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第6話 四武太守の裏切りと騒がしすぎる現実

 この世界の名はカルサカ。

 俺はラビィーの教育係としてこの世界、この国リーガエスに召喚された。

 

 そして俺の思った事や感じた事、行動はすぐに物語として本になること。

 ここまでは自分でも理解していた。


「白双剣の勇者ラビィーは農民の子として生まれ、勇者として戦闘訓練しかせずに育てられました。ラビィーは歴代勇者の中でも特に資質に優れ、戦闘能力は1対1の条件付なら四武太守達は100回対戦して100回負けます」


「そんなにラビィーって強いんだ……で、四武太守って何?」


「そうですね。四武太守はラビィーを守る副隊長といったところですね。私とパンチャを含めて4人。それぞれが王城を中心に東西南北に城があって領地を治めています」


「なるほど」


「ついでにこれが四武太守の印です」


 そう言ってシープは俺に左手の甲を見せてくれた。

 そこにはどっかの戦国武将の家紋みたいな痣が出来ていた。

 

 ……この中二病みたいな設定にツッコミ入れて~! 

 そう思いながらも俺はシープの続きの言葉を待った。


「四武太守は左手の甲に必ずこの痣があります。そしてラビィーの右手の甲には勇者の痣がありますわ」


「そんな事で勇者って選ばれるんだな」


「そうですわね。私もそうですが、この痣を持って生まれた子供は必ず勇者、四武太守にならなければなりません。生まれてすぐに親元を離れ、戦士として育てられます」


「マジですか……」


「余談ですが、勇者や四武太守を生んだ親達にはそれなりの階級や待遇が与えられます。親たちが痣を持って生まれてきた子供を隠し、普通の子供として育てたいという風習が生まれました。そのため勇者や四武太守不在の時代がありまして、魔物達の攻撃が活発になった時期があったのです。その時の教訓で今の制度になりました」


「確かに余談ですね。でも、良い制度だと思います」


 これは良い制度だと素直に感心する。

 確かに自分の子供を喜んで差し出す親なんてなかなかいない。


 というか、そんな親はいてほしくない。

 しかし、親が了承したとはいえ、戦いに送り出すのだから親の心境も複雑だろうな……


「こういった制度を決めるのも教育係の仕事となります。決定権は勇者ですが、少しでも国を良くする為にあなたがいた世界の良い制度をお教えください。ですが、今回はいつもと状況が違います。魔王ベスボルが復活してしました。ベスボルの恐ろしさは『歴代教育係の本』で伝えられています。最初の勇者ペシャルの活躍で魔王ベスボルは封印されていました」


 今まで優しい笑みを浮かべていたシープが真剣なまなざしに変わる。

 窓から生暖かい風が入ってくる。その風でシープの緑色の長い髪が綺麗にたなびいた。


「魔王ベスボルの封印は勇者以外では四武太守しか解けないのです」


「それって……」


「そうです。我々、四武太守の誰かが裏切り、魔王の封印を解いた。そして、王都フィーファに攻め込んだのです。何かの間違いで合ってほしいのですけど」


 神妙な面持ち、そして明らかに落胆の色を隠せないシープ。

 この雰囲気を壊せない俺は頭の中で色々と思案する。


「あ、あのさ……」

 

 考えもまとまらないまま口を開く俺。

 口を開けばなにかしら会話できるだろうと甘い考えをしていた。

 

 しかし、後に続く言葉が見つからない。そんな時、勢いよく扉のドアが開かれた。

 俺をボコボコにした幼女が飛び掛ってきた。


「シープお姉さまを悲しませるなんて……三途の川を見に行けや~!」


「はあぁぁ?」


 飛び掛ってくる幼女に対して俺は薄く防御力ゼロの布団でガードをする。

 歯を食いしばり、衝撃に備えていたが、いつまでたっても自分の思っていた衝撃は来なかった。


 俺はそっと布団をずらし、突進してきた幼女の方に視線を向けてみた。

 シープに取り押さえられ、ジタバタする幼女。


「シープ姉さん。離して~! こいつ、ラビたんをあんな危険な目にあわせたんだよ! 三途の川を見に行かせないと私の気がすまない~!」


「だめですよ、パンチャ。まずはちゃんと自己紹介からしないと。お仕置きはその後でね」


「分かりました、シープ姉さま。私はパンドント・チャニッチよ。姉さま、これでいい?」


「良いですわよ」


「笑顔でお仕置きを許すんじゃねぇ。って、言うか子供でも四武太守になれるんだ……」


「あたいはな、あたいは、18歳だ~! お前よりも年上だ~! やっぱり、やっぱりお前は三途の川を見に行けや~!」


 またもや俺に飛びかかってくるパンチャ。

 しかし、パンチャの放った飛び蹴りが当たる前に再びシープが後ろ襟首を掴んで止めてくれた。納得が出来ないパンチャが宙に浮いたまま暴れる。


「離して~! こいつに三途の川を見せなきゃ気が済まない~!」


「まあまあ、パンチャ。落ち着きなさい」


「はい、わかりました。姉さま♪」


「うわぁ、変わり身早っ! ちょっと引く……」


 俺がパンチャの変わり身の早さに呆れるとパンチャが睨んでくる。

 こいつの前では余計な言葉は言わない方が良い。


 口に両手を当て、自分の口が勝手に開かないようにする。

 何も言わなくても喧嘩を売ってくるのだから余計に性質が悪い。俺は基本的にこのロリ……もとい、幼女とはかかわらないように心に決めた。

 

 今気が付いたが、俺を先生と呼ぶラビィーの姿が見当たらない。

 疑問を口にしようと両手をどけ、パンチャに質問しようとすると、同じ疑問を抱いていたシープが先に口を開いた。


「で、ラビィーはどうしたのですか?」


「ラビたんならお風呂です~。色々と洗い流していますわ。特にそこにいるケダモノに触られた所を重点的に洗っていますわ」


「冷たくて突き刺さるような視線で俺を見るのをやめてくれ。豆腐並みに弱い俺のハートが砕けるぞ」


「ふん、あんな可憐なラビたんのスカートの中を覗こうとするハートの持ち主なんて砕け散って三途の川に流せばいいんだわ」


 パンチャの冷たい視線に耐える俺。

 しょうがないじゃん。だって俺は今、思春期真っ盛りの年頃だぞ。

 

 そんな時、部屋のドアが開き、ラビィーが入室してきた。


「先生、大丈夫だった?」





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