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異世界カルコサの魔女回路 〜理不尽にもTS美少女にされた俺、魔女都市の娼館での特訓の末、魔法を駆使し成り上がる!過酷な世界に抗うダークファンタジー〜  作者: あさなゆうなぎ
第1章 チートもハーレムもない世界

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第18話 檻の中の雛達

 あの襲撃の夜から、数日が過ぎた。


 サキはユカリの指示の元、相変わらずマナを絞り出される日々を送りつつも、空いた時間を見つけてはユカリからの魔法の訓練を必死に続けていた。


 全ては、自分の身を自分で守れるようになるため、そして生き残るためだ。


 そんなある日、サキは気分転換を兼ねて、ユカリから許可され、娼館の裏庭へと足を運んでいた。


 そこは高い石壁に囲まれた、外からは見えない広い庭園だったが、驚くことに多くの「女の子たち」が集まっていた。


「あ〜、サキちゃん! こっちこっち〜!」


 声をかけてきたのは、サキと年齢の近そうな、少し気怠げな雰囲気を持つ美少女だった。

 彼女の名前はミウ。驚くべきことに、彼女もサキと同じように、現世の日本から強制的にこの世界へ連れてこられ、TS(性転換)化させられた元・男の「同志」だった。

 

 彼女はサキの一年ほど前からここで働かされ、内面もほぼ女性化していた。


「ミウ……。みんな、何をしてるんだ?」


「何って、お洗濯とか、お裁縫だよ。元の世界から来た私たちはさ、サキちゃんみたいに規格外のマナを持ってるわけじゃないから、1ヶ月に1回くらい娼館の地下で男たちにマナを分け与える役割以外は、こうして普通の雑用をしてるんだよ。まあ、その月一がちょっとキツいんだけどね、でもいつの間にか慣れちゃったよ、はは……」


 ミウは自嘲気味に笑った。

 サキは彼女の言葉に、胸が締め付けられるような感覚を覚える。

 自分と同じように理不尽に性別を変えられ、この世界の「システム」に組み込まれて消費されている人間が、自分の他にも確かに存在するのだ。


 しかし、この庭にいるのは彼女たちだけではなかった。


「サキお姉ちゃん、これ、あげる……!」


 不意に、サキのスカートの裾を小さな手が引いた。


 見下ろすと、頭に小さな犬の耳を生やした、獣人の幼い女の子が、庭に咲いていた小さな黄色い花をサキに差し出していた。


 その細い手首には、かつて奴隷だったことを示す、痛々しい金属の枷の痕が残っている。


「……ありがとう。可愛いお花だね」


 サキがしゃがみ込んで頭を撫でてあげると、獣人の少女は嬉しそうに犬耳をパタパタと揺らした。

 その向こうでは、耳の尖ったエルフの少女たちが、静かに洗濯物を干している。

 彼女たちの瞳には、どこか深い喪失感の影が宿っていた。


 ミウが隣に並び、静かな声で言った。


 「あの子たちはね、みんなハイパーボリア皇国との戦争で故郷を焼かれた孤児たちや、奴隷市場からユカリ様に買い取られてきた子たちだよ。行くあてのない彼女たちにとって、この娼館だけが、唯一の安全な『家』なんだ。ユカリ様はあの子たちが大きくなっても客は取らせずに、雑用だけをさせてるんだよ。男の相手をしてるのは、最初からそれを望んで来た子や、私たちみたいに、元の世界から連れて来られて、マナを分け与えないと生きていけない子だけなんだよ」


「……そう、だったんだ」


「なんでも彼女は、この国でも力のある上位の魔女で、国からも多額の補助金をもらっているそうだから、客を取らないといけない女の子は、そんなに必要ないそうなんだけどね。私も溜まったマナを分ける時だけだし。この周りの高い壁も、外からの侵入者を防ぐためなんだよ」


「そうだったのか……てっきり女の子達があのドS魔女から逃げ出さない様にかと思っていたよ」


(あの冷血漢も、そういうところがあるんだ。それならせめて俺にも、もっと優しくしろよな! 冷血ドS魔女のクソユカリが!)


 ユカリへ毒づきながらも、サキは、そのユカリが守っている、無邪気に笑う獣人の少女を見つめながら、拳をそっと握りしめた。


 以前の自分なら、アニメなどを見て「なんて可哀想な設定なんだ」と、どこか画面の向こうだけのフィクションの出来事のように同情するだけだったかもしれない。


 けれど、今は違う。サキ自身も、この世界の理不尽に巻き込まれ、殺されかけた当事者となってしまっている。


(みんな、こんなに必死に生きてる……。もし、あの暗殺者たちがまたここに攻めてきたら、巻き込まれて、この子たちの小さな平穏は、一瞬で踏み躙られちまうんだ……)


 人を殺すのは、今でも絶対に嫌だ。

 しかし、この女の子たちを犠牲にすることだけは、絶対に許したくない。

 この子達を守るためなら……


「俺……もっと、強くならなきゃな」


「え?」


「自分の役割を果たさないとここに来た甲斐がないっていうことかな」

 サキの口から、自然とそんな言葉が漏れた。


「私には無理だけれど、期待してるよ、サキ」


「ミウだって、魔法の訓練をすれば、マナを分け与えなくてもいいんじゃないのか?」


「いや、私にはとてもとても!サキくらいのマナも全然無いし」


「でも、やってみないと分からないぞ」


「あはは、そうだね。少しくらい魔法が使えれば、ここでの生活も便利になるかな?」


「そうだよ、出来ないよりは少しでも出来て損はないから」


「確かにそうだね、今度訓練をお願いしてみようかな」


「お〜、そうそう。でもユカリには頼まない方がいいぞ!やつは心からの冷血ドSな性格だから、命の保証は出来ないから」


「え?ユカリ様が?あんなに優しいのに?」


「いやいや、俺は奴のほんの少しでも、優しいと思われるところさえ、見た事がないから!」


「うそだ〜!でもそれって、サキが期待されてるって事じゃないのかな?」


「期待?期待してるのに、ボロボロにはしないだろ〜」


「いいや、実は愛情の裏返しとか……?」


「やめてくれよ〜!あんな奴、顔と身体しか、いいところないんだから!」


「サキ、なんかそれ……考えが、おっさんだぞ!」


「うるさい!お前も元男だろ!」


「ミウはもう身も心も女性ですわ〜」とサキにしなだれかかる。


「おいやめろ!」

と、言って声を出して笑い合う二人。


(でもやっぱり強くならないと。ミウや、ここにいる子たちを守れる様になるんだ)


 それは、これまでの「ただ自分が死にたくないから」という怯えの裏返しではなかった。


 この過酷なカルコサという世界で、出会ってしまった大切な仲間たちを「守りたい」という、サキの心に宿った、初めての本物の覚悟だった。



他人に守られるだけだったサキが、他人を守ろうという気持ちへと変化する回でした。

また、ユカリも厳しいだけではなく、女の子達を守っていました。

それだけにマナを無駄にするサキが許せなかったのでしょうか。


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