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第45話 またかよ



 領主館に戻った俺たちは食事をたらふく食べた後、俺以外は泥のように眠りにつく。

 ……誰だ、確かに大した活躍してなかったからなって思ったやつ。俺もしっかり戦ってダメージくらっているからな。


 身体は疲れているのに、頭だけが妙に冴える。そして1度考え出すと色んな疑問が浮かんできた。

 

 ラブッターは神具のことを知っていた?

 ケバスットは初代勇者の跡地に来た?

 神殿はなぜあそこまで腐敗した?

 ーーそして

 なぜ呪いは3代目からなんだ?

 

 俺が考えたところで答えは出ないよな。まだまだやることはたくさんある。少しでも寝ないとね。


「麒麟様、朝食のご用意が出来ました」


 扉をノックする音で目が覚めた俺はメイドさんの案内で食堂へ入るとそこにはラビィーたちの姿が見えた。


「おはよう。みんな。ずいぶん早起きだな」


「先生。まだみんな回復していない。調子が悪い時こそ肉を食べないと」


「お前は海賊王を目指すゴム人間かよ。とりあえず今日は街の復興を手伝うって事でいいんだよな?」


 席に座り、焼きたてのパンに手を伸ばした俺はシープに向かって問いかけてみる。


「そうですわね。神具も入手できましたし、私も覚醒が出来るようになったので、情報の整理をしつつ、街の復興をお手伝いしましょう」


 シープが紅茶を一口飲みながら答える。


「なら、僕はパンチャと一緒に壊れた建物の復旧をするよ。物陰でムフフな展開に……」


「朝からしちゃいけない妄想全開ですの」


「エレちゃん、繊細で奥ゆかしい僕に向かってなんてことを言うんだ」


「変態で図々しいの間違いだろ」


 朝食を終えた俺たちは街に出た。

 昨日までの戦いの痕跡が、そこかしこに残っていた。崩れた家屋。焼け焦げた壁。

 だが、それでも人は動いている。


「ありがとうございます!」


 瓦礫をどかした先から、住民の声が飛んできた。


「気にすんな。ほら、まだ残ってるぞ」


 俺は次の瓦礫に手をかける。横ではベアルが一人で柱を持ち上げている。

 いや、あれ柱じゃなくて家の一部だろ。


 女装姿で柱を持ち上げるってシュールだな。

 そんな姿を眺めていると俺の傍に瓦礫が落ちてくる。


「ちっ! 外したか」


「パンチャ、これ以上被害者を増やそうとするんじゃねぇよ」


「先生、これはゴミ?」


 ラビィーの小脇には、気絶しているベアル。

 ……何をしたんだよ、お前。


「それは燃えないゴミだ。ちゃんと分けろよ」


「分かった」


 そんなやり取りをしながらも、街は少しずつ元に戻っていく。

 ひと段落ついたところで、俺はふとシープに声をかけた。


「なあ。神殿の件、どうなってんだ?」


 その言葉に、空気がわずかに変わる。

 シープは少しだけ目を伏せてから、ゆっくりと口を開いた。


「……あまり、いい状況ではありませんわ」


「まあ、見りゃ分かるけどな」


「神殿は、本来あるべき姿から大きく外れています。神官長の行動も含めて……あれは、もはや信仰とは呼べませんわ」


 いつもの落ち着いた口調。でも、その奥にあるものは違う。


「子供の件も、か?」


「……ええ。その件で神殿側から面会の要請がラビィー様に届いています」


 ラビィーの顔を見て、


(どうしますか?)


 とアイコンタクトをするシープ。


「行くわ。そこに愛はあるんか? と聞くわ」


「なんで急に金を借りるCMになるんだよ」


____________________________________


「ラビィー様、本当にすいませんでした」


 神殿に入ると若い神官たち数人が土下座をしている。

 そんな状況を見てもラビィーの表情はいつもと変わりない。


「穏健派の力がないばかりにここ100年あまり強硬派の暴走を止められずに本当にすいません」


「強硬派トップのラブッターがいなくなり、強硬派の粛清もおこなっています」


「これからは私たち穏健派が神殿の実権を握り、教義の改革など必ずします」


「なので神殿の取り潰しだけはなにとぞ」


 土下座したまま、口早に謝罪をする神官たち。

 そこに昨日助けた子供たちが俺たちの前に現れた。


「このお兄ちゃんたち、私たちを助けてくれてた。食べ物もくれた。だから怒らないであげて」

 

 涙ながらに訴える子供たち。

 いや、これで取り潰ししたら俺らが悪者になるやん。


「私は今を生きている。過去は振り返らない」


「ツッコむのが激しく面倒くさい」


 ラビィーが許したのなら俺には文句はない。

 シープとアイコンタクトをし、シープが軽く頷いた。


「分かりました。では、ラビィー様の決定に従い、今回は大目に見ます。しかし、今後、神殿は政治に不介入。そして奴隷制度撤廃に尽力してください。追って正式に辞令を出します」


「ありがとうございます。これからは民衆に寄り添い、女神リンネ様の教義に従います」


 この言葉が聞けただけでも、良かったのかな。


 ーーその時、神殿の扉が勢いよく開き、正規軍の紋章を付けた兵士が慌ただしく入ってきた。


「ラビィー様、大変です。魔王軍が国境を進軍し、街や村が次々に蹂躙されています」


 その時、俺が思ったことは

 ……またかよ。しかも今度は規模が違うな。


                ~~第18代教育係、真鳥麒麟の書、6章完~~




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