? なんで、そんなものが付いてるの、この人!?


「当たり前じゃないの。これからあなたを『指導』するんだから、これがないと始まらないわ」


 ユカリは冷徹な表情を崩さないまま、衣服の隙間からそれを取り出してみせる。

 そこには、俺がさっきまで持っていたもの、いや、俺が現代日本で失くしたものよりも、遙かに凶悪で巨大な『物体』がそびえ立っていた。


 嘘だろ……。ふたなり、っていうか、男の俺より立派なもの、生やしてんじゃねえよ!!


「さあ、サキ。蜘蛛の糸に囚われた哀れな羽虫のように、美しく鳴くのよ、その声で男たちを喜ばせるのよ」


「ひ、ひいーっ! 助けて! やめてくれええええ!!」


 抵抗しようとしたが、女性となった二十歳の引きこもり一歩手前の大学生の力など、彼女の前には赤子同然だった。

 美少女の皮を被ったユカリは、恐ろしいほどの怪力で俺の身体をベッドに押さえつける。


「ちょ、ちょっと待って!する事とされる事が逆じゃ……気持ちの整理を……」


「無駄よ」


 その後は、どれだけ涙を流して助けを求めても、一切聞き入れられることはなかった。

 男としての尊厳を、そして女としての純潔を同時に蹂躙されるような、恐ろしい痛みにひたすら耐えるしか、俺には道が残されていなかった。


 どれくらいの時間が経っただろうか。 下腹部がジンジンと熱く痛む。ベッドのシーツには何かが垂れて、じっとりと冷たかった。男のプライドも、人間の尊厳も、すべてがズタズタに引き裂かれていた。


「な、なんでこんな目に……痛いよ……」


「――あなた、なかなか良かったわ。これなら、明日にもお客を……痛っ!」


 息を整えながら服を直していた優花里が、突如、顔をしかめて自分の下腹部を押さえた。

 痛い? 痛いのは俺の方なんだけど……。


「ま、まあ。今日は一日大人しくしていなさい。明日からは男たちの相手をして、あなたの身体の中のマナを分け与えないといけないから」


「なんで、そんな事を……?」


「あなたからはマナが絶えず溢れていて、それを出さないとダメなのよ」


 絶えず溢れる魔力の暴走。それを外に出さなければ、異世界人の俺の体が耐えられず、自壊する。

 ユカリの説明に、俺は必死に縋り付くような声を絞り出した。


「そ、それなら男が相手じゃなくて、せめて美少女のお前、ユカリに……っ。ま、まだそれなら耐えられる!」


「私ではダメなのよ」


 冷酷に、即座に否定された。


「何でだよ!今しちゃったじゃないか!!だから、これからもそれじゃあ駄目なのか?そ、そんな……男の相手!? や、やだよ……俺は男なんだぞ!こんな異世界転移がしたかったんじゃないよ。か、返してくれよ! 元の世界に!」


「私とはもうこれ以上は駄目なのよ、あなたはこの世界で、男達の相手をして、生きていくしかないのよ」


「何でだよ! お前が召喚したなら、元の世界に戻せるだろ!」


 俺は半狂乱になってベッドから飛び起き、ユカリに縋り付いた。

 元の世界に返せよ! ちくしょう!この野郎!

 行き場のない怒りと恐怖のままに、ユカリに向かって腕を振り上げた途端――バキィッ、と凄まじい力で腕をガッチリと固定された。細い女の子の手だとは到底思えない、万力のような怪力。


「あ、あが……」


「無駄よ、あなたは私には敵わないわ。力も、魔力も」


「そ、そうか! マナというと、魔力……っ! こいつを吹っ飛ばして……って、魔法ってどう使うんだ?」


 自分の無力さに気づいて愕然とする俺を、ユカリは見下ろす。


「魔法はこれから教えてあげるわ。だから、ここで男たちの相手をする運命を受け入れなさい」


「そ、そんな……」


「じゃあ、食事はここにおいておくから。明日の朝、迎えに来るわね」


 ユカリが軽く手を振ると、何もない空間からいきなり豪勢な食事の載ったトレイが出現し、ベッドの横のテーブルに置かれた。


 本物の魔法だ。


「扉には魔力を込めているから、あなたには開けられないわよ。また明日ね、おやすみなさい」


 冷たく、けれどどこか微かに揺れる瞳を残して、ユカリは部屋を出ていった。

 重々しい扉が閉まり、錠の降りる音が静まり返った部屋に響く。


 ユカリが出ていった後、俺は無駄だと分かりながらも扉に駆け寄り、ノブを掴んで引いた。

 だが、びくともしなかった。岩壁を押しているかのように硬い。


 窓から逃げられないかと外を覗いたが、あまりの高さに足が竦んだ。

 ここは何階なんだというほど、雲に近い高い塔の中だった。 これも魔法でそう見せているのか?

 本当に高い塔なのか?

 かといっていちかばちか、ここから飛び降りるほどの勇気はなかったが。


 見上げた空には、青白い満月と、赤黒い三日月が二つ並んで浮かんでいる。


「はは……ここは本当に、異世界なんだ……」


 悪夢であってくれと願った。次に起きたら日本の実家のベッドで、いつも通りスマホをいじっている日常に戻っていないだろうか。

 だが、下腹部の痛みが、これが現実だと嫌というほど主張してくる。


「これって男だったら絶対に味わえなかった痛みだろうな……俺、本当に女の子になっちゃってるんだ」


 でも、男の相手って……まさかさっき、ユカリにされたみたいなことを、見知らぬ男たちにこれから……?


「や、やだよ、やだよ……怖いよ……なんで俺がこんな目に……俺童貞なのに、なんで処女の方を先に無くしちゃうんだよ……こんな異世界やってられないよ……こんなのって、全然異世界チートハーレムなんかじゃ、ないじゃんか!こんなの全然異世界に来た意味ないじゃんか!!」


 両手で自分の細い肩を抱きしめるが、震えは止まらない。


 ベッドにこてんと横になると、視界が歪み、涙が溢れて止まらなかった。

 枕を濡らしながら、あんなに鬱陶しいと思っていた、あの声が頭の奥でリフレインする。


『誠、単位は順調に取れてるの?』


『将来の就職のことは考えているのか?』


「帰りたいよ……母さん……父さん……っ、こんな異世界なんて来たくなかったよ……ううっ」


 冷たい異世界の闇の中で、俺はサキの身体のまま、届かない声を上げて泣き続けた。


能力もない、チートでもない、ハーレムでもない、しかも性別も変えられたサキ。

次の日は男の相手をするのでしょうか?

そういう描写は極力減らしていきますので、安心してお読みください。

また、面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価や、ブックマークをしていただけると執筆の励みになります!

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