プロローグ 異世界カルコサ
初めて書いた、異世界作品です。
TS化したサキが、隠れた力を持ちながらも、生かすことが出来ないのですが、過酷な日々に翻弄されながら、徐々に味方を増やし、力を顕現させ、周りを巻き込んで、いつの日か世界を変えていこうと、奮闘する作品です。
はっきり言って、サキは大きな力を持っているのですが、当分の間は全く使いこなせません。
50話分ほどのストックは書き溜めていますので、毎日更新頑張ります!
サキが苦労しながらも、成長していく過程を、応援しながら読んで頂ければ嬉しいです。
たまに残酷描写がありますのでご注意を。
「誠、単位は順調に取れてるの?」
「誠、もう将来の就職のことは考えているのか?アニメばかり見てるんじゃないぞ」
ウザい!ウザい!ウザい! そんなの言われなくても、自分が一番分かってる!
分かっていることを改めて他人に言われるのが、一番腹が立つ。
なんで親って生き物は、こうやって人の神経を逆撫ですることばかり言うんだろう。
俺はまだ二十歳で、大学二年だ。受験勉強を必死に頑張って、それなりに名の通った大学に入れたっていうのに、今度は単位だの、就職だのと、一息つく暇もありゃしない。
もっと、今の大学生活や、趣味のアニメとゲームも楽しませてくれよ!
ベッドに寝転び、伸びをすると、腕や背中の節々がピキリと嫌な音を立てて痛んだ。
(……くそ、最近なんか妙に身体の奥が痛いな。カフェでのウェイターのバイトで、トレイを持ちすぎて腕や骨を使いすぎたからかな? なんか、骨が芯から重苦しく強張るような、変な感覚がする)
寝返りを打ちながら、痛む腕をさする。
大して重いものを持ったわけでもないのに、最近この正体不明の鈍痛が頻発していた。
まあ、まだ若いんだし、変な病気ではないだろう。
(あーあ……なんか、なろう系みたいに、異世界へ転生してチート能力で無双して、超絶美少女たちに囲まれるハーレム展開とか降ってこねえかな。もしそうなったら、俺だって絶対にラノベや現代知識を駆使して大活躍してやるのに。……まあ、トラックに轢かれて痛い思いをするのだけは、いやだけどさ)
疲れで重い身体を休めるために目を閉じ、そんな現実逃避した、美少女達に囲まれる、楽しい夢を見る、はずだった。
◇◇◇◇◇◇◇
「――起きなさい、いつまで寝てるの?」
冷たい鈴の音のような声が、耳に届いた。 ん……? もう朝か?
「いつまで寝ているの。早く身支度を整えなさい」
あれ?母さん……?
にしては妙に声のトーンが低くて、ゾクッとするほど綺麗な声だ。
寝惚け眼をこすりながら、ゆっくりと目を開ける。
え……?
視界に飛び込んできたのは、実家の古臭い天井ではなかった。ひび割れた石造りの壁と、見たこともない不気味な紫色の天蓋。
そして俺のベッドを見下ろしていたのは、黒髪ストレートの美しい髪を艶やかに流した、小顔に切れ長の瞳を持ち、身体にぴったりとした赤いドレスを着た、少し冷たい雰囲気のする、息を呑むような美少女だった。衣服の隙間から覗く肌は白く、冷徹なオーラを纏っている。
誰だ……? なんで俺の部屋にこんな超絶美少女が? っていうか、ここ、どこだ!?
あ、そうか、これは夢か。だからこんな美少女が俺の部屋にいるんだ。なるほど、じゃあ、おやすみ……
そうやって二度寝を決め込もうとした俺だった。
「何もう一度寝ようとしてるの!起きなさい、サキ」
と、身体を揺すられる。 あれ?触られている感触があるという事は……夢じゃないのか?
でも名前が違うから人違いだよな、うん。
「サキ? 誰を起こしに来てるんだ?俺は誠だけど……あんた人違いじゃ?」
口を開いた瞬間、自分の喉から飛び出してきた声に、俺自身が硬直した。
高くて、鈴を転がすような、明らかに「女の子」のソプラノボイス。
あれ?喉の調子がおかしい。
「ん、ん〜!あ、あ〜!」
何で声が裏返ってる?
え?もしや、これって、異世界なのか!? 夢にまで見た、異世界転生?でも自分は多分死んでないだろうから、転生じゃなくて異世界転移なのか?
これって、やっと本当に俺の願望が叶ったのか!? 夢にまで見た、異世界なろうの世界なのか?!
やったーー!!そうするとこの美少女は神様なのか!?
俺に何かチート能力を与えてくれるっていう、定番の女神様?!
こんな美少女が側にいるって、俺もう勝ち組じゃないのか!!
「――って、あれ? なんか俺の手めちゃくちゃ小さくね? それに、この胸の重みは……え?え?えええ〜っ!?」
慌てて自分の身体を触りまくる。服の上からでも分かる、柔らかな膨らみと、きゅっと括れた細い腰。
男だったはずの俺の身体は、どこをどう見ても、完璧な「女」のものに作り変えられていた。
――そして何より奇妙なことに、寝る前まで俺を苦しめていた、あの身体の痛みが綺麗さっぱり消え去っていた。
これも異世界転移のチート能力で痛みが消えたのか?異世界で、体調不良も回復するなんてハンパないありがたさ!!
「で、でも、お、女の子に?!なんで?!」
パニックになる俺の前に、黒髪の美少女――ユカリと名乗った美少女は、一枚の古ぼけた手鏡を無表情に差し出す。
「自分の姿をよく見なさい。あなたの名前は今日からサキ。これが、あなたがこの世界で生きるための『肉体』なのよ」
鏡に映っていたのは、二十歳前後の、信じられないほど、妖艶で美しい少女が驚いた表情をした姿だった。
小顔で目はぱっちりとしていて、ブラウンの瞳。少し茶髪気味で腰まである長い綺麗な髪。
全体的に優しい顔の雰囲気の少女だった。
うわ、見たこともない超絶美少女だよ。
これが俺……?
うそだろ……?
という事は、美少女になってこの異世界で勇者になって、チートしろっていう事なのか?!
実はすごい能力の持ち主になれたとか?!
やっぱり異世界に来たならチート能力は定番だよな!
しかも俺って神様のバグかと思うほどの、男の自分なら一目惚れしてしまうほどの超絶美貌。
だが、それを手放しで喜ぶ余裕は、ユカリと名乗った、目の前の美少女の言葉によって一瞬で消し飛ばされる事になった。
「ここは裏社会の娼館『蜘蛛の糸』。あなたの身体には、放っておけば自壊するほどの凶悪な魔力が満ちているの。生き延びたければ、この店で男たちの相手をして、その暴走する魔力を男たちに逃がし続けなさい」
事務的に話す、ユカリの切れ長の瞳には、一片の慈悲もなかった。
「え?娼館?異世界召喚、ってことだよね?男たちの相手……?あなたは女神様じゃ……?」
「勘違いしないで。私はあなたを救うために呼んだわけじゃないの。さあ、勝手に絶望している暇はないのよ。最初の客が来るまでに、女の子として男たちの受け入れ方を覚えなさい」
「へ……男の受け入れ方だって……?」
◇◇◇◇◇◇◇
そこには、チートも、英雄としての歓迎も全くなかった。
そこにあったのは、TS化で男としての性別を奪われ、異世界カルコサでの、サキの過酷な日常が始まるという現実だけだった。
天邪鬼なので、可能な限りテンプレ展開を外して、書いていってみるつもりです。
異世界カルコサの世界を、楽しみながら、読んで頂ければ幸いです。
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