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第50話 迫る魔王



 ーーその時だった。

 ラビィーの手の中にある壺が、カタカタと震え始めた。


「ちょ、まっ、お?」


「先生、ちょっと、待て、おい。当たってる?」


「こんな時でも冷静だな!」


 次の瞬間、壺の表面に走る光が、不規則に明滅する。

 おいおいおい。まてマテ待て。大丈夫なのかよ、これ。


「めっちゃ光ってるけど……。ラビたん、爆発するなら馬鹿教育係に渡したほうがいいわよ」


「お前は俺にどれだけ殺意を持っているんだよ」


「封印が……不安定になっている……?」


 シープの声に緊張が走る。その横で固唾を飲むエレファ。


「魔王の……力が、強くなってるですの」


「大丈夫、こういう時は……えい」


 ラビィーが壺に手刀を加える。すると壺神具は再び光を閉ざした。


「壊れた時には斜め45度から手刀を食らわす」


「なんで昭和のTVの直し方なんだよ」


「とりあえず、確実に封印が解けかかっているみたいですわね」


「魔王の完全復活が近いかもですの」


「先生、行く」


 ラビィーの表情が少しだけ険しくなった。


「魔王を封印するしかない」


 だが、その目には迷いはなかった。


______________________________________


 2回目の北の城に到着した俺たちが見たのは、疲弊した兵士たちだった

 鎧は傷だらけ。包帯を巻いたまま槍を握る兵士もいる。それでも誰も、武器を下ろしていない。


 魔王領に1番近い最前線なだけある。流石シープが治めているだけはあるね。


「ラビィー様、シープ様、エレファ様。おかえりなさいませ。そろそろ限界ですので、次の策をお願いします」


「帰ってきた領主に向かって第一声がそれかよ。歓迎とかないの?」 


「分かりましたわ。すぐに会議室に向かいます。部隊長、副隊長クラスをすぐに招集しなさい」


「はっ」


 めっちゃ意思疎通出来てるじゃん。他人がどうこういう事じゃないな。

 兵士たちがシープを信頼し、シープが兵士たちを信頼する。


 うん、俺もラビィーが女王になったらこういう雰囲気にしたい。

 まあ、直属の部下がパンチャにベアル、シープにエレファ。信頼しかないけどな。


「魔王の封印が破られるまで時間がありません。ここに全軍を集結して魔王軍と対決しなければなりませんですの」


「エレファ様。魔王軍の数は私たちよりも多い。戦闘が長期化すれば、私たちの方が不利になります」


「分かっていますの。封印もいつ破られるか分からない以上、長引くほど不利ですの」


「貴方たち、エレファの言葉を最後まで聞きなさい」


 シープが部隊長たちを窘める。


「私はここに全軍集結と言いましたの。……ここで迎え撃つために」


 その場の全員が、一瞬だけ息を止めた。

 だが、エレファは自信満々で言葉を続ける。


「最前線の北の砦にて籠城戦ですの。魔王軍を北の砦で引き付けている間に、ラビィー様たち精鋭が魔王城に侵入。魔王を封印するですの」


「……北の砦はこの国一番の要塞。確かにあそこを攻め落とすとなれば、魔王軍も全軍を出さなければ攻め落とせない」


「では私たちは、ラビィー様たちが魔王を封印するまで砦を守り切ればいいということですな」


 部隊長の表情が明るくなる。守り抜けばいい。それだけを考えているようだった。

 そんな雰囲気にシープが喝を入れた。


「……魔王を封印する前に砦が破られれば、自国に大きな被害が出る。お前たちの役割は全ての国民を守ることに繋がっている。簡単に考えるな!」


 部屋に緊張が走る。そんな空気の中、ラビィーが口を開いた。


「私、必ず、魔王を封印する。そしてこの国を先生ともっと良くする。国民もそうだけど、貴方達にもその時代を見てほしい。だから気を抜かずに……守り抜いて」


 部屋にしんとした静寂が落ちる。


「……あと、ちゃんとお風呂に入って。少し匂う」


「名演説が台無し!」


 エレファの作戦はシンプルだった。

 西の城や東の城にも招集をかけ、北の砦に集結させる。


 ここにいる兵は編成して明日には北の砦へ。北の砦に到着し次第、俺たちは魔王城へ侵入。

 魔王封印。それまで東西の兵で補充しながら防衛戦をする。


 俺たちが魔王を封印するのが先か、魔王軍が北の砦を攻略して北の城、そして王都まで進軍するか。一番最悪なのは魔王が復活すること。

 ーーそれだけは絶対に許されない。


「とりあえず今日は私たちは疲れを取りましょう。麒麟様たちを部屋に案内して」


 メイドさんが俺に声を掛けてくれる。

 やっぱりメイド服って男のロマンが詰まっているね。そんな俺を見てラビィーの表情が少しムッとなった。


「ラビィー様、大丈夫です。そちらのメイドは超イケメン好きですので大丈夫ですわ」


「おい、さらっと俺の顔をディスるんじゃねぇ」


「でも、万が一ってことも」


「さらに追い打ちまでするのかよ」


 こんなやり取りをしつつ、夜は更けていった。


                ~~第18代教育係、真鳥麒麟の書、7章完~~



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